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 脱温暖化アクションリスト2 個別編1 07.16.2006
     



 前回、脱温暖化のために必要な、グローバルな視点からの国内施策のリストを作り、また、同時に、ローカルなことについては、その持つべき視点までを議論した。

 今回は、なぜ、前回提案したような施策が必要なのか、具体的にどのような効果を狙っているのか、その議論を進めてみたい。


C先生:前回は、前置きの議論が長すぎて、具体的な個々の施策の検討が行われていない。今回、その部分をなんとかやってみたい。
 まずは、これが脱温暖化に関する前回のリストだ。
1.脱温暖化
◎脱化石燃料社会のビジョン共有
◎再生可能エネルギーの高度導入のための基本方針の決定
◎超脱温暖化技術への開発投資の拡大
◎二酸化炭素の隔離技術に対する方針の決定(やる、やらない、のいずれか)
◎未来世代リスクの認識力の育成(温暖化リスクと他のリスクの同一レベルで把握する能力養成)

A君:脱温暖化の最初にあげたのが、◎脱化石燃料社会のビジョンを社会全体で共有すべきだということです。

B君:まあ、化石燃料を使っていること、これが地球温暖化の最大の原因だ。しかし、我々現代世代にとっては、化石燃料が存在していることが、当たり前すぎて、それが人類史上希に見る特異な状況なのだ、という認識がない。

C先生:ちょっと想像力を働かせれば、そんなことはすぐ分かるはずなのだが、想像をすること自体がなぜか難しくなるほど、化石燃料に依存しているのが現代だ。

A君:場合によると、現代人の意識はちょっと違うのかもしれない、と思うことも多いのです。それは、産業革命以来、さまざまな技術的進歩が行われてきている、ということに意識が向いていて、化石燃料を使っているというのは、技術の進歩のある段階にすぎず、次には、普通の意味での化石燃料とは別のエネルギー源があって、技術が進歩すればそれが使えるようになる、と考えている人が多いのではないでしょうか。

B君:例えば、水素だ。これに、現代の日本人はコロリと騙された。水素というものは、地面を掘ったからといって、出てくるものではない。となると、作らなければならない。それには、別のエネルギー源が必要。

A君:水素は、結局のところ、化石燃料から作るか、原子力で作るか、再生可能エネルギーで作る以外には無い。ということだと、原子力や再生可能エネルギーなら、水素の前にどうせ電気にするのだから、電気のまま有効に使う方が遥かに効果的。まあ、原子炉の熱で水を分解ということも考えられてはいますが、効率が悪すぎるので。

B君:メタンハイドレートとか、オイルシェールとか、新しい言葉で、誤魔化すことも良く行われてきた

C先生:確かにそうだ。メタンハイドレートなどという新エネルギー源があるのだ、などという情報は、新聞に良く掲載される。確かにそんな物質は海底にある。しかし、それがエネルギー源になるかどうか、いかに技術が進歩しても、全く別問題なのだ。

A君:先日の7月2日号の日経に、EPR(エネルギー・プロフィット・レシオ=エネルギー利益率)という概念が載っていましたが、これが肝心な指標です。1というエネルギーを使って、いくつのエネルギーが獲得できるか、その数値がEPR。

B君:新しい油田などだと、100といった数値だったという。エネルギーを獲得するのに、エネルギーがほとんど不要というわけだ。しかし、日経のデータだと、太陽光発電のEPRが0.98になっていて、エネルギーは得られないという計算だ。

A君:太陽光発電のEPRは、2〜3ぐらいはあるというのが普通のデータだと思いますが、どういう根拠で計算するかによって違ったデータになるということでしょう。

B君:確かに、原子力も一つのデータだとEPR=4ぐらいだとしているが、もう一つのデータだと、17.4となっている。

C先生:メタンハイドレートのEPRの値は、日経には出ていない。恐らく、1以下の値なのだろう。すなわち、エネルギーのゲインは無い。

A君:ただ、日経によれば、海底の窪地のようなところに溜まっているというデータがあるとのこと。そうなると、EPRも1.5ぐらいにはなる可能性もある。

B君:いやいや。やはりEPRは最低でも4ぐらいは欲しい。日経のデータによれば、エタノールだって、EPRは2以下にしかならない。トウモロコシを原料としたら、1.3だという

C先生:ということで、化石燃料というものが、いかに優れた燃料であり、エネルギー源であったのか、ということを再認識して欲しい。

A君:現在の石油や天然ガス、さらには石炭を使い終わったら、何か技術開発によって別の化石燃料が使えるようになる、という訳ではなく、単に、効率の悪いエネルギー源に経済的な理由によって移行するだけ、だと理解して欲しいわけです。

B君:しかも、石炭でも、まあ、300年後には無い。となると、人類が化石燃料を使えた歴史は、たったの500年で終わることになる。人類の歴史は、過去20万年として、今後、30万年程度は継続するとしたら、500年は、人類史全体の1/1000にしかならない。現代人は、この特異な1/1000の期間にたまたま生存していることになる。

C先生:良く講演などでは、言っているのだが、「もしも1000年後に生まれ変わってこの地球上にまた生存しているとして、その職業がたまたま歴史家だったとします。19世紀から23世紀という時代を、あなたならどう記述しますか?」

A君:こんな質問を世界各国でしてみたい。日本ならどうなのか。中国だとどうなのか。ラオスだとどうなのか。

B君:なかなか面白い。

C先生:国連大学で、今、「国連の持続可能な教育のための10年」のプロジェクトの一つとして、地域にRCEというもの(Regional Center of Expertise=専門知識を備えた地域拠点?)を設立し始めている。将来100ヶ所以上になる予定。ここでの共通プロジェクトとして、そんなことをやって、地域比較をしてみると面白いだろうと思っている。

A君:この「脱化石燃料社会のビジョン」ですが、それそのものは非常に簡単。化石燃料を考えないのですから、原子力と再生可能エネルギーしかない

B君:再生可能エネルギーが本命であることは、誰しも認めることなので、要するに、逆に言えば、原子力をどう考えるか、だけ。

C先生:原子力だが、現時点で、世界に493基の原子炉があって、これを増やすことも考えられない訳ではない。しかし、実は、ウランというものも、そんなに資源量がある訳ではない。世界中に今使っているような原発を5000基作ったら、恐らく、10年持たない程度の資源量だ

A君:だから、原子力としては、最低でも高速増殖炉。これだと、最低でも10倍にはウランを使えるでしょうから、100年ぐらいはもつ。もしも、理論値に近いところまで増殖できるのなら、数100年はもつ。

B君:高速増殖炉に全面依存したところで、あんまり安定しているとは言えない。となると、やはり核融合か。ここまで行くと、実のところ良く分からない。

C先生:核融合が実際に使えるようになるか、それは分からないのだが、ただ、想像力を働かせれば、もし使えるようになったとして、どんな感じかは分かってもらえると思う。原子炉が5000基ほど、この地球上に存在している。もしも、テロなどということが、その時代にもまだあるとしたら、一体何が起きるか。

A君:やはり、持続可能ではないかもしれない。ヒトという存在が、数100年でテロを克服するところまで賢くなれるか。

B君:そう判断するならば、やはり、再生可能エネルギーだけで、エネルギー供給をすることになる。非常にシナリオとしては簡単かつ単純。

C先生:技術的にそれが可能かどうか。これは難しいところがある。不可能ではないと思うものの、やはり、人口が多すぎては無理のように思える。現時点で、地球温暖化が起きているということは、現在の人間活動は、化石燃料のお陰で、地球の能力の大体2倍以上の総量になっていると想像できる。となると、やはり、人口は自然減で1/3程度にするのが妥当。現在の生活程度を維持したとして、まだ、地球の再生可能能力の範囲内に納まるから。

A君:そんなシナリオは、不幸でしかない、と言うのが、20世紀という世紀の後半に生きてしまった現代人の考え方でしょう。経済的にも、人口的にも拡大できない世界など無意味だ、と思う人が多いのでは。

B君:いつのまにか、脱温暖化社会の話から、別の話になっているぞ。

A君:まだまだ施策は残っているのです。これまでがイントロということです。
◎再生可能エネルギーの高度導入のための基本方針の決定

これは、良いですよね。これが最終形なのですから、今から検討をしても悪いこともない。

◎超脱温暖化技術への開発投資の拡大

これも、とりあえず、20年間ぐらいは、こんな技術が必要。これは、化石燃料をいかに効率的に使うかという技術開発です。

◎二酸化炭素の隔離技術に対する方針の決定(やる、やらない、のいずれか)

これは、温暖化が本当に重大なのか、それとも、化石燃料の枯渇の方が本当に重大なのか、見極めつつ判断する必要があります。もしも、二酸化炭素を隔離するなら、エネルギー使用量は3割り増しになると考えざるを得なくて、そうなると、化石燃料の枯渇も3割加速されてしまいますから。

◎未来世代リスクの認識力の育成(温暖化リスクと他のリスクの同一レベルで把握する能力養成)

これが、最後なのですが、未来世代、すなわち、1000年後のことを見通す力を要請し、未来のリスクと現代のリスクとを同一の判断基準で評価する能力を育成することです。

B君:最後の問題だが、わずかな毒性などを重大視している現代人にとっては、難しい問題なのかもしれない。

C先生:やはり、リスクの判断にも、長期的な見方が必要だ。ダイオキシンがそれほど重大なリスクにはならないだろう、と判断するようになったのも、中西・益永両先生の研究や、母乳の保存資料の分析結果などによって、1970年代に、日本人のダイオキシン暴露が今よりも2倍以上だったのではないか、と考えるようになったからだ。

A君:環境ホルモンの場合でも同様で、例えば、ビスフェノールAへの暴露も、コーヒー缶からのものが歴史的に多かったのではないか、それが改善されてしまった現時点では、例の逆U字特性がウソならば、余り問題は無いのではないか、という大局観をもつことができるようになったというのが大きいですね。

B君:この7月1日から始まったEUのRoHS規制の鉛フリーはんだにしても、鉛の環境への放出量は、1975年ごろが最大で、しかも、ガソリンの添加物が原因だったもので、排気ガス中に微粒子として存在しているものをばら撒くという最悪の状態だった。そのころの鉛の血中濃度は、現在の7〜8倍はあったはずなのだ。このように、リスクの流れを大局的に見ることが必要なのだが、なかなかそれができるようにならないし、なろうともしない。

C先生:本当に危ないものは何か、それを判断する力、それを「リスクセンス」と命名したいのだが、それを身に付けて欲しい。さらに、未来世代が蒙るであろうリスクを想像できるだけの想像力を身に付けて欲しい、ということなのだ。

A君:これ一つとっても、難しい。

B君:となると、脱温暖化も、山本良一先生流に、地獄絵で迫るという方法が良いのかもしれない。

A君:ということで、食糧供給不安に移ります。こちらの方が地獄絵的なので。

2.脱食糧供給不安(含む水資源)
◎食糧100%自給シナリオの構築
◎食物廃棄物の90%削減の実現方法
◎輸入食糧の環境負荷(水使用量を含む)表示開始

B君:まずは、◎食糧100%自給シナリオの構築か。確かに、自給率を向上させようとか言っても、すぐどうやるの、どこまでやるの、という話になってしまう。しかし、食糧を100%自給するということを前提にして、様々なシナリオを書いてみることは、何が本当の問題点なのか、明らかにすることに繋がるかもしれない。

C先生:しかも、緊急事態の発生を想定したとして、自給率を100%にするには、何年間かかるか、という時間経過を追ったシナリオが必要だと思うのだ。大体、自給率100%といっても、それが可能なのか、不可能なのかも分からないのが現状だ。もしも問題点の抽出ができたとしたら、想定される危機発生の時点の何年前から準備を開始すべきか、という議論をすれば、自ずから未来の不安に対する対策シナリオになる。

A君:それがもっとも重要なのですが、残り2つは、まず、これ。

◎食物廃棄物の90%削減の実現方法

自給率100%を考えるときに、現在のような食料の利用形態が良いのかどうか、それが大問題。食物廃棄物を90%カットしたら、かなり状況は改善されるでしょう。

◎輸入食糧の環境負荷(水使用量を含む)表示開始

輸入食材にどのぐらい依存しているか、また、その環境負荷がどのぐらいのものなのか、表示方法を考えて見る必要がありそうです。特に、沖先生流のバーチャルウォータの表示が面白いのではないですか。

B君:日本国内の施策としてやることは不可能だが、例えば、メコン流域の水分配などに対して、科学的なアプローチができるような能力開発を関連する国でやることが必須なのではないか。

A君:その問題は、国際的な問題で、今回、考察の範疇に入っていないというか、別の機会にまたやろうか、という感じでなんですが。

C先生:すでに、ここで、今回の1回分の分量に到達した。どうやら、後1〜2回分のネタがあるような感じだ。

A君:脱温暖化と食料供給だけでも、国内施策がこんなにも必要。果たして、そんな意識が国政を担当している政治家にあるか、それが問題

B君:こんな質問に答えてもらってから、参議院選挙に立候補して欲しいものだ。

C先生:学の世界の改革も相当に必要だ。メディアも勉強が必要。話はまだまだ続く。