-------


    日本は「現状が分かっていない後進国!?」 10.25.2014

         温室効果ガス排出対策で日経新聞に掲載された発言について




 10月24日に行われた温室効果ガス排出削減に関する第1回合同専門家会議(正式名称は長いので最後に)が10月25日の日経新聞の2面で取り上げられ、筆者が次のように発言したと報道されている。『「日本は現状が分かっていない後進国だ」と批判した』

 新聞記事は新聞記事に過ぎないので、当然、この通りに発言した訳ではない。

 先日行われたICEFでエネルギー効率についてのコンカレントセッションの座長を務めたときの感想を次のように述べたのである。

 「日本の省エネは世界のトップだ。こう日本国民は考えているだろうけれど、確かに、個々の機器については、トップランナー制度のお陰もあって、トップかもしれないが、消費者を省エネ問題に取り込んでいるかどうかという観点から言えば、スマートメータを活用している米国の現状に追いつくだけも、2020年までかかるのではないか。正しい認識のためには、メディアの正しい報道が望まれる」

 やはり日本は島国である。しかも、他の国に軍事的に侵略されて支配者が変わったという経験が無い。すなわち、他国の状況を認識しないでも生活ができてきた国である。しかし、気候変動問題は、明らかに地球レベルの問題、人類全体の問題であって、日本人だからといって無視できるような問題ではない。しかし、そのような意識そのものがほとんど無い。

 より具体的には、EUが仕掛けてきた2020年以降の対策競争にどのように対応できるのかが大問題。現状では、極めて心許ない状況である。その根源的な問題は、政治と一般国民の認識不足にある。どちらが悪いのか。一般国民の認識が高ければ、政治にも反映されるはずである。政治が正しいメッセージを出していれば、一般国民の認識も高まる。まあ、両方に責任があるのだろう。認識不足であれば、当然、知識不足である。実際、この問題をまともに語ることができる日本人は人口の何%なのだろう。

 この問題の難しいところは何か。原発とか放射線とかを議論するときに、「肌感覚」が重要だという意見を述べる人が居るが、これは、現時点における自分の周囲1mの感覚ですべてが分かるという主張である。一方、気候変動問題は、最低でも2030年時点における地球全体の状況に対して、論理的・科学的な推定に基いてリスクを推測し、かつ、記述できる想像力を持っていなければ、正しい対応は、基本的に不可能である。脱「肌感覚」が必須である。

 現在、国内でもめている8000Bq/kg超えの指定廃棄物の最終処分地の問題の解決が遠いのも、「肌感覚」での反応が多く、科学的なリスクに基づく影響の推測が一般社会で行われていないからだろうと思っている。メディアもそのようなリスク情報を流す能力が無いのだから、一般社会の対応としては、ある意味、当然なのだけれど。

 この問題の根本的な解決には、日本にも、英国のGovernment Chief Scietific Advisor(政府主席科学顧問官)のような仕組みが必要なのではないか、と思う次第。
https://www.gov.uk/government/people/mark-walport


 最後に、略称「合同専門家会合」の正式名称を。

 中央環境審議会地球環境部会2020年以降の地球温暖化対策小委員会 産業構造審議会産業技術環境分科会地球環境小委員会約束草案検討ワーキングブループ 合同会合

 という訳で、「日経の記事の中の『私』が言うように、日本は確かに後進国かもしれない。なぜならば、世界の情勢を知らなさすぎるから」、を記述してみたいと思います。

 今回は、EU諸国の温室効果ガスとエネルギー諸事情を取り上げます。


C先生:さて、昨日の夕刊に出ているように、温室効果ガス削減について、EUが基本方針について合意したようだ。そこから行こう。

A君:EUは10月23日から24日の未明にかけて開催していた首脳会議において、2030年までに温室効果ガス排出量を1990年比で40%削減する目標で合意しました。

B君:今回のこの目標は、EUにとっても、かなり難しい目標だと思う。しかし、国際的な議論をリードすることで、EUの存在感を高めることが大きな目標なのだろう。

A君:再生可能エネルギーの比率を全体の27%以上にすること。エネルギー効率を当初の予測よりも27%改善させることでも合意したとのこと。

B君:全体の27%以上ということは、少なくとも現在日本で問題になっている太陽光発電をかなり抑えて、安定な洋上風力、太陽熱発電、などを主力にしないと、不安定さを抑えるための天然ガスタービンなどの発電機器が増えてしまう。まさか2020年で電池を大量導入することは非現実的だろうから。

A君:日経の記事によれば、ポーランドなどの「東欧」の一部は、慎重な対応を求めたとのこと。しかし、最終的に合意されました。

C先生:本題を外れるけれど、東欧というとどことどこの国を意味するのか、これが気になる。なぜなら、東欧と聞くと、なんとなく経済的に弱い、中欧と聞くと、それほどでもない、という感触が無いとも言えないので。

A君:実は、複雑なのです。国連の定義では、東欧とはポーランド、チェコ、スロバキア、ハンガリー、ルーマニア、ブルガリアと、それより東の国で、ウクライナ、ベラルーシ、ロシアのヨーロッパ部分まで含みます。旧ユーゴスラビアは、東南欧と定義されています。

B君:EUの定義は、東欧とは国連の定義の東欧と東南欧の和

A君:そして、これが日本の旅行会社の平均的な定義のようなので、このサイトでの定義も一応これに従っているのですが、実はCIAのWorld Factbookの定義ポーランド、スロバキア、ハンガリーは中欧と呼び、ルーマニアとブルガリア、旧ユーゴスラビアは、東南欧。そして、東欧とは、エストニア、ラトビア、リトアニア、ベラルーシ、ウクライナ、モルドバ。

C先生:なるほど。ところで、9月にポーランドに行ってみて、それほど経済的に弱い国のようには思えなかった。確かに、道路インフラは、多少整備不足のような気もしたけれど。

A君:経済力を何で示すか。これも難しい問題なのですが、本Webサイトでは、一人あたりのGDPを購買力平価換算PPPしたものを使うことが多いです。いわゆるGDP(PPP)です。しかし、この数値も、データの出処によって違うのですが。

B君:IMF、世界銀行、CIAでまたまた数値が違う。我々は、多くの場合にIMFの値を使うのだけれど、データベースを参照するときには、どうしても世界銀行のDBを使うことになる。

A君:本日は、IMFの2013年のデータをここから引用します。
http://en.wikipedia.org/wiki/List_of_countries_by_GDP_(PPP)_per_capita
 ポーランドですが、23273ドルです。チェコが27347ドルスロバキアが26616ドル。ちなみに、EU諸国での最上位がルクセンブルグの90333ドルですが、この国はほぼ完全な金融国家になってからの例外的存在なので、2位を見ると、オランダの46440ドル、そして、アイルランド、オーストリア、ドイツ、スウェーデン(43407ドル)と、このあたりまでは余り違わない。

B君:ポーランドのGDP(PPP)は、EUの主要国の、まあ、ほぼ半分ということになる。

A君:EU加盟国の最下位がブルガリアで16518ドル。これは、ちなみに、世界平均が14307ドルです。

B君:スロベニア(26616ドル)、マルタ(30567ドル)、キプロス(28748ドル)などは、EUの小さな国だけれど、チェコ並もしくはさらに上の国。問題を起こしたギリシャは25126ドル。

A君:さて、こんな状況ですが、各国の状況をどのように分析しますか。エネルギーの状況を知らないと、分析不能ですが。

B君:世銀のWorld Development Indicators=WDI
http://databank.worldbank.org/data/views/variableSelection/
selectvariables.aspx?source=world-development-indicators

というデータベース(無料)を駆使すれば、なんとでもなるのだけれど、やはり、相当な時間が掛かる。なんとか情報を探す方法でやるしかないのでは。

A君:まあそうしましょう。データを拾い集めて、テーブルでも作って、それで概要を議論します。

A君:一応完成。次の表で議論しましょう。データの年度なども少々バラバラですが。


表1 各国のエネルギー、温暖化ガス排出の状況 一人あたり、GDPあたりのデータ


A君:まず、この表の概要を説明します。上の欄に日本の1960年、2010年、2012年の状況が書かれています。1960年は、日本の経済成長がしばらく前の中国並の勢いであった時代。そして、2010年と2012年は、東日本大震災を挟んだ2年間ということです。もっとも1960年、2010年に数字があるのは、原発を含めた場合の自給率だけですが。

B君:原発を自給率に含めるかどうか、これにはいろいろな意見がある。厳密な意味での自給率では勿論ないのだけれど、日本の場合には、核燃料リサイクルを行うので実質的に自給ができるという考え方が一つ。

C先生:もう一つは、昨日、山地先生が説明していたことだが、核燃料の場合には、圧倒的にエネルギー密度が高いために備蓄性が全く違うから、石油、天然ガスのように、価格が大きく振れるという恐れが低いので、エネルギー安全保障の観点から自給率の算定に入れることが妥当という考え方だった。

B君:この考え方は初めて聞いたけれど、エネルギー自給率は、その元となる原理原則がエネルギー安全保障の確保なので、妥当な解釈かもしれない。

A君:ということで、1960年にはまだ原発は無いのですが、日本のエネルギー自給率は58%もあった。

C先生:これに貢献していたのが、先日、北海道に行ったときに訪れた夕張炭鉱などの石炭の生産だった。

A君:それが東日本大震災前には、原発を入れて、やっと18%だった。しかし、現時点では、6%という恐るべき低率になっている。

B君:今回は示さないけれども、電力のCO排出原単位がどんどんと上昇している。

A君:CO排出原単位を下げると期待されていた太陽光発電だけれど、前回の記事のように、予想を超えた悪徳事業者の活動のために困った状況になっている。10kW以下の家庭用を除けば、もうかなりの量が入ったという理解をすべきなのかもしれない。

B君:太陽エネルギーであれば、太陽熱発電を増やすことはあり得るかもしれない。現在、FITの対象になっていないけれど、家庭用・業務用などの太陽熱温水器の普及をもう一度考えなければならないかもしれない。

C先生:日本という国土は、ヨーロッパなどに比べれば、南に位置するので、家庭用・業務用として太陽熱の利用を考えるのも悪くはない。しかし、自宅に設置してみての経験からなのだが、なかなか元が取れないのも事実なのだ。

A君:さて、表1に戻りますが、ヨーロッパ各国の自給率ですが、もっとも低い国であるイタリアは、原発は無い国なのですが、それでも19%あって、日本の現時点の自給率の3倍以上。石炭は、以前は多少あったのですが、現在は生産量0。石油・天然ガスは多少生産量がある程度。ただし、可採年数は極めて短い。

B君:イタリアは、エネルギー安全保障で問題のある国だという一般的な理解になっているが、それでも、現時点だと日本よりは遥かにまし。それは水力を含めた再生可能エネルギーが10%ぐらいあるから。

A君:スペインもイタリアと並んでエネルギー自給率が低い国です。化石燃料については、石炭の生産が行われていますが、可採年数は80年程度とされています。石炭への依存度は一次エネルギー供給量ベースで9%ぐらいですから、まあ、状況は良くないです。

B君:そのため、再生可能エネルギーを積極的に増やしたのだろう。一次エネルギー供給量で、9%ぐらいが再生可能エネルギーになっている。

A君:加えて、トルコも、ヨーロッパではないですが、ちょっと見てみます。自給率が25%とやや低いです。これらの三ヶ国に対して、イギリスとポーランドの自給率が高い。その理由はイギリスは北海油田、ポーランドは石炭。
 しかし、ポーランドは、ウクライナ情勢の影響などを考慮すると、今後、ロシアからの天然ガスの輸入が不安定になるだろうことを考えて、原発の導入をする方向のようです。

B君:フランス・ドイツ・スイスはエネルギー自給率が40〜55%といったところ。その中身は、フランスが原子力、ドイツは褐炭と原子力、スイスは水力と原子力。要するに、この3ヶ国は原子力依存

A君:これらの国のうち、ドイツは原発からの離脱を表明しています。ドイツは、原発の替りとして、褐炭発電を増やそうとしていますが、今回発表のようにEUの温室効果ガスを2030年までに40%削減となると、かなり苦しいのではないですか。EU内部での排出量取引では、大量購入者の役割を果たすことになるのでは。

B君:スイスは、もしも原発の安全対策を完璧を期するとして、これに多大なコストが掛かるようであれば、原発から自然に離脱することになるという考え方のようだ。スイスはEUではないので、EUほどの削減を表明しないという選択肢を含めて、現時点で、考慮中だと思う。そして、フランスは、原発依存のまま、当面進むだろう。

A君:次に行きます。一次エネルギー供給量を下げて、温室効果ガスの排出も下げるという可能性もあるのですが、その比較のために、第3カラムがあります。日本の一人あたりの一次エネルギー供給量を100とした相対値で示してあります。

B君:これを見て皆さんが意外だと思われるのが、ドイツは一次エネルギー供給量が日本よりも多いということではないだろうか。省エネというとドイツも進んでいると思っている人が多いだろうから。

A君:ドイツはやはり工業国なのですね。イタリアなどは、製造業はかなり減ってしまった。そのため、多大なエネルギー消費は不必要になった。イギリスも同様で、現在でもある製造業は何か、と言えば、まあ、エアバスの工場はイギリスにあるけど、といった程度。

B君:イギリスは寒いので、暖房は石油とかガスとかの直炊きが多い。そのため、将来、エアコンなどで暖房を行うことを考えると、電力の必要量が2050年には、今の2倍になるとしているようだ。

A君:電力2倍はすごい。日本でも、電力の必要量は増加するのだけれど、そこまでは伸びないでしょう。日本での電力増加の原因は、自動車用の動力としての電力。町中では電力だけで走り、電力を使い切ったら、もしくは、郊外や高速道路では、ガソリンか天然ガスが、あるいは、新しい燃料も使って走る、といった車になる。要するに、プラグインハイブリッド=PHEVだ。2030年時点でも、日本を走っている多くの車がPHEVになっているだろう。ここでのPHEVには、BMWのi3のようなレンジエクステンダー型も含みます。

B君:自動車以外にも、北海道でも地中熱利用などによって、エアコンで冬を過ごすことが可能になっているのではないだろうか。それでも、英国のように電力需要が2倍になることはない。

A君:ということで、第4カラムに行きますが、ここが一人あたりのCO発生量です。日本は省エネ国家だから、世界のトップレベルだと思っておられたら、大間違い。現状では、日本を超した排出をしていて表にあるのは、ドイツだけ。

B君:いつ抜かれたのか。これを示すグラフが、昨日の合同会合の資料の中に見つかった。図2に示す。もっとも、これはCO2排出量だけではなく、温室効果ガス全体だけれど。



図2 一人あたりの温室効果ガス排出量の推移。

B君:これを見れば、もっとも努力をしている国は、実は、ドイツではなくて、英国だということになる。

A君:英国に追いつかれたのが、2010年なので、東日本大震災は関係ないのです。

B君:泣き言を言わせて貰えば、英国やドイツは、削減の基準年である1990年までは、ほとんど省エネなどという考え方を持っていない国だった。一方、日本は、1973年の石油ショックの影響を甚大に受けた貧エネ国だったから、その後の省エネ努力はすごかったのだ。そのため、日本の省エネは乾いた雑巾みたいなもので、いくら絞っても何も出ない、という言い訳が通用してきた。しかしヨーロッパはさるもので、1990年を削減の基準年にして、自国が数字上有利になるように、仕組みを作った。そして、産業構造を変えてしまった英国は、さらに数字の追求を行ってきた。

A君:ドイツは、繰り返しになりますが、工業国であること、それに、やや寒い国であることによって、それほど数字が進まない。しかし、図2での日本の最後の上り調子を見ると、そのうち抜かれる可能性も無いとは言えないですね。

B君:ヨーロッパ以外の国をみると、米国とカナダがもっと下げるべきだというのは正しいのだけれど、それ以外にこの図から分かることは、日本の現状では、原発の再稼働はなしといった制限を課すのはあり得ないぐらいきついのだ、ということだ。

A君:もしも原発再稼働なしで実現するとしたら、
(方法1)製造業を全く諦める。特に、製鉄、セメント、製紙、化学工業などの基幹産業をやめる。しかし、これでは、エネルギーの輸入すらできない国になる。
(方法2)エネルギー効率をさらに高める。EUが効率を27%高めるといっているけれど、すでに英国の暖房のケースで説明したように、EUには、まだまだ無駄が多い。日本でも、エネルギー・ゼロの建物も不可能ではないけれど、日本での省エネは、多くの場合、投資に見合わないので決して主流にはならない。

B君:方法1は、やはりあり得ないだろう。日本人が世界で最高に豊かな創造性をもつ民族にならないと、生きていけない

A君:具体的な例としてですが、日本にも、アップルのスチーブン・ジョブズが続々と出ないと。青色LEDのノーベル賞の方が、ジョブズのiPhoneなどの製品開発よりはすごいことなのだけれど、これで企業価値が世界トップレベルになった日本企業はいくつあったのか。

B君:方法2は、次のような帰結になるので、実現不可能だろう。なぜなら、日本のGDPが足らないから。
 エネルギー・ゼロのビルを強制することは、皆さんのお宅の場合で言うなら、太陽光発電必須、太陽熱温水機必須、寒冷地だと地中熱必須、そして、以下の品目の使用禁止:2010年以前製造の冷蔵庫・冷凍庫、現時点で5★以外の冷蔵庫LEDエッジ型バックライト液晶以外のテレビLED以外の照明灯油・ガスによる暖房北緯35.2度(名古屋)以北での単板ガラスのサッシ、実燃費が20km/L(US-EPAの総合燃費で45マイル/ガロン)を超さない乗用車。そして、エアコンの設定の温度は、冬には18℃、夏は29℃
 エネルギー・ゼロビルとは、こんな対策に加え、すべての家庭に3kW・3kWh程度以上の電池を備えること
と同等になる。これを実現すれば、省エネとしてもかなり良い状況にはなるけれど、余りにも費用負担が大きいので、とても皆さんがイエスとは言ってくれないだろう。

A君:最後に第5カラムですが、単位GDPを得るのに必要なエネルギー消費量です。これをみても、日本の0.1という数値は、高いとは言えないのです。スイスには完敗イギリス・イタリアにも負けている。ドイツとはほぼ同等。これで、説明終了。

B君:こんなエネルギー使用・温室効果ガス排出の状況なので、日本の現状は決して褒められる訳ではない。これで、2020〜2030年に原発を使えなかったら、温室効果ガス排出削減という地球市民としての責任を全く果たせない国になってしまう。

A君:しかし、2030年以降の枠組みがどうなるか分からないですが、原発は減らすことが日本国民の選択になっている訳ですから、化石燃料の使用に大幅な制限を受けているであろう2030年には、自然エネルギーが大量に導入されても良いという電力の構造とエネルギー供給体制をもった国に大変革をしなければならない。

B君:勿論、直流送電幹線の整備は必須。そのころ、送電網は国有化されているのかもしれないけれど、財政的な余裕はないから、当然、費用は電気代に含まれることになる。加えて、さきほど記述したような投資をすべての家庭で行っていくことが条件だろうね。特に、すべての家庭に3kW・3kWh以上ぐらいの出力と容量をもった電池がもっとも高く付くかもしれない。

A君:それは、どうせバッテリーを積んだ車になっているはずなので、それも併用するということでしょうね。

B君:バッテリーの寿命は、現状だと充電回数で決まるのだけれど、もしも家庭用に併用するとしたら、毎日充放電されるので、寿命がもっと長いバッテリーが必須かもしれない。技術革新も必要不可欠。その投資を誰がやるのか。

A君:家庭で必要な設備のコストですが、家の建設コストの一部だと思えば、なんとか受容できるとも言えるでしょうか。やはりダメでしょうか。

C先生:ということで、ヨーロッパのいくつかの国の状況を説明してきた。東日本大震災と福島第一原発事故を経験した国として、何かを学習して、この国だけができるはずの進化をしなければならないはずだったのに、何一つできていないのが現状だと思う。どうも、社会全体として、退化の方向を選択してしまったような気がする
 英国でGovernment Chief Scietific Advisorの制度ができたのは、1964年のことなのだけれど、その重要性が認識されたのは、例のBSE事件がきっかけだったと思う。1987年頃に牛に異常が見つかったが、二人の牧畜家が変異型クロイツフェルト・ヤコブ症で死亡したとされるのが1993年。そして、1994年には単に牛肉を食べただけの16歳の少女が死亡。これで一気に問題が噴出。政府としての危機管理に問題があったとされた。そして、政府からの一般社会へのコミュニケーションが科学的に、しかも、ワンボイスで行われるようになった。これが今の日本にもっとも必要な変化なのだ。
 自分の周りの、自国の状況だけを見て、固定概念に囚われるのではなく、他の国の状況を分析して、かつ様々な知恵を発見することで、理性によって選択される進化を目指さないことには、何も解決できない。勿論、地球環境問題の解決も無い。
 さて、これから半年ぐらいで、日本国民全体にどのようなポジティブな変化が起きるだろうか。