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2015年の災害・環境は? 
   01.04.2015
  今年を若干予測してみる




C先生:早速だが、昨年の十大ニュースから始めよう。

A君:了解。

 昨年の日本十大ニュースは、読売新聞版では、
1位:御嶽山噴火 死者行方不明63名
2位:消費税8%
3位:青色LEDノーベル賞
4位:錦織圭の活躍
5位:年末の衆院選
6位:広島市北部土砂災害で 死者74名
7位:STAP細胞不正
8位:ソチ五輪で金1,銀4、銅3
9位:富岡製糸場が世界遺産に
10位:高倉健さん死去


その後、環境・気象・感染症などの関連ニュースを30位までのリストから拾えば、

14位:70年ぶりのデング熱の国内感染
15位:関東甲信で二週連続大雪、都心でも27センチの積雪


 海外十大ニュースからは、
1位:エボラ出血熱
ぐらいであり、2013年のような猛烈な台風で死者・行方不明8000人といったニュースはなし。こんな感じです。

C先生:トレンドを見るために、ちょっと、遡ってみるか。まず、2013年の十大ニュースを見直すと、6位「伊豆大島で土石流災害、死者35名」、14位「四万十市で41.0度」がラインクインしている。

A君:2012年の十大ニュースは、読売新聞のような30位まであるものが見つからないのですが、10位までには、環境・気象・感染症などの話題は無いです。
 もっとも海外の10大ニュースには、7位にハリケーン・サンディで死者100名が入っています。

B君:2011年は、東日本大震災と福島原発事故。それだけでなく、7位に大型台風上陸あいつぎ記録的被害がある。
 世界の10大ニュースだと、5位にタイでの大洪水が入っている。8位にニュージーランドの地震で日本人28名死亡もある。

A君:2010年は、5位に宮崎での口蹄疫。6位に観測史上最高の猛暑。世界では、特になし。

B君:2009年は、3位に新型インフルエンザが大流行。世界では、特に無し。

A君:2008年は、日本では無し世界では、3位に中国四川省地震と、7位にミヤンマーを大型サイクロンが直撃し、死者・不明13万人が入っている。

B君:2007年は、日本の7位に中越沖地震で15名死亡東電の柏崎刈羽原発での火災事故が入っている。世界にはなし。

C先生:世界レベルでの天災では、2008年のミヤンマーのような大災害が起きている。しかし、この年のミヤンマーでは、災害への対策が十分でなかった、ということも大きな要素で、日本で、伊勢湾台風級で再度あれほどの死亡者数になるのか、と問われれば、その確率は、低いと言えるだろう。それは、過去の教訓を活かして、防災対策がある程度行われているからだ。

A君:しかし、今度、台風が超大型化すれば、なんとも言えないでしょう。

B君:2012年のハリケーン・サンディのようにニューヨークを襲って、地下鉄の不通、大停電といった形態が今後の頻繁に起きるようになるのではないだろうか。

A君:ハリケーン・サンディの場合には、超大型というよりも、進路が異常だったという要素が大きいと思いますね。

C先生:そろそろ、今年がどんな年になるのかを含めて考えてみるか。
 まず、都市インフラの老化が進んでいるのだが、一方で、予算の関係で想定外への備えが徐々にできなくなった。すなわち、地域の弱点が十分に把握され、補強されるような状況にはない。その意味では東京より、大阪、名古屋などの方が危ないかもしれない。東京は、2020オリンピックに備えて、今後、若干の整備が進むだろうから。

A君:今年起きた広島市の土砂災害は、宅地造成が大雨のリスクを全く考えないで行われていたことを証明したようなもので、かなり人災とも言えそうな感触ですね。

B君:横浜市の土砂崩れもそうだった。今年も、かなりの確率で集中豪雨は起きるだろうから、取り敢えずリスクを考える必要があるのは、日本各地の住宅地の再点検かもしれない。

A君:しかし、それは行われないのですよね。転売時の土地の価格が下がるからということが最大の理由で。

B君:新興住宅街の豪雨対策を是非ともということになるだろうか。

C先生:対照的に、古い街だと老朽化家屋の除去が大きな問題だ。自宅は、環状6号(山手通り)と環状7号の間にあるけれど、このあたりが老朽化した古い家屋が残っている境目なのだ。南関東でのM7級(過去の統計では、28.3年に1回程度の発生確率)が起きたとき、昔に比べれば、石油ストーブの非常停止、ガスの自動停止など大幅に進化したが、それでも、住宅が倒壊すれば、火災の発生の確率は低くはない。

A君:墨田区・足立区・江東区には老朽建物等の適正管理に関する条例というものがありますね。

B君:葛飾区では条例案が否決されたみたいだ。

C先生:東京の場合だと地盤が悪い下町でより深刻な状況なので、いくつかの区が先行して条例を作っているようだ。危険度は、東京都の地震に関する地域危険度測定調査(第7回)(平成25年9月公表)
http://www.toshiseibi.metro.tokyo.jp/bosai/chousa_6/home.htm
を見るとすぐに分かることだ。

A君:葛飾区は危ないことは危ないが、墨田、荒川、足立ほどではないという判断かもしれません。まあ、その地域の自治体の危機感次第ということでしょうね。

B君:地震は、明日来ても不思議ではない、と考える以外に対処する方法は無いので、できるだけの準備をすべき、が結論になる。

A君:それでは、豪雨と台風には、震災に対する準備に加えて、どのような準備をすべきかどうか。

B君:まずは、自治体の洪水ハザードマップを見ることが最初。

C先生:自宅は、平坦地のギリギリのところにあって、そこからすぐ南が蛇崩交差点に向かって下がっているところなので、以前は、洪水は全く関係ないと思っていた。ところが東京都が平成17年3月に発表したハザードマップを調べて見ると、平坦地に降った雨が、自宅の傍を通って旧蛇崩川、今は、地下排水路になっているが、そこに流れ込むというシミュレーション結果になったようで、最大50cmの浸水の可能性があるとのこと。これには驚いた。ただし、雨量は東海豪雨を想定したものだ。

A君:東海豪雨とは、2000年9月11日から12日にかけて起きた豪雨で、秋雨前線と台風14号がもたらしたもの。最大24時間降水量534mm。9月11日の日降水量が428mmですが、過去の記録が1896年の240.1mmだというから、1.8倍もある。名古屋市の場合、2日間での総降水量は567mmで、年降水量の1/3を超えた。そのため、床上浸水が24,610世帯だった。
http://www.jma-net.go.jp/nagoya/hp/bousai/saigai/h1209.html

C先生:確かに、そのような雨量だと、東京都のハザードマップのようなケースも起きないとは言えない。

B君:今年も、ある程度の自然災害を考えておくべき時代になった。やはり気候変動は無視すべきではない。

A君:まあ、火山が、例えば富士山が爆発する予測はかなり難しいし、そのための準備も難しいから、確率の高い気候変動に向けて準備するのが賢い対応でしょう。

B君:すでに述べたが、地震に向けて非常用品の備蓄は重要。それ以外は、取り敢えずは、気候変動を考慮して、その地域の特性に併せて、若干の準備をしておくべきということだろう。

A君:話変わって、気候変動と言えば、今年は、11月末からパリでCOP21が開催されますね。できれば3月までに、COP21用の温室効果ガスの排出抑制策を提出することが求められています。

B君:どうやら3月末は無理。しかし、できるだけ早期に準備するということになるのでは。

A君:日本は、今や世界の4%未満の国。それでも、2011年統計だと世界5位。

B君:2013年のGHG排出量の速報値が発表された。しばらく前のことだけど。
http://www.env.go.jp/earth/ondanka/ghg/2013sokuho.pdf

A君:かなり増えました。前年比で1.6%増加。2005年基準でも1.3%増加。1990年比だと10.6%増。これまでの最大値が2007年だったけど、それをわずかに上回った。


図1 温室効果ガスの排出の推移 1990年〜2013年

B君:COはある意味必然だけど、ここ数年、HFCの排出が増えているのが気になる。これは、冷媒として使われているHFCの放出が増えたから。

A君:最大の用途はエアコン、冷蔵庫、冷凍庫。業務用と家庭用があるけれど、家庭用の冷蔵庫は、もはや、HFCを使っていない。

B君:改正フロン法が今年4月1日から施行される予定。

A君:家庭でもエアコンからのHFCは、本来回収されるべきものなのだけれど、ほとんど回収されていなかった。

B君:しかし、業務用機器からの漏洩が多いということだ。本当は、低GWP(温暖化ポテンシャル)の低い冷媒に切り替えるべきなのだ。

A君:もっとも普通に使われている冷媒HFC-134aのGWPが1300だったものが、現時点では評価が1430になった。取り敢えず、HFC-32に切り替えれば、650(現在675)なので、半分にはなる。

B君:EUの自動車用のエアコンの規制では、GWPが150以下の冷媒が要求されている。実際に使われているものはHFO-1234yfだが、このGWPは4。圧倒的に低い。しかし、微燃性なので、危険があるという見方もあったが、EUはこれを選択した。

A君:HFO-1234yfを使うと、冷媒の圧力をこれまでの4倍にしなければならない。全く新しい設計になる。

B君:Honeywellは、HFO-1234yfのGWPは1以下だと主張している。その理由は、この冷媒を使ったカーエアコンは、燃費が改善されるからとのこと。これは本当だろうか。

C先生:そろそろ本題に戻ろう。図1を見ると、2009年は、リーマンショック。2010年はそれからの回復。2011年からの増加は、福島第一事故のために原発が止まったことが原因

A君:それを示すのなら、もっと明瞭な図があります。



図2 発電量とCO排出量の推移

B君:2010年に比較すると、2013年には、発電量が93.4%まで減少したのに、CO発生量は29%も増えている。その理由は、石油火力が1.98倍、LNG火力1.47倍、石炭火力が1.21倍に増えたから。

A君:まず、石油火力は、もっともコストが高い燃料ですので、電気代も高くなって当然。そのため使いたくないのですが、原発が停止したために発電能力が不足して蘇った。それ以外の燃料も増えて、その輸入のために、年間3.5兆円ぐらい余分に支払ったことになります。

B君:LNGも、2011年以後、カタールあたりからスポットで買ったものはコストが非常に高いからな。

A君:こんな状況から、2025年あるいは2030年の様子を推定するのは、大変。

B君:どの部門から減らすべきか、を考えるには、図3が必要になる。



図3 CO2の部門別排出量(電気・熱配分後)

A君:COP21に向けた約束草案では、2005年を基準年にするでしょう。2005年から、もっとも増えているのが、業務部門の19.5%増。次が、家庭部門で16.3%増。この両方とも、電力のCO2排出源単位の増加が主たる原因で、業務部門は、営業面積が増えていることも影響している。

B君:エネルギー転換部門は、自家発電が増えたから。これも電力が不足気味で、そのときに発電設備などに事故があれば、供給を止められるリスクが増えたから。

C先生:とにかく、電力のCO2排出源単位を下げることが最大の手段で、それ以外に排出量を下げる方法はほとんどない。これは、専門家の誰もが同意していることなんだ。
 例えば、自動車も電気自動車にすることによって、はじめてカーボンフリーにする可能性がでてくる。
 もっとも現実的なのは、化石燃料であればCCSを行うこと。さらに、自然エネルギーへの転換だ。原子力は、日本の場合に、漸減することになっているので。

A君:要するに、化石燃料から出るCOの処理、あるいは、化石燃料からの離脱が勝負ということです。

B君:家庭部門でも、灯油などの消費量を下げ、電気によるヒートポンプに変えること。都市ガスは、天然ガスなので、まあまあとも言えるが。ガソリンは、レンジエクステンダーあるいはPHEV用として使う。純粋の内燃機関の自動車が使うガソリンは、趣味用ということにして、高い環境税を掛ける。

A君:カーボンフリー電力にすることで、業務部門、家庭部門、運輸部門からのCOの排出量が大幅に下がる。トラック用のエネルギーとしては、水素が良いかもしれないけど、その水素を何から作るかによりますね。

B君:理論的にはその通り。しかし現実を考えると電力のCO2排出源単位を30%下げるといったことが可能だろうか。福島第一原発事故以前に書かれたものでは、原発を大増設するというシナリオだった。

A君:なかなか難しいです。CCSを実用化することは、COの埋め場所がそれほどある訳ではない日本なので、可能性は低い。まあ良くても、1億トン/年ぐらいが限界ではないでしょうか。しかも、20年ぐらい
 すなわち、原子力は減らすのは規定の方針。化石燃料も減らすのが必然。増やすのは自然エネルギーしかない。

B君:この議論からの論理的な帰結として、自然エネルギーを大量導入という結論になる。しかし、これをやると、一人あたりの電気料金が、年間2万円/人上昇するという可能性高いことになる。産業用の電力をそれほど高くするわけにも行かないので、家庭用がほぼすべてのコストアップを負担することになる。しかも、不安定な電力を安定化するために、自宅にも電池の導入が不可欠になるかもしれない。

C先生:それを究極の自然エネルギーシナリオとでも呼ぶか。究極の自然エネルギーシナリオを受け入れるのか。それがダメなら、原発の発電量をキープする以外に方法論は無いのだけれど。

A君:年間2万円/人の増額だとすると、1ヶ月にすれば、1667円。今、皆さん通信費にいくら払っているのでしょう。

B君:もしもスマホが各人に1台ずつある家庭なら、1667円/人・月節約するのは、非常に簡単。

A君:ちょっと考え方を変えるだけ。本来地球の資源というものは、未来世代にも使用する権利がある。それを使えば安く上がるという考え方自体が、いささか自分勝手。

B君:古くから世代間調停という言葉で語られていた。持続可能な開発の定義も、実は、同じような考え方に基いている言葉だったのだが、現時点でそのような理解を持っている人は少なくなってしまったようだ。

C先生:本来、エネルギーはS+3Eという原則、安全(Safety)を前提として、安定供給(Energy Security)、環境負荷(Environment)、価格(Economy)の4つの条件で決めることになっている。この発想は正しいと思うものの、最後は、価格面でかなり妥協してもらう以外に方法は無いのかもしれない。すなわち、原発であれば安全性を高めたことで、現世代の原発は相当高額な設備になった。化石燃料は、天然ガスですらCCSを強制されるようになるので、かなり高くなるし、シェールガスの安定供給がいつまでも続くとは思えない。そして、自然エネルギーを今までの電力と同じ考え方で使おうと思えば、送電線や電池の整備などが必要で、もっとも高価なエネルギーになる。
 さて、どういう選択を日本国民はするのだろう。これが、環境エネルギー関係で、今年の6月頃までに行われる最大の決断になるのではないか。