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そろそろ花粉症の季節。憂鬱ですね。今年の花粉の飛散量は、昨年の夏が暑かっただけに平年の数倍が予測されています。ひどくなりそうです。 花粉症は、免疫システムの正常な反応によって起きます。しかし、ある程度の年齢を超すと、花粉症は治る傾向があります。それは、免疫システムが劣化するから、という理由によるもので、余り歓迎できないことでも有ります。 薬を飲むということも選択肢としてはあるのですが、折角、免疫システムが働いている証明なのだから、そのままにしておくという方法もあります。 そのような対処方法では、マスクなどによって、花粉を吸わないようにすることが防衛手段ですが、完璧な方法ではないことは自明です。 それなら花粉症に効くと言われているあらゆることをやるという方法もあるでしょう。花粉症を軽減するための飲料とか、食材とかがあるようですね。 ということでWebを調べてみると、色々ありますね。例えば、これ。 http://www.health.ne.jp/library/3000/w3000758_3.html バラの花エキス、プロポリス、シソエキス、甜茶などが有効。タバコの煙は花粉症を悪化させるそうです。高タンパク質食品もダメ。刺激物・アルコールも避ける。 タバコについては、「自分だけではなく、周囲の人のために禁煙を心がけたい」、そうです。 しかし、これには異論もあります。なぜならば、ヘビースモーカーは、花粉症を発症する率が有意に低いとされています。理由は、免疫システムは、常時タバコの有害成分への対応に忙しくて、花粉ごときに対応している暇が無いからだと考えられます。 それはそれとして、予防には、空気清浄機が有効。ただし置き場が重要。顔の高さに空気清浄機を置くことで、花粉症の吸込みや付着がカットできるから、と書いてあります。 なるほど、なるほど。花粉は空中を漂っているのだから、顔の高さに空気清浄機を置くのだ。花粉はどのぐらいの時間、空気中を漂っているのだろうか。 買うとしたら、どの空気清浄機がもっとも効きそうか、疑問になりました。 そこで、Facebookを使って、C先生に質問をしてみました。 C先生:花粉症の予防に空気清浄機がどのぐらい有効か。もしもどれかを選択するとしたら、何にポイントを置くべきか。置き方などにどのぐらい注意を払ったらよいのか、という質問が来た。 A君:花粉症、空気清浄機でWebを検索したら、その量は莫大ですね。例えば次に3つだけ示します。 比較.com http://www.dreamnews.jp/?action_press=1&pid=0000014742 日経トレンディ http://trendy.nikkeibp.co.jp/article/special/20080201/1006685/?ST=life&P=2 アレルギー・アイ http://www.allergy-i.jp/kafun/column/colmun02.html この最後の記事には、日本医科大学の耳鼻咽喉科の大久保公裕准教授が登場していて、空気清浄機は顔の高さに置くように奨めているので、ひょっとすると、先ほどの花粉症に有効な食材などを紹介していたWebの元ネタはここかもしれないですね。 B君:その先生は、「花粉は床に落ちる」と言ってるね。しかし、「歩いたりして、床に落ちていた花粉が舞う」から、「再び舞い上がった花粉を吸うように設置するのが良い」、と置き方の重要性を指摘している。 A君:本日の日経新聞のプラス1の「何でもランキング」では、「効果を感じた花粉症対策」というもののが取り上げられていて、 1位 マスクをする 2位 外出から帰ったらうがいをする 3位 外出から帰ったら手を洗う 4位 窓はできるだけ閉める 5位 空気清浄機を使う 6位 無駄な外出を控える 7位 外出から帰ったら、服や髪の毛をはたく 8位 洗濯物や布団を外で干さず、室内干しにしたり、乾燥機を使ったりする 9位 外出から帰ったら洗顔をする 10位 鼻の中を洗う 11位 こまめに目を洗う 12位 こまめに掃除する 13位 睡眠をよくとる 14位 部屋を加湿する 15位 メガネをする B君:「こんな点に気をつけて」という記事が出ているが、やはり大久保先生の話を聞いているようで、花粉は落ちてくるから、顔と同じ高さに置くことを薦めている。また、部屋を加湿することによって、花粉の舞い上がりを抑えられるとしている。 A君:花王・生活者研究センターというところからの情報も紹介されていまして、「宅内に侵入する花粉の6割は窓や換気口からで、4割弱が外で干した洗濯物や布団から、衣類や髪からは2%強」、としています。 B君:まだまだ完全な情報が普及していないという感触だ。 C先生:空気清浄機の置き場所、置く高さなどが議論されている。その基礎情報として、まずは、花粉の落下速度を推定することが必要のようだ。 空気清浄機の基本性能 A君:その前に、一般的な空気清浄機というものの構造と性能の復習が必要だと思います。一応、代表的な空気清浄機のメーカーのサイトを勉強することにしました。 パナソニック http://panasonic.jp/airrich/ シャープ http://www.sharp.co.jp/kuusei/lineup/ ダイキン http://www.daikinaircon.com/ca/?ID=product B君:基本構造は、送風機とフィルターだけなので簡単。性能も、今回議論するのは、基本的なものだけにしよう。プラズマクラスターイオン、ナノイー、光速ストリーマなどの放電で作るイオン類や加湿の効果は、別途議論ということで。 A君:性能だけですね。了解。空気清浄機の性能を評価するための基準は、社団法人日本電機工業会というところが作っています。JEM1467という規格が家庭用空気清浄機の性能評価法を決めています。 B君:Webを探しても見つからない。入手法はと思うでしょう。なんと、これは有料で、今回C先生が購入した。 C先生:まだ請求書が来ないが、意外と高いものだ。 A君:こんなものは公開できないのでしょうか。市民社会から空気清浄機とは本当は何か、という理解を得るためには、公開をした方が良いと思いますが。 いずれにしても、1995年3月17日に制定されていて、2009年9月1日に改正されています。 B君:決まっているのは、消費電力の測定、待機電力の測定、機器の温度の上限、絶縁抵抗、耐電圧、漏れ電流などもあるが、これらは、電気製品としては共通。 A君:風量、騒音というものがあって、これは、物理的に測定できますから、それほど問題はない。 B君:そして、脱臭、集じんという二項目がある。これが空気清浄機の真の性能を決める項目だと言える。 脱臭の性能は、「運転開始30分後の初期の除去率が50%以上でなければならない」とされている。 A君:その試験法が8.10というところに規定されていますが、それを読むと、附属書Aによる、となっていますね。 集じんの試験法も、実は同様で、附属書Bによるとされています。 脱臭性能評価法 B君:脱臭性能は、アンモニア、アセトアルデヒド、酢酸を測定対象ガスとしている。測定に使うチャンバーは、1立方メートルのもので、1m×1m×1mのガラス製もしくはアクリル製の密閉容器。臭気を出す機器は、「たばこ吸煙機」。 C先生:「たばこ吸煙機」。初めて聞いた機器だ。 A君:なにやら直径が135ミリの送風機にたばこホルダというものを付けて、そこに、5本のたばこをセットする。たばこの銘柄も決まっていて、マイルドセブンオリジナルを使用する、とされています。5本のたばこを6〜8分で燃焼させ、もっとも早く燃焼したたばこがフィルタに達した時点で、たばこ吸煙機を止めて、残りは自然発煙させる。 B君:たばこの燃焼が終了した後、2〜5分後に測定を開始するが、アンモニア、アセトアルデヒドを同時に測定し、次に酢酸を測定する。 空気清浄機を運転し、運転開始1分後と30分後に運転を中止し、ガス濃度を測定する。 ガスの除去率は、次式によって算出する。 C η=(1−-----)×100 C0 C先生:30分間で50%になっていれば合格。この30分が後ほど重要に。その式の意味は、集じん能力の式が出てからまとめて議論しよう。 集じん性能評価法 A君:それでは、集じん能力の試験法です。 まず、集じん能力測定室は、20〜32立米とかなり大きいです。測定室の密閉度は、30分経過後の粉じん濃度が初期粉じん濃度の80%以上を確保できなければならない、とされています。 粉じん濃度測定のための位置は、室内中央分床上120cmの1点です。 測定は、粒径0.3μmの粉じんを測定できる光散乱式またはピエゾバランス式とする。なお、感度は0.02mg/m3以上とする、と規定されています。 B君:ピエゾバランス型とは、圧電天秤法という意味のようだ。粉じん粒子を静電捕集をすることによって、短時間で測定ができるらしい。 http://www.kanomax.co.jp/eb0006.html A君:粉じん量の単位が、mg/m3ということは重さを測らなければならない。光散乱式で測ったとしたら、その粒子の数は分かるかもしれないが、重さは分からないから、なんらかの方法で換算するのでしょうね。 http://www.kanomax.co.jp/pdf/e3442.pdf B君:面白いことに、やはり、たばこ吸煙機が粉じんを発生させる装置だ。使い方は、このように記述されている。 たばこ吸煙機によって煙を出す。発煙粉じん濃度C0は、攪拌ファンで1〜2mg/m3に定濃度化させた後、攪拌ファンを停止してから、30分測定する。 A君:能力を算出する式ですが、臭気とは違って、たばこの煙は自然に減衰するので、それを考慮して次のような式で、集じん能力P(m3/min)を算出します。 V C2 C1 P= ---(ln ---- −ln----) t C02 C01 C01:自然減衰の測定開始時の粉じん濃度 C02:空気清浄機運転の測定開始時の粉じん濃度 C1:自然減衰のt分後の粉じん濃度 C2:空気清浄機運転時のt分後の粉じん濃度 V:集じん性能測定室容積m3 B君:大体のところ、測定ボックス内部の粉じん濃度が初期濃度の1/10になるまで空気清浄機を運転して、そこまでの運転時間t分からこの式で能力Pを算出する。 A君:空気清浄機を運転しない場合の自然減衰を、同じt分間を考えて補正する項が第二項。 B君:測定室の大きさが20〜32m3ということは、天井高を2.5mとすれば、大体3×3m〜3.5×3.5mぐらい。 たばこの煙の特性 A君:結局のところ、空気清浄機の性能は、たばこの臭いとたばこの煙で測定されているということが分かりました。 たばこの臭いというものの特性、たばこの煙というものの特性を明らかにしないと、次に進めませんね。 B君:たばこの煙の粒子径は、色々な数値がある。 (1)Harris 主流煙 0.16μm Okada 主流煙 0.18μm 副流煙 0.10μm 引用省略 (2)主流煙 0.2〜0.3μm 副流煙 0.15μm http://www.pipeclub-jpn.org/cigarette/cigarette_detail_21.html (3)0.01μm〜0.3μm http://www.compoclub.com/products/knowledge/aircleaner/1-2.html A君:色々と記述がありますが、現時点ですと、室内の汚染物質の70〜80%がたばこの煙から出されるものだと言われている、という記述があります。ビル管理法、健康増進法などでは、室内浮遊粉じん濃度を0.15mg/m3以下と規定しているので、たばこの煙からの粉じん対策をやらないと、法律の規定を満たすことができない。こんな問題意識で、空気清浄機というものは作られていることになります。 B君:たばこ1本から、吸い方にもよるが、7.9〜17.5mgもの粉じんが出る。もしも、これを全く粉じんを含まない空気で希釈することで満足しようとすると、100m3以上の空気が必要。 天井の高さを2.5mとすると、40m2の広さの空気。 A君:空気清浄機は、30分で100m3を換気すると同じことをしなければならない。 B君:0.15mg/m3の濃度とは、たばこの臭いがややする程度。0.44mg/m3で、やや煙っている。0.95mg/m3だと、室内が霞んでいる。1.25mg/m3だと、モウモウとしている、という感じらしい。 A君:空気清浄機とは、たばこの煙で「モウモウとした」室内の空気を「やや臭いがする程度」まで改善するために作られている機器である。これが結論。 花粉という微粒子 C先生:粒径と大体の量は分かった。たばこの煙が空気中を漂っているとき、どのような特性なのだろうか。これが分からないと、花粉や他の微粒子に対して、どのような性能を持っているのか分からない。 A君:微粒子が空気中を漂うといっても、やはり重力はありますから、徐々に落下します。落下速度は、空気の粘性と粒子サイズ、粒子の形状、粒子の重さで決まります。空気の粘性とつりあって、終端速度とも言われますが、一定の速度で沈降します。 B君:空気の流れが乱れていない場合には、Stokesの式と呼ばれるらしい。粘性による抵抗力+浮力=重力という等式を書くだけなので、球状の粒子なら、簡単に計算ができるとのこと。 A君:具体的な数値ですが、大気中の微粒子が沈降する速度については、 http://www.t-dylec.net/technical_info/webinar/pdf/20100401_j.pdf これを信用すれば、沈降速度は、 10μmの粒子 1100cm/hr 1μmの粒子 12.5cm/hr 0.1μmの粒子 0.3cm/hr B君:たばこの煙だと、どうも1cm/hr程度の沈降速度のようだ。ほとんど沈降しないと考えても良い。 A君:空気清浄機のテスト用としては、たばこの煙は性能面からみて、極めて優れた試験材料だと言えるようですね。 C先生:たばこの煙は落ちてこないが、最初に述べたように、花粉は落ちるらしい。花粉の大きさは? A君:相模原病院のHPによれば、スギ花粉のサイズは30μmだそうです。 http://www.hosp.go.jp/~sagami/kafun.html 写真があります。イネは20〜40μm。ブタクサは20μmと多少小さいようです。 B君:となると、沈下速度は? A君:かなりマニアックなHPが見つかりました。 http://www.hosp.go.jp/~sagami/kafun.html これを信用すれば、花粉の沈降速度は、68m/hrだそうです。 B君:かなり速いような気がする。1分間で約1mか。髪の毛に付いた花粉が落下すると、1分半程度で、着地か。 A君:シャープ、パナソニック、ダイキンの空気清浄機のHPで沈降速度を探してみました。ダイキンのHPでは見つかりました。 http://www.daikinaircon.com/ca/why/powerful/index.html?ID=ca_why_kasitsu_index 「花粉は1秒間に3cmも落下」とあります。 B君:そのために、落ちた花粉を床上30cmでキャッチするというのがダイキンの作戦のようだ。 A君:1分間で1.8mということですね。先ほどの数値よりは、落下速度が大きいですが、まあ、誤差のうちでしょうか。 B君:いずれにしても、身長程度の高さから1〜1.5分間で床まで落ちる。室内に持ち込まれた花粉を捉えるには、1分間程度で、空気清浄機で花粉を吸い込む必要がある。 C先生:空気清浄機の吸い込む空気量はどのぐらいだ。 A君:ダイキンの場合ですが、ハイグレードタイプで、7.5m3/分です。適用床面積の目安が〜28畳、お部屋をきれいにする目安が8畳を10分。 B君:適用床面積とは? A君:これもJEM1467に定義されているのですが、粉じん量1.25mg/m3の空気の汚れを、30分でビル衛生管理法に定める0.15mg/m3まで清浄できる部屋の大きさのこと。要するに、「煙モウモウ」から「多少臭う」まで30分で改善できる面積です。 B君:28畳を30分。この性能なら、8畳を10分という訳か。 A君:その対応表も、JEM1467に書かれています。 空気清浄機に吸われる花粉は僅か? C先生:さて、難しい問題になってきた。頭髪に付いて部屋に持ち込まれた花粉が、頭を離れて床に到達するのに要する時間が、ダイキンの数値で1分。この花粉が空気清浄機から吸い込まれるかどうか。 A君:8畳間は、大体、30m3の体積があります。空気清浄機が7.5m3/分というフル運転をしていたとして、一旦吐き出した空気を二度と吸い込まない、というあり得ない状況が達成されたとしても、全部の空気を吸い込むのに、4分かかる。 B君:たばこの煙はほとんど沈下しない。これで試験をしたときでも、28畳間の粉じんの90%ぐらいを吸い込むのに、30分かかるということだ。この30分という時間が有れば、220m3もの空気を吸い込む。これは部屋の空気量の2倍ぐらいだが、それでも、粉じんの全部を取り去ることはできない。 A君:空気清浄機は、多くのものが前方下部から吸い込んで、上に空気を放出している。この空気の流れが非常に強力でない限り、部屋に存在している花粉を空気清浄機が吸い込む割合は、かなり少ないと考えるべきなのではないでしょうか。 C先生:花粉に効くという主張をするのなら、室内に均一に分布している花粉の何%を、空気清浄機が吸い込むか、ということで性能を評価すべきだ。 A君:どうやって測定するか、まあ、相当に難しいでしょうね。シミュレーションでもやるのでしょうか。 B君:とにかく、空気清浄機の花粉対応の性能を評価するには、花粉が吸い込まれるかどうか、それが最大の問題だということはよく分かった。一旦、空気清浄機に吸い込まれれば、HEPAフィルターなどで捕集されることは確実。なぜなら、HEPAフィルターとは、0.3μmの粒子を99.97%捕獲することができるという性能を持っているから。 A君:スギ花粉のように30μmもあれば、HEPAフィルターは確実にキャッチ。 B君:ところで、脱臭というものは、微粒子を吸うことではない。どう考えるのだろう。 A君:臭いの対象となる分子は、アンモニア、酢酸、アセトアルデヒドの3種類ですが、これらは分子です。微粒子ではない。その重さを示す分子量は、酢酸でも60です。若干の水分子を引き連れていることはあると思いますが、もともとの重さが酸素分子の倍ぐらいですから、空気と均一に混ざっていて、沈降することは無いですね。気体と気体は混じります。窒素よりも重い酸素の濃度が、床付近で高いということは無いのです。 B君:ということは、空気清浄機は、30分ぐらいで、部屋の空気の90%を吸うと考えても良いので、臭いを発する分子は、そのうち空気清浄機には入る。その中で、ダイキンの製品は、吸着して光触媒で分解すると書いてある。紫外線などで分解することでも良いのかもしれない。 A君:しかし規格によれば、たった1立方メートルの箱の中でテストをするのですよね。毎分7.5m3もの空気を吸い込む能力があるのに、どうして脱臭に30分も掛かるのでしょうか。しかも、50%減ることが規格なのですが。 B君:それは、恐らくだが、分子を分解するために必要な時間だと考えるべきなのだろう。アンモニアを分解せよ、と言われても、実のところ、なかなか難しい。何かに吸収させても、再度放出するし。 C先生:ここまでの検討で分かったことは、空気清浄機は、アンモニア、酢酸、アセトアルデヒドなどの脱臭機能は多少なりともありそうだ。たばこの煙を捕集する能力もありそうだ。しかし、花粉については、かなり疑問。部屋に持ち込まれる、あるいは、自然に入ってくる花粉の10%でも捕集されれば良いと考えるべきなのではないだろうか。 A君:吸込口から花粉が入ってくれば、しっかりキャッチするなりするでしょうが、捕集されないで、部屋の床や家具の上に落ちて積もる花粉が90%ということになれば、空気清浄機で花粉に対応するというのは無謀な戦略だということになります。 花粉を吸う空気清浄機が?なら対策は お薦めは紙パック式の掃除機 B君:花粉だけを対象として考えると、風量が最大の要素だということになる。とにかく風量が多い機種が良い。むしろ、HEPAフィルターなどは過剰スペックだ。高性能なフィルターは、空気を透過させる抵抗が大きいので、風量が稼げない。 A君:ただ、風量が多いと騒音が大きいので、常時運転などはできないでしょう。夜には確実に睡眠妨害になるのでは。 B君:部屋に定常的な空気の流れを作って、できるだけ空気清浄機に吸い込まれるような複合装置が必要なのではないだろうか。 C先生:それより、別の対策を練った方が良さそうに思う。 A君:もしも、自分で外から持ち込む花粉が多いのなら、クリーンルームに入るときにエアシャワーというものを浴びますが、玄関の外に、そんな空気を吹き出す装置を設置して、頭髪や肩などを一吹きしてから入るとか。 B君:花王の生活者研究センターというところからの情報を先ほど紹介したが、「宅内に侵入する花粉の6割は窓や換気口からで、4割弱が外で干した洗濯物や布団から、衣類や髪からは2%強」を信じれば、それは無意味だ。 C先生:別の対策とは、やはり掃除機の出番だということ。しっかり毎日掃除をすることがもっとも確実に部屋から花粉を取り除く方法なのではないだろうか。 A君:ベッドのある家庭では、布団用の吸口を買うことも必要でしょうね。 B君:掃除機は、どのぐらいの大きさのゴミまでキャッチできるのだ。 A君:パナソニックのHPによれば、紙パックなら0.5μmのゴミを99.9%捕集とありますね。 http://ctlg.panasonic.jp/product/info.do?pg=04&hb=AMC-HC11 B君:パナソニックのHPには、アレルギー対策には、紙パック方式を買えとあるね。サイクロン方式だと、コナダニの死骸の微粒子などのように軽ければ再度放出してしまう可能性が大きいということなのだろう。 http://panasonic.jp/soji/comparison/ A君:そもそも、サイクロン方式がなぜ良いのかよく分からない。サイクロン方式は、昔から、製材所のおがくずの集じんや、セメント工場では、セメント原料と燃焼空気との熱交換用などに使われていますが、集じん効率は、やはり粒子の重さに依存する。軽い粒子に対しては、弱いはず。ダイソンのコマーシャルにしてやられるのが嫌で、国内メーカーが作るのはよく分かるのですが。 ダニやウイルス対策としての空気清浄機は? C先生:アレルギー対策ということだと、ダニ対策というニーズもあるな。 A君:ダニは確かにアレルギーの原因。サイズは、コナダニでも300μmぐらいありそうです。これを生きている状態で吸い込むとしたら、布団からでしょうね。 B君:あるいは、コナダニの死骸が、細かくなって空中に漂うということがあるのかどうか。それなら、空気清浄機でも取れるかもしれない。 A君:300μmのコナダニが1μmまで粉々になるようなら、可能性は有りますが、一般に、細かい粒子をさらに細かくするのは大変なので、可能性はどうなんでしょう。 B君:もしもそうだとすれば、コナダニ対策も、やはり空気清浄機ではなくて、掃除機。サイクロン方式ではなくて、紙パック方式が良い選択肢だということになる。 C先生:全く別の話になるが、インフルエンザに対しては、空気清浄機は効くのだろうか。 A君:ウイルスのサイズは、0.1μmぐらいのようですから、これは、空中を浮遊する可能性がありますね。このサイズだとHEPAフィルターが有効になるかも。 B君:大阪大学の菊池先生は、マイナスイオンなどのニセ科学ではC先生と共闘していた。有名なブログがあって、 http://www.cp.cmc.osaka-u.ac.jp/~kikuchi/weblog/index.php?UID=1257567205 に、空気清浄機とインフルエンザ・ウイルスについての情報を提供している。 A君:簡単に言えば、インフルエンザは、飛沫感染。空気中を漂っているウイルスで感染することを空気感染と言うが、それほどインフルエンザウイルスは強力ではない。 B君:インフルエンザは、飛沫感染に加え手から経口で取り込まれるルートのいずれかで感染する。となれば、患者がマスクを付けることが、まず必須。感染したくないのなら、できるだけ手を洗う回数を増やすことが有効。空気清浄機はそれほど有効とは言えない。 結論 C先生:そろそろ結論が出たようだ。花粉を対象とする空気清浄機は、室内に入った花粉の限られたものしか吸い込まない。まあ、良くても10%ぐらいではないだろうか。それでも良いとして、もしどうしても何かを買うのならば、フィルターの目が荒いもので、風量の多いものが良い。HEPAフィルターは花粉用としては過剰スペックなので不要。 他のアレルギーの場合には、例えば、コナダニが問題の場合には、別の考え方をする必要があるが、今回は調査が不十分。しかし、いずれも、「紙パック式の掃除機で、しっかりと、毎日掃除をする」という結論は、ダニ対応としても良いように思える。 A君:空気清浄機が、花粉を余り吸い込まないという結論は、いささか衝撃的でしたね。 B君:メーカーは当然のことながら、これを知っている、と思う。なぜなら、基本中の基本だからだ。そう言われることを予見しているのだろうか、その対策と称して、敵(花粉など)を自らの陣地に引きこんで処理をするだけではダメなので、飛び道具を色々と付けている。 加湿器。プラズマクラスター、ナノイーなどのイオン類。このような飛び道具が、花粉に対してどの程度有効なのか、となると、それは相当に疑問。 C先生:花粉以外の話、さらには、飛び道具の話は、別の機会にもっとやるかどうか検討しよう。昔からマイナスイオンを批判してきた延長線上で見ると、飛び道具が花粉症に有効か、と問われれば、加湿は別の意味で有効だろうが、他のイオン系のものは、気休め程度だと答える。 ナノイー、ストリーマという新しい用語の実体を推測するのも面白いかもしれないが、いずれもキーワードはオゾンのような気がする。 今回、情報を集めるのに苦戦をして、ちょっと手間が掛かった。JEM1467を入手して、やっと空気清浄機というものの本質が分かった。この資料の公開をJEMAにお薦めしたいが、メーカーは反対するだろう。いろいろと工夫はされているが、空気清浄機の価格は、エアコンなどに比べると高すぎると思う。その構造を考えて見ても、原価率は25%ぐらいといった感触だ。空気清浄機と同一価格帯のエアコンなどは、恐らく80%ぐらいの原価率ではないだろうか。 ということで、今回は、空気清浄機のごくごく基本だけを取り上げた。暇があれば、飛び道具の話にも、また取り組んでみたいが、本当の情報はさらに少ないので、苦戦することだろう。 本日の結論。花粉用の空気清浄機は、空気を直接清浄にはしないかもしれないが、掃除機。 |
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