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  環境問題の変質2 01.18.2004



先週の続きである。
今週は、
(6)ダイオキシン問題
(7)リサイクル問題
(8)温暖化問題

(9)持続可能先進国型問題
(10)持続可能途上国型問題
(11)RoHS型問題
(12)CSR・EPR問題
(13)BSE型問題
(14)その他の問題

をできるところまで議論したい。


C先生:(6)ダイオキシン問題は、日本のみならず、世界的に大問題になった。少々冷静に対処すべきだったと思われるし、現在でも、対応過剰の部分がある。

A君:ダイオキシンの問題は、実際には結構古い問題でして、環境研究者の間では、1980年代にかなり多くの研究、特に、分析法の研究などが行われていました。

B君:ベトナム戦争の枯葉剤とダイオキシンの話は有名。

A君:インターネットで調べて見ると、なかなか面白いのですが、どこかの大学のセミナー用の報告レポートに、学生さんがこんなものを公開していますね。以下、ご本人に無断で引用です。

 次に、大まかなダイオキシンに関する歴史の流れについて、見ていきたい。そもそもダイオキシンという物質は、自然界には存在しなっかたし、意図的に製造されたものではなかった。この物質の存在がわかったのは、1944 年にアメリカの農薬メーカーが作った「2,4,5,-トリクロロフェノール」という名前の農薬の中や、「燃えない油」として開発されたPCB の中の微量の混入物として発見された事がきっかけだった。
 ダイオキシンの毒性を広く世界中に知らしめたのは、1962〜1971 年のベトナム戦争である。ダイオキシンが含まれている枯葉剤をアメリカ軍がベトナム戦争に使用し、その後ベトナムでは枯れ葉剤の影響で、多くの奇形児が生み出されてしまったのである。
 もう1 つダイオキシンの歴史で忘れてならない事件が、1968 年に日本で起きた「カネミ油症事件」である。北九州市のカネミ倉庫が製造した米ぬか油を食べた人たちの間で、爪や皮膚粘膜の色素の沈着や、子供たちの免疫・成長機能の低下などといった中毒症状が表われた。その後の調査で、このような特異な症状が表われた原因には、米ぬか油の製造過程で混入した、ポリ塩化ジベンゾフランとコプラナーPCB という2つのダイオキシン類が関係していることがわかったのである。そして、この事件は研究者の間にダイオキシンの毒性の強さを明確に認識させるきっかけとなった。

A君:この文章中の誤りを正せ、と言いたくなる。皆様、どこが間違いでしょうか(少なくとも赤字部分は間違いです)。

B君:そして、多くの記述がそうであるように、日本の行政の無能さを指摘する。

(1)日本のダイオキシン対策の歩み
日本でダイオキシンが最初に注目されたのは、1979 年にカナダの学者が、京都市のごみ焼却炉の焼却灰からダイオキシンを検出したのがきっかけである。この時点で厚生省は、日本のごみ焼却場でもダイオキシンが生成されている認識はあったはずだが、実際に厚生省がダイオキシンへの取り組みに乗り出したのは、1983 年11 月、愛媛大学立川教授らが日本の9 ヶ所のごみ焼却炉の焼却灰からダイオキシン類を検出したとの発表の後であった。政府は同年12 月、「ダイオキシン専門家会議」を発足させたが、翌84 年5 月に評価指針値(100pg/kg/日)を提案し、この値に比べ市民のダイオキシン摂取量は相当低いから安全であるとして、解散してしまった。

A君:この学生は、ダイオキシン問題はマスコミが作った虚像だと言いたいようだ。例えば、こんな記述がされています。

 ダイオキシン元年以降のマスコミ報道は、毎年大量の情報を提供するという、右上がりの傾向を見せ、内容はダイオキシン騒動が記事の中心となった。そして、過剰なマスコミの報道によって、人々はダイオキシン不安を駆り立てられ、「所沢ダイオキシン騒動」という社会混乱が引き起こされてしまった。ダイオキシン元年以降のマスコミ報道は、あまりに大量の情報を供給したため、かえって人々に必要以上の不安と混乱を与えてしまったのである。

A君:しかし、その学生も、結局のところ、テレ朝の正当性を半分認めていますね。

それは、これまでの国によるダイオキシン対策の歩みから簡単に想像できるだろう。このような事実関係を踏まえると、テレビ朝日のダイオキシン報道は、日本のダイオキシン対策と諸外国のダイオキシン対策の距離を大幅に縮める役割の一端を担ったと言っても過言ではないだろう。

B君:しかし、最後の最後には、やはりマスコミの支配はひどすぎるという結論。

A君:これが環境系の学生の見解としては、平均的なものでしょうね。メディアと同じく、中途半端な知識しかないから、様々な恐怖本に書かれたことは、無批判に真実だと信じている。

C先生:まあ、10数年たって冷静に見れば、「歴史に残る理由不明の大騒ぎだった」ということになるだろう。

A君:いつもの、分析法を適用しますと、要するに、(A)原因は? (B)加害者は? (C)被害者は? (D)解決法は?ですが。

B君:(6A)原因は?か。ここから行くよりも、(6C)被害者は?から行くべきだろう。

A君:(6C)被害者:90年代の騒ぎで、本当の健康被害者は、もし居るとしたら能勢町の焼却炉を解体した作業員。ただ、本当に健康被害があるかどうか、特に、発がん確率が本当に高くなっているかどうか、厚生労働省がしっかり疫学的な目で見ているのでそのうちに分かるでしょう。

B君:その後、ダイオキシンは環境ホルモンの一種であると認識されていて、1970年ごろがもっとも摂取量が多かったようで、そのころ生まれた男子が被害者か、という話がある。

A君:今、30〜34歳ぐらいの男性が女性化しているかどうか。

B君:ダイオキシンは、女性ホルモンというよりも、男性ホルモン作用を妨害する作用があると言われている。

C先生:一般市民は、多くの恐怖本とその真実を見抜けないメディアによって脅迫されていたようなものだった。恐怖本を書いたのは、多くの研究者だった。研究者には、社会に対して本当の意味での責任とは何かを理解しないで行動する幼稚なところがある。その例だったと言えるだろう。

A君:テレ朝のように、世直しのためには、嘘を報道してもよいといった思い上がりが最悪だったのでは。

B君:研究者もなぜかそう思わされてしまった。やはり幼稚だ。

A君:(6A)原因は、研究者の社会性の無さと、メディアの科学的知識の不足。もし、これが原因だとすると、まだまだ同じことが起きる。

B君:(6B)加害者は、これまた複雑だ。確かに、所沢付近の産業廃棄物焼却が加害者だったという言い方もできる。ダイオキシンが入っていなくても、煙は毒性がある。

C先生:より的確な表現をすれば、自分が被害者になると思い込んだ社会そのものが実は加害者になったと言えるのではないか。被害者と加害者が一致していることに実は気づかなかった。「知識」が無かったのが原因。

A君:煙で思い出しましたけど、被害者には、「落ち葉焚き」があるのでは。こんな風情のある行為が社会に受け入れられなくなってしまった。絵馬などの「お焚き上げ」ができなくなった神社は被害者。

B君:そんなことを言い出せば、自治体も被害者で、古い焼却炉を解体できないで、困っているところが多い。

C先生:現状の解体基準が異常に厳しいことは、関係当局も分かってはいるようだ。しかし、まだ世論の動きを眺めていて、急には変えられない状態と思われる。

A君:やはり、行政は、その時々の市民社会の感覚によって支配されている。

B君:ただ、市民社会は、行政が市民社会を一方的に支配していると思っている。

C先生:このすれ違いも不幸の一つだ。市民社会が加害者にもなるという意識を持つべき時代になった。

A君:(6D)解決法:ダイオキシン問題は結局解決されたのでしょうか。

B君:ダイオキシン特別措置法によって、焼却炉の排ガスは極めて厳しいものになった。それで、清掃工場の煙突から、白煙(水滴)も出ない状態になった。

A君:昔は、黒煙もうもうだった清掃工場もあった。大進歩。

C先生:そのためのコストが効果に見合うか、という議論はありうるが、まあ、市民社会が安心したいと言うと、このようにコストが掛かるものだ。BSEでも、他の食の安全でも同じだが。

B君:BSEの話は、そのうちに取り上げる。

A君:結局、ダイオキシン問題とは、90年代これだけ騒いだにもかかわらず、被害者も良く分からず、本当の原因が解決したかも良く分からない。多分、未解決なのでしょう。

B君:環境問題の変質の最大の要素、それが、良く分からないことだな。

C先生:何が本当の問題なのか、分からない環境問題が多くなった。これだけは確実に言える。理由は、社会全体が原因であり、加害者であり、被害者だからだ

A君:それでは、(7)リサイクル問題に行きましょうか。

B君:リサイクル問題って何が問題なんだ。
A君:取りあえず、3つに分けましょう。(7−1)リサイクル費用の負担を誰がすべきかという問題(7−2)リサイクルが本当に効果的か、という問題。

B君:(7−1)のリサイクルは、効果はあるが、という前提での話。

A君:武田先生が最近どのような講演をしているのか知りませんが、まあ、95%のリサイクルは何かの効果はあると言えるでしょうから。

B君:これが問題になるのは、次期容器包装リサイクル法、それに、次々期容器包装リサイクル法でだろう。

A君:次期は、事業者の責任が多少拡大され、自治体の負担が多少減るといったところで収まるのでは。

B君:そう思う。さから、もっとも問題なのは、次々期。ここで大きく変るのが必要。実現するのは、20年後ということになるのかもしれないが。

A君:包装材料と言えるものが製造された瞬間に処理費の負担が決まるのがベストだ、と毎回毎回主張していますね。

B君:(7−1A)何が原因か。これは、明らかだな。根本的には、資源の過剰消費する経済システム。その経済システムからの受益者が費用負担をするのが当然。

A君:(7−2B)加害者という言葉は余り適切ではないですね。強いて言えば、現代社会そのもの。(7−1C)被害者は

B君:これも、強いて言えばだが、未来世代だな。費用負担が不適切だと、資源の過剰消費が止まらない。

A君:(7−1D)解決法は? すでに提示したような。

B君:それでは、(7−2)の、リサイクルは効果的か、という問題に移ろう。

A君:最近の話題は、ペットボトルのケミカルリサイクル。

B君:確かに。ペットボトルのこれまでのリサイクルは、繊維かシートへのリサイクル。次のリサイクルは可能性が低い。すなわち、リサイクルといっても2サイクルにすぎなかった

A君:2回使って結局ゴミ、というリサイクルが2サイクル

B君:プラスチックの高炉還元剤にしても、コークス原料にしても、あるいは、熱回収にしても、2サイクルまで行っていない。まあ、贔屓目に見ても、1.1サイクルだろう。

A君:最近になって、帝人のペットボトルのケミカルリサイクルが脚光を浴びていますが、実際のところどうなんでしょうね。

B君:LCAデータというものが発表されている。報告書を読んだ訳ではないが、ある会合で発表された2枚のデータを見る限り、余りにも自分たちに有利なシナリオになっている

A君:一般社会がLCAというものを信用するようになるためには、自らに厳しいシナリオと、有利なシナリオの両方を出すという姿勢が必要。特に、トレードオフがあることを明示すべきですね。

B君:電球型蛍光灯の場合、消費電力は下がるが、水銀を使わざるを得ない。

A君:水銀のリスクはどんなものか。消費電力の低下の方が利くのか。こんな情報を出して、市民に選択してもらうことが必須。

B君:価格情報も重要ではある。

A君:その点、帝人の環境コミュニケーションというものは、未熟の極にあり、ですか。

C先生:話をもとに戻すが、リサイクルの本当の目的は、本来、地球からの資源採取量を減らすこと。しかし、これまでのリサイクルは、最終処分量を削減することが目的だった。

A君:資源量を減らすとなると、その材料の人間社会内での存在時間の長さ、をリサイクルなどの手段で伸ばすという考え方が必要になるわけで。

B君:単なる存在時間ではなくて、有効利用時間と言うべきだろう。例えば、レジ袋だと、コンビニから家までの5分、その後ゴミ袋になれが2日追加ぐらいか。合計、2日と5分。

A君:同じプラスチックでも、塩ビ製の建材などになれば、30年とか。それがさらにリサイクルされれば、合計50年。

C先生:長寿命製品に使うというのが、基本的に正しいことなる。包装材料だと、いくらがんばっても、限界がある。ただし、包装材料は不要というものばかりではない。

A君:ただ、それにしても、有効利用時間という考え方は必要ですね。

B君:(7−2A)原因にいくか。これは同じで良さそう。根本的には、資源の過剰消費する経済システム。できるだけ寿命の短い製品を作ることが、実は経済的にみれば効果的。

A君:短寿命などんどんと使ってもらいたいのが製造者の本音。

B君:(7−2B)加害者は現代社会そのもの。(7−2C)被害者は、未来世代。

A君:(7−2D)解決法。これは、有効利用時間なる考え方を入れた社会システムを作る必要がありそうですね。

C先生:ごみ問題のように、現代世代に対する被害が明確ではない。それだけに、まだ、多少時間が掛かりそうだ。

A君:(8)温暖化問題。これは良く知られている話だから簡単に。

B君:(8A)原因。化石燃料の過剰使用。それをしないと成長しない経済システム。(8B)加害者は、現代世代。(8C)被害者は、まあ、本格的には100年後の未来世代。(8D)解決法は、デカップリングhttp://www.yasuienv.net/Decoupling.htm

A君:と書くと、温暖化問題は、結構分かりやすいですね。ある意味で、将来世代型の環境問題の典型だということでしょうか。

C先生:そろそろ終わるか。なんだか進まないな。いずれにしても、今回のダイオキシンと温暖化、さらに、リサイクル問題を考えただけでも、環境問題が伝統的水俣型から大きく変質していることが分かる。

 残りがまだまだ。
(9)持続可能先進国型問題
(10)持続可能途上国型問題
(11)RoHS型問題
(12)CSR・EPR問題
(13)BSE型問題
(14)その他の問題。