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   2016年から2017年へ 01.01.2017
     
年賀状:時間と空間をより広く見る年に
               



 パヴァン・スクデフという名前をご存知の方は、それほど多くはないでしょう。スクデフ氏は、旭硝子財団の2016年ブループラネット賞の受賞者です。私個人も、「生態系と生物多様性の経済学(TEEB)」で、名前は知っているという程度です。このスクデフ氏の著書、”「企業2020」の世界”を買い込んだので、この正月の空き時間に読む予定です。この本が書かれたのは、2012年のリオ+20に間に合うようにということだったようですから、執筆時からは、5年以上が経過しています。しかし、企業行動の記述を読んでみると、まだまだ現在にも通用する新鮮な指摘がなされているようでした。

 本日の本題は、スクデフ氏の著作のタイトルだけを頂戴するものです。「企業2020」という本が、訳者のあとがきが2013年であることから判断すると、英文の本は、2010年頃から準備され、その後、執筆されたということのように思えます。すなわち、10年先にターゲットをもって作業に取り組まれたものと思われます。

 10年先を読むことは極めて難しいのが現状です。2016年のイギリスのEU離脱や、トランプ大統領など、このところ、全く予測不可能な大事件が起きています。しかし、「企業2020」の主張の一つですが、本来の保護対象である地球の生態系の限界や、その他の資源限界、さらには、地球の気候変動の状況などを見れば、現時点だけ、あるいは、3、4年程度の視野で企業の未来を決めているようでは、その企業は、今か10年後には怪しい存在になっていることは、ほぼ確実だと思われます。

 さらに、企業が短期的な利益を重視しなければならないROE重視のポリシーを追求した企業が、結果的に、未来への投資を怠る結果になってしまったら、それこそ、10年後の健全な企業経営を犠牲にしている可能性が非常に高いと思うべきでしょう。

 「これが恐らく事実であること」を理解し始めている関係者が増えているためでしょう、年金などを運用する金融関係機関は、ESG(環境、社会、ガバナンス)投資を推進し始めているのです。より長期な未来ビジョンをもって企業運営をしているところ以外、投資の対象にはならないという状況が徐々に広がりつつあります。なぜなら、年金関係が最大の投資機関になりつつある現状では、長期的な視点をもった投資がもっとも重要だと考える担当者が多く存在していて、全体的な動向を支配するのは当然だからです。

 スクデフ氏が「企業2020」を書いた時点では、当然のことですが、パリ協定の合意ができるということは、ほとんどすべての人々にとって、全く視野の外だったと思われます。その意味で、パリ協定ができた2015年は、人類史を変えた年だったと将来評価されることは、ほぼ確実です。

 残念ながら、パリ協定の意味を薄々知りながら、どう対応したら良いか分からない企業経営者が多いようです。確かに経営者という立場であれば、今後、企業経営に重大な影響を与える社会制度、例えば、環境税の導入がどうなるか、これが全く未知の現状では、将来ビジョンを作ることは難しいことでしょう。

 これは、個人としても状況は同じようなもので、これから自分の人生設計をどのような方向性をもって行うのが適切だと言えるのか、となると現実性の高い解は、長期ビジョンとは別に、まあ良いところ、2年後程度を考えることになるのか、と思います。

 勿論、細部に至る詳細を予測することは無理ですが、どのような「よい社会」にしたいか、という希望を述べることは、比較的簡単にできるのではないか、と思うのです。

 世界全体の変化が境界条件になるのは事実です。無視することは全くできません。しかし、細かい予測は無理ですが、かなり明らかになっている未来予測もあるのです。気候変動問題は、その一つであって、IPCCが示している地球の気候の未来像は、その通りになる確率が、統計的にみてかなり高いと言わざるをえないデータ処理が行われています。

 必要となる気候変動への対応を明確に示したものがパリ協定の2050年対応と、その後、今世紀末までに必須になる排出量と吸収量をバンランスさせること、すなわち、Net Zero Emissionの実現です。

 気候関係は、IPCCの長期に渡る努力によって、未来像がかなり明確に描かれました。その結果、未来像が明確になってきている分野が、エネルギー供給関連です。石炭の座礁資産化がその例だと言えます。自然エネルギーがその頃の主役になることも、世界的には、ほぼ確実だと言えますが、日本という状況(国土の成り立ち程度の意味)では、100%自然エネルギーは実現不可能でしょう。

 地球の鉱物資源の供給量と需要量のバランスも、その一つです。極めて単純に表現すれば、かなり多くの資源が2050年にはリサイクルやリユースに依存しなければ、需要を満たすことができません。金属元素で言えば、金、銀、銅、鉛、錫、亜鉛、白金などの漢字がある金属(鉄は例外)、加えて、ニッケル、コバルトといったところが供給不足になる可能性が高いです。希土類は、価格の不安定性は残りますが、不足することは無さそうです。

 最後が人口問題。現在の状況ですが、そのルールは、「経済成長が一段落するところまで成長すると、出生率が落ちる」。アジアは、フィリピン、ラオスなどはまだ高いものの、インドネシアが2.44、インドが2.40、バングラデシュが2.14などで、アジア全体としてはこの段階に到達しています。世界の最小出生率が台湾で、1.12です。今後、人口が増えるのは、アフリカとイスラム圏の一部(例えば、アフガニスタン、パレスチナ、イラク、パキスタン)、島嶼国に限られるのですが、それでも、世界平均の出生率が2.45なので、まだまだ人口は増加傾向にあります。

 世界人口が100億を大幅に超えるような状況になれば、食糧の供給量もかなり重要なポイントとなります。

 以上のようなマクロ状況のなかで、日本があって欲しい状況とは何なのか。決めるべきことが、いくつかあります。全部とは言えませんが、いくつかをリスト化してみましたので、お考え下さい。

2050年の日本のあって欲しい状況
1.人口減少にはどう対処したいか。
2.日本全体のGDPは増加させるべきか。
3.一人あたりのGDPはどの数値が望ましいか。
4.外貨を稼ぐ産業を何にするか。
5.そもそも外貨を稼ぐ国であり続けるのか。
6.エネルギーの輸入をゼロにすれば、外貨を稼ぐ必要性はかなり落ちるが、エネルギー自給率をどのぐらいにするか。
7.食糧自給率はどのぐらいが望ましいか。
8.安全性をどこまで実現して欲しいか。例えば、食品の賞味期限表示は持続したいか。食品添加物は全廃にしたいか。
9.電力供給のための原発はどうするのか。
10.今世紀末には核融合が完成していて欲しいか。
11.消費税を何%にすべきか。
12.医学の進歩をどこまで望むか。例えば、現在の科学が現在のペースで進化すれば、がんで死ぬ人はいなくなるが、そのような状態を望むか。
13.米国の大学教授に、定年という概念はすでに無いが、日本の定年を平均的に何歳にしたいか。
14.年金制度は、今のままでは、消滅する以外になさそうだが、新しい年金制度としてどのような形が実現可能と考えるか。
15.そもそも、何歳まで生きたいか。
16.人生、何を目標として生きたいか。
17.日本の人口は、2050年で9000〜9500万人。移民をどう考えるか。
18.環境難民が出始める可能性が高いが、それを受け入れるか。
∞.。。。。。


 2050年に生きていることを望む人、望まなくても生きていると思う人はすべて、勿論、年齢的に限界はあるので、全員といっても無理ですが、このようなことを考え、かつ、希望を表明することが必須の状況になりつつあると思うのです。特に、この希望について、できるだけ多くの人と議論することが非常に重要だと思います。

 何のためか。直接的には、現在の政治を変えるためです。未来を真剣に考える選挙民が増えれば、政治とは自動的に変わるシステムだからです。

 勿論、「全く努力しないで、好き勝手に生きたい」という希望には、「輪廻転生を信じて、今の命を生きる以外に無い」とでも回答しますか。

 「何のためか」、のもう一つの答が、不幸な結末になってしまう企業、特に、中小企業をできるだけ減らしたいからです。


謹賀新年

 皆様にとって、本年が良い年になりますように。

                     2017年元旦