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  脱温暖化アクションリスト 全体編 07.09.2006
     



 先日、SPEEED研究会なるものに出席した。これは、山本良一先生が代表幹事になっている東大生産研の特別研究会である。実体は、企業関係者を対象とした勉強会で、今回参加したものは年1回行われる特別合宿セミナーで、箱根芦ノ湖の山のホテルで開催された。

 まる2日間の講演会プラス企業関係者の報告会1日という結構ハードなプランであった。

 そこで、例によって例のような話をしてきた訳だが、やはりこの場の雰囲気は、世間一般は危機感が余りにも不足しているのではないか、というものであった。


C先生:SPEEEDという文字をみると、SPEED98(環境ホルモンのリストのようなもの)を考えてしまうのは考えすぎか。

A君:SPEEEDとは、Special Project on Eco-Efficiency and Eco-Designの略みたいですよ。

B君:SPEEEDには、2006年は、56社が参加している。

C先生:今回、地球環境全権大使の西村六善氏の講演が目玉だった。

A君:温暖化防止を国際的な枠組みに持っていくこと、具体的には、2013年以降にポスト京都としてどのような枠組みを持つか、これは非常に難しい国際交渉になる。

B君:米国のブッシュ政権のように、京都議定書のような温暖化対策を取ることは、自国の経済的発展にとって有害だというスタンスを取り続ける国がある。カナダの新政権もそうだ。オーストラリアもそうだ。

A君:それに加えて、中国、インド、ブラジルなどの国を枠組みに入れるのは、それこそ、大変。

B君:温暖化がものすごく深刻であるという元米国のゴア副大統領の本などが一方では、出回っている。しかし、日本の市民社会には、伝わっている情報が質的に十分ではないのか、危機感が共有されていないという共通理解だった。

C先生:EUが人為的原因による温暖化を2℃以内に抑えることを合意し、また、石油の供給危機が、予想よりも早いという予想がでたりしている。それを考えると、確かに、日本における一般社会の危機感は全く無いようにも見える。

A君:これは、SPEEEDではなく、SPEED98関係の話ですが、環境屋というものが、環境ホルモン、ダイオキシンなどで、世間を脅かすことばかりやってきたので、もはや環境屋の言うことは信用できない、と思われていて、今回のような場合にも、信じれらていないのではないでしょうか。

B君:環境ホルモン問題のときに、これで将来日本には子どもができなくなる、といった原稿を書いて印税を稼いだ自称「環境の専門家」が多かった。反省の弁は、余り聞かれない。環境医学者は、おのれの俯瞰的環境観の無さに要反省。

C先生:昔は、というと懐古趣味的ではあるが、文部省の特別研究や重点領域研究が走っていたときの環境医学者は、きわめて、俯瞰的な見解を持っていたのだが、最近、俯瞰的なものの見方を勉強したくても、できないのが実態なのだろう。俯瞰的な見方は、多くの他の分野の研究者と交流することによって、出来上がるものなので。

A君:環境ホルモンについて、未来世代に対する警鐘を鳴らしたということで、テオ・コルボーンは、旭硝子財団からブループラネット賞を貰っていますしね。もっとも、最近では、米国などでコルボーン批判が公然と行われるようになった。

B君:ダイオキシンについてもしかり。未だにダイオキシンの有害性を問題にして研究費を申請する研究者も居る。いくら、ネズミで試験をしたところで、何も分かるとも思えないのに。

C先生:そういえば、個人的なことで恐縮だが、私との交換書簡を当方からの許可を全く得ないで自分のWebに公開している国立環境研から東大に移ったダイオキシンの研究者も居る。俯瞰的見解が無いことはもとより、都合の良いところだけを公開するといったモラルの無さはいかがなものか。あの書簡には、まだまだ続きがある。この一方的な公開に対して、公的な対応を例えば東大医学部長に求めることも十分に可能なのだ。しかし、当方としては、ご本人の名誉を考えて、そういう対応をしていないのだ。

A君:話題を変えましょう。怖い怖いと書く脅かし屋的メディアや脅かし屋の作家を求めているのは、実は、市民社会だと思う。

B君:いや、それを求めているのは、メディアの偉い層なのでは。例えば、新聞で言えばデスクとか。テレビで言えば、プロデューサとか。「売れてなんぼ」、「視聴率でなんぼ」の世界。

C先生:ということで、今回の話の本論はここから始まる。EUは合意したようだが、人工的な原因による温暖化を本当に2℃以内に抑えなければならないという科学的な証拠が確実にあるという訳ではない。

A君:しかし、一方で、人間活動が原因である温暖化が科学的に確実ということは、まず、90%以上固まった。

B君:山本良一先生は、99%固まったと言う。渡辺正先生は、まだ20(??)%ぐらいではないか、という感触を主張中。

C先生:90%か99%かという違いに意味があるかどうかは疑問だが、少なくとも言えることは、2001年に発行されたIPCCの報告書以来、たった5年間で、科学的にみて相当な知見が蓄積された。そのいずれもが、温暖化が科学的に証明されうるとする知見のように見える。2001年当時で、個人的には70%ほど確実だと思っていた。それ以降積み重なった知見で、確実性が高くなったのは事実だ。

A君:これは東大気候センターの住先生の講演を聴いたときのデータからの解釈ですが、地球の温度は1800年代から連続して地球自身の揺らぎが原因で上昇している。しかし、その揺らぎの方向が、実は、1960年には反転していて、それ以来、短期的な寒冷化時代に入ったはず。しかし、観測されるデータは、温暖化傾向でしかない。それは、人工的な理由による温暖化がかなり強烈に起きているからだ。こんな解釈できる計算結果があります[住 明正 2004年 地球温暖化研究イニシャティブ報告会]。

B君:ということは、極めて怖いことだ。地球の短期的な揺らぎがまた温暖化側に振れれば、気候変動はとんでもないことになる。しかし、逆に言えば、もしも地球の揺らぎがさら大きく寒冷側に振れれば、温暖化が実際には起きない可能性もゼロではない。

C先生:もともと地球の温度というものを何で表現するか、ということになると、それはもともと大変難しい問題だ。ヒトの体温とは違うのだ。IPCCが使ってきた、マンのホッケースティック型の温度変化に異議を唱える人も居た。未だに居るというべきかもしれない。

A君:グリーンランドの氷が解けている、北極海の氷が無くなっている。これは事実。その意味で温暖化は確実に起きている。だからといって、人工的な原因による温暖化が起きているという結論にならない部分がどうしても、僅かに残る。

B君:それを1%以下と見るか、10%もあると見るか、それは難しいところ。

A君:個人的に90%に固執するつもりは全く無いのです。もともと90%ではなくて、90%以上だと言っているので。ただ、しつこいようですが、多少の弁明を。氷の融解と再氷結という現象は、水に不純物が無ければ丁度0℃で起きる現象なので、非常に狭い温度の変化でも目立つことではある。例えば、マイナス0.05℃からプラス0.05℃への、たった0.1℃の変化でも氷にとっては、非常に大きな変化ですから。

B君:気温の上昇が、氷にそんなに直接的に反映する訳でもない。そのあたりが、どこまでモデル化されているのだろうか。

C先生:そのモデルというものに、好き嫌いがあるのが、もう一つの問題点。研究者としてのキャリアを見ると、山本良一先生も私個人も、コンピュータシミュレーションを使って論文を書くことがあった。だから、その手法に対して余り抵抗は無い。むしろ、予測手法として高く評価している。しかし、コンピュータシミュレーションは、やはりコンピュータシミュレーションに過ぎないというスタンスを取ることも、一つの立場ではある。

A君:なかなか本論に入れない。

B君:社会一般の反応を見ても、過去5年間で、温暖化の信憑性が高まったという理解が共有されていない。それ自身は問題だと思う。

C先生:そうなのだ。色々な政策的対応を考えたとしても、その対策が効果を発揮するには、ある一定の時間が掛かる。だから、未来の方向性が前よりも確実に見えるようになったら、その方向性を施策に確実に組み込む努力が必要不可欠だ。
 そこで今後2年以内に始めないと、社会全体が、確実に誤った方向に行ってしまいそうな政策的な変更を列挙してみたい。そして、次には、5年以内に始めないといけないことを考え、そして、最後には10年以内にはじめなければいけないことを考えたい。

A君:果たしてそんなに旨く議論が進行するのだろうか。

B君:それに議論のやり方が問題だ。脱温暖化だけを問題にするのか、それとも、グローバルな持続可能性を対象にするのか。それとも、日本国内だけの問題も議論するのか。

A君:脱温暖化だけを議論するのでは、やはり問題の一部の解決にしかならない。すべても環境問題は、複雑かつ密接に絡み合っていますので、やはり、持続可能性全体を問題にしつつ、グローバルサステイナビリティとローカルサステイナビリティを考える。

B君:確かにそうなのだ。脱温暖化だけを考えれば良いのなら、あらゆる排気ガス中の二酸化炭素を無理やりに分離して、海洋隔離・地中隔離をすれば良いだけだ。これをやると、エネルギー消費量が30%増になってしまうが、それは無視することになる。

C先生:日本のような国は、毎回述べているように、グローバルな持続可能性を維持することがむしろ決定的に必要で、それが保証できないと、いかに国内だけが持続可能だと言っても、実際には持続可能ではなくて、崩壊してしまう。

A君:逆に、アフリカのような国だと、グローバルにいくら持続可能性が実現されたとしても、自国内で、持続不可能な状況があれば、その国は崩壊に向かう

B君:それは経済力の差だと言える。日本の場合には、国内の持続可能性だけを議論しても、本当の意味での持続可能性の議論にはならない。

C先生:こうしよう。まずは、グローバルな持続可能性を問題にする。そこには、気候変動、食糧供給、エネルギー、資源、水資源などに関わる持続可能性を含む。まず、これに対する日本国内で必要な施策をリストアップする。問題意識としては、ここ2年以内に着手しないと、手遅れになる可能性があるもの。

A君:そして、その次に日本国内だけのローカルな持続可能性の問題も、考える。

B君:そんなにくっきりとした議論ができるとは思えない。まあ、修正しつつやるのだろう。

C先生:では、リストの作成だが、まずは、項目というか分類を作る。すべて、温暖化に直接的・間接的に関わる事項である。

1.脱温暖化
2.脱食糧供給不安(含む水資源)
3.エネルギー・資源関係
4.世界人口問題(含む貧困問題)
5.以上すべてに関わること

B君:本来ならば、5.を先頭にもって行きたいが、議論が錯綜しそうなので、まあ、良いことにしよう。

A君:それでは、行きます。すべて日本国内だけで決定できる施策です

1.脱温暖化
◎脱化石燃料社会のビジョン共有
◎再生可能エネルギーの高度導入のための基本方針の決定
◎超脱温暖化技術への開発投資の拡大
◎二酸化炭素の隔離技術に対する方針の決定(やる、やらない、のいずれか)
◎未来世代リスクの認識力の育成(温暖化リスクと他のリスクの同一レベルで把握する能力養成)

2.脱食糧供給不安(含む水資源)
◎食糧100%自給シナリオの構築
◎食物廃棄物の90%削減の実現方法
◎輸入食糧の環境負荷(水使用量を含む)表示開始

3.エネルギー・資源関係
◎化石燃料税の創設
◎都市交通でのロードプライシング
◎高環境負荷車への大気税の課税
◎資源の過剰利用を抑える国際的システムの構築(含む国際的リサイクルシステム)
◎無駄な資源利用の撲滅(使い捨て品への環境負荷主張の強制)
◎バイオマスをアジアから調達するための国際関係構築検討

4.世界人口問題(含む貧困問題)
◎世界人口自然減を目指すODA方針の策定
◎地球環境税のための課税システム(航空機利用、為替取引、資本の国際間移動、などに課税)
◎アフリカにおける教育システムへの直接貢献のための全く新しい提案
◎世界的な地球生態系の適切な保全策

5.以上すべてに関わること
◎大量消費型経済価値観からの完全なる離脱(教育の開始)
◎ゼロリスク社会が存在しないことの教育開始
◎日本産業の向う50年間のビジョン策定(日本は何で食うの?)
◎持続可能な社会構築のための教育カリキュラムの中等教育への導入
◎子どもを社会全体として育てる意識の共有とそのシステムの導入
◎欧米型経済理論の不完全さを全面的な指摘(経済学全体、特に、成長理論の再構築)
◎公平な税制の導入

B君:大体終わったようだ。

C先生:これで良いのかどうか、個々には次回にでも検討するが、その前に、どんな方針でこれを考えるべきなのか、その確認が必要だ。

A君:根本的なと言えるのかどうか、いずれにしても、基本的な方針ですが、大体、以下のようなことを考えて作って見ました。
(あ)未来世代との調停が必須
(い)中国、ブラジルなどといった国への対処方法
(う)これまでの経済状態との連続性は保つこと
(え)受益者は関係する環境負荷削減の責任を負うこと
(お)2050年程度までの予測を施策策定に入れること
(か)教育の重要性の再確認
(き)新規負担ができる層の認識
(け)20世紀型の思い込みからの離脱
(こ)すべての人々に長期的視野の重要性を認識してもらう

B君:まあ、これで全部か、と言われるとなんとも言えないが、(あ)〜(こ)の各項目がなぜ必要かをまず、議論し、そして、それがなぜ、上のような施策群に繋がるのか、その論理的な構造を議論する、といった作業が必要だ。

C先生:すでに、1回分を超しているように思える。そこで、今、B君が述べたこと以外に、次回以降に付け加えるべきことを述べて、宿題としたい。

A君:まずは、ローカルな持続可能性の検討が必須です。

B君:当たり前だ。しかし、こうしてみると、ローカルな環境面での持続可能性のために項目は比較的少ないように思えてきた。

A君:また、項目で考えてみますと、、
6.地域の持続可能性と生態系
7.過去の負の遺産の解消
8.NIMBY問題への回答
9.日本の移民政策のあり方
10.女性の活力を増大させる方策
11.社会全体の公平性を担保する方策
12.官からのサービスをどこまで整備するのか

などといったことを考慮する必要があるようです。

B君:おいおい、環境問題か、それが。まあ、政治・経済全部に関係することになってしまっている。

C先生:まあ、できるところまでやるのが、われわれの責任。項目が余りにも広範囲のようだが、それで良いのでは。

A君:さらに言えば、国際関係をどうするか、という日本だけでは考えられない要素も多いですよ。

13.現在の米国や中国のように巨大国が我侭を言い出したとき、どうやってそれを糾すのか。
14.有限の資源を国際間でどのように分配するのか。資本主義的分配が原理なのか。
15.WTOの機能がグローバリゼーションにあるとして、それは本当に正解なのか。
16.イラクのような場合に、政治的な安定を求めるとして、民主主義が本当に解なのか。
17.最貧国が多少発展を始めたとき、武器を先進国が供給して代理戦争が始まるという歴史的事実があるが、これをどういう枠組みで抑えるのか。
18.先進国・中進国から途上国への武器の輸出は、全面的に禁止すべきだが、それが可能か。
19.一神教というものは、欠陥宗教なのではないか。宗教戦争というものの歴史を見ると、そう思わざるを得ない。

B君:これらは、今回の検討から外すべきだろう。

C先生:まあ、こんな国際的な問題があることを意識だけはしておくことだろう。