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  業種別当面の課題  04.05.2003
     自動車・電機産業



前回、概論を述べた続きである。今後、社会全体としての10年間の環境関連の方向性が見えてきた、と考えられるので、それに対応するために、各企業が当面の課題として考えるべき事柄について、業種別の解析を行う。


C先生:もう一度振り返ると、循環型社会基本計画とWSSDの実施計画、それに京都議定書が発効することを加味して読み取れる今後の方向性は、以下のようにまとめることができるだろう。
 @ 資源生産性の向上 = GDP/資源採取量
 A 循環利用率の改善 = 循環再生材/(循環再生材+バージン材)
 B 最終処分量の大幅削減
 C 二酸化炭素排出量の削減
 D 「排出者責任」「拡大製造者責任」
 これに加えて、これまでの対策の延長線上にある
 E 有害物質削減といった方向性
 以上の6項目に対して、どのように整合性をもって取り組むか
、ということだろう。

A君:それでは、前回に上げたリストから最初の業種。

(1)自動車・輸送機器

B君:まず、@資源生産性だが、最近のように小型車が売れるのは良いが、車の世界では、やはり大型車の方が価格が高いだけに、資源生産性は高いだろう。例えば、トヨタのヴィッツは、1リットル5ドアが100万円として、870kg程度の重さ。セルシオはざっと700万円で1820kg。
 GDPではないが、価格/重さで評価すれば、
   ヴィッツ : 115万円/トン
   セルシオ : 385万円/トン

A君:3.3倍以上ですね。

C先生:車の場合、二酸化炭素排出量を考えると、地球から資源を採取して材料製造、組立といった製造時に10%、使用時に90%ということになるから、Cの二酸化炭素排出量を削減しようとすると、燃費を稼ぐべきことになる。燃費は、ほぼ、車重で決まるから、車重を増やすわけにはいかなくなる。となると、今後の方向性は、「軽量な小型車で高級なものをいかに売るか」、だろう。

A君:循環利用率ですが、現在、車の場合には、リサイクル可能率を高めようという動きは確実に進行しているのですが、利用側はまだまだ。要するに再生材はなかなか使いにくいようです。バンパーには再生材をという話が結構有ったのですが、やはりセルシオのバンパーには使えない。

B君:鉄板(薄板)も、やはり品質が問題になるから、バージン材だ。修理を考えるとどうかとは思うのだが、アルミボディーというものは考慮する余地があるように思う。アルミなら、リサイクルして大体のところ元に戻るから。

C先生:となると、現状で、もっとも未来志向を満足している車としては、ホンダのインサイトだということになるだろうか。この車は、アルミフレームだし、ハイブリッド車だ。216万円で850kg。
   インサイト : 255万/トン

A君:現状では、恐らく日本中でもっとも燃費の良い車でもある。

B君:しかし、乗車定員2名だから売れない。アメリカでは結構売れたようだが。

A君:ホンダ・インサイトがもっとも当面の課題を満足している車だというと、燃料電池車はどうなるのだ、という質問が来るような気がします。

B君:あれはあくまでもトヨタ・ホンダのポーズだ。

A君:技術的水準を見せたかった、あるいは、何がなんでも世界最初をやりたかった。

C先生:今後10年の課題を議論しているときに、2030年まで普及する可能性が全く無い燃料電池車のことを取り上げる必要は無い。

A君:となると、当面はハイブリッド車。

B君:妥当な線だ。ハイブリッドに行けなくても、最小限、アイドリングストップ機構は義務化すべきだ。これだけで、都会だと30%程度の燃費向上になる。

A君:トヨタのマイルドハイブリッド・クラウンも名称はともかくとして、先進的な取組みではありますね。

B君:スズキのツインハイブリッドも、実質的にはアイドリングストップ車。ただし、年間100台程度の生産量では、なんとも。

C先生:結論的には、高級小型車。燃費を向上させるために、軽量化をし、なおかつ高級感を出して高く売る。

A君:軽量化すると、今の車評論家達は、ボディー剛性がどうのこうの、とか言いそうですが、スポーツカー的な操縦性をすべての車に求めるのは間違っていますよ。

B君:多少フェナフェナしていても、安全性がしっかり確保されていれば良い。できるだけ軽量化をすべきだ。

C先生:ディーゼルをどのように考えるか。これは大問題。2005年規制が来てしまうから。

A君:ヨーロッパは、ディーゼル指向が強いのですが、それは、歴史的な問題と、燃料使用量をリットルで評価したときの計算上の燃費が良いからでしょう。二酸化炭素排出量で比較すると、そんなに良いとも言えない。

B君:ヨーロッパだと、軽油とガソリンの価格は同じ。

A君:日本のディーゼルエンジンは、国際的な競争にさらされることが無かったために、技術的には大幅に遅れています。

B君:それを取り戻すべきなのか。最低限、トラック・バス用エンジンの開発は進めるべきなのだろうか。

C先生:そのあたりも難しいところで、CNG(天然ガス)車で済むという話もありうるが、世界のトップを目指すのなら意味があるかもしれない。

A君:VWのような小型ディーゼルエンジンは、日本では余り売れない。

B君:技術格差があまりにも大きくて、いまさら開発をすべきではないのかもしれない。しかし、それも寂しい。

A君:乗用車用は、ハイブリッドで良いという考え方も有りますし。まあ、こんなところで。

C先生:それ以外の問題は?

A君:無害化と材料の問題でしょうか。EUのELV指令(End of Life Vehicles)では、2003年7月以降の販売車は、原則として鉛、水銀、カドミウム、六価クロムの使用禁止です。

B君:鉛バッテリーは使える。鉛はんだの使用もOK。

C先生:水銀も、液晶のバックライト用、放電式のヘッドライト(HID)用はOK。

A君:六価クロムは、ボルトナット類とブレーキ用の防錆には、OK。

C先生:こんな状況だと、家電業界は、自主規制とか言い始めて、規制の先取りを始める。自動車業界は、その点大人なので、そんなことはしない。

A君:塩ビをどのように扱うかを見ていれば、しっかりとした判断を行っているかどうか、良く分かりますね。

B君:車の電気配線を非塩ビにするといったことは、ほとんど無意味だろう。発火性が高い樹脂に難燃剤を入れるのと、塩ビを使うのと、そのどちらが良いか。

C先生:可塑剤の毒性が問題にされる傾向があるが、環境ホルモンとしての可能性はほとんど考えなくて良くなっている現状から判断すれば、塩ビを使うことによって、より安全性が確保できれば、そんな方向性を指向すべきだろう。これも「当面の課題」の一つに上げておく。

A君:以上、自動車業界を中心の議論でしたが、「当面の課題」は、
(1)小型高級車で燃費の良い車を作ること。
(2)ハイブリッド車を推奨するが、最低でもアイドリングストップ車。
(3)ディーゼルは、2005年対応車の様子見。
(4)使用材料の無害化は、大人の判断で行くべし。塩ビの使用が一つの指標になりうる。むしろ塩ビ活用と言えれば、大人だ。

C先生:こんなところで良いだろう。

A君:次です。

(2)家電・電機

B君:この業界は、マイナスイオンに代表される小手先の誤魔化しを止めるのがまず、当面の課題の第一ではないか。

A君:本質的な改善もしっかり進んでいるのに、メーカー間の差が無いからそんなことになる。

B君:最近の話題は、松下の「酸素富化エアコン」。一応、21%の酸素を守るといっているから、本当の意味での酸素富化ではないのだが。

A君:マラソンの高橋尚子さんが高地トレーニングというものを行って本番に備えることとは全く逆のアプローチ。

B君:勉強部屋にこんなエアコンが設置されている状況で子供が育ったら、受験会場のムンムンした酸素不足の状況では、能力を全く発揮できないで惨敗といった結果を生み出すだろう。

C先生:まあ、それはそれとして、当面の課題を。

A君:テレビについては、薄型でしょう。

B君:アナログ地上波が2011年7月24日に止まる、、、はず。これも10年以内の大きな変化だ。

C先生:これから10年間でもっとも大きく変わる家電が、テレビ。関連して、DVDなども普及はするだろう。DVD−HDDレコーダを使ってみると、やはりVHSなどとは違って、綺麗だし、テープの面倒さが無い。

A君:それに情報家電が多少でしょうか。冷蔵庫の中身のチェックが携帯電話でできるようになるかどうか。

B君:10年で普及することはない、に賭ける。食品に共通のバーコードが付くことは無いから。

C先生:テレビに戻る。日本の家屋を考えると、余り大きい画面は眼が回るだけ。しかし、薄型のテレビはスペース上有利だから、これからは、やはり薄型。しかし、プラズマか、と言われると疑問。当面は液晶か。プラズマは、消費電力がもっと格段に下がれば、が条件。

A君:D4端子付きの液晶テレビを買っておけば、後々後悔することもないでしょう。

B君:液晶テレビは高い。シャープAQUOSの37インチだと、実売平均価格が60万円ちょっと。

A君:重量は、チューナー部を合わせて29kg。消費電力は189W。
     シャープAQUOS = 2070万円/トン

B君:資源生産性は、セルシオの5倍以上。それは、当然のことながら、製造のエネルギーなども相当掛かっていることになる。

A君:普通のテレビと比較してみましょうか。パナソニックのTH-36D30。36インチのCRTハイビジョンです。重量79.5kg。消費電力204W。意外と消費電力が少ないですね。価格を20万円強として、資源生産性は、
     パナソニックCRTデジタルハイビジョン = 250万/トン

B君:恐ろしいことに車なみ。セルシオ以下だということだ。

A君:次はプラズマ。代表格として日立 37V-PDH3000、34.7kg、消費電力294W、価格46万円。
     日立プラズマデジタルハイビジョン = 1325万/トン

C先生:こう見ると、まあ、液晶が今後10年にはもっともフィットした製品らしいことになる。さて、テレビ以外はどうだ。

A君:これまで余り考察をしたことのない製品、洗濯機

B君:価格.comで価格を調べる。一番品数の多いナショナルを選択することにする。もっとも高いのが、15万円強。NA-SK600のドラム式。

A君:洗濯・脱水が6kgまで、乾燥容量は3kgまで。消費電力は、洗濯時にモーターが250W/ヒーター900W。乾燥時モーターが155W/ヒーター1200W。

B君:重さがなんと99kg。
     ナショナルドラム式洗濯乾燥機=152万円/トン

A君:かなり高いのが、NA-FD8002。大体8万円ぐらいで、46kg。売りは、なんとマイナスイオンミスト。洗濯時350W、乾燥時1170W。使用水量130L。

B君:やはり高いものがある。NA-FD6001。大体9万円。洗濯6.0kg、乾燥3.5kg。質量48kg。洗濯時300W、乾燥時1170W。水使用量136L、乾燥時30L。乾燥時にも水冷ハイブリッドとか言う方法なので、水が必要らしい。
     ナショナル遠心力乾燥洗濯機=190万円/トン
こちらの方が、却って資源生産性が高い。

A君:廉価版。NA-F42M3。大体2.0万円。洗濯4.2kg。洗濯時75W。水使用量115L。質量26kg。乾燥機能なし。
     ナショナル全自動洗濯機= 77万円/トン

C先生:自動車のヴィッツ並の価格/重量比だ。

A君:循環材料使用率は、やはり余り高くは無いでしょう。

B君:製品のリサイクル率については、家電リサイクル法によってある程度は確保されている。拡大製造者責任は、消費者が支払いを負担することによって、なんとか満足されている。

C先生:消費電力の重要性についての認識は低い。まだまだのレベル。冷蔵庫は、そこそこだが、洗濯機の場合には、やはり機能追求型のような感じだ。廉価版の2万円のもので、大体事足りているようだ。

B君:しかし、家電もきちんと修理して使えるような長寿命商品が欲しい。高くても良い。修理で稼げば、たとえ海外製品でも国内に雇用ができる。

C先生:それが恐らく近未来像だろう。長寿命商品を買って長く使う。家電のような成熟商品は、基本性能を高めた長寿命商品が正しい方向性だ。地上波デジタルテレビといった新規なもの、DVD製品のような発展途上のものは、そうは行かないが。

A君:小物の家電製品をちょっとだけ。

B君:資源生産性が高いと思われるポータブルMD。SONY MZ-N10、録再型のモデル。重さ84g、平均価格2.8万円。

A君:重量生産性は、
       ソニーポータブルMD=3億3千万円/トン

B君:ポータブルMDは寿命が短い。もう少々重くても、頑丈なものが欲しい。

C先生:もっと軽い製品として、フラッシュメモリーはどうだ。

A君:SDメモリーの512MB版。平均価格3万円、重さ2g。
       SDメモリー512MB=150億円/トン

C先生:こんなもので稼げば、日本全体としての数値は上がるだろう。そして、日本産業全体を支えると言えるだろう。

A君:有害物削減の項に行きます。EUのRoHS指令では、鉛、カドミ、水銀、六価クロム、2種類の臭素系難燃剤の使用が原則禁止。

B君:鉛は鉛フリー半田でOK、というのが、家電業界の見解でだろうが、実際のところ問題は多い。例えば、クリーム半田での半田付けだと、スズ−銀−銅の3元系だと旨く行かないのか、インジウムなどを使う。このインジウムという元素は、液晶などの透明導電膜用として重要な元素。他になかなか代替品が無い状態。そんな貴重な元素を半田ごときに使用して欲しくない。

A君:テレビ、エアコン、冷蔵庫、洗濯機の家電四製品は、どうせ家電リサイクル法によってカバーされているのだから、基本的に回収される訳で、普通の鉛−スズ系の半田で十分。有害物は使用しないのではなくて、管理するというのが基本。

B君:どうしても鉛フリー半田が使いたければ、MDプレイヤーなどのような小型製品に限るのが良識的。任天堂ゲームボーイなどが最適の商品。

C先生:家電業界は、どうも格好だけの環境派を気取るのが得意。生分解性プラスチックを包装材料や製品に使ってみたりするが、その環境への効果は説明しない。現状だと、製造エネルギー的にも不利なはず。

A君:大豆インクを使った環境報告書を出したがるのも家電業界。VOCの削減とその効果をしっかりと説明する必要がありますね。

B君:大豆インクは、米国生まれのエコマテリアル。これは、米国の世界食糧戦略と密接な関係があって、これを素直に喜ぶのはいかがなものか。S社などは、やはり米国を見て商売しているのだろうが。

C先生:自動車業界よりも成熟度が低いから、自主規制で有害材料の使用制限などをやりたがる。

A君:塩ビ全廃というと格好が良い。

C先生:その話だが、松下が塩ビ全廃を言い出したと思っていたのだが、どうも、それは日経のある記者の捏造だったというのが真相らしい(未確定情報)。曰く「世の中はそんなウネリなんでしょう」。環境を考えた最適な材料選択という技術を分かっていない。電機業界だって、技術者は電源ケーブルまで非塩ビでやろうなどということが馬鹿げたことだということは分かっているのだ。

B君:それが営業や商品企画の連中には商売になるネタだと見える。

C先生:EUは先進的だというのも誤解ではあるが、日本の電機業界よりも先鋭的だといのは大きな誤解。実際には、かなり現実的な判断をしている。

A君:そろそろ電機業界の「当面の課題」
(1)家電製品の本質的改善を。特に、高くても良いから長寿命商品希望。たとえ海外製品でも、修理で稼げば、国内に雇用ができる。
(2)マイナスイオンなどの付加価値による売る込みは、全体的に避けること。
(3)新規性の機器では、デファクトスタンダードを作る。
(4)小型機器はもっと小型化。しかし、壊れないように。
(5)有害物削減は、むやみに格好付けでやるのではなく、実際に効果のある方針で。
(6)一見、環境に良さそうなキーワードは、批判的に見直すこと。
(7)塩ビ全廃などといった却ってリスクの増大を招きそうな対応をしない。
(8)日本の基幹産業としての認識とプライドを持つこと。

C先生:本日は2つの業界しかできなかったが、ここまで。