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 藻類による油生成は創エネ源      05.30.2010
     − 創エネと省エネと温暖化対策の違い



 昨日、黒部第四発電所を見学してきた。水力発電というものの役割を理解した。様々な感想は、そのうちいずれ。


 先週の金曜日から、我が家の食卓の近くにiPadが置かれている。iPodTouchがこれまで置かれていたのだが、こちらはほとんど活用されなかった。機能的には大きなiPodTouchでしかないiPadだが、これまでiPodTouchを触ろうともしなかった家内が、「オモチャとして面白い」、といって喜んで使っている。画面の大きさも、持ち運ばなければ丁度良いし、起動時間が無いに等しいところが良いようだ。

 専用インターネット端末として見れば、これは十分に使える。これで、ネットブックの使命は終わった。それどころか、WindowsやMacも終わったような気もする。仕事用のパソコンが今のところ必要だが、それだって、標準的ワープロ、表計算、プレゼンソフトがあれば良いので、別にWindowsやMacである必要はない。ほとんどの人にとっては、iPad程度のインターネット端末で足りる。「それは、グーグルに依存することだ」、とも言えるのが怖いところだが。

 しかし、ちょっと思った通りの処理をしたい、となると、やはり無理。iPadで写真アルバムを旅先別に作ろうと思ったら、「フォルダの管理」というコンセプトそのものが無いみたい。どうやら別のアプリを探さないとできないようだが、いまだに定番ソフトがどれだか分からない。Androidでもできることが、なんでiPadでできないの? jpegファイルのサイズをこちらの思う通りに入れることもできないし!! 自分用には、やはり、Android端末を誰かが出すまで待とう。 PS:どなたか、こんなことができるAppを教えてください。

 しかし、iPad最大の疑問はこれ。「なぜパソコンが無いとアクティベートができないの? 将来、iPadのおかげで、家庭用のパソコンは無くなるのに。自己矛盾だ!!!!」


 今回の本題は、藻類の話。新規な話題のようにも見えるが、実は、初心者コースでもある。このような話題をどう見るかだが、本当は非常に簡単な条件がある。ところが分かってほしい人が分かっていないように思うのである。

 温暖化基本法に関して、さまざまな温暖化対策の提案、さらには、取り組みとして困難な点などが指摘されている。現在国会に掛かっている温暖化対策基本法が将来どのような運用状況になるのだろうか。これも、創エネ、省エネ、温暖化対策のバランスのような気がする。

 最適なバランスを取ることが求められるのだが、それぞれに、確実に満足させなければならない必須条件があることを十分に理解していることが、バランスを考える以前に必要である。

 特定の課題の重要性を強調する人々が多いが、それは、メディアの対応がそうだからだろう。

 社会現象としてこのところ気になるのが、この藻類のブームである。何年かおきに繰り返しやってくる藻類ブームではあるが、最近のものはいささか突出しているかもしれない。なぜならば、米国で相当多額のベンチャー投資が行われているからである。しかし、それには理由がある。その理由が日本でも成立するものなのか、その状況をキチンと説明している研究者はいないように思える。

 このような話を創エネ、省エネ、温暖化対策という区分けをしつつ、必要な条件が違うのだということを説明したい。



C先生:現状は混乱状態。なんでこの程度のことで混乱を招くのか。非常に簡単なことなのに、と思うことが多い。特に、この手の混乱は、エネルギー関係の話には多いように思う。例えば、しばらく前なら、水素燃料電池車、今で言えば、電気自動車の評価あたりにも出てくる。
 しかし、よく考えてみると、それも電気自動車などの存在意義について、ある特定の思い込みのみが語られていて、合理的な説明が無いからなのかもしれない、と思うのだ。
 そして、その根底にもって置くべき基本的な考え方、というか技術の成立条件のようなものを、ここで議論してみたい。要するに、創エネ、省エネ、温暖化対策についての、必須の条件と、それぞれの違いについてだ。

A君:創エネというと、典型例は、再生可能エネルギーですか。再生可能エネルギーは、化石燃料を使わない。エネルギーを作り出す方法なので、無条件によい。といった考え方がありますね。

B君:ところが、現実を見れば、再生可能エネルギーだって、なんらかのエネルギーを使わないとエネルギーを生み出すことができない。風車や太陽電池を化石燃料無しで作ることが可能なのか。

A君:そこにライフサイクル的な思想が必要だということになるのですが、基本的にライフサイクル的な発想を定量的に表現できる人がいない。それが問題ということですか。


エネルギー技術に必須なコストシナリオ

C先生:個別の話に行く前に、一般的なエネルギー問題の特徴を確認しよう。それは、コストシナリオの必要性だ。エネルギー問題には、コストの問題が強烈に絡むので、非常に厄介だとも言える。コストシナリオとは、どのような条件を仮定すれば、コストはどうなるというシナリオを意味する。
 こんなものが必要な理由は、エネルギーの多様性である。エネルギーは、さまざまな形態をとりうるが、基本的には、どの形態にもそれなりの特徴があって、どれが絶対的に良いというものでもない。したがって、エネルギーという大枠に分類されてしまうと、相互にコスト比較の対象になる。ただし、熱エネルギーだけは、例外で、いつも最下位に位置して、純粋な熱エネルギーには値段が付かない(一部で試みはあったが、今は?)ということだけは確実だ。しかし、将来、熱電発電などができるようになると、これも変わる可能性があるから、技術の発展に依存しているとも言える。

A君:コストシナリオですね。原油価格が変わると、エネルギーは勿論、あらゆるものの価格が影響を受ける。

B君:コストシナリオになると、例えば、どの技術がどのように発展すれば、別の技術によるエネルギー価格がどうなるか、といったことを意味するのだが、ここでの議論は難しい。そこで、一応、エネルギー価格だけからの議論をすべきではとも思う。それでも、化学エネルギー、電気エネルギー、位置エネルギー、運動エネルギーなどがある。これらのうち、実際、市場価格が付くのは、化学エネルギーと電気エネルギーが主。

A君:エネルギーの形態としての化学エネルギー、これは、化石燃料や水素のようなイメージで良いと思いますが、現時点だと、単純な燃焼によって熱に変えてから使う。しかし、将来は、直接燃焼方式は徐々に消えると思えます。理由は、熱という下位のエネルギーになるべく変えたくないから。

B君:化学エネルギーといっても、存在形態によって、価値が大きく違う。液体が最善。次が固体、そして、気体が最下位。しかも、液体にしくにい気体が最下位。

A君:要するに水素が駄目なのは、液体にしても面倒な気体だということですからね。

B君:電気エネルギーは、使い勝手としてはなかなか良いのだが、弱点は、持ち運びだ。方法論としては電池がもっとも一般的なのだが、その電池が最大の弱点が、「重い、大きい、高い」。

A君:電池が実用化されるには、かなりの時間的な蓄積が必要ですね。歴史的にみても、まともな電池というものは種類が少ない。

B君:ボルタが電池を発明してから200年。この中で、実用になる電池は、未だに10種類ぐらいか。どのぐらい細かく分類するかどうかで数は変わるが。

A君:位置エネルギー、例えば、ダムに溜まっている水は、かなり高効率で電気に変えることができますね。しかし、水以外だと使いもにならない。ひとたび電気に変われば、それを化学エネルギーに変えることもかなり効率が良くなった。具体的には、水の電解によって水素を得ること。水素は、やっかいな化学エネルギーなので、できるだけ早く、別の化学エネルギーに変えるのが良い。

B君:運動エネルギー。回転運動などであれば、それで発電機を回すことによって、これまた高効率で電気エネルギーに変えることができる。ただし、運動エネルギーに経済的な価値が付けられて取引されることは無い。

A君:エネルギーを貯める方法として、フライホイール、要するにはずみ車が本気になって検討されたこともあります。

B君:以上の分類とちょっと違うものとして、磁力エネルギーもある。超電導磁石を使って磁力として貯蔵する。まだ特殊な存在だが。

A君:歴史的にみると、人類にもっともなじみのあるエネルギーの形態が熱エネルギー。何かを燃やして熱を作る。これが人類を人類にした最大の原因だとも言える。

B君:熱の利用ができるかどうか、それが人類とサルとの最大の違いだった訳だ。

C先生:人類は、長い長い間、熱を熱として使っていた。タイマツのような光も熱とほぼ同義。それは、熱を他のエネルギーに変換するのは、大変に難しいことだからだ。
 順当には運動エネルギーに変えて、それから電気などの他のエネルギーに変えるることなのだが、内燃機関、ボイラーとタービン、などなど大規模かつ複雑な装置が必要な上に、熱力学の縛りという厄介なものがあって、効率が悪い。
 熱エネルギーを他のエネルギーに変える技術ができたこと。これが産業革命の本質的成果とも言える。

A君:以上をまとめて、要するに何が言いたいかと言えば、エネルギーには序列はない。例外として熱エネルギーだけが最下位にある。ということは、エネルギーに高級なものも、低級なものも無いので、価値にも大きな差は無い。使いやすさによって多少値段が違うことは違うのですが、基本的競争力は、コストで決まるのだということになる。

B君:このコストという条件がなかなか厳しい。いくら再生可能エネルギーだから良いと主張しても、コストが高いものは不要だと判断される。

A君:太陽電池の場合に、普及するのは、投資に対して、どのぐらいリターンがあるか、ということが第一の条件になりがちで、それには、太陽電池としてコストが安いことが最大の条件になる。

B君:スペインがフィードインタリフを導入したとき、もっとも普及したのが、米国のファースト・ソーラー社のCdTe薄膜電池だった。コストが安くて、資本の回収が効率的だった。

A君:太陽電池の効率を高くするということが研究の対象になっているが、本来は不要だと思う。今の太陽電池でも十分と言える。実効率が20%に迫っている。

B君:その気になれば、太陽電池を設置するような場所はいくらでもある。だから、効率を高くする必要があるとしたら、それは、マンションの屋上のようなところに高効率太陽電池を設置したいというような場合に限られる。

A君:効率が2倍でるとしても、価格は2倍以下でなければ使われない。

C先生:重要なのは、むしろ、寿命なのではないか。何年間もつかといこと。途中で壊れてしまったら、元も子もない。したがって、量子ドットのような精緻なデバイスは、太陽電池には向かないように思う。

A君:いずれにしても、エネルギーに関しては、すなわち、創エネ、省エネ、に関しては、コストというやっかいな制約条件があるということですね。

B君:コストが違えば、他のエネルギー源に転換するということになる。


創エネの場合にはEPRが絶対条件

C先生:さて、次に創エネの条件の議論に行くか。再生可能エネルギーが主たるものになるだろうが、その条件とは何か。

A君:創エネの条件は簡単。投入するエネルギー量をI、得られるエネルギーをEとすれば、E/Iの値をできれば3ぐらいにしたい。このE/IのことをEnergy Profit Ratio=EPRと呼ぶ。

B君:エネルギーというものは何をやるにしても必要不可欠なので、エネルギーを得る場合にも、なんらかのエネルギーが必要。
 石油であれば、資源探索をするエネルギー、掘削をするエネルギー、もしも油田に遭遇すれば、最初は、自噴するが、そのうち、液体を注入して汲み上げなければならなくなる。そのためのエネルギー。

A君:石油の場合だとEPRは、最初100を超す。やはり地中からエネルギーを得ている状態。

B君:現時点ではEPR的に無理だと言われているのが、メタンハイドレート。海中にエネルギー源は確かに存在しているのだが、それを取りに行くのにエネルギーが必要で、そのエネルギーの何倍を海底から得ることができるか。

A君:EPRは、最低でも3ぐらいはないと、海底にリスクを冒してでもエネルギーを取りに行くことはない。

B君:ということは、そこにエネルギーがあることは分かっているのだけれど、そのエネルギーを獲得できない、という状態でエネルギーは枯渇する。

A君:一般には、コストの問題だとされるが、エネルギーの場合には、それは間違い。レアメタルのような場合であれば、採掘・精錬に要するコストをカバーできるだけの需要があれば、コストは自然に高くなる。だから、レアメタルは枯渇することは無いとも言える。

B君:ところが、エネルギーの場合には、エネルギーを採掘するのに必要なものがエネルギーなものだから、もしもエネルギーゲインがなければ、採掘をするよりも、手持ちのエネルギーを何か別のことに使った方が良い。

C先生:創エネの場合には、EPRだということだ。勿論、共通条件として、コスト的に見合うという大条件は存在している。

A君:確かにEPRなのですが、太陽電池や風力だと、エネルギーペイバックタイム、要するに、何年間で、設備の製造に関わるエネルギーを回収できるかという時間で計ることもある。

B君:基本的な考え方としては同じ。便宜上どちらが分かりやすいかという問題に過ぎない。


省エネについて

C先生:省エネについては、今回、話す気はない。しかし、先日、朝日の5月24日朝刊に、エアコンは、効率の高いものを買わせるような仕組み(エコポイントなど)が多いが、それは問題だ。規定されている標準的な使用状況が、現実と相当乖離しているから、高効率エアコンを買う意味がない。むしろ、高効率製品はフロンの充填量が多いから、温暖化加速の可能性もある。といった記事が出た。

A君:本HPの主張は、丁度1年ほど前の記事ですが、
http://www.yasuienv.net/EcoPoint1.htm
テレビは消費電力の少ないもの、特に、人感センサーなどを装備したエネルギーの無駄の無いもの。冷蔵庫も消費電力の少ないものを。そしてエアコンは、ご自分の使用実態を精査して、10年間なら10年間での製品価格と電力価格の和が最小になるような機器を選択することをお奨め。
 しかし、再度、朝日の記事は検討する必要がありますね。解釈がおかしいと思うので。

B君:一般論では、省エネは、基本的に正しい。しかし、その機器の使用実態にあった選択というものがある。月に300kmも乗らない車をハイブリッドにしても仕方がない。

C先生:省エネ機器フェチ的趣味としてのプリウスユーザを自認しているので、環境負荷を増やしていることも自認。

A君:省エネ機器評論は、本HPの重要なレパートリー。

B君:その基本姿勢は、何事も、自腹で買わなければ分からない。省エネ機器は勿論のこと、情報機器類もそう。


藻類からの油生産−実は創エネ「源」

C先生:そろそろ本題の藻類からの油生産の話に行くか。

A君:5月22日の日経に、農水省がトヨタと中大などと藻類からの燃料を生産するプロジェクトに取り組むという話がでていますね。

B君:この話は、実は創エネの話かどうか怪しいのだ。むしろ、エネルギーを創出することではなくて、エネルギー「源」を創出することなのではないか、と思うのだ。

A君:よく我々が言っているように、そもそもジェット機を飛ばす未来のエネルギー源はなんだろう。石油が無くなったら、ジェット燃料というものも無くなる。ジェット機をまさか電気で飛ばせると思う人はいない。モーターも重いが、電池が絶対的に重たいから。バイオエタノールなどのアルコール類は発熱量が低いので、ジェット機を長い距離飛ばすのは難しい。やはり、現在のジェット燃料、その実態は灯油みたいなものだが、それが最適。

B君:藻類でジェット燃料という液体燃料を作ろうということであれば、EPRという考え方に縛られる必要はない。それしかないものを作るのは仕方ないことだからだ。レアメタルと同じような考え方が成立するのだ。

C先生:藻類が米国で注目を集め、ベンチャーが多大な投資をしようとしているのは、石油が枯渇した後、戦闘機用の燃料を藻類が作る油類で賄うことができれば、それは、国家安全保障に繋がるからだ。要するに、米空軍は、そんな先のことを考えているとも言える。

A君:米国は、エネルギー自給率が多分80%以上あるのですが、それでも国家安全保障が成り立たないと思っている。それは、石油が問題。大嫌いな国であるベネズエラあたりに石油を握られていては、米国のエネルギー安全保障、国家安全保障が危機的であるという共通認識がある。

B君:日本のように、エネルギー自給率が4%という国では、そもそもエネルギー安全保障もなにもあったものではないので、誰もそんなことを考えない。どこかから輸入すれば良いと思っている。

C先生:農水省が取り組みを表明した背景には、恐らく、これまでのエタノールではコスト的にも、さらにはEPR的にも成立しないことを認識しはじめたからではないか。要するに、単なる農業振興政策でしかなかった。そこで、ジェット燃料やガソリンのような炭化水素系の燃料なら、エネルギー「源」としての付加価値があることにやっと気付いたのではないだろうか。

A君:トヨタが参加しているということは、自動車企業としては、電気自動車の時代になったら、中国製が世界を制覇することになると考えているのでしょう。要するに、付加価値の高い電気自動車などは売れないと見ている。プラグインハイブリッドが車の正常進化の形ではあるが、いかに効率が高いといっても、ガソリンが若干量必須ではある。となると、ガソリンのような液体燃料には、エネルギー「源」としての付加価値があると見ることができる。これをバイオで作ることを考えるべきだ。藻類なら炭化水素を生産する種類がある。

B君:藻類が産出する油には、食用油のような脂肪酸とグリセリンの化合物のタイプだけではなく、なぜか炭化水素を産出するものがあるのだ。

A君:食用油は、バイオディーゼル油のように、エステル化をしたり、あるいは、化学的に脱水して炭化水素系に変えることはできない訳ではないが、いきなり炭化水素を作る藻類がどこまで使えるかを見極めることは、それなりに重要。

C先生:藻類が生成する炭化水素油は、したがって、EPR的な発想を除外できる巧みな対象なのだ。恐らく、EPR的には難しいような気がする。コスト的にも結構難しいかもしれないが。

A君:EPR的な縛りから解放されれば、コスト的にはなんとかなるという考え方もありますね。それは、高価な健康食品などを作って、その複製物から炭化水素油を作るという発想があり得るからです。

B君:エネルギー用の油は安価なのだ。それに比べれば、食用油は高い。最近、ガソリンが140円になっているが、税金を除けば、85円/L程度の価格。食用油の価格は、イオンのオンラインショッピングで、日清オイリオが1300gで358円。

A君:食用油の比重は0.9ぐらいだとして、1.45Lぐらい。1リットル240円以上。業務用に18L缶で買えば、120円ぐらいになるのでしょうか。

B君:日清オイリオ油の16.5kg缶というのが、多分18L。3880円で売っている。215円/Lと高い。

C先生:流通システムが違うのでなんとも言えないが、ガソリンよりは、食用油を作った方が儲かりそうなのだ。

A君:原油価格の予測値が、2030年で190〜200ドル/バレル。ガソリンの価格が200円/L+税金で、まあ250円/Lか。こうなれば、藻類が産出する炭化水素油のコスト競争力がでてくるという考え方もあり得る。

B君:いずれにしても重要なことは、エネルギーの創生だと言えば、EPRに縛られて、恐らく、藻類が産出する炭化水素油は成立しないのではないか、と思われるのだが、エネルギー「源」の創生、特に、有用な液体燃料を創生するということだと考えれば、EPRは問題ではなくなる。

A君:EPR的に無理ではないか、ということも、今のところ確実な技術情報ではないですね。

B君:というよりも、誰もEPR的にゲインがあったという報告を出そうとしないので、多分、駄目なのだろうという推測をせざるを得ない。

C先生:コストの縛りも液体燃料を作るということになれば、多少、低くはなるのだが、だからといって、淡水を使った培養システムだと、水のコストと事後処理が大変で、見合わない可能性が高い。まず、第一条件が海水で育成できることではないかと見ている。

A君:閉鎖性海域のように、有機性の汚染物質が多いところで藻類を育成することは、コベネフィット型だということになります。

B君:しかし、コベネフィット型との連携はこれもまた問題かもしれない。なぜならば、栄養が豊富なときには、増殖し、貧栄養になると、油の生産を始めるというのが、どうもこの手の藻類に共通の特性のようだからだ。
C先生:コベネフィット型は、当面お預けにして、まずは、EPRがどのぐらいになるのか、その検証。さらには、育成条件の最適化を探ること。そして、ジェット燃料用として、どのような種類の藻類が優れているのか、そんな検討に研究資源を集中すべきだ。

A君:ところで、日経の記事では、「温暖化ガス排出削減」という言葉がありますね。これは、どうなんでしょう。

B君:藻類が産出する炭化水素油を使っても、恐らく、温暖化ガス排出の削減にはならない可能性がある。ただし、いろいろな可能性があることも事実。

C先生:歴史的に藻類のこの手の研究を眺めると、発電所などからでるCO2を吸収させる手段として藻類を考えていた時代がある。

A君:もっとも、CO2を吸収して成長した藻類をどう処理するか、これが難しかった。何に使うかという目的もはっきりしていなかった。

B君:発電所のCO2を藻類に与えようとすると、それなりの工夫が必要になる。

A君:それに、海水利用、開放系という生育条件で、どのようにしてコンタミ、要するに他の微生物の混入を防ぐかという大問題がありますね。

C先生:日経の新聞記事では、10年後の実用化を目指すとあるが、とてもとても。10年後に、国産の藻類からのジェット燃料のみで、太平洋横断のテストフライトが行えることでも目標にすべきではないだろうか。それでも、数100トン製造する必要がある。

A君:米国での藻類研究の怖いところは、当然ながら遺伝子組み換えを行って、改良を行うだろうということですね。

B君:ガイヤ仮説で有名なラブロックの地球滅亡のシナリオになりそうな感じもする。

C先生:日本では遺伝子組み換え藻類の開放利用が許容されることはないだろうから、その意味でも、この手の研究を考えると、米国が勝つか米国の海洋生態系が破滅するという最終形が目の前をチラチラするのだ。日本が勝つというシナリオは、国民性から行って、なかなか難しい。

A君:温暖化防止という観点からは、CO2の吸収を藻類にさせるということが可能になれば、それはそれで意味があることになりますね。ただし、そこでもなんらかのエネルギーを使用するでしょうから、そのエネルギー源からのCO2の発生量をライフサイクル的にカウントして、本当にCO2の削減になっているかどうかを判定する必要がある。

B君:遺伝子組み換えを行うことは、研究段階で恐らく必須になるだろう。しかし、それをどうするか。

C先生:そこまで重大に考える以前に、どのぐらいの濃さで微細藻類を飼育できるか、といった基本的な技術を開発することだけでも、極めて大変なことだと思う。飼育には、どのような温度や水の条件、栄養の与え方、他の藻類のコンタミの防御法、などなど、閉鎖系ではやれないことなだけに、新しい作物を育てる農業の開発のように長い時間が掛かっても不思議ではない。
 2020年に間に合う技術だとはとても思えないのだ。



まとめ

「創エネ」を狙うのであれば、エネルギープロフィットレシオ=EPRと呼ばれる指数をまず、考える必要がある。このEPRは、最低でも2、可能ならば3は欲しい。風力・太陽電池であれば、エネルギーペイバックタイムが使われるが、これをEPR的に解釈すれば良い。

「創エネ『源』」は、創エネとは全く違う。バイオジェット燃料のような付加価値の高いエネルギー「源」を創生することが目的であれば、国家の安全保障、エネルギー安全保障などの観点まで考慮すべきことになって、他の条件は無視することも不可能ではない。

「省エネ」は、その装置のライフサイクルでの全エネルギー消費量と、その装置が提供するサービスの総量を考える必要がある。そして、単位サービス量あたりのエネルギー消費量の少ないものが選択される。したがって、そもそも必要とされるサービス量に限界があるユーザ、例えば、月に300kmしか動かない車などをエコ車にする意味はほとんどない。

「温暖化対策」ならば、CO2の発生量、吸収量を考え、正味のCO2発生量を算出する。そして、その行為が提供するサービスの総量を考えて、単にサービス量あたりのCO2の発生量を少なくするものが選択される。

「エネルギー共通」の項目として、コストというものがある。どのぐらいコストで一定のベネフィットを与えることができるか。これが重要な指標になる。創エネ源の場合でも、コストを無視することは現実的でない。将来どのようなコストになるかを検討するコストシナリオが、どの技術にとっても必須である。