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  米国輸入牛肉に危険部位 1.22.2006
     



 20日に成田空港で検疫手続き中の米国産牛肉からBSE危険部位である脊柱が見つかり、政府は即日、米国産の牛肉の禁輸措置をとった。
 全く違う話題だが、ライブドアがまたまた騒ぎを作り出した。関連会社が株価を吊り上げるために虚偽の情報を流したとして、東京地検特捜部の捜査を受けた。これで、東証の株価は暴落、しかも、売り買いの件数を東証のコンピュータが処理しきれずにパンク。
 ニュージーランドでのんびりしていたもので、その間の新聞は、まだ積み上げたまま。しかし、帰ってきて、いきなりこのニュース。
 なんとなく、共通の根を持った問題のような気がする。
 まずは、牛肉輸入問題から。


C先生:日本のメディアや世論は怒っているようだが、当方としては、予想通りの展開。これで日本と米国との差、特に、国民性や、社会システムというものの違いを、日本人が学ぶ機会になればよい。

A君:しかし、意外に早くこんなことが起きた、という印象ですね。

B君:米国牛肉輸入の条件として、(1)20ヶ月未満、(2)危険部位の除去、(3)米国の検査官による検査、という3つの条件をつけた。この(3)の検査官は何をどう理解していたのか。

A君:12月12日に輸入再開が決まった。それからたった1ヶ月でこんな事件。米国という国である新しいシステムをきちんと機能させることがいかに難しいか、を証明したようなものです。

C先生:先日、ある本を買ってきた。というのは、最近、現時点で人類が直面している地球レベルのメガ危機をどうやって回避するか、その提案をしている本を買い集めているからだ。その一つに、レスターブラウンが基調講演をやったあるシンポジウムを本にしたものである。「地球環境−危機からの脱出」、ウェッジ選書20、ISBN4-900594-85-7、¥1470(税込み)。内容の割りには価格が異様に高いのでお奨めしないが。JR関連企業であるウェッジ選書だけに、どうも新幹線開通40周年記念の講演会だったようだ。レスターブラウンは最初にそのことに祝辞を述べているが、続いて、「アメリカ人にとって日本の鉄道システムの年間平均遅延時分が、分単位ではなく、秒単位であるということは驚くべきことです」、と述べている。同時に、ケネディーの言葉を引用し、「1960年代のうちに人類を月面に着陸させ、無事に帰還させる」、ことを実現させたアメリカを紹介している。

A君:アメリカという国は、先端技術を支えるごく少人数からなるシステムなら、かなり優れたものを作ることができる。ただし、リスクゼロは求めないし、もしも求めると機能しないシステムだ。

B君:一方、日本という国は、参加者が多い非常に大きな社会システムをきちんと運営できる国だ。

C先生:世界全体でどちらが多いか、と言えば、実は日本という国の方が少数派で、変わった国だと言える。しかし、その少数派が怪しくなってきた。日本もライブドア事件に象徴されるように、「これまでの日本」ではなくなりつつある。

A君:日本と同じことができる国は、現時点だと、韓国、ドイツぐらいか。フィンランドなども可能なのだけど、人口が520万人と少ないので、どう考えるか。ちなみに、韓国の人口は4850万人、ドイツは8250万人。ドイツも日本と同様な意味でかなり劣化中。

B君:牛肉脊柱事件を見ていると、米国側は、日本という国の特殊性を理解しているとは思えない。今回の騒ぎでも、輸入されてしまった脊柱が20ヶ月未満の牛のものであることは、確実とは言えないものの、まあ確率としては高いだろうから、リスクの観点から見れば、なんということもない。それに、大体米国国民は平然と食べている。

A君:リスクはもともと完全なゼロではないが、それはいかなるリスクも完全にはゼロにはならないので、当然。しかし、米国からの牛肉輸入問題は、もともとリスクがほとんどゼロだから、安全性、すなわち、被害が出る出ないという視点から議論しても何の意味もない。最初から、健康問題ではない。一方、安心できるかどうか、という議論になると、日本人の安心に対する考え方は、世界的に見ても異常だから、どちらかと言えば、アメリカ的な対応で十分なので、その議論は国内ではやってもよいが、国際的には避ける方が無難。
 こんな条件下で、日本と米国の違いをお互いに勉強する課題として適当なものだと言える。特に、米国政府が約束をしたとしても、実際に、それを社会システムとして定着させることが不可能な国である米国とどうやって付き合うのか、という問題なんですが。

B君:結構、過激な議論だと思うが、その通りだな。日本という国がどんな国か、などを全く知らない検査官が検査をしていても、どうせ杜撰な検査にしかならない。

A君:米国農務長官は、今回珍しく低姿勢。ジョハンズ氏は、「事態を非常に深刻に受けて止めている。処理手続きが輸出向けの基準を満たしていることを確認するために、全施設に追加の検査官を派遣した」、と声明を発表。さらに、「すでに輸出された牛肉が日本との合意内容を満たしていることを日本側と確認するため、検査官のチームを日本に派遣する」、ことも発表した。

B君:日本側の措置について、「過剰反応だとは思わない。懸念を解消できるよう積極的に努める」、と述べるなど、これまでの強気の対応を完全に変えた。これまでは、日本の対応は非科学的だとして非難をしていたのだが。

C先生:米国という国が日本よりも優れているところはどこか、それは、合意とか契約と言うことに対して、より感度が高いところだろう。「合意をしたのにそれを守れない国が米国なのだ」、という指摘が、もっとも痛いところに突き刺さるのだ。

A君:こんな状況分析から見ると、日本のメディアの指摘は、やはり視点が狂っているように見える。例えば、朝日新聞の22日の2面には、「政府、追求回避に躍起」という文字が見える。そのために、政府関係者が珍しく、遠慮なしに「対米批判をしている」、と述べている。

B君:「昨年12月に輸入再開を決めた小泉首相の判断自体も問われている」、と書いているが、実際小泉さんが何を考えいたのか分からないが、民主党の前原代表は、「昨年11月の大統領訪日に合わせて再開を進めていた」という批判しているが、これは弱い。むしろ、「米国という国がシステムをきちんと運営できない国だということがはっきりした」、と述べるべきだ。

A君:前原代表の本音は、よく分からないが、この間の訪米での発言などを聞いていると、超親米的である可能性もある。

B君:NHKの日曜討論で、野党の国会対策委員長クラスのコメントがひどい。「もっとも重要なのは命だから、今回のアメリカの対応はおかしい」、などと言っている。今回輸入された牛の脊柱は、健康面の問題ではないのだ。やはり、「合意をしたのに、それを守れないような国である米国と、どのように付き合うべきか」、それが最大の問題なのに、ピンボケばかりだ。

A君:現在の日本国民の投票が頼りの国会議員は、日本国民のメンタリティーにあった発言をしなければならない。そうしないと、次の選挙で落ちてしまう。

C先生:色々議論はあるだろうが、米国のこのような弱点が日本国民に対しさらけ出されたこと自体、極めて有用なことなのではないか。米国という国をどう理解し、米国の一部の人々が日本という国を多少とも理解する。もっとも、米国でこのような報道がどう取り扱われているのか、それは大問題だ。

A君:調べてみましょうか。ニューヨークタイムズが見つかりました。一部、重要なところを掲載します。全文は、
http://www.nytimes.com/2006/01/20/international/asia/20cnd-beef.html
をどうぞ。早めにダウンロードしておかないと、消える可能性あり。

Japan Again Bars U.S. Beef After Finding Banned Cattle Part

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By VIKAS BAJAJ
Published: January 20, 2006

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"While this is not a food safety issue, this is an unacceptable failure on our part to meet the requirements of our agreement with Japan," Michael Johanns, the Secretary for Agriculture, said in a statement. "We take this matter seriously, recognizing the importance of our beef export market, and we are acting swiftly and firmly."

A君:まず、ジョハンズ農務長官は、今回の間違った輸出も健康問題にはなりえないという主張をまずしてから、重大な事態だとの認識を述べていることが分かる。

B君:やはり自国向けの発言だな。

More than 60 countries restricted American and Canadian beef imports in 2003, about 40 of which still had bans in place as of early December.

A君:まだ、世界の40ヶ国は、米国・カナダの牛肉の輸入禁止を継続中。

B君:知らなかった。

The Brooklyn producer, Atlantic Veal and Lamb, characterized the shipment as an "honest mistake" and said it was responding to an order by a Japanese customer. It said the piece of veal it shipped came from animals less than 4 1/2 months old and had never tested positive for mad cow disease, the frequently used name for bovine spongiform encephalopathy.

"We are absolutely confident that the product is safe," the company said in a statement. "However, we regret that there was a misinterpretation of the export requirements and an honest mistake involving a very small amount of product that has led to this degree of concern."


A君:その脊柱を出荷してしまったAtlantic Veal and Lambという企業は、今後、日本向けの輸出がもはやできない。そして、今回のミスを「honest mistake:善意のミス」だと言っている。そして、健康問題には断じてならない、としている。まあ、これは正しい。
 もっとも重要なのは、「今回の脊柱は、日本の顧客からの要求によって、4.5ヶ月の若牛の脊柱を送った」と言っているところでしょう。

B君:もしもそれが本当だとしたら、日本の顧客とは誰なのか、その解明が欲しい。どういうつもりでその顧客がその企業にそんな発注をしたのか。

A君:どこかのメディアとか消費者団体の意向で、米国システムの妥当性をテストするために発注したとか言う可能性は無いのですかね。

B君:それが本当なら、結構面白い話になりそうだ。

C先生:日本国内での調査がまだまだ必要のようだ。
 それにしても、米国という国を理解するのが必要なもう一つであるライブドア事件がほぼ同時に起きたのが象徴的。

A君:そのAtlantic Veal and Lambなる企業も、「honest mistake」だとしていますが、裏には、商業倫理などはどうでも良い、という米国流の経済最優先主義があるに決まっていますよね。

B君:当然だ。しかし、それをそう表現することはできないだろう。

C先生:ライブドアは、日本のメディアなどが、米国型の経済最優先主義を良いものとして報道したことによって、ここまで大きくなったとも言える。名前が有名にならない限り、実は、ライブドアのやった経済優先主義的ファイナンス活動も機能しない。

A君:ライブドア事件については、メディアも、「自らも共犯だった」という自省が必要なのでは。

B君:牛肉事件と違って、この問題に対して政治家が余り発言していないのが気になる。

C先生:そろそろ終わるか。環境問題と余り直接的な関係は無いが、日本と米国という国が、今後どうやってよい関係を築くのか、その問題について、今週は2つの事件が起きたことを記録しておきたい。