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ヒジキを食べると? 08.22.2004 ![]() |
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日本製のヒジキに対して、英国の食品規格庁が食べないように勧告した。 それに対して、厚生労働省は、通常の量であれば、問題はないとのQ&Aを発表した。 ところが、聖マリアンナ医科大学予防医学講座助教授の山内博氏が、厚生労働省の発表した量はあまりにも少なく、ヒジキ料理はその100倍もあるので、「妊娠女性と3歳以下の子供はヒジキを食べるべきでない」との見解を発表。 C先生:最近、英国からのデータで日本ではあたり前の食品に毒性があるという指摘が多い。キンメとメカジキの場合も、元となるデータは、英国だった。 A君:ヒジキなどというマイナーな食品も分析するというところがすごい。余程仕事がないのでは。 B君:日本食が急速に普及してくると、それに対して一応の警戒心を持たせるというポリシーなのかもしれない。 C先生:どこから議論すべきか、順番を決めよう。まずは、今回のきっかけとなった英国食品規格庁の発表からいくか。 A君:そうですね。 B君:そんなところだろう。 英国食品規格庁がヒジキを食べないよう勧告 A君:ヒジキのようなマイナーな食品について英国が調査しているのは意外ですね。 B君:ヒジキの英語がhijikiであることを始めて知った。 C先生:それには、いろいろと背景がある。ひとつは最近の健康食品ブーム。この食品が良いと信じると、そればかり食べる人がいる。そのため、食品に対する警告をきっちりと出さないと駄目だという状況がある。外国についていえば、日本食がかなり普及し、これまで食べたことのないような食材を食べる状況が出てきている。例えば、豆腐や豆乳。日本人にとっては全く問題のない食品でも、欧米人にとっては、女性ホルモン様物質を含むので、問題だと指摘する人もいる。まあ、日本食に対して警戒警報を出すという意図もあるのかもしれないが。 A君:健康食品の正しい食べ方は、健康食品だと思わないで食べること。すなわち、通常の食品のように、多種多様の食品を摂ることに拘ることがコツ。 B君:それが真実なんだが、それだと、健康食品メディアは職を失う。 C先生:この段階で疑問点は何だ。 A君:疑問点リスト B君:追加。 C先生:疑問の解明は、後ほど挑戦しよう。 A君:それでは、次に行きますか。 ヒジキ中のヒ素に関するQ&A Q.1 ヒジキについて、英国が発表した内容はどのようなものですか。 Q.2 ヒジキを食べることで、健康上のリスク(危険性)は高まりますか。 Q.3 ヒジキ以外にヒ素を含む食品はありますか。 Q.4 ヒジキ中ヒ素の国際的な基準はありますか。 Q.5 今後、厚生労働省ではどのような対応をとりますか。 平成16年7月30日 A君:まあ妥当のようにも思えますが。特に、ヒジキによるヒ素中毒の実例は無いというところが重要で、実際、ヒ素のようなどこにでもある物質が原因で妙なことが起きていれば、なんらかの症状が見られるのが普通ですから。 B君:そうだろう。「ヒジキ以外にヒ素を含む食品はありますか」、への回答として、水を上げるべきではないか。 A君:水道水のヒ素濃度基準が0.01mg/Lですからね。 B君:いやいや、水道水には問題は無いに等しい。もっとも、水道水の他の物質によるリスクはさらに低くて、水道水の最大のリスクはヒ素かもしれないのだが。問題は、むしろ、ミネラルウォータや温泉水。 A君:そうそう。最近、健康によいからといって、温泉水やミネラルウォータでご飯を炊くといった馬鹿なことが行われている。 B君:次に出てくる山内博氏は、こんな調査もやっていて、温泉水には、1mg/Lといったヒ素を含むものがあると警告している。 A君:それだと、1日107μg=1日0.1mgまでがWHO暫定基準だとしたら、簡単に超しそう。 C先生:そう言えば、「今週の環境」なる記事を書き始めた理由が、鹿児島県紫尾温泉の温泉水で炊いたご飯がおいしい、しかも、腐らないといって住民が温泉水を汲みに来るという放送を見たことがきっかけだった。ヒ素とは無関係かもしれないが。 B君:ミネラルウォータのヒ素の基準は、水道水の5倍甘い値で、0.05mg/L。特に、硬度の高い製品。すなわち、カルシウムやマグネシウムを含むから健康によいといってミネラルウォータを選ぶと、ヒ素量とカルシウム量は比例している場合が多いので注意が必要。 A君:一般に、外国製、特にヨーロッパ製の水は硬度が高いですね。エビアン、ビッテルなど。米国製のミネラルウォータは硬度が低いものが多いですが。日本製だと海洋深層水が硬度が極端に高い。 B君:昔の話になるが、当時の厚生省がおいしい水の基準というものを作ったことがあるが、エビアン、ビッテルは、硬度が高すぎてこの基準すら満たさない。海洋深層水などは、飲み水として全く不適当。下剤に近い。最近話題のコントレックスなどという水も同様だが。 A君:大体、飲料水で、カルシウムやミネラルを補うという発想がおかしい。 B君:そうそう、そういう意味では、ヒ素もミネラルの一種だ。 A君:ヒ素濃度の話に戻すと、バングラデシュなどで、地下水の飲用によるヒ素中毒患者が出ているが、その地下水の濃度が、0.1〜1mg/Lだとされています。となると、ミネラルウォータの倍ぐらいの濃度。 C先生:英国産のミネラルウォータはあまり聞いたことが無いが、ヨーロッパの水は硬度が高いので、飲料水からのヒ素摂取量が多いといえるだろう。日本は軟水が基本だから、昔からヒジキからヒ素を多少摂取して、ちょうど良い程度のヒ素量だったとも言えないか。ところで、ヒ素は必須元素なのか。 A君:それを疑問点に追加しておきます。 (b)ヒ素の毒性としてFSAは発がんリスクが高まることを述べているが、食品中のヒ素の最大のリスクは果たして発がんなのか。 (c)ヒ素は、ヒトにとって必須元素なのか。すなわち、最低必要摂取量はあるのか。 B君:そろそろ次か。 ◆ 2004.8.2 【続報】「妊娠女性と3歳未満の子どもはヒジキを食べるべきでない」、その他の人も週に小鉢1杯まで 英国食品規格庁の発表によって明らかになったヒジキの含有ヒ素は、厚生労働省の発表文が与える印象よりもかなり深刻な健康被害をもたらしている可能性がある。一般的なヒジキ料理の一食分は、厚労省が発表した1日平均摂取量の数十倍から100倍近い分量であること、発癌性以外に低濃度の無機ヒ素が胎児に恒久的な傷害を与える危険性があるからだ。ヒ素の毒性に詳しい聖マリアンナ医科大学予防医学講座助教授の山内博氏は、「妊娠女性と3歳未満の幼児はヒジキを食べるべきではない」と断言する。
B君:厚生労働省の記事をきっちり読めば、水で戻した状態のヒジキを毎日4.7g。この100倍だということは、470gか? 誰がヒジキを470g食べるんだ。 A君:この記事では、厚生労働省の0.9g(たぶん乾燥ヒジキの重さ)/日という値を採用して議論している。 B君:何を考えているのだ。この記者は。コメンテータもそんなことを解析していないのか。 C先生:この記事はどうやら基本が間違っているようだ。中沢真也さん、しっかりしよう。 A君:これが空き袋ですか。生協の芽ひじき。長崎産のひじきの早採りを、均一にやわらかく蒸し上げました。 B君:真空蒸煮製法なるものを使っていて、水で戻すと、10〜11倍になるという。普通の製品は7〜8倍らしい。 A君:日経ヘルスの記事は、6倍という値を採用していますね。 B君:おそらく、どこかに書いてある量。記者はどうも、そんなデータベースをどこかに持っているようななんだ。 C先生:それはそれとして、2名分と言う20gの乾燥ヒジキを戻したら、確かに11倍になった。その後、10分煮てから味付け。さらに15分煮た状況のが写真の量。比較のために、腕時計を隣に。今回、純粋にヒジキのみで調理。正確ではないが、水をざっと切って重さを計ると、不思議なことに8.5倍量程度まで含水量が減っている。 A君:それにしても、量としては多くないですか。 C先生:個人的な好みで言えば、8〜10人前といった感じだった。2名分とはとても思えない。4〜5倍もの過剰量なのでは。乾燥ヒジキにすれば、一人2gで十分。水戻しヒジキで20gか。 A君:とすると、日本料理店などの突き出しで出てくるヒジキは? C先生:さらに少ないな。水戻しヒジキ換算で10g以上は出てこないだろう。となると、その評価で5〜10倍過大評価だということになる。 B君:乾燥ヒジキと水戻しヒジキの評価でも10倍の過大評価。となると、全体では、50〜100倍の過大評価。 A君:この記事について疑問は? B君:なんで馬鹿げた間違いをしたのか、は疑問だが、これは科学的な疑問ではないな。 A君:それでは、疑問は無しとします。 C先生:これで前半は終わり。後半で様々な検討を行うが、前半だけで何が言えるか。 A君:最後の検討から見ても、厚生労働省のQ&Aで大体のところは良いのでは。 B君:まあね。しかし、加えて、水からのヒ素摂取をできるだけ控えるということを問題にすべきだ。ヨーロッパのような硬水を飲んでいる国と、日本のような軟水を飲んでいる国では、微量ミネラルについての許容量が違ってくるはず。 A君:ミネラルというと健康によいと無条件で思う日本人が増えていますが、実際のところ、ヒ素も立派なミネラル。一般に、ミネラルと呼ばれる元素は、不足も駄目だが、過剰摂取も駄目。しかも、その範囲が比較的狭いのが現実。 C先生:ミネラルウォータを常用していないこと、温泉水などで調理をしていない人にとっては、ヒジキは少量摂取している限りでは、相変わらず有用な食品のように思える。ヒジキに限らないが、毎日同じものを食べることが許容されるのは、穀物類・牛乳・果物・ある種の野菜ぐらいなもの。それ以外の食品は、様々なものを組み合わせて食べることが重要。「あらゆる食品にこだわりを持たないことにこだわる」ことがいつでも正解。今回のヒジキについても同様の結論。毎日、ヒジキを食べるのは馬鹿げている。 B君:食物といっても、所詮、他の生物ですからね。他の生物は、ヒトのために存在している訳ではない。 A君:残りの解析については、現在作業中。しかし、かなり資料が多く(英文)、解読に時間が掛かるのです。 C先生:それでは、次回以降に。 解明すべき疑問点リスト (b)ヒ素の毒性としてFSAは発がんリスクが高まることを述べているが、食品中のヒ素の最大のリスクは果たして発がんなのか。 (c)ヒ素は、ヒトにとって必須元素なのか。すなわち、最低必要摂取量はあるのか。
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