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  環境問題の変質3 01.25.2004



環境問題に知識パッケージを構築するという作業の一貫として行っているつもり。しかし、なかなか進まない。

残った話題が、
(9)持続可能先進国型問題
(10)持続可能途上国型問題
(11)RoHS型問題
(12)CSR・EPR問題

(13)BSE型問題
(14)その他の問題
である。
 そして、どうも(11)あたりからはじめるのが良さそうである。


C先生:続きの議論をしたい。(9)と(10)は、どうも究極の問題なので、それ以外を片付けてしまいたい。そこで、(11)のRoHS問題から行きたい。

A君:これは、多少説明を要しますね。RoHSの概要は、昨年以来、すでに2回に渡って議論をしてきました。
http://www.yasuienv.net/NonToxRoHS2003.htm
http://www.yasuienv.net/3RMaterialChoice.htm

B君:要するに、Restriction of Hazardous Substancesの略で、2006年7月から、EUでは、電機電子機器での4種類の重金属、鉛、水銀、カドミウム、六価クロム、さらに、2種類の臭素系難燃剤が使用禁止になる。

C先生:これをどのような観点から「問題」として取り上げるか、さまざまな意見があり得る。そこで、まずは、問題としてよりも、RoHS関係と理解し、色々な角度から検討することをしたい。

A君:まあ、了解。しかし、どこから行くか。やはり毒性物質ですから、もしも何かが起きたときに、その被害者は誰かから行くのが原則ではないですか。

B君:前回、鉛については、それはやった。結果的に、「被害者はよく分からない」。勿論、高濃度で摂取すれば、ヒトも動物も健康被害が出る。しかし、電子電気製品から、どうやって摂取するか、その経路が分からない。

A君:水銀についてもすでにある程度データがあるので、説明すべきでしょうが、まあ、やはり「被害者は分からない」、が結論になるでしょう。

B君:カドミウムも同様。六価クロムは、もっとよく分からない。水に溶けたものを飲めば、あらゆる良くない症状が出るが。

A君:いずれにしても、強いて言えば、1000年後の将来世代のためかもしれません。

B君:重金属汚染は、土壌汚染として表土に留まると考えればそうだ。

A君:それ以外にも、ヨーロッパのように、地下を掘れば、ローマ時代の鉛汚染が出てくるような地域では、気にするのでは。

B君:まあ、それを気にするかどうか、そこが鍵。

A君:生態系についてはどうでしょう。

B君:それも良く分からないが、亜鉛の環境規制ができたように、なんらかの生物が特異的に六価クロムに弱いというようなことはあるかもしれない。

A君:いずれにしても、被害者は余り明瞭ではない。

C先生:被害者が余り明瞭ではないのに、なぜその禁止といった強い規制の対象になってしまうのか。

A君:いきなり新規トピックスで恐縮ですが、もう一つの規制になりそうなREACH(Registration, Evaluation, Authorization of CHemicals)では、やはりEU内外の規制格差が問題になっていますが。

C先生:REACHの考え方を一言で言えば、「これまで、化学物質は、禁止されないものは使用可能だったが、今後は、使用できるものを決めることになるという仕組み」。完全に発想が変わった。

B君:その実態は、後日勉強をしてから報告ということになるが、RoHSも、当初、電気製品ということで、日本を狙い撃ちにしたという話が無い訳ではなかった。REACHの狙いも同様という説はある。

A君:しかし、日本の製造業は器用だから、RoHSを逆手にとって、ビジネスチャンスにしてしまった。

B君:だから日本では、別の問題が生まれたことになる。日本国内に同じ規制があった方が、ビジネスチャンスが強化され、ビジネスリスクが減少するのだ、という発想がでることだ。

A君:要するに、日本でも同じ規制をした方が、安価で有害な輸入品が入ってこないということから、ビジネスにプラスだ。だから規制を待望する、と主張する企業がでてきた。

B君:しかし、以下に議論するように、筋違い。

A君:REACHの場合にもどのような見通しで対処すべきかが難しいところ。EUの規制はなんでも「公正で進歩的」という理解をするNGO/NPOもいるが、実際のところ、そんな能天気な態度では状況の理解ができているとは言えない。

C先生:これまで産業界は、規制を改革し、余分な規制は産業の発展にとって有害であると主張してきた。今月の環境にもちょっと出てきたが、環境報告書を義務化しようとする動きに対して、日本経団連を中心とする産業界は反対して、結局のところ、政府系の独立行政法人のみに義務化が行われることになった。

A君:効果は限定的。

B君:実社会の経済メカニズムで重要な役割を果たす金融資本市場のグリーン化が全く進んでいないに等しいことが、日本の最大の問題。

C先生:そうなんだ。銀行、証券会社が環境報告書を出し、そこに表明されている環境方針に同感できる銀行なり証券会社を選択するといった市民がでてくれば、社会全体の変革速度も速くなると思われるのに、何か大きなチャンスを逸した感じ。

A君:ちょっと話題が散漫になってしまいましたが、結局のところ、被害者が明確でないまま、規制ができてしまうという現象がEUには始まった。

B君:それをどのように解釈するか。まず、その(1)EUの内外技術格差解消策:先端技術について、EUは遅れを自認し始めている。自動車もメルセデス、BMWなどが日本で売れているが、燃費や環境対策といった点から言えば、プレミアムカーとはとても言えない代物。

A君:電気製品なども、大きく遅れている。そのあたりの認識がこれまた日本でないのが残念。

B君:自動車・電気製品だと米国の遅れもひどいが。

A君:米国は不思議なところで、遺伝子組み換えなどをどんどんやるから、進んでしまう部分がある。化学についても、どうも、米国の方が進んでいるのではないか。

B君:欧州の環境負荷でもっとも大きなものは、やはり、車ではないか。ディーゼル車で大気汚染と温暖化を乗り切ろうとしているが、現実的には無理だろう。

A君:被害者不明の環境規制を行う先駆者がスウェーデンなる国。車はボルボ・サーブ。環境面を考えれば、車の環境規制を厳しくするのが本筋だが、それができないので、自国の産業には余り影響の出ない電機電子製品の規制を進めている。

C先生:この解釈が絶対的に正しいというわけではないが、少なくとも、被害者の想定すら難しい規制には、なにか裏があると思う訓練を日本人は一般にしていない。

B君:解釈その(2)EU人の良心:(1)の解釈と全く正反対の性善説的解釈。特に北欧系の人々は、経済の発展をそれほど切望している訳ではない。できるだけつつましく生活しようと思っている。そんな哲学の中で、有害物質も使わないで済むのなら、その方が良いと本気で思っている。

A君:かなり心情的な判断ですね。しかし、それを規制にまで持っていくところには、やはり政治的判断が入りますから、解釈(2)は成立しないのでは。

B君:その解釈の方が個人的には好みだ。しかし、様々な解釈が有りうることを示しておくことには問題は無い。

A君:現在の北欧やドイツなどの社会的な体制は、社会民主主義的なもので、その政治姿勢をさらに積極的に示さないと、次の選挙で負けるという考え方はありえますね。これを解釈その(3)としたいのですが。

C先生:解釈その(1)に関連し、本当に内外格差の解消にこのような規制が利くか、となると、RoHSの場合には、残念ながら、日本企業のビジネスチャンスになってしまって、思惑は外れたと言えるだろう。REACHの場合には、もっと露骨な内外格差解消策が提案される可能性があるので、要注目。

A君:そろそろまとめますか。しかし、このRoHS型問題も問題の整理によってものすごく考え方が違いますが、毒性を中心とした考え方で一応整理すれば、(11A)原因は?:毒性のある物質の使用。(11B)加害者は?:特になし。 (11C)被害者は?:特になし。強いて言えば、1000年後の将来世代か。 (11D)解決法は?:国としては無し。企業としてはリスクを見極めること。

B君:良く分からんな。(11D)解決法に関する基本的な考え方として毒性物質は人間社会の中で十分管理するという考え方はしっかりと持つべきかも知れないが。

C先生:もともと良く分からない問題だ。EUの対応が間違っているだけで、だからといって大した問題でも無いのかもしれない。しかし、付随する現象として日本でも問題は起きている。それが、そもそも問題でもなんでもない問題を、ビジネスリスク上問題だと称して、規制を求める企業ができたこと。これは、企業の存立という基本原則にとって危機的状況だ。日本経団連が昔から主張している、規制は少ない方が良いという原則はどこに行ったのだ。しかも、経団連は、この原則を強調しすぎて、環境報告書をネタとして金融・資本市場をグリーン化する千載一遇のチャンスを逸してしまった。

A君:そろそろ次の項目に行って良いですか。どちらから行きます。(12)CSR・EPR問題ですか。

C先生:そうしよう。

B君:CSRCorporate Social Responsibility)は、最近の流行語にもなりそうな勢い。

A君:なんとなく軽薄な反応をしている企業が多いような気がするのですが。

C先生:このあいだ、慶応大学経済学部長の細田先生の講演を聞くチャンスがあった。米国では、1920年代からすでに、このような概念があったとのこと。

A君:宗教、具体的には、教会ですが、その財産をどこかに投資するとき、例えば、武器を作っていない企業とか、食品会社ならタバコに手を出していない企業などに限って投資をするといった発想からSRI(Social Responsibly Investment)なるものが始まったようですね。

B君:日本だと、そんな発想とはかなり違うところもあって、環境投資を行っている企業は余裕がある証拠だから、環境投資が多い企業に投資しておけば失敗は少ないという発想の投資家もいる。日本のSRIは、もっと哲学的な面を強調すべきだ。

A君:日本にも正義とか公正といった言葉はあるのですが、これを真正面から議論しない傾向が強いですね。シャイなんでしょうか。
B君:正しいことを言うのは格好が悪いという考え方もある。

C先生:これは鳥取環境大学学長の加藤尚武先生から教わったのだが、Trueismというものがあるらしい。これは、主張が正しすぎて、余りにもあたり前で、全くインパクトが無いことを言うらしい。そんな考え方で、格好の悪さを感じる学者が多いのかも。

A君:それはそれとして、CSRというものが、日本では、極めて皮相的に理解されているような気がします。

B君:日本の企業経営には哲学が無い。日本のCSRは、企業が不祥事を起こしてどこかが潰れると、急に問題にするという傾向が強い。

A君:現在、その波が来ていますね。確かに。しかし、もう一つの軽薄な考え方が、日本の経営者がアメリカ型経営として、株主優先型の経営を掲げていることではないですか。

B君:ある程度やむをえないとも言えるが、米国の企業は、建前として、株主優先型の企業経営を言いつつも、裏でしっかり別の戦略を走らせる。しかし、日本の経営者は、株主優先型というと、本当にそれ以外を考えない状況になる。

C先生:CSRの話をするときに、ステークホルダーを考えないと行けない、ということがしばしば言われる。これは、変な英語で、実は、株主を英語でStockholderというが、それをちょっとひねってStakeholderという言葉が作られた。株主のことばかりを考えている経営者をからかっている言葉でもある。
A君:そのステークホルダー論ですが、実際の企業経営で、環境保全面を最優先させるといったことは異常です。

B君:それは当然。企業が成立しない。

A君:企業は、ビジネスリスクを最小にし、ビジネスチャンスを最大にするという考え方で環境を見ることで構わない、と思うのですね。

B君:環境を全く考えない企業はビジネスリスクに直面する。一方、環境をビジネスチャンスにすることも可能である。これを認識させれば良い。

C先生:その通りだが、そのビジネスリスクというものが、様々な要因によって起きることを理解しなければならない。ある企業がビジネスチャンスだとおもってやっていることが、実は、ビジネスリスクだったりする。

A君:それはしばしば起きますね。なぜならば、ビジネスチャンスになるために対象として考えることは、現在の平均的な世間のレベル。だから、どこかのメーカーのように、MDの包装に生分解性プラスチックを使っているということで環境企業であることを主張して、ビジネスチャンスを生かしているつもりかもしれないが、実情が良く見えているプロからは、なにを馬鹿なことをやって、という反応を受けることが多いです。このプロの感覚が、最近では、かなり迅速に一般市民社会に伝達されますからね。

B君:それも、インターネット情報化社会の特性だと言えるだろう。

A君:ビジネスリスクの方も同様ですね。今の世間のレベルを考えると、この程度の対応で良いだろう、と判断すると、実は、あっという間に世間側が変わるころもある。

B君:とは言いながら、一応、環境をリードしている少数のプロの将来的な動向予測は、そんなにも変ではない。

A君:となると、企業としては、どの専門家をプロだと見るか、これが鍵になりそうですね。

B君:ダイオキシンに関して、ダイオキシン猛毒派をプロだと判断したか、そうではなく、少数派だったダイオキシンの健康リスクはある程度限定的だと主張した穏健派をプロだと判断したか。企業の環境部に所属している社員がどんな判断をしたか、それを検証する必要があるだろう。

C先生:EPRの方はどうしようか。まあ、HPでは止めよう。

A君:このCSR関係の話は、古典的環境問題のような、考え方はできないですね。
(12A)原因は? (12B)加害者は? (12C)被害者は? (12D)解決法は?

B君:質問そのものが意味をなさないから止めよう。

C先生:ただ、企業として取るべき対策は、すでに述べられている。環境問題を本質的に理解し解釈することによって、自社が行うべきことを、経時的にしっかり把握し実施できる体制を準備しておくこと。この指摘はしておこう。

A君:また、また進みませんね。

B君:そうだな。
(9)持続可能先進国型問題
(10)持続可能途上国型問題
(13)BSE型問題
(14)その他の問題
が残ってしまった。また次回へ送る。