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   Goalと目標論 第2弾   03.26.2016
           持続可能開発目標SDGsをどう読むか        




 26日土曜日、麻布大学
の環境カフエあざぶに呼ばれました。主題は『水と衛生−環境科学科が育む環境人材と国連持続可能開発目標(SDGs)』でした。20名弱の参加者でしたが、その実、なかなか面白い会合でした。

 今回の環境カフエでは、SDGsのすべてを取り上げるという訳ではなく、目標6である「すべての人々の水と衛生の利用可能性と持続可能な管理を確保する」が主題でした。

 筆者が話題として取り上げたのは、(1)まず持続可能な開発目標は、どのような種類文章から構成されているかを解析してみる、そして、(2)個別の目標をどう解釈し、そして大学・市民社会などがどのように取り組むべきなのか、という2点でした。



C先生:勿論、SDGsとは何かについて、若干の説明から始める必要がある。国連総会で承認されているので、日本政府も何らかの対応をする必要があるし、地方自治体も同様。すでに、東京都は、廃棄物処理計画の改定時に、その内容を一部取り入れた。
 現時点での問題は、日本語が仮訳であること。外務省のWebサイトでも、仮訳として、IGESの訳を使って、それを編集(包括的と包摂的の違いなど)しているのだけれど、まあ、相当にこなれていない。印象が奇妙な外交文書のままなのだ。

A君:これまで、本Webサイトでも、SDGsを取り上げようと考えたのですが、目標が1から17まであり、その他にそれぞれの目標を具体的に細分化した項目が合計169もあって、とてもとても、すべてを書き出すだけで字数が多くなりすぎるのです。
 次の文書の
 http://www.mofa.go.jp/mofaj/files/000101402.pdf
 p14から17の目標が、p15から169の個別の目標があります。

B君:まあ、17の目標ぐらいは、引用して、ここに掲載しておこう。

持続可能な開発目標
目標 1.
あらゆる場所のあらゆる形態の貧困を終わらせる
目標 2. 飢餓を終わらせ、食料安全保障及び栄養改善を実現し、持続可能な農業を促進す

目標 3.
あらゆる年齢のすべての人々の健康的な生活を確保し、福祉を促進する
目標 4 .
すべての人に包摂的かつ公正な質の高い教育を確保し、生涯学習の機会を促進す

目標 5. ジェンダー平等を達成し、
すべての女性及び女児の能力強化を行う
目標 6.
すべての人々の水と衛生の利用可能性と持続可能な管理を確保する
目標 7.
すべての人々の、安価かつ信頼できる持続可能な近代的エネルギーへのアクセス
を確保する
目標 8 . 包摂的かつ持続可能な経済成長及び
すべての人々の完全かつ生産的な雇用と働き
がいのある人間らしい雇用(ディーセント・ワーク)を促進する
目標 9. 強靱(レジリエント)なインフラ構築、包摂的かつ持続可能な産業化の促進及び
イノベーションの推進を図る
目標 10. 各国内及び各国間の不平等を是正する
目標 11. 包摂的で安全かつ強靱(レジリエント)で持続可能な都市及び人間居住を実現す

目標 12. 持続可能な生産消費形態を確保する
目標 13. 気候変動及びその影響を軽減するための緊急対策を講じる*
目標 14. 持続可能な開発のために海洋・海洋資源を保全し、持続可能な形で利用する
目標 15. 陸域生態系の保護、回復、持続可能な利用の推進、持続可能な森林の経営、砂漠
化への対処、ならびに土地の劣化の阻止・回復及び生物多様性の損失を阻止する
目標 16. 持続可能な開発のための平和で包摂的な社会を促進し、すべての人々に司法へのアクセスを提供し、
あらゆるレベルにおいて効果的で説明責任のある包摂的な制
度を構築する
目標 17. 持続可能な開発のための実施手段を強化し、グローバル・パートナーシップを活
性化する
*国連気候変動枠組条約(UNFCCC)が、気候変動への世界的対応について交渉を行う基本的な国際的、政府間対話の場であると認識している。


A君:ざっと読んでみると、あらゆる場所、あらゆる形態、あらゆる年齢、すべての人々、といった言葉が出てくる項目が多いですね。赤いボールドにして見ましたが。

B君:地球上の人間の一人残さず対象にするという意識の表明になっている。これは、国連という組織そのものが、全会一致が大原則なので、加盟国のすべての人々を対象にする以外にやり方はない、という根本思想が現れている。

A君:これを目標だと言ったら、厳密に考えなくても、達成は最初から不可能ですね。日本語は目標になっていますが、もともとGoalなのです

B君:パリ協定の内容を日本における温暖化対策計画にどのように組み込むかという議論のときに、日本の経団連系の企業からは、「実現不可能なことは組み込むな」という発言が多かった。そのため、このWebサイトでも、「GoalとTargetは違うのに、日本だと両方とも目標と訳される」からだ、今後は、この違いをきちんと区別して、どのように取り扱うべきかを議論すべきだ、という内容の記事を随分と書いてきた。

C先生:今回も全くそのような配慮なしに、全体として、「持続可能な開発目標」になっているし、目標1から目標17までの持続可能な開発目標になっている。

A君:それなら原文ではどうなっているのか。全体は、”Sustainable Development Goals” Goal1からGoal17になっている。

B君:Goal1の本文は、”End poverty in all its forms everywhere

A君:先ほど、赤いボールドにしたものが、典型的ゴールというか、厳密に言えば、実現不能とも言うべき意欲的な表現です。この意欲的なゴールのことを、英語ではなんと言うのか。

B君:それは、例えば、この文章が良いかもしれない。本文の55.にあるものだけれど。
Targets are defined as aspirational and global, with each Government setting its own national targets guided by the global level of ambition but taki ng into account national circumstances.

A君:まあ、aspirationとgoalですか。その違いについては、英語版のAskでこんな表現になっています。
Q:What are some examples of goals and aspirations?
A:An aspiration is a long-term hope or ambition of achieving something in life, such as becoming a lawyer or a medical doctor.  In contrast, a goal can be a shorter-term individual step toward achieving a specific aspiration, such as passing the law school entrance exam or getting admitted to medical school. Many times the words "aspiration" and "goal" are used interchangeably.

B君:まあ、厳密な区別はされない場合が多いという言い訳付きか。

A君:それなら、Sustainable Development Goalsがどのように説明されているかを見てみますか。まずは、Wikiです。
The Sustainable Development Goals (SDGs) are an intergovernmental set of aspiration Goals with 169 targets.

B君:単なるGoalではなくて、Aspiration Goalというもがあると理解すべきなんだろうな。

C先生:これまで、GoalとTargetの区別を議論してきたが、今回のSDGsについては、単なるGoalではなく、Aspiration Goalsというものが別途あるという考え方を持つべきだということのようだ。

A君:日本語で言えば、意欲的ゴールですかね。それとも、究極的ゴールでしょうか。

B君:となると、日本語で、ゴール、目標に加えて、意欲的ゴールあるいは究極的ゴールを定義する。

A君:なんだか日本語としてこなれていない。別の言葉を持ち込むべきでは。ちょっとチェックして、一つの候補となる言葉を発見。それが「大志」。

B君:「少年よ、大志をいだけ」か。"Boys, be ambitious”by William Smith Clark.

A君:ambition と aspiration の違いってなんでしょうね。ということで、ちょっと調査。色々な記述が見つかりますね。
http://www.differencebetween.com/difference-between-ambition-and-vs-aspiration/
 一つ、正しいように思えることは、「Ambitionは、これを重要視しすぎて、悪い経路を選択したという実例を思い起こす」という表現。それに対して、「AspirationはAmbitionよりいささかノーブルな考え方」

B君:となると、クラーク先生は、おとなしい日本人に対して、「もっと露骨に自分の願望を追いかけろ」、と言ったのかもしれない。となると、「少年よ、大志をいだけ」という日本語訳が間違っているのかも。大志は、むしろAspirationが近い。

C先生:それでは結論を出すことにするか。まず英語。これまでの議論のように、Target、Goalは違うものとして考える。そして、単なるGoalよりも上位というか、意欲的なものとして、Aspiration Goalといものが存在していることにする。そして、日本語としては、目標、ゴール、大志の3種類にする。

A君:それでは、これを図解してみますか。

C先生:それでは、最後に、昨日の環境カフエのテーマだった、「水と衛生」すなわち、目標6の個別目標を記述して見よう。

A君:単に記述するのではなくて、分類を記入し色を付けてみます。
Aspiration Goal=AG
Goal=G
Target=T


目標 6. すべての人々の水と衛生の利用可能性と持続可能な管理を確保する
6.1 2030 年までに、すべての人々の、安全で安価な飲料水の普遍的かつ衡平なアクセスを達成する。AG
6.2 2030 年までに、すべての人々の、適切かつ平等な下水施設・衛生施設へのアクセスを達成し、野外での排泄をなくす。女性及び女児、ならびに脆弱な立場にある人々のニーズに特に注意を払う。AG
6.3 2030 年までに、汚染の減少、投棄の廃絶と有害な化学物・物質の放出の最小化、未処理の排水の割合半減及び再生利用と安全な再利用の世界的規模での大幅な増加させることにより、水質を改善する。G
6.4 2030 年までに、全セクターにおいて水利用の効率を大幅に改善し、淡水の持続可能な採取及び供給を確保し水不足に対処するとともに、水不足に悩む人々の数を大幅に減少させる。T
6.5 2030 年までに、国境を越えた適切な協力を含む、あらゆるレベルでの統合水資源管理を実施する。T
6.6 2020 年までに、山地、森林、湿地、河川、帯水層、湖沼を含む水に関連する生態系の保護・回復を行う。T
6.a 2030 年までに、集水、海水淡水化、水の効率的利用、排水処理、リサイクル・再利用技術を含む開発途上国における水と衛生分野での活動と計画を対象とした国際協力と能力構築支援を拡大する。T
6.b 水と衛生の管理向上における地域コミュニティの参加を支援・強化する。T

C先生:ということで、具体的な説明をする余裕はないけれど、これらの個別目標について、まずは、分類が不可欠。(1)日本にも重要である課題、(2)他の国に取って重要だけれど日本の国際協力が不可欠な課題、さらには、(3)日本の状況が世界の状況に比べて過剰品質や水資源の過剰な利用になっていないかという課題、といった分類をして上で、実施計画を作成することになるだろう。