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  環境問題の変質その5 02.08.2004



残った問題は、
(9)持続可能先進国型問題
(10)持続可能途上国型問題
(13)その他の問題


C先生:いよいよ残り3題となった。今回は、(10)の持続可能途上国型問題から始めよう。

A君:この問題は、比較的短いでしょうから。

B君:もっとも、答えが有るようで、実は、無いようなものではある。

C先生:これまでも何回か議論しているように、環境クズネッツ曲線というものがある
http://www.ne.jp/asahi/ecodb/yasui/EKuznetsCurve.htm
 環境負荷は、経済発展の関数で記述できて、例えば大気汚染や水質汚濁に関しては、一人あたりの国民総生産が$1000ドルあたりで、汚染・汚濁が極大になって、$2000を超すと改善が始まり、$5000ドルになるとまずまずのレベルになることが分かっている。

A君:しかし、それは汚染汚濁型の環境負荷の話であって、二酸化炭素排出量になると、現代社会では、ピークになるのが$25000ぐらいで、しかも、そのピークにあたる国が米国であり、米国の一人当たりのエネルギー消費量はまだまだ増大傾向にあります。要するに、消費型といえるような環境負荷の場合には、クズネッツ曲線が本当に成立するのかどうか、不明確。

B君:消費型の環境負荷にもクズネッツ型を成立させるというのが、実に、次の問題である(9)持続可能先進国型問題。

A君:要するに、先進国では、エネルギー消費を増加させないで、経済規模の拡大ができるのか。エネルギー消費を減少させ、経済規模だけは拡大すること、すなわち、デカップリングが可能か
http://www.yasuienv.net/Decoupling.htm

C先生:持続可能途上国型問題というものは、したがって、2種類に分けることができて、一つは、クズネッツ曲線の極大を如何にして乗り越えるか、という問題。もう一つは、如何にしてクズネッツ曲線が問題になるレベルまで経済活動を拡大させるかという問題。

A君:具体的には、$3000ドルまで如何に拡大させるかという問題と、$1000ドルまで如何に拡大させるかという問題。このニ種類の問題は実はかなり違う。要は、山の登りと下りぐらい違う。

B君:国連の発表などによれば、一人一日$2ドル以下で生活している人が、世界の何%。これをせめて3ドルにすると、$1000ドルになる。ただ、国民総生産と国民所得とでは意味が違うので、厳密な話ではない。

C先生:$1000ドルまでの問題は、環境問題というよりもそれこそ貧困の問題であって、本来、このページの課題とは違うようにも思える。

A君:経済がほぼゼロの状態から$1000まで持ち上げるのは、なかなか難しい。天然資源を使うのがまあ順当なところですが。

B君:放牧だと自然資源への負荷が大きい。焼畑も負荷が大きく、持続型にするには、余程自然側に余力がないと。言い換えれば人口が少なければ、なんとかなる。通常の意味の農耕には水資源が鍵となり、化学肥料がやはり生産性を決める。

A君:化学肥料を十分に施肥できる農業は、$1000ドルレベルではない。

B君:肥料の量が、収穫量を決める。FAOのLouise O. Fresco氏は、こんなことを述べている。
http://www.fao.org/ag/magazine/0306sp1.htm

Half a century ago, farmers applied only 17 million tonnes of mineral fertilizers to their land. Today, they apply eight times as much. In northern Europe, fertilizer use has increased from about 45 kg/ha to 250kg/ha since 1950. In the same period, wheat yields in France increased every year, from about 1.8 tonnes/ha to more than 7 tonnes/ha.

半世紀前、農民は、1700万トンの化学肥料を用いていた。現在は、8倍使用している。北ヨーロッパでは、45kg/ha(1950年)から250kg/haへと使用量が増えた。そして、収穫も、1.8トン/haから7トン/haになった。

A君:その記事の最初のところで、オランダのウェニンゲン大学の学生が、何か発言して驚いたと書いてありますね。

I was amazed to hear several students say that raising crop yields with fertilizers was very dangerous and even immoral, particularly for African soils.

化学肥料を用いた収量の増大を目指すのは、危険なだけではなく、非倫理的である。特に、アフリカにおいては。

B君:どの先進国でも、化学肥料なるものに対する無理解が多い。

A君:やはり先進国の有機農業指向に影響されているのでしょう。

B君:ちょっと脱線するが、農業の生産性にも、クズネッツ曲線が適用できそうだな。最初は生産性が悪いが、そのうち、化学肥料が買えるようになり、農薬も買えるから、生産性が上がる。しかし、さらに経済的に発展をさせるには、有機農法のような方法をとって、生産性を落とす必要がある。

A君:社会全体が有機農法のような価値を認めること、これがある意味のプレミアム化ですから、本来の進むべき道とも言えます。しかし、それを消費者がきっちり理解しているかどうか。また供給者側も、それをきっちりと情報伝達しているかどうか。有機野菜は、別段、健康に良いというものではなく、新たな価値の創造にすぎないということを。

B君:しかし、国民所得とはなんなのだろう。すべての国民が完全に自給自足をしていたとして、それ以外に何も買わないという生活をしていたら、国民所得はゼロだということか?

A君:そういう指標なんでしょう。もともとの発想が文明型というか都市型というか、自給自足は経済ではないという立場の指標なんでしょう。

B君:いずれにしても、ゼロから$1000までの範囲はなかなか難しい。

C先生:国民所得$1000までの経済発展を起こすこと、本当に難しいことだ。しばしば起きることだが、このレベルを超して、武器が買えるようになると内戦状態になって、折角の蓄積がゼロに戻ってしまうこともある。勿論、武器が外部から政治的意図で供給される場合もあるので、ケースは様々だが。

A君:その範囲内だと、いずれにしても農業が鍵

C先生:現在、国連大学の環境分野には、4名のオフィサーという身分のコーディネータが存在しているが、そのうちの1名は、農業分野の能力開発担当になっている。各国に、持続型農業の指導者を作ることが使命だ。いずれにしても、ゼロからの出発は、極めて難しい。

A君:しかも、通常の意味での環境問題とも言いがたい。

B君:しかし重要、という困難な分野。

A君:そろそろまとめますか。毎回のまとめと同じ方法で良いのかどうか、それも疑問ですが。

C先生:持続型にならないのが問題だとして、これまでと同じ考え方でまとめてくれ。

A君:となると、、(10A)原因は?:(10B)加害者は?: (10C)被害者は?: (10D)解決法は?:というものを使うのですが、持続型にならない問題としても、$1000まで行かない問題点は?を(10−1)、その後$3000まで行かない問題点を(10−2)とでもしますか。

B君:$1000まで行かない問題。(10−1A)原因は?:人的資源が無いこと。天然資源があっても活用法が分からない。一時的に全部使ってしまう。向上心があったとしても、どうすれば良いかわからない。(10−1B)加害者は?:これは難しいところだが、やはりイギリス、フランスなどの植民地政策か。このときに、努力をすれば報われるということが無かったこと。未だに、他人を誤魔化して若干の利益を得ることを良しとする考え方が多いらしい。(10−1C)被害者は?:これは明白で、その国の国民。(10−1D)解決法は?:これはどうも月並みながら、人的資源の開発と、インセンティブの付与だろう。教育のレベルが最終的な違いを生み出す。

C先生:$3000まで行かない問題については、余り議論をしていない。

A君:具体的なイメージで行きますと、国としては、インドが$400ぐらいですから、$1000まではまだ遠い国。あの中国ですら、やっと$1000になったかどうかぐらい。

B君:一人あたり$3000というのは相当高いGDPだということになる。アジアで言えば、マレーシアぐらい。ここまで行くと、後は、環境を全く無視した経済最優先策でもやらない限り、そんなにも変なことにはならない。

A君:そこで、$3000まで行かないことを問題とすると、(10−2A)原因は?:かなり様々なケースがあるとは思うのですが、$1000を超しても、その後、部族間紛争などになることが多いですね。これが起きると、$1000の時代に戻ってしまう。さらなる原因を突き詰めると、どうも、人間性にまで戻るのか、それとも、植民地政策あたりに責任を擦り付けるのか。(10−2B)加害者は?:これも難しいですね。人口政策の過ちだとすると、過去の政治体制に問題があることになりますが。(10−2C)被害者は?:国民全部ではなく、特に、貧困層でしょうか。(10−2D)解決法は?:これも人的資源の開発と教育の普及といった月並みなところになりますか。

B君:要するに、$2000クラスまでなんとか行けば、しかも、そこで教育レベルがある程度維持できていれば、なんとかなる。

A君:ただし、環境負荷がそこまででどのぐらい蓄積されているか、じっくりと評価をする必要がありますね。日本の不幸を真似しないように。

B君:1970年の日本における一人あたりの総生産が$1890。$1000をやっと超したのが1966年。たったの4年で1.9倍にもなっている。この急成長が歪を招いたような気がする。

A君:環境問題は、「速度の問題」である。というのは、なんとなく真理ですね。

C先生:持続可能途上国型問題は、他の状況でもそうなのだが、「経済と環境」の問題だ。そして、問題解決の基本的な条件は、やはり、人的資源の拡充。そして、天然資源の持続的有効活用だろう。それに急ぎすぎは駄目。