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  環境問題の変質 01.11.2004



 環境問題はどんどんと変質してきた。しかし、依然として、環境問題を以前の告発型の姿勢でしか解釈できない人もいる。同時に、変化がどのように起きているか、その理解ができず、単なる無害化が環境問題の解決だと思う人もいる。

 今回、様々な環境問題をどのような観点から見るべきか、を議論することによって、環境問題の変質を明瞭な形で示してみたい。
 そして、これは「知識パッケージ」第2弾である。パッケージ名称は、「環境問題を分類し、解決法を考えるための知識」。


C先生:環境観の違いだ、と言ってしまえば、それで終わりなのなのだろうが、例えば、発がん物質などに対する考え方が大きく違う。人工的発がん物質の存在は一切許せないという人も居る。そのために、前回、化学物質に対する「知識パッケージ」を記述する第一回目の試みを行った。今回は、第二回目になる。

A君:ある種の知識量が必要なのはあたり前ですが、同じ知識を持っていても最終的な判断が違う場合もあります。

B君:しかし、いわゆる知識人のレベルになれば、そんなにも違わないのではないだろうか。

C先生:本当の知識人になると、やはりある種の哲学まで共有し始めるのではないだろうか。

A君:ここでまとめる「知識パッケージ」は最小限のものですから、それを身に着けたところで、効果は限定的でしょうね。

C先生:今日は、「環境問題を分類し、解決法を考える視点を作る」のが課題だ。となると、いくつかの環境問題を例として取り上げることになる。さて、何を取り上げるべきだろうか。

A君:まあ、当然のことながら、古典的環境問題である「公害」から行くべきでしょう。

B君:同じ「公害」でも、水俣・イタイイタイ病と交通公害とでは、違うと思うので、2種類必要。

C先生:化学物質関係は、公害問題だけでカバーできないと思うが。

A君:そうですね。POPs問題とか、一般的な管理問題とか。

B君:それに、毒性問題となれば、RoHS規制の問題などがやはり議論の多少になるな。

C先生:その話になると、CSR=企業の社会的責任の話にもなってくる。より現代的問題だな。先に、ごみ問題に行こう。

A君:日の出町に象徴される最終処分地問題と、不法投棄問題は違いますね。ここでも2種類必要。

B君:さらに、ダイオキシンなどの焼却場に関する問題。

A君:ごみということに関連して、リサイクルと費用分担の問題。

B君:となると、拡大製造者責任問題にも繋がる。

C先生:やはり現代的問題になるな。順番は、後にして、リストだけ作るか。地球レベルの問題は。

A君:当然、温暖化問題。オゾン層破壊の問題は、かなり似ていますね。

B君:汚染関係になると、海洋汚染などになるのだが、どうも性格的にはPOPs問題に似ている。

A君:勿論、不法投棄による海洋汚染の問題は常に別扱いですね。不法行為ですから。

B君:それ以外の地球レベルの問題だと、資源・エネルギーの過剰消費問題と似てくる。例えば、熱帯林喪失に伴う諸現象。

C先生:地球レベルの問題は、先進国としての問題、途上国としての問題、と分けるべきなのだろう。

A君:環境問題というよりも、食品問題ですが、BSEなどによる安全性の問題も特異かもしれませんね。

B君:そろそろリストを作って見るか。

A君:いくつかまとめて持続可能型問題なるものを作りますが、良いですか。
(1)水俣型公害問題
(2)交通公害型問題
(3)POPs型問題
(4)日の出町型最終処分地問題
(5)豊島型不法投棄問題
(6)ダイオキシン問題
(7)リサイクル問題
(8)温暖化問題
(9)持続可能先進国型問題
(10)持続可能途上国型問題
(11)RoHS型問題
(12)CSR・EPR問題
(13)BSE型問題
(14)その他の問題

B君:その他の問題とは何だ。

A君:マイナスイオン問題とか、インチキなミネラルウォータに関する問題とか。

C先生:まあリストそのものも、後で変わる可能性があるから、こんなところで開始。

A君:まず、(1)水俣型公害問題。さて、どうやって議論しますか。

C先生:非常に簡単に歴史を記述。そして、どのような特性があるかを議論してみよう。

A君:了解。水俣病は
http://www.fsinet.or.jp/~soshisha/koushoukan/koushoukan.htm
での記述によれば、
 「メチル水銀を含んだ廃水は、1932(昭和7)年から1968(昭和43)年までの36年間、無処理のまま流された(廃水には、水銀以外にセレン、タリウム、マンガン等の有毒な重金属や化学物質も含まれていた)。排水中の水銀は400〜600トンにもおよび、不知火間沿岸で魚介類を食べ続けた人々に発生した大規模な有機水銀中毒事件です」。

B君:規模としては、1996年の政府解決策の対象者が10,353人だが、総数は、2万人という推定もあるようだ。

A君:さて、(1)水俣型公害問題ですが、環境問題としての特性を解釈しようとすれば、(A)原因は? (B)加害者は? (C)被害者は? (D)解決法は?といった議論で明らかになるのでしょうね。

B君:それに、環境問題の場合に、守るべきものなる概念があるから、かなりオーバーラップするが、それも追加すべきだろう。

A君:(1)水俣型公害問題。(1A)原因:直接原因は工場排水なんですが、それ以外の間接的原因としては、経済最優先主義、環境容量に対する無理解、などといったものでしょうか。(1B)加害者はチッソなる会社ではありますが、公害なるものに対する社会全体の無理解も大きくて、今から言えば、国としての責任も勿論「あり」でしょう。(1C)被害者は、地域住民。(1D)解決法は、直接的には、排水処理技術ですが、間接的には、排水規制であり、それを決めた社会が解決した。

B君:まあ、そんなところだろう。ただ、国の責任というところは、難しいところだ。裁判では国の責任は認められているが、国自身がその原因などについて十分な知識があったか、と問われると、なんとも。むしろ、賠償責任を持たせるという意味合いが大きかったのではないか。いずれにしても、このタイプだと直接的加害者と被害者がはっきりしていることが特徴。

C先生:この程度で次に行かないと終わらない。(2)交通公害型問題へ。

B君:西淀川、川崎、尼崎などの交通裁判があるなあ。西淀川について言えば、こんな説明があった。
http://www.aozora.or.jp/dororenrakukai.htm
高度経済成長期における、企業からのばい煙と道路からの排ガスによる都市型複合大気汚染の法的責任を初めて問うた、全国でも最大規模の公害訴訟。阪神工業地帯の主要企業10社と国・阪神高速道路公団を相手取り、健康被害に対する損害賠償と環境基準を越える汚染物質の排出差し止めを求めて、1978(昭和53)年に提訴しました。
 1995年7月の地裁判決(2〜4次)では、道路から排出される汚染物質と健康被害との因果関係があるとして、国・公団の責任を初めて認め、川崎・尼崎などの判決に影響を与えました。なお、企業との間では、1995年3月に和解が成立しています
」。
 西淀川の例のように、本来複合的大気汚染問題なのだが、企業活動による大気汚染の「環境問題の特性」は、水俣型と変わらない。そこで、(2)交通公害型問題だけを取り出せば、その(2A)原因については以下のようだろう。直接原因は、主としてトラックの排気ガス中のNOxとSPMといって良いだろう。間接的原因としては、やはり経済優先主義によるトラック輸送量の増大と排ガス規制の遅れ。(2B)加害者は、直接的に誰というのは難しい。輸送ないし交通関係の全体か。(2C)被害者は地域住民。これは(1C)と変わっていない。(2D)解決法だが、方法論としてはディーゼル車の規制と交通量の制限なのだが、前者については、東京都などの自治体が先行、国全体としても2005年には世界最高の規制になるから、その後解決されることを期待。交通量の制限は、今後の課題。例えば、ロードプライシング。

A君:(2A)原因ですが、単なる遅れというよりも、NOxのみに重点を置きすぎて、SPMを無視しすぎたためだと言えるのでは。

B君:NOx規制を厳しくしすぎたのかもしれない。

C先生:それでは、次。(3)POPs型問題

A君:現在、POPs(難分解性有機汚染物質)として、国際条約の対象になっているものが、以下の通り。
http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/kankyo/jyoyaku/pops.html
● 附属書A
  (1) アルドリン 殺虫剤
  (2) クロルデン 殺虫剤
  (3) ディルドリン 殺虫剤
  (4) エンドリン 殺虫剤
  (5) ヘプタクロル 殺虫剤
  (6) ヘキサクロロベンゼン 殺菌剤(非意図的生成物質としても発生)
  (7) マイレックス 防火剤
  (8) トキサフェン 殺虫剤
  (9) PCB 絶縁油、熱媒体
● 附属書B
  (1) DDT 殺虫剤
● 附属書C
  (1)(2) PCDD/PCDF(ダイオキシン) ゴミ等の焼却により発生する非意図的生成物質
  (3) ヘキサクロロベンゼン 殺菌剤(非意図的生成物質としても発生)
  (4) PCB 絶縁油、熱媒体

B君:化学物質の場合に、どうしても、難分解性の毒性物質が将来に渡るリスクを生じさせやすい。となると、対象としては、どうしても農薬関係が多くなる。

A君:(3A)原因はまとめにくいですが、農業による食糧生産、工業による経済活動には、どうしても多少の毒物が必要なのですが、できるだけ分解性の高いものを用いるべきという原則を知らなかったこと?

B君:うーん。無知が原因ねえ。環境中での分解速度が重要だなどということは、確かに、誰も知らなかったのかもしれない。

A君:(3B)加害者の特定も難しい。抽象的に化学産業とすることは不可能ではないですが。やはり、無知が原因? それとも、経済性優先の態度が原因?

B君:各国の規制が不十分だったということで、国が原因だということはやさしいが、本当にそれが原因だと言えるかどうか。POPsではないが、有機スズ系の船底塗料は、日本では規制されていても、まだ規制されていない国がある。こんな国には責任があると言える。

A君:国際的な枠組みが必要ということですかね。

B君:POPs条約のように途上国も含むようなものが。

A君:となると、原因としては、化学産業、無知、国、国際社会ですか。そして、(3C)被害者ですが、これまた難しい。最終的には、北極のアザラシなどの哺乳類。(3D)の解決法は、使用禁止。

B君:次に行くか。(4)日の出町型最終処分地問題。詳しくは、どこかを見て欲しいところなのだが、余り良いHPが見つからない。遮水シートに穴が開いているという主張は、例えば、
http://www.bekkoame.ne.jp/~mineki/hinode.htm

A君:実際のところ、問題には2種類あって、浸出水の毒性問題と、処分地不足。(4A)原因:ごみというものを出してしまう社会システムか。細かく言えば、いろいろあるが。(4B)加害者は、社会全体。すべての個人。すべての事業者。直接的には、自治体だということになっているが。。。(4C)被害者か。地域民とは言いがたいところだ。将来世代か? これも難しい。ごみ最終処分地は、将来、普通に使えるようになる。あえて言えば、場所の用途を限定するということかもしれない。となると、やはり将来世代か? (4D)解決策としては、排出量を極限まで下げる社会の実現。

B君:そんな社会も実現できそうな様相だ。

C先生:まあ、そんなところだろう。

A君:次が、(5)豊島型不法投棄問題
概要は、こんなもの。「1990年(平成2年)に明らかになった豊島における産業廃棄物不法投棄事件(以下豊島事件という)は、豊島総合観光開発株式会社(ミミズによる限定無害産業廃棄物中間処理業者、以下事業者という)によって、島の西端約220,000平方メートルに50万トンもの量が、13年間にわたり極めて悪質な不法投棄が行われたものである 」。

B君:(5A)原因:これは、犯罪行為なのあだから、本来、原因を議論すべきかどうか疑問だ。

A君:豊島でひどいと思ったら、青森・岩手県境の不法投棄などという問題も起きた。

B君:犯罪を防止するという意味での、法的枠組みが不足だったと言える。不法投棄なるものは、ほぼコストゼロだから、金を取れば莫大に儲かる。こんな犯罪を行った人間を厳罰に処するのは当然なんだが、罰金額が低かった。

A君:それに、廃棄物を出す側も、出してしまえば、もう責任は無いという仕組みだったですからね。だから、処理費の安い業者に出してしまう。

B君:それが変わった。罰金1億円。排出者の責任が問われるようになった。まあ、大規模な不法投棄は出ないことを祈ろう。

A君:(5B)加害者は、不法投棄の犯罪者だが、それ以外にも、廃棄物の排出者の無神経さもそうだった。法律が許すことなら、なにをやっても良いというものでは、本来は無い。それに、不法投棄の疑いを追求できなかった自治体にも責任があったように思えますね。(5C)被害者。これがなんと言うべきか。どうも、国と自治体のような気もする。となると、自治体は、加害者でもあり被害者でもある。しかし、本当の被害者は、納税者でしょうね。

B君:(5D)の解決法は、現状で十分かどうかは分からないが、まあ良い方向性ではある。

C先生:余りにも長くなってきたので、そろそろ、このあたりで、止めよう。となると、
(6)ダイオキシン問題
(7)リサイクル問題
(8)温暖化問題
(9)持続可能先進国型問題
(10)持続可能途上国型問題
(11)RoHS型問題
(12)CSR・EPR問題
(13)BSE型問題
(14)その他の問題
が、次回以降への持ち越しになる。全部で、3回ぐらいになりそうだ。