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  3Rを考えた材料規制? 11.23.2003
  −  日本版RoHSを考える
  



 前回の本HPでは、EUのRoHSを取り上げ、その仕組みについて説明すると同時に、その意義が不明であることなどを述べてきた。

 このRoHSも電子機器の廃棄との関連でできた規制である。廃電子機器といっても、かならずしも全部が全部埋め立てられる訳ではない。

 日本では、家電リサイクル法が施行されており、また、ヨーロッパでも、WEEEなる仕組みでリサイクルが始まる。

 もしも完全にリサイクルをすることができたら、RoHSシステムが必要だとは思えない。しかし、実際には完全リサイクルなどはない。最終的には、使用されたすべての材料は廃棄されると考えた方が良いぐらいである。

 こんな状況を勘案しつつ、使用材料にどのような規制を作ることが有り得るのかを考える。


C先生:新材料や新物質の開発をやっている立場の研究者にとっては、材料・物質になんらかの規制が掛かってくることは、面倒なこと以外の何物でもない。

A君:環境派から新しい機能は不要だと言われてしまうと、環境の状況に詳しくない開発者は、困惑する以外にないですからね。

B君:実際のところ、環境問題の解決にも、新機能をもった材料や物質は貢献をするはず。その例が、燃料電池用の材料や物質かもしれない。

C先生:現在の燃料電池自動車に使用されている燃料電池本体には、触媒として大量の白金が使用されている。もしも、燃料電池が本格的に普及するとしたら、白金類の価格が高騰することは目に見えている。

A君:よく燃料電池は大量生産すれば価格が下がると言われていますが、実際には、量産すればするほど白金類に対する需要が増えて、価格は上昇するのではないでしょうか。

B君:あらゆる機器が大量生産で価格が下がると思ったら大間違い。

C先生:先日、筑波大学の内山先生(元電力中研)の講演を聞かせてもらったが、風力発電の対費用効果も、どうもそうらしい。最初は、量産で機器の価格は下がるのだが、こちらは、設置場所が段々と条件が悪いところしか無くなるものだから、結果として費用あたりの発電量が下がる。すなわち、投資効率が下がって、発展を阻害するだろう、という説明だった。

A君:燃料電池が普及することが、本当に環境負荷が低下することになるかどうか、それ自身、若干問題ですが、それはそれとして、新しい触媒が開発されれば、すごいことになる。

B君:多くの局面で同様の課題がある。新しい材料や物質が開発されると、環境負荷が下がるという状況は多い。

C先生:一部の環境派が新しい機能はいらないというのは、間違っている。なんでも新しければ良いというものではないが、持続型の社会を形成するには、極限までの省エネルギーと省資源を実現する必要があるからだ。それには、科学技術のさらなる発展が必要不可欠。

A君:そのあたりに誤解が出てしまうのは、なんでも同じですね。遺伝子組み換えの場合だって、遺伝子組み換え自身が悪い訳ではない。その使い方が問題なのですが。

B君:新しい科学技術の発展そのものを不要だとする一派が居ることは事実なのだ。

C先生:例えば、有機野菜を健康によいといって売ることも科学技術を否定することに類似した行動だからね。マイナスイオンや除菌イオンよりはましだが。実際、有機農法は、環境の保全に役に立つと言えるが、無条件にそうではない。物事何事もそうだが、さまざまな場合を仮定して、もっと具体的に検討をする必要がある。

A君:そろそろ本題に入らないと。

C先生:そうだった。3Rというものを追求するために、どのような材料・物質に対する規制があるのが望ましいか。それともいかなる規制が無いことが望ましいか。

A君:実際、この議論は難しいのです。なぜならば、それこそ、製品によって、リサイクルが行われるといってもその状況が違う。廃棄されるといっても、その形も違う。もちろん、リサイクル率も違う。

B君:ある程度、使用後の製品の流れ方を仮定するしかない。例えば、次の2種類について検討をして、実際には、これらの混合であると考えることが良いのではないか。
(1)すべての製品が破砕処理され廃棄される。焼却される場合も、焼却灰は埋め立て処理される。
(2)すべての製品がリサイクルされ、埋め立てには直接回らない。
 

A君:ということは、(1)、(2)に対して、望ましい規制を考え、その中間的な処理がされている製品については、(1)&(2)の規制が掛かると考えるのですかね。

B君:実際のところ、ほとんどすべての製品は、(1)と(2)の中間にあるから、望ましい規制は、(1)&(2)であるということになるのかもしれない。

C先生:まあ、そんな方針で行こう。

A君:まず、すべての製品が破砕処理され、あるいは、焼却されて埋め立てというケースですが、その場合には、製品に含まれるとなんらかの困難とか将来世代への影響が予想されるのは、
(a)埋め立て時に困る有害物質:埋め立て地から環境に放出されて、水質汚濁や大気汚染を起こす可能性のある物質
(b)焼却時に有害物質を出す可能性のある物質
(c)オゾン層破壊物質、強烈な地球温暖化物質
(d)枯渇性がある物質で、代替が困難な物質

B君:そんなところだろう。
(a)にかかわる法律は、何種類もある。例えば、最終処分地関連、環境基準、排水基準、土壌汚染防止法。

A君:具体的に物質レベルで候補を上げると、水銀、カドミウム、鉛、セレン、六価クロム、銅、亜鉛、溶解性鉄、溶解性マンガン、砒素、シアン、ホウ素、フッ素、アンモニア、アンモニウム化合物、亜硝酸化合物、硝酸化合物、リン、PCB、フェノール、トリクロロエチレンなどの有機塩素系溶剤類、ベンゼン、鉱油類、動植物油

C先生:水道水の基準も関係するとすると、またまた物質数が増える。例えば、ニッケル、モリブデン、ウラン、アルミニウム、バリウム

B君:これらの化合物を使った場合、破砕して埋め立てることは、確かにかなり難しい。溶出したこれらの物質を処理する設備が絶対に必要になる。勿論、規則上もそのような処理がなされているはず。

A君:RoHS対象の4種の重金属、水銀、カドミウム、鉛、六価クロムは、全部含まれていますね。毒性ある廃棄物という観点からの規制なのでしょう。

C先生:最終処分地に埋め立てたといってもそれが本当に「最終」処分地なのか、遠い将来、掘り返す可能性は本当に無いのか、ということだろう。

A君:ただし、これらの元素類は、いずれも地殻構成元素ですから、自然濃度はあって、使用量によっては、余り問題にならないものもあります。

C先生:それも、500年といった長期間での蓄積を考えると、自然濃度の倍程度に抑えたいという話なのだろう。

B君:前回検討した鉛の場合ですが、地殻存在量が13ppm、自然レベルと言えるのが、大体30ppmまで。ところが、四エチル鉛をガソリンの添加剤に使用していたもので5000ppmといった土壌中の濃度の場所もあるという。しかし、それで健康被害が出るか、というと、それはなんとも言えない。特に、鉛の場合には、植物による濃縮が無いと考えてよいからだ。

A君:それに、表層の汚染だけであれば、雨によって徐々に深層に移るといいます。

C先生:その場合でも、500年間後に、また掘り返すかもしれない。というのがEU的発想なのだろう。

A君:ということは、やはり、埋め立てを前提とする製品には、これらの製品をできるだけ使わない方が良いということになりますか。

B君:全く使わないということではなくて、量をかなり減らそうということなのかもしれない。

C先生:また条件を再録すると、
(a)埋め立て時に困る有害物質:埋め立て地から環境に放出されて、水質汚濁や大気汚染を起こす可能性のある物質
(b)焼却時に有害物質を出す可能性のある物質
(c)オゾン層破壊物質、強烈な地球温暖化物質
(d)枯渇性がある物質で、代替が困難な物質
 そして、(b)に行こう。

A君:焼却時に有害物質を出す可能性のあるという条件は、これはダイオキシン問題でかなり問題になったのですが、まあ、解決したとも言える問題ですね。

B君:炭素、水素、酸素だけからできている物質でも、例えば、都市ガスのような物質でも、不完全燃焼をすれば、ホルムアルデヒドのような有害物がでる。

A君:要するに、何を燃やすかよりは、どのように燃やすかの問題。

B君:落ち葉などは、神社かどこかで、ご近所が集まって焚き火をして焼き芋を作るといった古き良き伝統を守る方が、地域コミュニティーを作るネタになって、総合的な効果が高いと思う。これも燃やし方の問題だとも言えるが。

C先生:このジャンルに臭素系の難燃剤を入れるのか、という議論がある。

A君:臭素系難燃剤は難分解性でしかも蓄積性があって、だから、それで駄目なんだという意見もある。

B君:臭素系難燃剤の話は、RoHSでもなんとなくきっちりと決まったとも言えない。むしろ、次回、RoHSの話題に戻ったときに議論すべきでは。

C先生:それで良いだろう。少なくとも、臭素系難燃剤が、臭素化ダイオキシンを生成するからという議論をすることは、少なくとも、今の日本では無さそうに思える。

A君:それでは、(c)オゾン層破壊物質、強烈な地球温暖化物質に行きますか。

B君:これらは、フロン類、特定フロンから代替フロンまで。

C先生:余り放出はしたくない。しかし、半導体プロセスなどで温暖化係数の馬鹿でかいフロン類が放出されていたりするので、製品としてどうだ、ということもバランスの問題。全く使わないというよりも、回収破壊を義務化する方がまとものように思える。

A君:今後、温暖化などを考えると、やはり熱効率のようなものが問題になる。冷媒の役割も重要で、フロン類の使用も禁止よりは、回収義務化の方向でしょう。

B君:となると、次は、(d)枯渇性がある物質で、代替が困難な物質

C先生:この枯渇性というものは、結構難しい。なぜなら、すべての元素は枯渇性があるとも言えるし、元素は不滅なのだから、枯渇はしないとも言える。

A君:そんな哲学的なことを言わなくても、現在、可採年数が50年以下だと枯渇の可能性があると言えばよいのでは。

B君:たしかに可採年数が50年以上あると、市場価格が下がるだけだから、探鉱をするということは無い。

C先生:代替性というものも重要で、例えば、はんだであれば、かなり様々な組成のものがありうるが、例えば、液晶などに使用する透明伝導膜となると、インジウム、スズ、亜鉛、を含まないものは考えにくい。カドミウムもありえるかもしれないが。

A君:その辺は、材料学をかなりこなしていないと、感覚が無いでしょうね。

B君:そんなことを考えて、枯渇性のありそうな元素をリストアップしてみる。元素:可採年数のリストだ。
 金 : 33年
 銀 : 26年
 銅 : 45年
 インジウム : 24年
 ストロンチウム : 38年
 タリウム  : 43年
 アンチモン  : 43年


C先生:これで、条件の(a)〜(d)が一応終わった。この条件を満たすような製品は、やはり単純に破砕して、あるいは、焼却して埋め立てとは言いにくい。

A君:これまで化石燃料が枯渇性であるということを無視していますね。

B君:プラスチックか。燃料として使われている石油を考えると、プラスチックの量はたいしたことはないという見方もあるが。

A君:しかし、それにしても、今後25年から50年間の間に、石油供給に関しては何か起きるとすれば、無視するのは難しい。

B君:やはりバイオプラスチックか。

C先生:トヨタが本気かどうか不明ながらバイオプラスチックを手がけているのも、やはり化石燃料枯渇のリスクと自動車の社会的責任を考えてのことなのだろう。

A君:最悪なのは、やはりプラスチックの単純埋め立て。これをやっているようだと、他の枯渇性を議論する資格も、また、元素の有害性で500年先を考えるのもおかしいような気がする。

B君:ヨーロッパ諸国は、まだ焼却に対する理解が乏しい。本当は、焼却ではなくて、エネルギー回収なんだが。

A君:焼却するにしても、要するに製品の回収はある程度不可欠ということになりますね。

C先生:ということで、最初に述べた
(1)すべての製品が破砕処理され廃棄される。焼却される場合も、焼却灰は埋め立て処理される。
(2)すべての製品がリサイクルされ、埋め立てには直接回らない。

の2番目の条件で、どんなことになるか議論をしてみよう。

A君:となるとリサイクルができなくなる理由ですか。すべてのリサイクルが水平に行われる訳ではない。むしろ、すべてカスケードリサイクルだと考えた方が良い。

B君:カスケードとは、多段の滝みたいなイメージで、段々と最後の滝つぼまで落ちる。その間に何回使えるかが問題になる。

A君:なるべく劣化させないことが重要。その最大の要因は、不純物の混入。

B君:という訳で、材料に混じると劣化が起きる物質とか元素をリストアップすることになる。

A君:その有名どころが、鉄への銅の混入。ところが、現在の自動車には、パワーシートだとか、いろいろな小型モーターが組み込まれている。配線も非常に多い。だから、銅が混じりやすい。

B君:アルミ缶の場合だと、以前使われていた酸化チタンの白いバックコートがリサイクルの邪魔をする。

C先生:そんなリストを完全に作るのは不可能に近いが、母材:不純物という組み合わせで、簡単なリストを作って見たい。

A君:了解。まだ仮のリストです。
 母材 : 不純物
 鉄  : 銅
 鉄  : スズ
 鉄  : アンチモン
 鉄  : モリブデン
 アルミ: 亜鉛
 アルミ: チタン
 アルミ: 銅
 銅  : 鉛
 銅  : ニッケル
 銅  : 鉄

B君:鉄と銅はお互いに駄目か。

C先生:プラスチックの場合は、母材という考え方がそもそも難しくなる。同じ種類のプラスチック、例えば、スチレンの場合であっても、重合度が違い、添加物が違うという問題が出てくる。

A君:もっともポリ塩化ビニルの場合には、樹脂のイオン結合性が強いので、余り問題にならないようですが。

B君:しかし、プラスチックの場合には、様々な添加剤があるとどれも難しくなるということにしておくべきだ。

C先生:難燃剤を入れたプラスチックは、やはりそのような用途向けになるということはその通り。

A君:プラスチックのリサイクルは、むしろ、極例外的と考えるべきではないですか。

B君:プラスチックを製品重量の10%以上使った製品は枯渇性が高いから製造禁止とか言えるか。

A君:エネルギー回収ができないプラスチックは使用禁止とか。

C先生:まあ冗談は止めて、塩ビ類、特に、硬質、PETボトル、PETシート、スチレン硬質、スチレン発泡、あとは、ABSとかASはリサイクル。それ以外は、焼却処理なのだが、課徴金をとって対応。こんな考え方が、枯渇性を考えたときには必要なことになるのかもしれない。まあ、25年後かもしれないが。

A君:結局のところ、(2)の条件は、設計段階でなんらかの対応を決めることが可能なのではないでしょうか。

B君:これまでのところ、様々な条件が出てきた。こうなると、規制の対象が相当多くなる。

C先生:ということになると、代替品が重要になる。元素レベルだとそう簡単に代替品があるという訳ではないが、有機物質だと、いくらでもといっても良いぐらい、代替品が出てくる。そのときには、代替品に十分なリスクアセスを義務化しないと、危険だからといって規制したことが却って逆効果になりかねない。

A君:実際のところ、このような規制を掛ける場合には、製品によって、これとこれは考えなさい、という形でないと、対応が難しくなりますね。

B君:例えば、電子レンジの場合を考えよう。新たに電子レンジを作る場合、こんな物質は規制がありますよ、ということをリストとして作る。ただし、100%リサイクルを保障するようなシステムをもっていれば、有害性が原因の規制はかなりゆるくなる。

A君:そして、100%リサイクルではない場合には、いくつかの規制物質がリストに載っているが、もしも、その物質の使用を回避しようとすると、今度は、物質リストを全部見て、選択をしなければならないといった仕組みでしょうか。

C先生:業界全体として、この製品はリサイクルシステムを作ります、といった動きを支援することにならないと意味が薄れる。

A君:一応まとめに入りますか。要するに、有害性がある物質群は、埋め立て処理を前提とする製品の場合には適用される。これはある程度仕方が無いこと。しかし、100%リサイクルする、といっても多少の漏れは仕方が無いので、フォロー体制を持っていれば良いことにするのですが、そんなシステムを持っていれば、有害物に対する規制は緩めにする。ただし、リサイクルを最初から考えた阻害物質をできるだけ使わないか、リサイクル可能な製品設計を行う。

B君:RoHSに含まれる4種類の重金属も、現状で、家電四品目の場合には、少なくとも日本国内の状況から言えば、ほとんど効果の無い規制だと言えるが、使用済みのテレビが中国に輸出されていることを考えると、中国のための規制というのならありうる。

C先生:さて、現在、OA業界や家電業界などで、グリーン調達共通化ガイドラインなるものができていて、リストA、リストBというものができている。

グリーン調達共通化ガイドライン

リストA:使用を制限している物質群15種
カドミウム、六価クロム、鉛、水銀、トリブチルスズ類、PBB、PBDE、ポリ塩化ナフタレン、短鎖型塩化パラフィン、アスベスト類、アゾ染料、オゾン層破壊物質、放射性物質。

リストB:いわゆる有害物質リストではありません、というコメントあり
アンチモン、ヒ素、ベリリウム、ビスマス、ニッケル、セレン、マグネシウム、臭素系難燃剤(PBB、PBDE)を除く、ポリ塩化ビニル、フタル酸エステル、銅および化合物、金および化合物、パラジウムおよび化合物、銀および化合物。

A君:そのリストBが全く意味不明でおかしいですね。

B君:「銅を使うな」ということと、「塩ビを使うな」ということが同じレベル。

C先生:そんな読み方ではないと思うよ。いわゆる世評が悪い物質をリストアップして、その目くらましとして、銅と金・銀・パラジウムを付け加えたのではないか。

A君:要するに、すでに禁止を表明してしまった企業の顔を立てるために、こんなリストを作らざるを得なかった。

B君:相当馬鹿げているが、なんとなくありそうな感じ。

C先生:いまさらだが、B君が言ったこと、「銅を使うな」という程度の意味しかない、と読むのは非常に面白い。リストBの物質を止めたところで、もともとほとんど意味が無い。まあ、ヒ素単体ならあるかもしれないが、どうせガリヒ素だろうから。

A君:こんな馬鹿げたリストを粉砕するためにも、きちんとしたリストを作ることが必要なのかもしれませんね。

B君:3Rを推進するためのリストは、あると一般社会に良い影響を与えることができるのではないだろうか。

C先生:使用禁止といった規制にする必要は無いかもしれない。むしろ、報告義務を持たせるといった自主的取組が良いのかもしれない。