| | バックキャスティングとは何か 02.11.2007 |
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先日、「どんな未来 社会像 01.28.2007」http://www.yasuienv.net/FutureVision.htm の中でご紹介した超長期ビジョン検討会であるが、そこでは、バックキャスティングという方法論を用いて、科学的検討を行うことになっている。本日は、このご紹介である。 C先生:バックキャスティングという言葉は、ナチュラルステップ(NGO,スウェーデン)が提案している言葉だという説明が一般的。http://sociosys.mri.co.jp/stuff/2004/0402.html A君:言葉としては、forecastが未来の予測。この言葉は、fore(前という接頭辞。例えばforehead)にcast(投げる)が付いている言葉。foreをbackに置き換えたのがbackcastで、本来の意味は、釣り糸を投げ込む前にさおを後ろに振ること。 B君:単語の解説だと、「バックキャスティング 将来のあるべきの社会の姿を想定し、そこから現在を振り返ることで、そこに辿り着くために今後必要となる行動を考え実施する手法」。 C先生:しかし、「将来のあるべき姿」、ということになると、「あるべき」という言葉の解釈が実はなかなか難しい。 A君:あるべき姿、といっても誰が考えるかによって、全く違う。この世の中にも、何か絶対的な規範=normがある訳ではない。 B君:だからある条件下での「あるべき姿」になる。だから、その条件というものを変えてしまうと、「あるべき姿」も変わることになる。 C先生:抽象的で分かり難いが、例えば以下のような話だろう。「温暖化対応を考えるときには、すべての地域、特に影響の大きいアフリカなどにおける食糧生産への影響も抑えるべきだ」を規範だとすると、「2100年でも産業革命以降の温度上昇を2℃以内にする」ことが条件になる。一方、もしもあるべき姿として、「温暖化対応は、現時点での二酸化酸素発生量を制限することなく、技術的な投資を十分に行うことによって、自然に解消することを狙うべきだ」が規範とすると、「技術的進歩による(二酸化炭素削減/技術進歩)を実現するための技術開発を最大限優先するとともに、その技術が社会に受け入れられることが条件になる」。 A君:今回のプロジェクトでは、最終的には、環境−経済モデルを動かして、なんらかの結論を出すのですよね。 C先生:ゴールを先に決めて、そこに至る道筋を何本か書く。例えば、ゴールとして、「二酸化炭素排出量の削減率を2050年までに85%」を設定したとする。そこに至る道筋を何本か探し出し、それぞれについて、例えば、GDPの成長率、各年での二酸化炭素排出量、資源輸入量、必要な労働力、食糧輸入量、貿易収支などが出てくれば、それに応じて、どのような社会を構築するかを散文的に後付で書くことによって、ゴールがそこに至る道筋をもったシナリオに変換される。 B君:今回のプロジェクトのように、ある社会の全体像を出す場合だと、なんらかの環境−経済モデルを動かさないと駄目だし、概念としても分かり難い。もっと分かり易い例として、なんらかの具体的なものを上げることは可能だろうか。例えば、2050年の車の燃費などについてはどうだ。 C先生:その場合、「車の燃費は、2050年までに現在の10倍にする」。これがゴール。ここにどのように到達するかを書く、といったことが可能か、という疑問に答えることが必要。物理的な数値を考えることが先で、それで到達可能な道筋が見つかったら、その実現のために、社会的な仕組みを考える。こんな考え方をすれば、バックキャストの方法論が良く分かるかもしれない。 A君:やってみますか。先日のブログにも出したように、現時点で登録される車の平均的燃費は、理論値で15.4km/L。さて、この値は、10・15のカタログ値。1800〜2000cc級の車ぐらい。車重は、1300kgとしますか。 C先生:実際には、図の1のように、現在走っている車の平均燃費はどうも9.4km/Lぐらいのようだが、まあ、それで良いだろう。
B君:これを10倍にするには、どうするか。効率アップの可能性を色々と検討することが出発点。 A君:それには、すでに行った議論、「水素燃料電池車の終焉」http://www.yasuienv.net/HydrogenTerminated.htm が有効。 B君:後は簡単で、車重を落とす。都内などを見ていると、自家用車に乗っているのは、一人だけの場合が多い。基本的に、1.5人(=一人+子ども一人)乗りの車にして、多人数で乗る場合には、それを複数台つなげばよい。2050年までには、そんな技術だってできるだろう。1.5人乗りの車の車重を400kgにできれば、それだけで3倍ぐらいは稼げる。これで合計9倍にはなる。もうちょっとでOK! C先生:あとは、発電効率を上げる。電源側の努力。ガスタービンと水蒸気タービンのコンバインドサイクルがすべてになれば、それだけでも、効率がかなりアップして、総合的に10倍が可能になるのではないか。 A君:二段でなくて、三段のコバインドが実用化できれば、さらに効率は上がる。それにはもう少々時間が掛かる。 B君:そんな話で良ければ、コストを考えなければ、今すぐにでもできる。すなわち、物理的には可能という結論がすぐにでも出る。 C先生:ここまでが、バックキャスティング法でのモデルの役割だ。物理的にはなんとかなることを示すことだ。ただ、それでは終わらない。 B君:電気自動車は、なかなか普及しない。やはり航続距離が短い。電池の開発が必要不可欠。 C先生:電池の開発にいくら努力しても、2050年までに余り進歩しない可能性すらある。電池の開発には長い長い歴史があって、半導体技術のように、必ず進歩するとは言えない部分が多い。となると、なんらかの社会的システムを入れて、欠点を補う必要がある。 A君:もっとも単純なのが、カーシェアリング。人口減少が起こる地域なら、市内に多くの充電可能な駐車場を作る。東京都内の人口は減らないかもしれないですが、なんとか駐車場を多数作って、そこに上述ような小さな車を駐車しておく。それをSuica(Icoca)やEddyのようなカードを差し込めば使えるようにする。もしも、電気が不足してきたら、どこかの駐車場に入れて、車を変えれば良い。 B君:電気自動車の場合、フル充電にするには、相当な時間が必要だけれど、半分程度までの充電で良ければ、そんなにも時間は掛からない。だから、駐車場にある車の電池が全部空になっているという状況は起きない。 A君:誰かがどこかに乗り捨ててしまうという状況は、誰が使っているかが分かっていて、しかも、そのような電気自動車は全てGPSを装備していて、かつ、現在位置を通報する通信機能があるので、まず起きない。 B君:いまなら携帯の電波などでいくらでも管理が可能。 A君:最近、米国で殺人未遂罪を起こした女性飛行士がGPSを装着して釈放されましたが、似たようなことをすれば良い。 C先生:市内の交通をカーシェアリング化することによって、地域の再活性化も狙える。これまでのような都市のドーナツ化、すなわち、公共機関やショッピングセンターがすべて市の外周部にあるという形は、地域の活性化にとってはマイナスで、いびつな形でしかない。 A君:本来は、中心部に路面電車などによる公共交通網を整備すべきなのですが、いまさら、というところは、まずは、ロードプライシングを始めて、通常の自動車の通行に課金。電気自動車は無料にして、カーシェアリングという考え方が面白い。しかし、すぐはまだ無理でしょうか。自動車側がもう少々進歩しないと。 B君:小さな車は、大きな車との衝突が怖い。大型車には、衝突回避装置を設置することが絶対的な条件。 C先生:次に、家庭での使用エネルギーも1/10にすると言うものを考えてみよう。 A君:現在の家庭内のエネルギー使用量の推移のデータを2枚ほど示しましょう。 図2:家庭内のエネルギー使用量の内訳とその推移。 ![]() 図3:家庭内の電気機器の消費電力の内訳とその推移。ただし、給湯用、冷暖房用は除く。 B君:余り良い案が無いなあ。冷蔵庫は、もうかなり限界的省エネになっているし、照明は、LEDは駄目だし。温水便座だとか、衣類乾燥機、食器洗浄乾燥機などがどんどん普及してきているし。 C先生:まあ、そうだなあ。テレビはまだまだ行けるという秘策があるが、後は、冷暖房ぐらいだなあ。 A君:冷暖房は、地中熱利用でしょうね。テレビは、リアプロ。 C先生:丸秘。効率を3倍ぐらい上げる。その秘策については、そのうち公開したい。 A君:給湯器は自然エネルギーを利用するしかないように思う。 B君:結果的に、太陽電池、太陽熱温水器などを充分に使うことを考えないと駄目なのではないだろうか。 C先生:2050年までにはまだまだ時間があるが、車ほどは簡単ではない。これが物理的な検討から分かること。となると、太陽電池、太陽熱温水器の普及が必要不可欠という結論になって、その方向に社会的なシステムを導くことが必要という結論になる。余談だ。自宅の太陽熱温水器だが、晴れれば、真冬でも、お風呂1杯分のお湯は、タダになる。 A君:いずれにしても、車の燃費を10倍、家庭のエネルギー使用量1/10といわれると、不可能だ、と思ってしまうが、ゴールとして設定して、それをなんとしても実現するのだ、という覚悟をもって物事を考えること、それがバックキャスティングだということになる。 B君:現状からの延長線で未来を見ると、電気事業者が文句を言うとか、様々な抵抗があって、検討すらできない状況になることが多い。しかし、未来のゴールを先に決めてしまうと、そこに至る道筋がかなり客観的に検討できて、しかも、それに付随する社会システムの検討も同時にできる。 C先生:それがバックキャスティングのメリットだ。現時点から未来を読むということは、現時点の利害を引きずるということだ。それを、「50年も先のことなのだから」、と切り離すところに最大のメリットがある。これを社会全体についてやろうということになる。 A君:となると数値モデルには、やはり数値データになりやすい状況をインプットすることになる。 B君:当然だろう。そんなものとしては、すでに議論されているが、 C先生:数値といいながらも、実は、いくつか異なった性格を持っている。地球温暖化の温度上昇は、大気中の温暖化ガスの濃度によって決まるから、排出量の積算値がが必要。ある年での排出量だけでは駄目なのだ。 A君:実際の計算は、バックキャスティングと言いながらも、現時点から行う以外に方法は無さそうですね。排出量の積算値みたいなもの、あるいは、資源消費量の積算値みたいなものが必要になるということだから。 B君:時間を逆転させるという方法論が一見できそうにも思えるのだが、どうも現実的とは言えないようだ。 C先生:多分そんあところなのだろう。現時点からの積算値を見ながら、例えば、資源供給が危機的状況になるかどうか、といった検討を行う必要があるのだろう。 A君:そして、まずまずの条件でゴールに到達できれば、良し。家庭の省エネのように、どう考えても物理的に難しいという結果が出れば、ゴールの条件を変えることになる。 B君:そうやって、ゴールを先に決め、そこに到達できる可能な道筋が見つかるところまで検討を進める。 C先生:そのゴールの記述なのだが、どうも、もっとも決定的なことが、エネルギー消費量の積算値なのではないか、と思うのだ。二酸化炭素の発生量の積算値も重要なのだが、二酸化炭素だと、処理処分という裏技が使えるので。 A君:その他に、資源の新規輸入量。資源リサイクル量。食糧輸入量。貿易収支。必要労働力ぐらいでしょうか。なんだ、先ほどのリストと同じだ。 B君:こんな検討の後に、税制の有り方、社会福祉のあり方、教育費の負担原則、社会の格差のあり方などなどが散文的なシナリオとして付加される。 C先生:そんな作業だ。最後の最後になるが、何枚かの図を示して、バックキャスティングの概念を示して見たいと思う。
図5:バックキャスティング概念図、その2 A君:図5の説明。時代が進むにつれて、人間活動の総量も変わってくる。→の下に書いた青緑の部分が、人間活動の総量に相当するが、この部分の面積で、リスクの限界が変形する。ただし、現時点でのゴールの位置だと、すなわち、かなり人間活動の総量が多いようなゴールであると、それ以前に様々なリスクと衝突するような状況が起きて、安全に着地ができない可能性がある。
A君:図6ですが、この図から、ゴールの位置が多少下がっていることに注目。そして、できるだけ、下側のリスクをぎりぎりに、すなわち、人間活動をできるだけ下げつつ、下げた場合に発生するであろうリスクはクリアーしながら進む。
C先生:本気で実施するとなると、こんなことだ、ということだろう。これまでのバックキャスティングの概念とはかなり違うかもしれないが。 |
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