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ヒジキ中の毒物=ヒ素の毒性は? 08.29.2004 |
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ヒジキを食べると、ヒ素中毒になるのか。これが前回の話題であった。 和歌山ヒ素カレー事件では、急性中毒で4名が死亡している。しかし、急性毒性だけが毒性ではない。ヒ素には発がん性があることが知られている。もしも、ヒ素の慢性毒性が高ければ、その後、発がんといった心配もある。 逆に、ヒ素はヒトにとって必須元素であるとする考え方もあるようだ。 その毒性の実体をまとめてみたい。 C先生:平成10年と大分前のことになるが、大きな環境研究グループであった「人間地球系」の発表会を安田講堂で開催した。そのとき、鹿児島大学工学部の前田滋先生(現鹿児島高専校長)の発表「身の回りの化合物、ヒ素とアンチモンの環境影響」のヒ素に関する要旨は、以下のようであった。 ●(2・2)ヒ素の用途 ●(2・3)ヒ素の毒性 ●(2・4)海産食品中のヒ素化合物 ●(2・5)淡水生物によるヒ素の生体濃縮 C先生:以下、2名でよろしく。ちょっと出かけるから。 A君:それでは、それから6年を経て、現在どのような情報があるのか、探ってみますか。 B君:探り方はどうする。 A君:日本語文献があれば、と思ったのですが、どうもインターネット上には余りよいものが無い。そこで、いつもの、TOXINETで英語版で検討しようかと思って。 B君:しかし、その前に、ヒ素といっても、元素の状態で自然に存在しているわけではなく、いくつかの典型的な形態になっているようだ。種類によって特性に違いがあることを理解した方が良いのでは。 A君:確かに。ヒ素は3価か5価です。3価のヒ素が毒性が強く、酸化物であるAs2O3が特に毒性が強い。これが無機ヒ素と通常呼ばれる物質で、亜ヒ酸なるもの。和歌山カレー事件、森永ヒ素ミルク事件などの原因物質。 B君:それに対して、有機ヒ素で代表的なものは、図1のようなものがあって、名称はどうでも良いのだけど、(4)のアルセノベタインという物質の毒性は、極めて低く砂糖なみ。 A君:アルセノベタインだけでなくて、(1)、(2)、(3)とも毒性は低いですよ。 B君:そろそろ行くか。TOXINETに。 http://toxnet.nlm.nih.gov/ A君:無機ヒ素2種類がでて、その他を含むとなんと62種類も出ました。 B君:As2O3を中心に、記述するか。 A君:まず、急性毒性ですが、半数致死量も様々な値が報告されていて、1.4mg/kgぐらいから大きな数値だと、なんと549mg/kgなんといったものがあります。しかも、それがヒ素量でなのか、酸化物でなのか、余りはっきりしない。多分、酸化物の重さでしょう。 B君:日本の常識的な値だと、2〜3mg/kgということになっていないか。体重50kgだとすると、100〜150mg。 A君:いずれにしても、毒物劇物という区別をすれば、毒物であることに間違いは無いのでしょう。 B君:急性中毒は、まあ環境問題や食品安全としては考えなくて良いのだろうが、影響としては、嘔吐、腹痛、下痢などの出現、血圧の低下、心電図以上、白血球の減少、などが起きて、一週間ぐらいから肝機能障害、腎機能障害、そして、さらに長期的には、末梢神経の炎症が起きる。 A君:森永ヒ素ミルク事件というものが起きたが、その被害者を救済するために設立された財団法人ひかり協会のHPによれば、 「被害者数は、13,420名(2002年3月末現在)です。森永ひ素ミルク被害者集団の医学的特徴は、脳性麻痺、知的発達障害、てんかん、脳波異常、精神障害等の中枢神経系の異常が多いこと、ひ素中毒特有の皮膚変化である点状白斑とひ素角化症が検診受診者の2〜7%に存在すること、いろいろの身体的愁訴をもつ被害者が多いことです。 となっています。 B君:ヒ素は、ミルクの安定剤に使われた第二燐酸ソーダに含まれていたとのこと。亜急性から慢性のドーズ量を3ヶ月も摂取した結果だった。 A君:慢性中毒は、地下水の摂取によるものが最大の原因で、インド・バングラデシュで4700万人、中国の内モンゴル自治区と山西省で300万人、その他の地域でも、数10万人規模の慢性中毒患者が居るとされています。 B君:水以外にも、石炭燃焼によるヒ素暴露もある。石炭というものは、もともと生物だけに、どんな元素を含んでいても不思議ではなくて、特に、イオウと化合物を作りやすい元素は、石炭にはかなり大量に含まれている。ヒ素もその一つ。 A君:ヒ素は、地殻の構成元素としては、多い方から20番目ですから、あたり前とも言えます。 B君:水の規制値は、水道水が世界中ほぼ同じ値で、0.01mg/L。ミネラルウォータがその5倍緩くて、0.05mg/L。そして、慢性中毒になるような地下水の濃度が0.1〜1mg/L。ということは、実際に症状が出る濃度のマージンがミネラルウォータの場合には2〜20倍ぐらいと非常に少ない。こんなにも危険レベルが高いものはそんなに無い。ちなみに、温泉水のヒ素濃度は、問題の地下水と同じレベル。 B君:ヒ素の発がん性だが、多くの発がん例は、金属精錬に従事していた労働者の呼吸器系のがん。これは、硫化物を原料とする金属精錬業、例えば、銅、スズ、亜鉛、などの鉱石には、ヒ素が含まれていることによる。 A君:それに対して、口からヒ素を飲んだ場合の発がんは、皮膚がんだとされています。 B君:体内に取り込まれたヒ素は、メチル化されて、体外に排出される。しかし、その中間のメチル化物がラジカルを生成して、それが発がんの原因ではないか、という話がある。 A君:メチルアルソン酸と、ジメチルアルシル酸なる物質で、図1にも載っていますが、急性毒性を示すLD50ですと、1200mg/kgとか1800mg/kgとかいった大きな値で、普通物なんですが。 B君:有機ヒ素が無害だと言われる形態は、アルセノベタインで、10000mg/kgといった値らしい。 A君:もっと重要な情報として、ヒ素の体内半減期。これは比較的短くて、無機ヒ素で28時間ぐらい、有機ヒ素だと5〜6時間。 B君:こんなにも代謝の早い物質が発がんに効くということは、やはり毎日ヒ素を摂取するということが必須条件になるのではないだろうか。 A君:森永ヒ素ミルクの場合のヒ素暴露のように、一時的な暴露が発がんに繋がるかどうか。これが有用な情報を与えるのではないでしょうか。これ以上説明すると、微妙な発言になってしまいますが。 B君:どこまで分かっているのかどうか。発がんといっても、イニシエーターというきっかけを作る物質とプロモーターといって、発がんを促進する物質があって、その両方の条件がそろわないと発がんはしないのが普通。となると、その後の生活がどんな様子だったのか、ということが利くだろうし。 A君:TOXINETで指摘されているプロモーターには、SOx、金属酸化物の煙、たばこ、がありますね。 B君:それは、なんとなく、肺がんには効きそうだが、経口摂取した場合にもそうなのだろうか。 A君:すくなくともヒジキでの肺がんは無さそう。となると、ヒジキの食べすぎが発がんにつながるとしたら、それは皮膚がんでしょうか。 B君:あまり良くは分からないが、それ以外に無いだろう。しかし、さらに考えると、それも無さそうに見える。毎日毎日、ヒジキを食べるのでなければ、体内半減期の短さによって、問題が無さそうに思える。 A君:ヒジキの過食の影響についての疫学調査は行われていない感触ですね。勿論、調査をしてみなければ分かりませんが、もしもヒジキを食べ過ぎて何かが起きているとしたら、それはどこかの漁港でしょう。 B君:それは間違いは無い。ただし、漁師は日焼けをしているものだから、もともと皮膚がんの危険性はかなり高いのではないか。だとすると、ヒジキの影響なのか、日焼けの影響なのか、分かりにくい。いずれにしても、こんなところがヒ素の毒性情報だろうか。 C先生:今、戻った。どこまでできたか知らないが、前回の宿題に答えを出してくれ。以下の3点だが。 (a)他の海草は有機ヒ素を含むが、ヒジキは無機ヒ素を含むという記述の解釈。すなわち、量的にどうなのか、それは、天然ヒジキでもそうなのか、加工過程で有機ヒ素が無機ヒ素化するものなのか。 (b)ヒ素の毒性としてFSAは発がんリスクが高まることを述べているが、食品中のヒ素の最大のリスクは果たして発がんなのか。 (c)ヒ素は、ヒトにとって必須元素なのか。すなわち、最低必要摂取量はあるのか。 A君:はいはい。最初から。 (a)他の海草は有機ヒ素を含むが、ヒジキは無機ヒ素を含むという記述の解釈。すなわち、量的にどうなのか、それは、天然ヒジキでもそうなのか、加工過程で有機ヒ素が無機ヒ素化するものなのか。 この質問ですが、天然ヒジキには特異的に無機ヒ素が多いようです。それが何故かは不明。 (b)ヒ素の毒性としてFSAは発がんリスクが高まることを述べているが、食品中のヒ素の最大のリスクは果たして発がんなのか。 もしもヒジキに限れば、多分皮膚がんだという結論になるのでしょう。なぜならば、発がんには、閾値が無いとされている。本当のところは違うと思いますが。そして、ヒジキ中のヒ素の場合には、もしも発がんの原因になるとしたら、経口摂取ですから、肺がんは可能性が低いのでは。そして、皮膚がんが残る。もしも、そうだとすると、漁師を対象として疫学が行われたとしても、日焼けの影響と区別がしにくい。 (c)ヒ素は、ヒトにとって必須元素なのか。すなわち、最低必要摂取量はあるのか。 につきましての結論は、「多分そうだ」、なんですが、その理由が「ヒ素の代謝過程が早くて効率的だから」、らしくて、この理屈はよく分かりません。 B君:ヒ素は、地上に多い元素だから、代謝能力を持たない生物は滅びた可能性が高い。だから、ヒトなる生物も、十分なる代謝能力を持っている。 A君:だからといって、必須元素だということにはならない。 B君:まあね。 C先生:それでは最後のまとめ。 A君:いずれにしても、ヒ素は、以前「猫いらず」、と呼ばれた殺鼠剤とか、農薬にも多用されていました。最近は、さすがに使われなくなっていますね。ですから、温泉水を飲む、ヒ素濃度の高いミネラルウォータを飲み続ける、といったことが無い限り、ヒトへの暴露量は下がっているのではないでしょうか。 B君:ヒジキについても、前回の考察で大体はOKのように思える。要するに、すべての食材について、健康によいから毎日大量に食べるということを避けることが重要。 A君:ヒジキも少量なら良さそうですし。 B君:毎日食べ続けてよい食べ物は、穀物(豆)、乳製品、果物、ある種の野菜ぐらい。まあ、これに少量の肉と魚を加えることも可能かもしれないが、ベジタリアンの存在から分かるように、肉と魚は食べなくても生存にそれほどの問題はおきない。その場合には、必須アミノ酸を摂るために、米と大豆、小麦とレンズマメ、トウモロコシとエンドウマメのように、穀物と豆類の組み合わせは必須になるのだが。 C先生:厚生労働省の通達で大体良さそうということが、最終的な結論か。よし、結論は先週のままだ。 |
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