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  米国往復で考えた
  
 究極のスマートグリッド
  03.11.2012



 東日本大震災1周年。この大災害が無ければ、本日の記事もなかった。

 丸1年経ってみて、日本社会・日本人の特性を再確認させられた。

 個人的には、3点をなんとかしたい。
(1)50年先を見ない復興案は改善
(2)がれきを受け入れない全国自治体
(3)福島での放射線問題(様々)



 さて、2月27日に成田を出発して、シカゴ・オヘア空港の米国の入管の対応の悪さに呆れ果てつつも、無事に目的地フロリダ州オーランドでの国際会議ICPHSOに3日間、そして、ワシントン・ダレス空港からメリーランド州のべセスタに移動して、米国のCPSCを訪問して、新設されたラボを見学、3月4日(日)の午後5時に自宅に戻りました。

 その後の一週間が長かったこと。時差、蓄積疲労、なぜか相当に詰まったスケジュール。ということで、土曜日は休養日になりました。本日、日曜日も、なぜか眠い。しかも胃腸が万全ではないので、本日の記事は、多少短くしたいと思います。



 米国に出発する前に、環境省のプロジェクト、「2013年以降の対策・施策に関する検討小委員会」(かなり妙な名称だが、昨年までの中長期ロードマップ)で、2050年までのマクロフレームWGの報告を2月22日に発表して、米国に出かけた。当日、技術WG(赤井誠氏が座長、筆者は副座長)の発表もあった。

 その中身は相当先鋭的なものなので、果たして、こんなことが実現可能なのだろうか、と往復の飛行機の中で考えた。なんといっても、コストなどを考慮しないで、検討をするのがノルマだったので、何でも書けたのだ。

 一方、同じ小委員会のエネルギーWGは、2020年、2030年をコストを含めて、その実現性を検討するのがノルマのWGである。その結果は、3月2日の同委員会で発表がなされている。

 ちなみに、2月27日には、自動車WGも発表を行なっているが、いささか保守的な数値、恐らく、自動車工業会の意向を反映したものが発表されている。

 要するに、筆者が座長、副座長を務めた2つのWGは、先端的すぎるぐらい先端的なシナリオを書いてしまったようなので、不可能かもしれないということ、さらにこれを可能にする方法はあるのかどうか、再度考えてみたてみた、というところが本音である。



C先生:この名称の小委員会は、環境省の地球環境部会の下部に設置されたもので、昨年度は、かなり独立して動いていたのだが、今年度は地球環境部会のメンバーも、自由参加ということで、小委員会メンバーとほぼ同数が参加した形で行われている。

A君:しかし、会議が大きくなれば大きくなるほど、合意形成とは程遠い。

B君:WGのように、10名以下であれば、実質的な議論が可能であるが、他人数になればなるほど、自らの考え方を一方的に述べて終わりになる。

C先生:まあ、その通り。今回、ここで議論して貰いたいのは、これから提示する数枚の図を巡ってなのだが、こんな状況が果たして実現できるのだろうか、ということを検討して欲しいのだ。まあ、2050年というと、まだ40年近くある。今から40年前、1972年の日本の状況を考えれば、何ができても不思議ではないと思う一方で、例えば、電力系統などは、その時代と現時点でほとんど考え方は変わっていない。もしも、今後40年間、考え方が変わらないと、実現は不可能ではないか、と思うのだ。

A君:了解。その図というものを以下に示します。
 まず、最初の図です。



図1:2050年における一次エネルギー供給量

B君:なかなかにすごい自然エネルギーの導入量だ。なんと、日本全体での一次エネルギーの半分が自然エネルギーになっている。

A君:2050年に、現時点より温室効果ガスの排出量を80%削減すること、さらに、原子力をゼロにすること、以上の2点が大前提で書かれているので、こうならざるを得ないのです。

B君:1次エネルギーの供給量全体としては、40%ぐらい減っているのだろうか。

A君:そんな感じ。石炭の用途は、CCSをつけた火力発電があり、恐らく、それ以外には、製鉄用などの高温発生用。ガスは各種産業用、石油は火力発電と自動車用を想定している。

B君:次の図。このエネルギー種別最終エネルギー消費量というものが、発電電力量に対応したエネルギー源を示している。
図2 消費される電力量のエネルギー源を示す。約4割ぐらいが、不安定性のある太陽光、風力、海洋エネルギーになっている。

C先生:このぐらい自然エネルギーを大量に入れない限り、要するに5月のように冷暖房が不要で晴天が多い月には、かなりの自然エネルギーによる電力が、「発電されたが使われない」という状況になるぐらいの設備容量にしない限り、安定した電力供給をすることは不可能。

A君:電気が余る。これは普通の人にとって、初めて聞く状況だと思いますね。電気の厄介なところは、余ったからといって、貯めるのは大変で、捨てる方が合理的である可能性すらあるということ。

B君:ただし、すべてを捨てることにはならない。例えば、普段は高いバイオ燃料で走っているプラグインハイブリッド車にとって、電気が余っているときには、積極的に充電をするだろう。

A君:2050年の自動車の分布を次の図に。



図3 2050年までの新車販売数推移予測

これは、かなり多めに環境対応車が入ったシナリオとされているのですが、これでも若干のガソリン車があるという予測なのですが、実際にはほぼ100%対応車になっているのではないか、と個人的には思うのです。

B君:EVは電気自動車。その上にストロングHVというものとマイルドHVというものがあるけれど、ストロングはプリウス方式、マイルドはフィット・インサイト方式。PHVは、プラグインハイブリッドで、ストロングに電池を多めに搭載したもので、ストロングHVとの差は充電可能かどうかだけ。

A君:余った電気を溜めることができる自動車は、EV、PHV。

B君:加えて、FCV(燃料電池車)が多少入っているし、ここでは示さないけれども、トラックにもFCVが存在している。となると、水を余った電気で電気分解をして、水素を作って溜めておくという方法もあるかもしれない。

A君:水素そのままだと体積が大変なので、なんらかの液体に水素を化合させて、溜めるという方法論になるかもしれない。

B君:最後に、2050年での二酸化炭素排出量の図。



図4:かなりのCCS(炭素隔離貯留)が導入されている。この技術が本当に良い技術と言えるのか、また、実用になるのかどうか、かなりの検討を要する。


C先生:さて、そんなところで、先ほどの話題に戻って、自然エネルギーの導入量が相当大量になっていて、5月などでは、晴天になると電気が余る。これをどうするのか。

A君:やはりなんらかの方法で使わないと勿体無いというのが日本人的な発想。

B君:そこにスマートグリッドの出番。

C先生:この2050年になると、電気が余るということが起きて、そのときには、電気はほぼタダ。一方、台風が来て、太陽光発電が全部ダメになり、風力発電には風が強すぎるといった状況になると、自然エネルギーの発電量が激減。こうなると、電気の価格を安くしたり、高くすることが市場メカニズムというものだ、ということになる。

A君:電源側が不安定だと、需要側の仕組みも変えて、安定化を図るのが当然。

B君:それには、電気の販売価格をリアルタイムで変えるということが現実的だということになる。

A君:需要側は、電力がいくら以下になったら、自宅の電気自動車や電池に貯めこんで、電力がいくら以上になったら、電池の中の電力を売るか、ということを決めておく。さらに、洗濯をするにしても、IHヒータで何かを煮るときにも、例えば、ジャムのようなものであれば、いつ煮えても良いので、電気の価格が安くなったら動き出すように設定しておく。

B君:電力会社が供給する電力にしても、電圧と周波数は適当でも需要側は、今でも全く困らない。

A君:周波数や電圧のゆらぎを許容するが、ちょっとやそっとのことでは大停電にはならないというシステムにする。

B君:もっとも簡単なシステムとしては、基幹を直流化してしまう。それから家庭などへの配電網は交流で小型なものとする。

A君:図で示せば、こんな感じでしょうか。



図5 2050年頃の電力系統図。幹線は直流。最終需要家への給電は、交流網。

C先生:その考え方で良いとは思うのだが、電力の専門家に聞くと、発電機というものが持っているシワ伸ばし効果は大きい。例えば、新幹線への電力供給のシステムとして、発電機を1台回していると、急に電圧が低下すると慣性で発電ができるから好都合、といった考えであることが分かる。しかし、こちらが述べているものは、周波数も電圧もいくらでも揺らいで良いということで、考え方が伝わらない。

A君:ある種の固定概念なのでしょうか。

B君:やはりある地域を交流網で張るということが電力会社の名人芸。名人芸がいらないとなると、地域独占の現在のシステムが変わることになるからなのかもしれない。

C先生:スマートグリッドを使って電力市場をリアルタイムで市場原理制御の場にしてしまう。例えば、周波数に価格情報を持たせることを考えれば、インターネットなどのようにセキュリティーを考えなくて済むようになる。

A君:60Hz域での話として、例えば、60Hzだと電気が余っている、徐々に足らなくなると周波数を落とす。55Hzになると、極めて不足状態。

B君:需要家側は、60Hzの電力が供給されているときには電力価格も安価なので、大量の電気を使うように電池などの機器を設定する。55Hzになって、電気が不足状態になると価格が高くなるから、持っている電気を売るとか、もしも燃料電池コジェネを持っていたら、それを動かす。

C先生:こんなやりかたが実現できれば、電力不足もそれほど深刻にはならないだろう。このような仕組みをどう思うというと、これは市場原理主義型なので、所得格差を反映してい電力を使えない人がでる、という人がいるが、それは単純すぎる考え方。
 当然、現時点の水道の料金のように、契約電力が低ければ、相当価格を下げた電力が供給されるようになっている。
 むしろ問題は、金持ち側で、いくら高くしても、お金を払えば使って良いのだろう、という人がどのぐらいでるかが問題。電力が極端に不足状態になったら、契約電力量の多い需要家の電気料単価は、極端に高いという形にしないと無理かもしれない。