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  環境問題の変質その4 02.01.2004



3回でまだ終わらない。残った問題は、
(9)持続可能先進国型問題
(10)持続可能途上国型問題
(13)BSE型問題
(14)その他の問題
 今回は、(13)、(14)、(10)といってみたい。

C先生:なかなか終わらないが、まあ続ける以外に方法は無い。(13)BSE型問題からいく。

A君:このBSE型問題というのもどのように捉えるのか。BSEで犠牲者が出たことを問題にして、今後、犠牲者が絶対に出ないことを目標としての問題として取り扱うのかどうか。

B君:このところ、鳥インフルエンザなるもので、数名の死者が出ているが、こちらも問題意識として何をもつべきなのか。

A君:SARSにしても、今年は、いまのところ大流行ということにはなっていませんが、別に消えた訳ではないですし。

B君:まあ、議論を進めながらということで行こう。最近、BSEのデータを整理していないので、再度、そこから始めて見るか。

A君:まず、本HPでの最後の議論が、狂牛病ファイナル 11.18.2001 http://www.ne.jp/asahi/ecodb/yasui/BSEFinal.htm で行われていますが、それ以後、BSEの人間版であるvCJDで何名が死んでいるのか、データを追加してみましょうか。ただし、英国のデータ。英国以外だと、フランスが合計3名、アイルランドと香港が1名。


B君:2000年に明確なピークがあるが、しかし、その後、余り減っていないような感触だな。

A君:BSEの発生そのものは、1992年に明確なピークがあって、ヒトへの感染もどのピークに最大だったとすると、潜伏期間が8年程度だということになります。

B君:潜伏期間については、どんなことが言われているのだ。

A君:それが実に色々。10年説。10〜16年説。30年説。50年説。

B君:そう言えば、死者の予測について様々で、何万人の死者が出るという予測もあった。

A君:こんな記事が見つかりました。UK Researchers Revise vCJD Death Toll Down from 50,000 to Maybe 540 http://www.animalrights.net/articles/2003/000195.html

B君:五万人の死者の予測が、540人に減っている。現在まで、139名だとすると、そこまで行くのも可能性としては低いのではないか。

A君:ただし、記事の中には、50〜540名となっていますから。

B君:予測がかなり下げられたということは、潜伏期間についても、かなり分かってきているはずだが。

A君:その記事には、12.6年という一桁精度の高い数値がでています。

C先生:要するに、かなり分かってきた。となると、このBSE型の問題というものは、一時期の破滅的な予測と恐怖感によって何倍あるいは何100倍にも拡大された問題であったということだろう。

A君:ダイオキシン騒ぎと似ている。

B君:「忘却」という方法で問題を解決する市民も、「余り重大な問題ではない」。そんな雰囲気になってきた。

A君:日本のメディアあたりの報道にも、その傾向があって、米国でのBSE発生以来、米国産牛肉が輸入できなくなって、牛丼消滅の危機に陥った。米国産牛肉が本当に危ないのなら、牛丼ははやく消滅すべしという論調の報道になるはずなのに、どちらかというと牛丼擁護報道が多かった。

B君:一方、感心するのは米国にBSEが発生したときの米国市民の反応で、たったの16%しか心配していないそうだ。全く心配していないが48%、余り心配していないが36%。そして、牛肉を食べる習慣も「変化なし」が81%

A君:日本でBSEが発見されたときに、深刻に受け止めた日本人との差は何だろう。

B君:日本でBSEが最初に発見された2001年秋。当時、日本では、不安を感じているが89%だった。また、牛肉を止めた、減らしたが60%以上だった。

A君:まあ、2年間の差はありますからね。「忘却」という行為にとって、この2年は大きいですが。

C先生:「忘却」が問題解決の手段になっているということ、それ自体が問題のように思える。

A君:それには、やはりメディアの報道に工夫が必要。

B君:それと同時に、すべての市民たるもの、メディア以外からの情報獲得が必須。

C先生:なるべく早く実態を推測するだけの科学的知識も必要。

A君:科学的知識に関して、実は、いまだに良く分からないのですよ。何が? なんでヒトがBSEというかvCJDに罹るか。

B君:いや、医学的知識には余り自信が無いが、自分も分からない。

A君:まず、牛の脳などに含まれる異常プリオンというものが病原体ならば、それはタンパクなので、どうやって口から消化管に入って、それが血液かリンパ組織に入るのか。

B君:普通なら消化されてアミノ酸になってしまうはず。

A君:それに、そのプリオンがどうやって脳まで運ばれるのか。

B君:それに関しては、こんな記事を発見。
狂牛病発症におけるヒト側の要因
http://www.igaku-shoin.co.jp/nwsppr/n2002dir/n2476dir/n2476_03.htm
 食物から消化管に入った異常プリオンは一旦リンパ組織で増殖しやがて脳脊髄に達すると考えられています。通常蛋白は消化液により分解され,アミノ酸レベルになるはずなのですが,病原体であるプリオンは蛋白分解酵素の攻撃を逃れこの第一関門をくぐりぬけます。そして,リンパ組織にトラップされます。補体を持たないマウスに異常プリオンを摂取させた場合,病気発症が相当遅れる事実が発表されました(Nature Med 2001; 7: 488−92)。このことから,リンパ組織に入った異常プリオンは補体による免疫反応を受け,樹状細胞に取り込まれ,この細胞の一部が内臓神経を経て,脳脊髄に移動する際一緒に運搬されると推論されます。このように消化管や免疫の問題もvCJD発生に関与するかもしれません。

A君:補体ってなんですか。

B君:こんな説明を発見。
 補体とは体液中のタンパク質で、もともと抗体を助けて細菌やウイルスを殺すものと考えられてきました。最近の研究では、補体のみでウイルスの多くは中和され溶解されて感染力を失うことがわかってきました。

A君:それに、遺伝的な要因もあるという話を聞いたことがありますが。

B君:同上の記事の続きだ。
 若年発症するvCJDでは共通してCJDにおけるプリオン蛋白を規定する129番目の遺伝子が両方ともメチオニンになっていました。すなわち,プリオン遺伝子の型と何らかの条件が揃った時にvCJDが発症すると考えられます。

A君:その遺伝子の割合はどんなものなんでしょうか。

B君:どうも、ヨーロッパ全体の40%がその遺伝子配列らしい。ポーランドでは45%、UKで42%とか言った値が見つかる。しかし、日本人では分からなかった。

A君:いずれにしても、色々な解明が進んでいるようですね。

B君:でも、分からん。あれほどの大騒ぎをするぐらいだから、異常プリオンを摂取した人は極めて多数に及ぶはず。しかし、それこそ、世界中で139名しか死亡しなかったか。感染者=ほぼ死亡者だから、感染者の数も極めて限られている。

C先生:まだ解明されていない要因が多いと思う。例えば、遺伝子の話もそうだ。それ以外にも、食生活とかいった話も、十分な情報が開示されているとは思えない。

A君:それについては、こんなページを発見。http://www.nca.or.jp/shinbun/20020308/nousei077.html
 牛から人への感染については、英国では01年11月時点で111人のvCJD(変異型クロイツフェルト・ヤコブ病)患者が発生しているが、吉川教授は約75万頭の感染牛が食用に回されたと推計している。英国での感染率、MRMや脳を食べるという食習慣などを考慮すれば、仮に日本では汚染された食品を食べたとしても、vCJDを発症する可能性は限りなくゼロに近いと断言する。

B君:2002年3月の記事だな。吉川教授は、東大農学部の吉川泰弘教授。ところで、そのMRMというのは何だ。

A君:どうもmechanically recovered meatらしいですよ。骨から肉をはがす機械があるらしいですね。

C先生:そろそろ結論に行こうか。

A君:そうですね。これまでのやり方を踏襲すれば、(13A)原因は?(13B)加害者は?(13C)被害者は?(13D)解決法、について述べることになるのですが。

B君:問題を何にするかだな。2001年なら、牛肉が売れなくなったこと。そして、今なら、牛丼が食べられなくなったことか。

A君:となると、問題を分ける? (13−1)風評被害に関わる問題(13−2)何が本当に正しい対処法かという問題

B君:それで行けば、(13−1A)原因は?:食の安全というものに対する日本人の無理解。(13−1B)加害者は?:理解の無い日本人。(13−1C)被害者は?:食肉関係者。(13−1D)解決法は?:広い意味での知識の普及

A君:食の安全に対する日本人の無理解という問題は、もっと解説を要しますね。

B君:そして、(13−2A)原因は?:米国からの牛肉輸入中止を決めた政府の方針。(13−2B)加害者は?:政府。(13−2C)被害者は?:牛丼を愛する人々。(13−2D)解決法は?:輸入中止の撤廃

A君:こちらも議論を要しますね。

B君:食の安全に対する日本人の無理解は、これまでの取り上げてきた。

C先生:その通り。「世界でもっとも安全な食ともっとも不安な国民」http://www.yasuienv.net/FoodRisk2003.htm

A君:完全に安全な食品があると思っているのがそもそも間違い。

B君:これも毎回述べていることだが、有機食品などを売るためには、そんな誤解を持ってもらわないと売れないのだ。

C先生:完全に安全な食品があると思っている日本人。必ずしもそうではないと思っている米国人。何が違うか。

A君:宗教観?

B君:科学的常識というか地球観?

C先生:両方に関わることだが、ヒトという生物が地球上に出現したのは、諸説あるものの10数万年前。地球46億年の歴史から言えば、最後の最後。ヒトは、それ以前から存在している植物・動物を食物として食べてきた。多分、毒物を食べて死ぬといった失敗も多かったに違いない。今でも、ときどき毒キノコで死ぬ人がいるように。

A君:食物の歴史を考えれば、経験的に比較的無毒なものを選択しているに過ぎない。

B君:日本人はお人好しというか、あるいは思い上がっていて、ヒトという生物を特別のものだと思っているためか、ヒトのために特別に用意された無害な食物が地球上に存在していると思っている。

C先生:しかも最近の日本人には、賞味期限が切れた食品は絶対に捨てるという習慣が蔓延っている

A君:昔なら、ベロメーター。ハナセンサー。

B君:死語だな。ちょっと食べて見て、舌で判断。臭い(匂い)で判断。

C先生:もう一つの問題に行こう。B君の回答は、(13−2A)原因は?:米国からの牛肉輸入中止は正しいか。それを決めた政府の方針は正しいか。(13−2B)加害者は?:政府。(13−2C)被害者は?:牛丼を愛する人々。(13−2D)解決法は?:輸入中止の撤廃。

A君:米国からの牛肉輸入中止は、リスク面から見れば正しいとは言えないでしょうね。

B君:脳味噌などの危険部位を食べない、肉骨粉などといった牛が本来食べない餌を与えない、といった対応で、大体の対応が可能であることは分かってきた。

A君:日本は、BSE対応に4000億円の税金を使って、全数検査体制を作った。

B君:2年前の国民の不安を解消するために、これだけの国費が投入された。

A君:その時点で、本HPでは日本にvCJDが発生する可能性は、全数検査という強い対応を取らない場合でも、多くて1名と予測していました。http://www.ne.jp/asahi/ecodb/yasui/BSEFinal.htm

B君:1名の命を救うために、4000億円か。

C先生:命の値段が無限大のこの国だから、こんな政策が取られると言えるだろう。

A君:ところが、自分が関係ないと、すなわち、見ず知らずの命だと無関心なのも日本人の特性。

B君:中高年男性が経済的な状況で自殺に追い込まれるといった状況に4000億円を投入すれば、何人の命が救われたか。

C先生:そんな発想を持たないのが日本人の特性の一つかも。

A君:この4000億円の投資に対して、メディアも批判的ではないのが面白いところ。

B君:本音では、どう思っている記者が多いのだろうか。

C先生:この(13−2)型の問題は、被害者は牛丼愛好家だけではないな。自分達が原因で自分達が被害者という問題でもありそうだ。となると、
(13−2A)原因は?:米国からの牛肉輸入中止を決めた政府の方針。(13−2B)加害者は?:政府。日本国民全部。(13−2C)被害者は?:牛丼を愛する人々。日本国民全部。(13−2D)解決法は?:輸入中止の撤廃

A君:その解決法には異議あり。米国が未だに日本の牛肉を輸入禁止にしているということを考えれば、経済問題として、撤廃はできないでしょう。

B君:その通り。日本よりもはるかに緩い規制を正当化してしまう米国の態度そのものは信じられない。

C先生:食料問題には、いつでも付きまとう問題だな。米国が食糧戦略を変更しないと、世界各国の自立は無い、といつでもそう思う。
となると、加害者に米国の食糧政策も加えるべきか。
(13−2A)原因は?:米国からの牛肉輸入中止を決めた政府の方針。(13−2B)加害者は?:政府。日本国民全部。米国の食料政策。(13−2C)被害者は?:牛丼を愛する人々。日本国民全部。(13−2D)解決法は?:輸入中止の撤廃だが、政治問題としてすぐには不可能。
 またまた(13)しか終わらなかった。残りは、
(9)持続可能先進国型問題
(10)持続可能途上国型問題
(14)その他の問題