________________


  環境問題の変質その6 02.15.2004



いよいよ「環境問題の変質」の最終回である。これまですでに5回もやっているが、残った問題は、持続可能型先進国の環境問題。最後の問題が、実に、もっとも難しい。


C先生:ある意味でもっとも簡単で、ある意味でもっとも困難な問題がこれ。簡単な理由は、全員がその気になれば、それなりに実現が可能だから。困難な理由は、誰も自発的にその気になるとは思えないから。

A君:これまでも何回もでてきた話だと思うのですが、先進国型の持続可能性の話は、本当に問題になるのは、まあ、100年後。要するに、現在の自分にはまず関係ない話。だとすると、この問題の重要性は、理性的な判断ができる人、すなわち、大脳支配の人間のみが理解できる、ということになりますね。

B君:ところが、多くの場合には、まだそこまでの知識も無い人が多いから、理性的な判断は不可能。

C先生:ところでA君が持続可能型の問題は100年後の問題だと言うが、何が100年後なのだろうか。それに、もっと近未来に起きる問題は無いのだろうか。

A君:100年後を意識しているのは、一つは、温暖化ですね。そして、もう一つは、関連する問題ですが、化石燃料の枯渇が始まること。

B君:石油などは、価格が大幅に上昇するかもしれないが、まあ、100年間では、本当の意味で枯渇する、要するに一滴も取れない状態になるとも思えない。

A君:価格が高くなると、他の資源に競争力がでてきますから、技術的な問題をクリアーすれば、絶対量としてはなんとかなるでしょう。しかし、炭素の多い燃料を使うことになるので、温暖化への影響が大変かもしれない。

B君:廃棄物問題は大丈夫なのだろうか。まあ、大丈夫のような気もするが。エネルギー問題との関係もあるので。

A君:要するにプラスチックゴミですか。いざとなれば、全部、リターナブル型にして、ワンウェイの容器包装は課徴金を掛けることにしてしまえば、ゴミはかなり減るでしょう。

B君:だから本当に困ればなんとかなるということか。名古屋市のケースがそうだったように。

C先生:プラゴミが問題というと、「プラスチックは、もともと石油なのだ」、という意見がでる。面白いことに、その次の主張は様々なんだ。
タイプ1:だからプラスチックをいくら使ってもエネルギー回収をすれば同じことになるのだ。
タイプ1’:最近のゴミ焼却炉は、発熱量は3000kcal/kg程度を想定して作られているが、紙ごみがリサイクルに回るものだから、2200kcal/kg程度の発熱量しかないゴミが燃やされている。発熱量が高いとエネルギー回収も効率的に行うことが可能。だから、プラスチックゴミは、焼却炉の餌なのだ。
タイプ2:プラスチックに使っている石油の量は、高々15%ぐらいものだ。日常生活で便利に使っておきながら、これに目くじらを立てるのはおかしい。他の用途のエネルギー効率を上げることが全体的な効率上昇になる。
タイプ2’:レジ袋ばかりが問題になるが、大体レジ袋などは、小さいものなら1枚3gぐらだろう。ガソリン1kg(1.2L)を原料にすれば、200枚ぐらいはできるのではないか。しかも、レジ袋はごみになれば焼却されて熱回収されるのだ。ガソリンを1.2L使うのを止めるか。それとも、レジ袋200枚を使うのを止めるか。
タイプ3:ガソリンは、明らかにエネルギー多消費の象徴だと思う。しかし、1Lあれば、プリウスなら20kmは走れる。20kmを歩いたら、4時間は掛かる。ところが、レジ袋の節約なら、マイバッグを持っていけばよいのだから、何のデメリットもでない。レジ袋は、ごみになって、住民税の無駄遣いにつながるだけだ。
タイプ4:プラスチックから熱回収ができるなどというが、実際のところ、熱効率は極めて悪い。高々10%だろう。レジ袋からガソリンに戻すのは可能ではあるが、ますます効率が悪いやりかたになる。となると、5分間しか使われない商品であるレジ袋はやはり削減対象にすべきだ。

B君:こんな議論にも持続型先進国問題が集約されている。

C先生:そうなんだ。本来行うべきことは、化石燃料などの枯渇型資源を最大限努力して使用削減すること。だから、いかなる細かいところも、削減対象にすべきなのだ。

A君:しかし、それをやらなかったからといって、曾孫は困るかもしれないが、自分たちがすぐさま困る訳ではない。

B君:さらに、やったところで、その効果はあまり見えない。どのぐらい曾孫を救ったことになるのか。

A君:多くの場合、エネルギー消費を減らすことは、不便になったり、あるいは快適性がそのなわれますからね。そちらの方は、自分たちの問題。

C先生:プリウスの冬季報告をやっていないのだが、あまり芳しくない。初代プリウスは、コールドの燃費が悪いと何べんも書いた。現行プリウスはかなり改善されたと言いたいところだが、実際には、暖房を使うと、相当に燃費が悪い。

A君:通常の車は、アイドリングをしていますから、暖房にエネルギーが必要だという意識は無いのが普通ですよね。

B君:エンジンには冷却装置が必要で、その一部の熱を暖房に回しているだけだからな。

C先生:ところがプリウスのように、アイドリングを基本的にしない車では、渋滞で長時間止まっていると、エンジンが冷えてしまう。だから、暖房のためだけに、エンジンが掛かる。

A君:冷房の方はかなり改善されたという話ですが。

C先生:冷房は、走行用のバッテリーをエネルギー源にして電動で駆動する。しかし、エネルギーを使っていることに違いは無いので、渋滞に入ったら、やはり燃費の低下は避けられないと思う。もっとも、9月20日納車だったから、冷房はほとんど使っていないが。

A君:そのうちの詳細な報告を期待します。

C先生:了解。本題に戻る。結局のところ、現代人は、様々な快適性・利便性を当たり前のことと思っているので、これらが大幅に損なわれるような状態を受け入れない。そのため、まず、行うべきことは、快適性・利便性をできるだけ損なわない形で、より効率的な資源・エネルギー利用を実現することだ。

A君:ファクターX論は、その先の議論で、途上国との公平性などを議論にしますから、快適性・利便性の低下はしかたがないと考えるタイプでしょうか。

B君:脱物質化なる言葉があるが、これは、程度によるようだ。最近の傾向としては、企業の利益を上げるにも、実は、物質の使用量を減らし、エネルギーの使用量を減らすことが、より効率的なんだ、という議論になっているように思える。例えば、10%の材料・エネルギー使用量削減によって、もしも、価値の創出が同じであるのなら、GDPは10%上がりうるという議論がある。

A君:いわゆるデカップリング。すごく革新的な理論ではありますね。ドイツでは、ブッパタール研究所などがリードして、インパルスプログラムなるものが走るみたいですが。

C先生:もしもその理論が本当なら、自然とその方向に行くはずなのだが、実際にはそう行かないのが、先進国型経済なのだ。

A君:うーん。国全体としてのGDPの増大が、個別の企業の利益と必ずしも比例しないからでしょうか。

B君:うん。そうだろう。例えば、エネルギー産業、石油産業、石油化学、素材産業などは、使用量を減少させてしまったら、価値の創出が同じになる訳が無い。一方、自動車や電気製品なら、重さを10%削って、同じ機能を出すことは不可能ではない。

A君:インパルスプログラムの説明には、材料の使用に無駄があるから、それを改善できると書いてありますが、素材メーカーとしては、できるだけ無駄に使ってもらう方が良い訳で、もし、20%あった無駄がゼロになったら、素材売り上げ量は確実に減少しますね。

C先生:日本の産業界を見てもその通りの状況だ。脱物質化を行うことで、利益が上がる企業が「組み立て産業系」。ところが、日本経団連などでは、依然として、素材系企業が大きな顔をしている。

A君:産業構造は、したがって、すぐには変わらない。

B君:だから、毎回言うように、30年後を考えて、そこへの軟着陸をどう目指すかが問題なんだ。

C先生:経済産業省にしても、国全体のGDPを増やし、雇用を増やすという目標をもっと明確にすべきだ。この議論、脱GDP理論があるのは、もとより承知の上。当面、GDP増大型を変えるのは無理と見ての話。

A君:ところが、経済産業省の構造自体が、国全体の産業活力を考えるよりも、それぞれの局が抱えている企業の利益代表になってしまっている。

B君:グランドデザインが書けていない。

C先生:要するに、このような理論を実施すると、どこかに痛みは出るのだ。その痛みが痛みで無くなるためには、人の流動性が出て、素材産業から、組み立て産業などに雇用が移動できなければ駄目なのだ。しかし、それには、他の企業でも戦力になるような人材が大多数を占める必要があるのだ。これは、最終的には教育・自己啓発の問題だから、相当に時間が掛かる。しかし、30年後の軟着陸を考えれば、なんとかなるだろう。

A君:そろそろまとめますか。(9A)原因は?:(9B)加害者は?: (9C)被害者は?: (9D)解決法は?:

B君:どう問題を捉えるかだな。それでは、先進国経済が持続型に向かわないのはなぜか?

A君:それなら、(9A)原因は?:自己防衛本能でしょうか。現在の商売をできるだけ続けたい企業。市民レベルだと、当面は、現在の快適かつ利便性の高い生活は保つ方向でしょうが、長期的には、快適性・利便性も下がる覚悟が必要でしょう。それができないから自己防衛的になる。そして、快適性・利便性を追求することが、人としての正しい方向だと考える。

B君:快適性・利便性もある程度までは必要だ。ただ、資源・エネルギー消費量と快適性・利便性との関係を絵に書けば、どうも、どこかから先は飽和するような気がする。所詮、最終的には幸福度の問題だろう。例えば、高級な商品を少し持つこと、と、安価な商品を大量に持つこと、この両者を比べたら、高級な商品を少量持つことを選択する人が多いのではないか。この後者の方が、資源・エネルギー使用効率は高い。

A君:となると、意識改革が遅れていることが原因でしょうか。

B君:まず、何かミニマムを満たす必要はあるが、現状の日本はまあそろそろ良い線に行っているのではないだろうか。

A君:はい次。(9B)加害者は?:現代人。現代社会。消費は美徳だと言った過去の著名人。米国型の経済システム。

B君:色々あるが、それを指摘してもどうだろう。一方、(9C)被害者は?:これは絶対的に未来世代なのだ。

A君:(9D)解決法は?:意識改革。教育。自己啓発。要するに、大脳で自分の本能を抑えることができる人になること。

B君:個人の努力では、無理っぽい。

C先生:確かに、個人的努力では、本当の解決に至る道筋は見えない。世界全体である枠組みを作る以外に無さそうに思える。しかし、その枠組みはできないような気がする。京都議定書すら、米国が離脱し、満足に発効できない状況なのだから。これで、環境問題の変質は最終回。次回からも、できるだけ、知識のパッケージ的なものを試みたい。