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    2013年から2014年へ 
  12.30.2013
           




 今年は、PM2.5事件で始まったようです。その後、カネボウの白斑事件・水銀に関する水俣条約があり、そして、IPCCのWG1による第5次報告書、そして、COP19などといった動きがありました。


異常気象と温暖化

 人命が失われたことと言えば、日本の大島、フィリピンのレイテ島といずれも台風だったことがいささか衝撃的でした。

 すべての異常気象の原因が温暖化だ、と断定できるほど、単純なことではないと思いますが、海面の温度が上昇すれば、台風が巨大化するのが当然のように思います。

 海面温度が高ければ、水蒸気が大量に供給され、水蒸気が液体の水に戻るときの発熱で上昇気流を強め、低気圧が発達する。こんなことが当然のごとく起きているのではないでしょうか。

 それにしても、高潮が、状況によっては、津波とほぼ同じ破壊力だということを初めて知りました。


PM2.5に関して

http://www.yasuienv.net/PM25in2013.htm
http://www.yasuienv.net/PM25NHKetc.htm
と2本の記事を書きましたが、メディアは大変に刺激的な報道しましたが、現実に被害に会うのはどちらかと言えば高齢者層であるということが報道されていないようです。

 中国では極めて深刻な状況になることがときにあるようです。1月早々に北京の清華大学に再び行きますので、どのような状況になっているのか観察してきます。前回もやはり1月でしたが、そのときは、北京の空気も多少風があればキレイになったなあ、と思って帰国しました。

 ただ、いささか気になることもあって、それは、IARC(国際)がPM2.5を発ガン物質のグループ1に加えたことです。

 Outdoor air pollution, particulate matter in 1 109 in prep ということですが、報告書が準備中なので、詳細は不明です。

 発がん物質というものは、日本人の発見になるもののようです。

 1915年に山極勝三郎と市川厚一が、ウサギを用いた実験において、コールタールを刺激物として実験的に癌を発生させることに成功し、筒井秀二郎がマウスでの人工発癌を成功させた。

 ということで、日本は発がんの先駆的な研究者を輩出しています。しかし、コールタールがどうして発がん性を持つのか。発がん物質の特定は1929年にアーネスト・ケナウェイが、1:2:5:6-ジベンツアントラセンの発癌性を証明したとされています。

 しかし、最近では、慢性の炎症を引き起こしているとその部位にがんが発生しやすくなるということが常識化しているようなので、ある意味で、どんな物質でも発がん性を持ってしまうことになるのです。

 PM2.5の場合もその例で、粒子状物質が、肺の奥に入り込めば、組成によらず、なんらかの炎症を引き起こして、肺がんの原因になるというメカニズムのように想像しています。

 時事ドットコムによれば、「IARCは過去数十年にわたり、100万人以上を対象に研究を実施。汚染された空気と肺がんなどの発症に「十分な科学的根拠がある」と結論付けた。2010年に世界で22万3000人が汚れた空気を原因とする肺がんで死亡したと推計した」、とのこと。

 タバコというすごいものが法的に許容されており、自動車という粒子状物質を出す大型の機器が走り回っているのに、世界全体で22万人程度の肺がんの死者であるのなら、しかも、発症するのが高齢者が多いのなら、人類としてどう考えるべきなのでしょうか。

 米国の肺協会は、IARCのこの決定を歓迎するというメッセージを出しています。彼らは、PM2.5という原因物の排出を減らすことができると思っているのでしょうか。

 日本だとディーゼルが頭に浮かびます。しかし、ディーゼル車だけが問題なのではありません。直噴形式という燃料噴射型のガソリンエンジンは、微粒子の発生が多いことで知られています。

 欧州車のガソリン車は粒子発生量が多いという報告が国立環境研から出ています。なんと、日本車の4倍だそうです。
http://monoist.atmarkit.co.jp/mn/articles/1312/18/news111.html

 やはり、大都市を走る車は電気自動車だけにするしかないでしょうか。それとも欧州車だけを使用禁止にでもしましょうか。

 PM2.5のすべてが人工起源という訳でもなく、植物起源の微粒の油脂類も原因物質になるようです。すなわち、原因をすべて潰すことは不可能だと思えば、日本のような良好な状態である国の国民がどこまで心配すべきなのか。それをまず議論することが重要のように思えるのです。

 私見ですが、日本人として行うべきことは、中国国民の大変な状況を理解し、是非、東京の状況を学ぶように薦めることでしょう。

 なんといっても北京のレベルが900μg/m3に対し、日本の各地で騒いだときのレベルが35〜70μg/m3と10〜30倍も高いのですから。

 日本の都市部におけるPM2.5の一種である原子状炭素の濃度の推移は、次のように減少してきています。

1983年頃の11μg/m3から
1997年には9μg/m3へ、
2004年の3μg/m3、
2008年には1μg/m3

 1997年からたった10年で、ほぼ10分の1という減少率が達成できているのです。

 もっとも、この順調な低下には、ダイオキシン騒ぎが効いています。焚き火などが禁止になり、農業廃棄物の野焼きもかなり減ったからです。これらもPM2.5の重要な発生源なのです。

 中国人に、日本では焚き火も禁止した自治体が多いと教えてあげて下さい。

 いずれにしても、メディアの煽りでいちいち心配していると、損をする事例の一つのように思います。


水銀に関する水俣条約

http://www.yasuienv.net/MinamataC.htm
 2013年10月10日に採択・署名されました。

 これまでの条約とは違った性格を有する条約です。なぜならば、有害物質規制に関するストックホルム条約などは、人工物に関する規制ですが、水俣条約は、天然物、しかも、この宇宙を構成している元素の一つを取り上げて、規制対象にしているという史上初の条約だからです。

 水銀を誰も作ることはできません。地球から硫化物の形で産出する鉱石を、人類が還元して金属に戻しているものです。人類はこれまで水銀に大変にお世話になっています。

 まず、自分の経験から言えば、水銀真空計や水銀を使った拡散ポンプ。医者の多くはいまだに水銀の血圧計を使っていますよね。

 蛍光灯の中には、以前は40Wの直管1本に100mgぐらいの水銀が入っていました。しかし、現在は10mg以下になったでしょうか。

液晶テレビには、しばらく前まで冷陰極管という蛍光灯の一種が使われていました。恐らく、1台あたり水銀50mg近くが使われていたのではないでしょうか。蛍光灯に先んじて、最近の液晶テレビは、LEDバックライトになってしまいました。水銀は使っていません。

 蛍光灯も、かなり速やかにLEDに置き換えられることと思います。その理由は、効率が高いからではありません。Hf点灯の蛍光灯のエネルギー効率はLEDと良い勝負ですが、寿命はLEDが圧倒的に長いということです。工場などの天井の高いところでは、交換の手間賃がバカにならないからです。

 とうことで、現時点での日本における水銀の消費量は年間数トン程度まで減っているのだろうと思います。しかし、古い蛍光灯などを回収することで、年間数十トンの水銀が回収されています。

 北海道の野村興産がその専門業者です。昔は、イトムカ鉱山から硫化水銀を採掘して、水銀を作る鉱業を営んでいた企業ですが、今や、回収業者になっています。

 今回の水俣条約によって、水銀の輸出はできなくなります。となると、どこかに水銀を保存する必要がでてきます。やはり旧水銀鉱山であるイトムカに硫化物に戻して貯めて置くことが、自然に戻すという意味で最良だと思います。しかし、危険だと言って反対する人がでるかもしれません。

 反対には、「何かが起きれば、川に流れて、海を汚染する」という論理が使われそうな気がします。しかし、水銀は元素なのです。地球の構成元素です。地殻には600,000,000トンが存在し、海水中にも56,000,000トンが溶けています。しかも、水銀は蒸気圧が高いので、毎年、海水面から8000トンが蒸発して大気中に移行し、火山が吹き出す15,000トン、大地からの蒸発が5000トン、植物から蒸発する3000トン、それに人為起源の7000トンを加えた38,000トンが雨とともに、毎年、雨とともに地上に降り注いでいます。

 数年後になれば、イトムカ鉱山での水銀の永久保存が話題になるはずですが、そのときに、誰がどのような論理で反対するのか、また、メディアがどのような報道をするのか、今から楽しみです。


COP19とCOP20、21

http://www.yasuienv.net/COP19Papers.htm
 COP19では、2005年度比で、2020年排出量は3.8%削減が目標(原発ゼロの場合)と発表し、一部の途上国から顰蹙を買った日本政府でしたが、この話は、まだまだ序の口です。

 2014年の9月には、国連気候変動サミットがニューヨークで開催され、各国が大胆な約束を持ち寄ることになっています。

 2014年10月には、IPCCのAR5の統合報告書が発行されて、12月には、COP20がペルーで開催され、そして、2015年のパリにおけるCOP21に十分先立ち(準備できる国は2015年の第一四半期)削減目標の提出が求めれることがCOP19で決まったからです。

 これに対して、国内の情勢はノッタリしています。エネルギー基本計画の閣議決定が、年明けのいつになるやら。その後、しばらくしてからエネルギーミックスの検討が開始され、やっと原発をどのぐらい動かすのか、自然ネルギーをどのぐらい入れるのか、などの議論が本格化します。9月の国連気候変動サミットに間に合うのでしょうか。

 もう格好の良いことは言っていられないのは事実。どこまで言えるか、それは、そのときの経済の状況によって、内閣支持率がどのぐらいになっているか次第といった感じがします。


本Webサイトで何を取り扱うか

http://www.yasuienv.net/HumSci.htm
http://www.yasuienv.net/HumSciApp.htm
 今年の最後に、「文系と理系の壁」なる記事を書いたのは、実は、ちょっと衝撃的な出会いがあったことも一因なのです。それは、某業界紙の編集長とさる懇親会で出会って、色々と話をしていたところ、地球温暖化は絶対に信じらないという発言に、久しぶりに驚いたという訳です。

X氏:なぜ信じないのか、と言えば、地球のことなど複雑すぎて、どこかに抜け落ちがあるに違いないから。

自分:確かに、太陽の活動などは全く予測不能ですが、人類が出す温室効果ガスの気温への影響程度の話なら、古典的な物理法則で説明可能なので、そんなに疑うような要素では無いですね。どこまで定量的に言えるかは勿論課題ですが、このぐらいという幅を許してくれるのなら、何か言えるのが現状。

X氏:しかし、信じられないから信じられないのだ。

 お酒が入っていたので、残念ながら、認知バイアスのことを説明することができませんでしたが、やはり、理系の身では、このような確たる信念は持てないなあ、と思った次第でした。

 そして、「文系と理系の壁 追補」で記述したように、一般市民に楽しんで読んでもらえるような、良い入門本が必要のようです。

 池上彰氏は、NHKの『週刊子どもニュース』のキャスターを10年間経験して、その結果、誰にでも分かる説明方法を身につけたのではないか、と思うのです。そこで、複数の人々が協力して、誰にでも分かる環境学の基礎を記述した単行本を作るべき時期が来ているように思います。しかも、多少急がないと、COP対応など色々と間に合わない状況が起きてしまいそうです。

 「中学の知識で分かる 文系のための環境学ガイド」が題名では売れそうもない。。。。


 皆様、良いお年を!