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   2015年を振り返る    12.27.2015
          勝手な「自分の思い」の実現を目指すな        




 今年はどのような年だったのだろう。そんなことを考える時期になりました。これまで毎年そんな記事を書いてきましたけれど、日本という国が、ますます残念な国になりつつあるように思います。その原因は何か。色々ありそうには思うのですが、個人的な感覚では、「自分の思い」というものが、自分の主張を決定する最優先レイヤーになっている人・組織が増えたということではないか、と思います。自分の思い、他人の思い、ヒトとは何か、関連する科学的結論は何か、自分を取り巻く自然環境・地球環境、といった多様な要素をできるだけ多く取り入れて、自分の主張を見出すための境界条件を整備し、そして、その中で可能な解を見出し、そして自分にとっての最適解の候補を複数特定する。そして、そのうちのベストを選択し自らの主張にする、というプロセスが本来あるべきものだと思うのですが、それが普通ではなくなった、ということだと思うのです。

 要するに、「自分の思いを何がなんでも実現しよう」とする人は、自分の頭で「何が真理に近いのか」を考えていないのだと思います。自分の主張というものが先験的に存在していて、それに対して都合の良い情報だけを集め、そしてその主張を強化する。そして自分の主張に都合の悪い情報に関しては、無視をするか、あるいは、手段を選ばずインチキな情報を混ぜながら、徹底的にこき下ろす。これが世間に、蔓延していた状況だったと思います。

 本来、見本になるべき国政レベルでも、辺野古の件で沖縄県と政府が訴訟合戦をすることは、そのもっともひどい一例でしょう。

 他に例を上げれば、いくらでもありますが、高浜原発に対する福井地裁の決定。日経に掲載された識者の意見が妙に面白かった。「裁判官の事故に向き合う姿勢の違いだ。今度の裁判官の姿勢は不満」。裁判官は、そもそも「自分の姿勢」で判決を出して良いのでしょうか

 同じジャンルに入ると思う最悪の例が、今日のニュースでまた報道されています。高校生が祖父母を殺して、「誰でも良かった。自分のストレスの解消のために殺した」。

 さて、話題を環境問題に戻しましょう。

 パリ協定にどう対応するか、という審議会が開かれましたが、そこでの「パリ協定完全遵守派」と「完全無視派」の戦いも、似たようなものです。今回、2℃目標に加えて、1.5℃という数値も出てきたので、ますますこの戦いが激しくなっているのです。

 この話は、すでに何回か述べています。「2℃目標」と新聞は書きますが、実は目標ではなく、2℃は「ゴール」です。そちらに向けた努力を最大限行うということです。すなわち、そのゴールを完遂できるかどうかに意味があるのではなく、そちらに向かう姿勢を維持できるかどうかに意味があるのです。2℃の達成の条件を具体的に述べれば、人類が欲望をむき出しにすればできないし、もしも、向こう15年以内に、なんらかの理性的な行動を取ることが合意できれば、不可能とも言えない、ということなのです。すなわち、ヒトにとって「正義」とは何か、そして、「ヒトの理性」とは何かが問われているのです。

 パリ協定は、日本企業に対して、マインドセットの変更を迫っていると思います。世界のファイナンス関係のほとんどすべてが、方向性を「ESG投資」に切り替えました。「2℃以下なんて達成は最初から無理だよ」、と企業トップが言ったら、その企業に対して海外からの投資はゼロになるでしょう。そんな訳で、世界中の優良企業は、脱炭素競争という場で、世界の先頭を目指しているのです。

 日本企業の平均点は50点以下です。「2℃以下なんて達成は無理だから、石炭発電で安い電力を途上国に供給するのだ」、「それは、その途上国の未来にとって、また、我が社にとっても共通の利益だから」といったレベルで、これは完全アウトでしょう。その途上国だけが、今の世代だけがよければ、他の国が、そして、未来世代がどうなっても良いということではないからです。

 同じような例が人権問題としての「若年労働」です。本人曰く、「例え学校に行けなくても、収入を得ることができればメリットなんです」。雇用している企業曰く、「我が社にとっても、安い労働力だからメリットがあります」、という状況は、国際的にすでに許容されないのです。「すべての子供には、教育を受ける権利がある。それが人権というものである」が、その理由です。

 どうも日本人は、当事者同士が合意していれば、それで問題は終わりだと考えているようですが、それは、単に視野が狭いだけです。地球環境問題とは、「地球とはすべての地球上に存在する生命の共有物」であることを認めることから始まります。その中で、ヒトという生命がどこまで「姿勢」を示すことができるか、が問われているのです。

 若年労働問題では、当事者同士が合意したとしても、その合意を他の当事者に強いるケースが起こりうるので人権問題なのです。それを防止しようという考え方が正しいことになります。このあたりは、ISO26000の元となった、ジョン・ラギー(ハーバード大学教授)の「企業活動と人権」に関する枠組みづくりが重要な貢献をしたと考えています。このあたりは、後藤敏彦氏からの受け売りですので、ご自分で「企業活動と人権」をキーワードとして、Web情報を集めてみて下さい。

 もう一つ。その企業が世界標準でのトップを目指しているかどうか、簡単な判定基準があります。それは、グローバル・コンパクト(GC)。アナン国連事務総長が提案したもので、このGCに署名している企業は、世界標準に近い先進企業の候補(実態が「?」の企業も皆無ではないが)と言えるでしょう。すなわち、先進企業の必要条件だと思います。大企業なら年間20万円の会費で、そのような評価が得られるのなら、安いものではないですか。ちなみに、GCと個人的な関係は全くありませんので誤解なきよう。
 グローバル・コンパクトの加入企業・団体一覧です。ご参考まで。
http://ungcjn.org/gcjn/state/index.html

 さて、今年の4月から、民間人に戻って、7月からは(一般財団法人)持続性推進機構IPSuSの理事長になりました。NITE(独・製品評価技術基盤機構)のときには、さすがにできなかったのですが、IPSuSの専務理事の森下研氏と相談して、IPSuSの事業の一部であるEcoLead(環境人材育成コンソーシアム)の事業として、2003年から5年間、国連大学副学長の時代に行っていた、環境を専門とする大学院生と企業人が場を共有して日本トップクラスの講師による各3時間というヘビーな授業を集中的に受ける国連大学サマースクールを復活し、その継続版を行うことにしました。名称は、「EcoLeadプレミアム大学院」とする予定です。日程だけは決まっています。3月7日(月)〜11日(金)です。

 詳細は、年明けにお知らせします。会員制であるEcoLeadに所属する大学の院生を一応優先したいと思いますが、それ以外の大学からの受け入れも考慮したいと思います。また、企業の優先についても同様ですが、近い将来、会員制そのものも考えなおす予定です。



 付録1:それにしても、今年は予想以上に忙しかったです。その原因は、今にして思えば、やはりCOP21にあったようです。年が明けて、早々に始まったのが、資源エネルギー庁によるエネルギーベストミックス、そして4月頃から本格化したCOP21用の約束草案(INDC)の経産省・環境省合同検討会、そして、NEDO主催の国際会議ICEF、さらには、COP21の合意を想定した、環境省の中長期ビジョン検討会、長期戦略懇談会、と臨時の審議会が数多く行われ、そのほとんどすべてに参画していたからです。来年は、暇になるだろうから、ゆっくりと次世代の環境学者、特に、環境未来学者の育成にでも取り掛かりたいと思っているところです。



 付録2:本日、買い物のついでに東急本店のジュンク堂に行って、英語力をアップできると称する本で、売れ筋を見てきました。環境学でも英語力が必須だからです。自分の英語の実力はまだまだ不十分ですが(最近、耳が悪くなったのか、ヒアリングが弱くなったように思う)、EcoLeadプレミアム大学院の参加者に納得できる勉強法を勧めたいと思ったから。結局買ったのは2冊+電子版1冊。
1.村上憲郎著 シンプル英語勉強法 ダイヤモンド社 Amazon★3.9
 内容は、英語の筋トレ本。これができれば苦労しないよ、とは思うものの、国連大学に決まる前の1年間にやったことは、これと似た作業の一部だったので、やはりこれが本筋だと思ったり。
2.リサ・ヴォート著 リスニンガールの耳ルール30 Jリサーチ出版 Amazon★4.7
 内容は、「英語の耳」。現実の英語の音は、確かに、字とは相当違う。30才のころに日米英会話学院で学んだことと同じことが書かれているので。CD付き。
3.一生モノの英語勉強法−「理系的」学習システムのすすめ 鎌田浩毅、吉田明宏著 祥伝社新書 Amazon★4.3 これは、Kindle版を買いました。学習の理屈はその通り。大学院生には良い一冊かもしれません。
4.買わなかった本。森沢洋介著、英語上達完全マップ―初級からTOEIC900点レベルまでの効果的勉強法 ペレ出版 Amazon★4,3も良さそうだったのですが、同名のWebサイトだけで充分だし、ちょっと初級レベルなので。



 それでは、良いお年を。