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    電力系統をどう理解するか その2  02.17.2019
       「発電と送電の基本と仕組み」4〜6章

               



 先週の続きです。木舟辰平氏の著書のご紹介の2回目です。
 今回取り扱うのは、
第4章 再生可能エネルギー
第5章 送電・配電
第6章 分散型システム

の予定ですが、どこまで行けるのか、それは書き終わるまで分かりません。かなり簡略化しないと駄目のようです。


C先生:思ったよりも、色々と余分な情報を書いてしまうためか、進みが悪い。なかなか巻末まで届かない感じだ。やはり、電力の本というものは、やはり、かなり書くのが難しいのだと思う。この本の情報の範囲内で、電力のすべてが分かるというほど、電力というものを説明しようとすると、物理学から社会制度までカバーしている話題なので、単純ではない。これが、取り敢えずの結論だということにしよう。

A君:それでは、第4章の再生可能エネルギーから再スタート。本当に3章分進めるのか、という疑問を持ちつつですが。。。

B君:4−1は再生可能エネルギーは現状でFITの対象になっているのが5種類ある。すなわち、太陽光、風力、バイオマス、地熱、小水力。

A君:そして、4−1で紹介されているのが、海洋エネルギー。特に、波力発電と海洋温度差発電。これが本当に使えるかどうか、それがかなり疑問。波力はまさに波次第。海洋温度差発電は、冷たい海洋深層水を組み上げ、海の表層の温かい海水との温度差を使って、揮発性の物質が蒸発して体積が膨張することを利用するのだけれど、海水に耐える金属がチタンぐらいしかないものだから、非常に高価な設備になってしまう。しかも、他に深層水を組み上げるためのポンプがあるけれど、当然、深いところまで太いパイプを下ろしている。ハワイなどでは、サイクロンか台風か分からないですが、それでプラ製のパイプが流出したりする事故があって、やはり余り上手く動かないのですね。

B君:モルジブとかセーシェルとか言ったサンゴ礁系の島国では、海洋からCOを出さない電力を得ようとしたら、海洋温度差発電のような方法がほぼ唯一になる可能性があるので、かなり重要な方法ではあるのだけれど、なんとなく信頼性が乏しい。インド洋のような表層水の温度が高いところは、実際有利なはずではあるのだけれど。

A君:日本で実験をやっているのが、黒潮の流れの強い奄美列島の島と島の間にタービン型の発電機を沈める、あるいは、浮かせるという方法論。これは、まさにあの地域限定の方策で、日本全体でどうのこうのと言えるような技術ではない。

B君:結論として、日本の場合には、九州などの太陽光発電。北海道・東北・房総の洋上風力。これらが確実。バイオマスはかなり疑問。地熱はまあ絶望的だけど、高温岩体発電がもし実用になれば、初めて貢献できそう。

A君:それなら、再生可能エネルギーを諦めて、化石燃料+CCSという対応方法はあるけれど、この地震の多い国で、COを液化して地下に注入することによる地震発生のリスクがあるとも言われているのですが、そもそもリスクという概念を理解しない国民が、受け入れるかどうか。結局、原発と同じ結末になるような気がします。要するに、「安心できない」で終わるような気がします。

B君:原発は、前回述べたように、もはや世界的にダメなので、新設の可能性はかなり低い。ダメという意味は、リスク対応のために金融コストが高くなりすぎるから。

A君:高温ガス炉を作れといった主張が日本の産業界にはあるけれど、本当に動くのだろうか。JAEAの廃炉関係に巨額の国家予算が投入されることが確実なので、そのニュースしだいで、高温ガス炉も吹き飛ぶのでは。

B君:そろそろ第4章の説明に行こう。4−1から4−14まであるけれど、その内容は以下の通り。
 ★再生可能エネルギーとは、★FIT制度、★太陽光発電の余剰買取制度、★FIT制度の見直し、★グリーン電力証書、★太陽電池の原理、★太陽電池の種類、★太陽光発電の現状、★風力発電の仕組み、★風力発電の導入状況、★洋上風力発電、★地熱発電、★バイオマス発電、★小水力発電

A君:社会制度については、しっかりと情報を読み込んでいただきたい。原理や仕組みは流し読みで結構。

B君:ただ、現実は本書の記述よりも、もっと厳しい。その理由は、再生可能エネネルギーそのものにあると言うよりも、その特性にマッチした送電・配電網ができていないことにある。ということは第5章がもっとも大きな問題を記述していると言えるのかもね。

A君:それでは、第4章は、最後のコラムのご紹介で終了とします。
 コラムは、「再エネは救世主か?」ですが、5.15事件のときに、送電システムがテロの対象になったという事例から始まります。このアプローチはなかなか良いと思いますね。橘という人がテロの首謀者だったのだけれど、彼の思いは、貧困に苦しむ農村を憂い、その搾取に基づいて成り立っている都市に対する反発だった、とのこと。そして、原発というものの配置などは、そのときと同じで、地域の憂い、都市への反発が福島第一事故で爆発した、という理解。再エネによって、地域が発展するという「救世主」的なシナリオを「近代的思考」の範疇だと主張しています。

B君:まあ、そのような一面もあって、第5次環境基本計画の中心的なコンセプトになった、地域循環共生圏なるキーワードも、陸上生態系・海洋生態系や水などが、人間社会の根幹を形成しているという理解。そして、エネルギー自給などを組み合わせて、Society5.0という概念も取り入れて、新しい地域創生を狙う。といった発想なので、再生可能エネルギーを正しく理解することが重要だと思う。

A君:ただ、「エネルギー自給」というと良いことばかりに思えるけれど、自分たちが用意した発電・送電設備はいつ不調になるか分からない。そのときのためには、やはり、メジャーな配電網との連結が不可欠だ、と思った方が良いですね。本書には、どうもそのようなマインドが不足気味かと思います。

B君:そろそろ電力システムの本命である「第5章 送電・配電」に行こう。

A君:またまた、項目のリストを示します。★送電の仕組み、★串刺し型ネットワーク、★周波数変換所、★100V/200V受電、★配電自由化、★電線地中化・無電柱化、★電力広域的運営推進機関、★託送制度、★同時同量原則、★計画値同時同量、★インバランス料金、★接続・給電の公平性確保、★太陽光の系統接続問題

B君:そして、最後のコラムが「悲願だった発送電分離」

C先生:どうもこのコラムから読むのが、第5章の正しい読み方のような気がする。

A君:確かにそうかもしれません。短い要旨だけのご紹介に留めますので、是非、本書を読んでいただきたい。

B君:「悲願」といっても、誰の「悲願」だったのか、ということが大きい。電力業界は、過去、非常に強力で、実は、それが福島第一事故の第一の原因だったようにも思えるぐらいだ。この状況の一部は、前回に原子力のところで説明をした。すなわち、それを正常に戻すことが、資源エネルギー庁の悲願だったのだ。本書では、経産省と書かれているが、正確には資源エネルギー庁の悲願と書くべきだと思う。

A君:そこで、その悲願を達成すること、すなわち、自由市場主義を強烈に導入することによって、電力業界、ガス業界を対象に、これらの業界がそれまで無条件で市場を支配をしていた状況を改め、競争原理を導入し競争に勝たなければならない世界に変えること、それが悲願の内容だった。

B君:しかし、問題もあって、電力業界、ガス業界、水道業界のように、送電線、ガス・水道配管といった社会インフラが必要な商売は、ある程度地域独占を認めないととんでもない状況になってしまう。

A君:途上国の水道事業のようなものですね。完全に民間事業として行うと、平然と断水が起きるようなことにもなりかねないのでは。勿論、その責任を十分に理解している企業が担当するかどうかが、もっとも重要なことですが。

B君:日本の電力事業者と途上国の水道事業とのマインドはかなり違っていて、日本の電力会社が最大の恥だと思っていることが「停電」。これは、送電網と発電容量の大部分を持っている現状からみて、電力会社は「停電は自分たちの責任」だと思っている。このようなマインドがどこまで継続できるのか、それが問題ともいえる。これが崩れて、「停電、それは起きますよ」、とならないことを望みたい。

A君:しかし、一方で、「市民レベルの感覚」として、「電気は太陽と同じ(必ず陽は昇る)で、電気は必ずある」、になっていることは、実は、非常事態への対応、すなわち、リスク対応という考え方が非常に弱い日本人にとって、多少の停電が教育的効果があるということではありますが。

B君:福島第一事故の影響で、計画停電というものが行われたことを記憶している人はすでに少ないのでは。

C先生:という訳で、日本の社会制度は電力に関しては、大転換が行われた。このコラムの最後のところの記述は非常に重要だ。

A君:こんな文章です。「行政国家がそれ自体、様々な弊害を生み出す可能性を内包していることは、指摘するまでもありません。メディアやアカデミズム、NPOなど在野の立場からの政策評価が適切に行われることが望まれます」。

B君:まあ、全く正しいのだけれど、日本の場合には、市民がダラシない政府や自治体をいじめるけど、そこで止まってしまい、市民が積極的な提案をしない、いや出来ないのが大問題。いざとなると、やはり最後はお上頼みになるのが日本人。

C先生:毎回このところ市民の意識批判のようなことを言っているが、具体的な提案をするというよりも、自己利益の確保というマインドが強すぎるのだろう。あるいは、「安心」のように、自分の主観でしかモノを言えないという国民性が出てしまう。

A君:第5章に戻りますが、5−1から5−5は、技術的な話ですが、まあ、飛ばし読みでも大丈夫でしょう。5−6以降の社会的な問題だけをお読みいただきたい。

B君:ということで、第6章へ。「分散型システム」が題名。

A君:すでに地域循環共生圏構想などがあって、分散型システムが本命という人もいるのですけど、その実現には、恐らく、全く違ったアイディアを入れることで、停電のリスクを確実に回避する必要があると思うのですね。あるいは、自宅だけでも自衛を完璧にするとか。

B君:その一つの候補が、前にご紹介した、阿部先生の「デジタルグリッド」。この構想が、日本国内で実現するとはとても思えないぐらい先進的。これなら、「分散型システム」が低リスクで機能するような感じがある。

A君:第6章の内容です。★自家発電、★コージェネレーション、★燃料電池、エネファーム、★蓄電池、★電気自動車、★地中熱ヒートポンプ、★スマートメーター、★EMS、★電力線通信、★直流給電、★ZEH、★自己託送、特定供給、★スマートコミュニティ。

B君:そして、コラムが「電話は”分散型”が圧倒、はたして電気は?」。しかし、電話は無線で行けるが、大電力を無線で供給するのはほぼ不可能なので、違いは明確。もっとも、将来、高速道路を走る電気自動車には、無線で電気が供給されるという夢物語は存在しているし、それなりの技術は提案されているが、この場合でも、問題は送電効率だと思う。

A君:この第6章は、若干未来的な技術に関するページも無いことはないので、一通り、読んでいただきたい項目が多いですね。特に、コージェネレーションは、熱も利用するという意味。バイオマスなどだと、CHPと良く記述されています。Combined Heat and Powerの略ですが。

B君:Society5.0が国レベルでも追求されるという現状を考えると、これらの内容を一通り理解することが、快適な日常生活を実現するために、必要な時代になったとは言えるのかもしれない。

A君:普及がかなり難しいのが、★地中熱でしょうか。日本という国は、穴掘りの費用が異常に高い国なので。欧米で土地が十分にあるところだと、日本のように深い穴を掘らないで、浅い溝のようなものを掘って、そこに熱交換用のパイプを設置するというやり方が主流のようです。日本だと、50〜100mとかいった井戸状の穴を掘るのが普通です。土地が狭いからかもしれませんが。この方式のエアコンであれば、冷房でも大気を温めるようなことは無いので、環境面では優れていますね。

B君:この第6章の内容で、もっとも最初に実現されるのが、★スマートメーターで、これは、東電がもっとも早く整備される予定で、2020年には完成するのでは。

A君:さて、いくつか説明を続けましょう。どこから行くか。

C先生:実は、もう一回、本のご紹介記事を書く予定になっていて、それは、「電池」。過去に一度も電池とは何かを取り上げたことがないような気がするので。しかも、リチウム電池が実用になったのは、他の電池に較べれば、比較的最近のことなので。

A君:ということだと、★地中熱ヒートポンプから。ヒートポンプというものは、熱を移動させる電気装置。エアコンがその代表例。熱は、通常であれば、温度の高いところから低いところに移動するので、夏であれば、外の気温が高いのが普通なので、外の熱が室内に侵入して部屋も暑くなる。そこで、ヒートポンプを使って、室内の熱を室外に移動する。当然、室外の温度は高くなる。

B君:地中熱ヒートポンプとは、例えば、北海道のような寒冷地で、ヒートポンプで暖房をしようとすると、外気温が零下30℃だとすると、室内の気温である20℃との間で、温度差が50℃もあることになって、普通のヒートポンプでは作動できない。ところが、地中の温度は、表面に雪があったとしても、地下水は凍らないので、10℃ぐらいは期待できる。10℃を熱源にして、ヒートポンプで暖房をすれば可能になる。

A君:問題点は、日本という国は、なぜか穴掘りが高価。欧米では、地下5mぐらいの溝を掘って、そこにパイプを設置して熱源にすることが普通なのだけれど、それには、広い面積が必要となる。そのため、日本のヒートポンプは、すでに述べたように、かなり深い穴を掘ることになって、その費用が相当に高い。

B君:★EMSは、エナジー・マネジメント・システムの略で、電気などのエネルギーを効率的に使うシステムの総称。詳しく述べるまでもないように思える。どこかで大量のエネルギーを無駄に使っているような状況が把握できるとでも表現をすれば十分なのでは。

A君:★自己託送、特定供給とは、企業が2つの工場を持っていたとして、一つの工場では、発電装置があるが、もう一つの工場にはないとき、工場から工場へ電力を輸送してもらうという仕組み。しかも、その電力は、すべてその企業によって使われたということにすることも可能。特定供給は、自営線を用いて、電力を供給することを許すこと。例えば、製糸業、化学産業ではあり得る。

C先生:最後にもう一つだけ、ちょっと解説しておきたいのが、★スマートコミュニティー。非常に多様な意味があるが、いずれにしても、エネルギーについても、最適と思われる組み合わせをある規模で実現している。有名な例が、パナソニックによる藤沢市のもので、3000名が居住するという。その次のパナソニックによる都市が、横浜に作られて、通常よりCO2が40%削減、再生可能エネルギーの使用率が30%といったことになる。これは、個人でやろうとすると結構大変なこと。太陽電池を自宅に入れ、電池を買うか、EVの電池を使うなど、誰に設計を頼むのか、という話になってしまう。

A君:ただ、スマートコミュニティーだから、停電が全くないのか、といえば、やや疑問ですが。

C先生:このあたりで、第二回目を終わろう。どうにも、残りがまだ3章もあるので。

A君:この本は、1冊あると、様々なことが理解できますね。最初の3章ぐらいは、読まなくても良い人なら、読まないで飛ばせば良いでしょう。後半になってくると、このところの仕組みの変化の話が出てくるので、なるほどそんなことになっているのだ、という情報が得られるのは、かなり良いのでは。

B君:まあ、予想以上に情報が豊富だ。それなりの知識が得られると思う。特に、社会制度がどのように変更されようとしているのか、という情報を得ることは、有用なのではないだろうか。

C先生:というところが合意事項か。まあ、そんなところだろう。まだまだ3章あるが、最後の章が、発電・送電の未来というタイトルなので、ここがどのような結論になっているか、これが最大の興味ということで、今回は、終わろう。