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 ベストミックスを決める要素 
   01.31.2015
   頭に入れておくべきいくつかの数値データ




 昨日(1月30日)、ベストミックスを議論する審議会の第一回が開催されました。もっとも昨日は、エネルギー基本計画を定めた基本政策分科会との合同会合でしたので、非常に多くの参加者でした。ベストミックスを審議する委員会の正式名称は、長期エネルギー需給見通し小委員会でして、委員長坂根正弘氏の他13名という構成になっています。このあたりの詳細、さらに本日掲載する数値データなどは、昨日配布された資料がこのサイトからダウンロード可能です。
http://www.enecho.meti.go.jp/committee/council/basic_policy_subcommittee/016/
 様々な資料のうち、もっとも有用な情報源は、PPT・PDFファイルです。そこから重要なデータをピックアップし、不足と思われるものは、どこかから探して、個人用のデータファイルを作ることを手段として、以下の記述を行いました。


C先生:これまで原子力小委員会で議論をしてきたものの、原子力の割合をどのようにすべきか、ということになると、その決定はできない審議会の構造になっていた。それは、ベストミックスというものを決めなければならないからだ。そもそも、どのような社会的な構造にするから、どのぐらいのエネルギーが供給されなければならないか、そのうち、どのぐらいが電力になるのか、電力のうち、化石燃料、原子力、自然エネルギーがどのような割合がもっとも合理的なのか、といった議論がベストミックスの議論であって、非常に包括的な議論が不可欠になるものなのだ。

A君:そもそも、全エネルギー消費量がどのぐらいになるかを決めなければならないのですが、それは、日本という国がどのようなマクロ経済の枠組みを持つだろうか、という予測に関わることなのです。要するに何を作って売り、そして食っていく国になるか、ということをイメージしないと、エネルギー消費量を決めようとしても、決められる訳ではないのです。

B君:実は、ベストミックスといっても、2種類のベストミックスがあると考えることが必要だ。それは、一次エネルギーのベストミックスと、電力のベストミックスの2種類。今後、消費エネルギーの形態として、熱と電力の割合を考えなければならないということになるけれど、いずれも、マクロフレームと呼ばれる経済的な枠組みに強く依存する。

C先生:その通り。日本という国は、「何をやって食っていくか」という発想は、その国が自給自足状態であれば、持たないでも済むものだ。例えば、資源国であれば、どの資源をどのぐらい売って生きるか、という発想になる。もっとも、その資源が今後どのぐらい掘り出すことが可能か、という大問題を考える必要がある。資源小国である日本のような国は、発想が別の順番になる。将来、何を作って食っていくか、ということをまず最初に考える必要があることになる。

A君:日本の場合、エネルギー資源・金属資源の自給自足は不可能とは言えないけれど、ここ20〜30年ではかなり無理筋に近くて、出来ても今世紀末ぐらいでしょうか。すなわち、人口が4500万人j程度になる2100年頃になれば、エネルギーは自給しているかもしれない。金属資源は、廃棄物をどのぐらいしっかり備蓄して活用できているか、が問題かもしれない。

B君:食料の自給自足は不可能ではないけれど、トウモロコシや小麦といった食料は、輸入した方が経済的合理性が高いという結論になるだろう。

A君:マクロフレームという言葉が先ほどでましたが、その定義を一応復習します。まず、「GDPや支出項目など」とされているようです。より具体的には、人口・労働力人口、為替、エネルギー価格、経済成長率、最終需要項目、などなどのことで、一言で言えば、確かに、「日本の状態と日本は何で食っているか」ということになるでしょう。

C先生:このマクロフレームが変われば、当然、エネルギー消費量が変わる。逆に言えば、エネルギー消費量を決めるということは、マクロフレームを決めるということでもあって、例えば、どのぐらい経済成長をするか、ということが合意できないと、将来のエネルギー消費量が決められないことになる。この議論は、可能性を広範に考えて、エネルギー消費量が多い場合の解をまず出すことが論理的に正しいアプローチだと思う。そこから、どのぐらいエネルギー消費量を下げることができるか、その際、どのようなエネルギー価格になって、どのぐらい負の連鎖が起きる可能性があるか、それを避ける方法があるか、などを考えることになる。

A君:大分前になりますけど、C先生は環境省の審議会で、5つの社会像というものを作りましたよね。
https://www.env.go.jp/council/06earth/y0613-09/mat03.pdf
それは、
(1)Made In Japan社会:製造業中心
(2)Service Brand社会:おもてなし中心
(3)Reserch & Development社会:開発と設計中心
(4)Resource Independent社会:資源自立社会
(5)Share社会:分かち合い社会

上の3つは、攻めの生き方をする社会で、下の2つは、守り型の生き方。特に、最後のShare社会は、ワークシェアリングなどをすることによって、金銭的な価値観を離脱した社会を意味するのですが、世界的にみて、残念ながら、どの国でも成立していないように思えます。

C先生:ここまでの議論は、ベストミックスが合意される基本的条件のような話だ。要するに、「将来の日本が何で食っているのか」を決めないと、実は、ベストミックスも決まらないということになるということだ。しかし、この議論は、様々な主張があるので、そのときの選挙結果が一般社会の意向を反映したものになっている、と考えざるをえない。

A君:一つの結論に到達したようなので、そろそろ、関連するいくつかの数値データを示したいのですが。


数値データNo.12013年の最終エネルギー消費構造
   電力の形で消費 23% 燃料として消費 77%



B君:電気がどのぐらい使われているか、というデータだと思えば良い。電力消費が1/4ぐらいで、残りの3/4は依然として燃料として消費している。

A君:電力を作るにも燃料などが必要ですし、その効率は現状で41%ぐらいしかなくて、59%は熱損失になっている。さらに発生した電力41%のうち、消費者の手元に届くのは37%ぐらいで、4%分は送電ロスとして失われている。そのため、一次エネルギー供給を電力用と非電力用に分けると、次のデータNo.2になります。まだ、非電力用のエネルギー消費の方が多い。


数値データNo.22013年の一次エネルギー供給構造
   電力用 43% 非電力用 57%


B君:その一次エネルギーがどのような燃料によって作られているのか、ということを示す必要がある。


数値データNo.32013年の1次エネルギー供給の内訳
 石油 43%、天然ガス 24%、石炭25%、再エネ 7%、原子力0.4%



A君:この1次エネルギー供給構成というデータが、その国のエネルギー安全保障やコスト、さらには、二酸化炭素発生量を決める重要な要素になります。そこで、次のデータが重要です。


数値データNo.41次エネルギー供給構成の比較
 2013年 化石燃料依存度が92.1%
 1998年 化石燃料依存度が
79.9%
 1973年 化石燃料依存度が
94%


A君:1998年は、化石燃料依存度が80%を切った画期的な年だった。

B君:世界的な化石燃料依存度、特に、石油依存度が75%ぐらいあった1973年に、その価格が上昇したものだから、世界的な石油危機(第一次)になったのだ。その当時、日本の化石燃料依存度は94%だったのだ。
 勿論、現時点での日本の状況は1973年と同じではない。1973年にはまだまだ脆弱な日本経済だったので、世界でもっとも重大な影響を受けた国だと言える。なんといっても、1バレル$2ぐらいだった石油が5倍にもなったのだから。

A君:1982年の第二次石油ショックのときには、石油価格は$34にもなったのですが、日本経済はかなり発展を遂げていて、ヨーロッパ諸国に比較しても、余り影響は無かったとされています。
 しかし、とにかく、現時点のこの92.1%という数値は、極めて危機的な数値で、もしも、中東で大規模な何かが起きたら、日本経済の破綻に等しいというレベルです。具体的には、ホルムズ海峡を通るタンカーが止められるということがそのシナリオですが。


数値データNo.52013年原油
 中東依存度    83%
 ホルムズ依存度 81%
 マラッカ依存度  83%



A君:中東に何かあると、これは大変。


数値データNo.62013年天然ガス
 中東依存度    30%
 ホルムズ依存度 25%
 マラッカ依存度  34%



B君:天然ガスは多少まし。しかし、石油は若干の備蓄が有る。

A君:現在、石油などが備蓄されているとは言っても、それこそ大した量ではないのです。また、エネルギー自給率もご存知の通りです。


数値データNo.7国内備蓄(在庫日数)
 LNG 約14日分
 石油  約170日分
 石炭  約30日分
 ウラン 約2.7年程度



A君:次はエネルギー自給率です。これは余りにも惨め。


数値データNo.8主要国の一次エネルギー自給率
 (エネルギーセキュリティーの考え方に基づく自給率。すなわち、燃料の備蓄が容易な原発は国産エネルギーとみなす数値)
 1位ノルウェー    681.3%
 2位オーストラリア  247.4%
 3位カナダ       167.1%
 9位アメリカ       84.4%
 14位イギリス      61.1%
 16位フランス      53.3%
 22位ドイツ        38.5%
 32位韓国        17.5%
 33位日本         6.3%
 34位ルクセンブルグ   3.1%



A君:そのエネルギー自給率ですが、このところ、1/3ぐらいになってしまった。


数値データNo.9一次エネルギー自給率の推移
 2010年 19.9%
 2011年 11.2%
 2013年  6.3%



B君:この数値の減り方でよく心配にならないな、と思うけど。現時点の日本経済の弱点の一つは、国としての借金が余りにも大きいこと。円安に振れすぎると1973年石油ショックのような事態が起きると考えるべきだろう。

C先生:1973年の石油ショックのときには、生活が大きく変わってしまった。深夜放送は無くなった。銀座など繁華街の広告の照明はすべて消えた。なぜか、トイレットペーパーが店から無くなったという不思議な話も起きた。現時点での危機感の無さはなぜなのだろうか、と思ってしまうのだ。世界的な基準としては、エネルギー自給率が25%を着ると、危険領域とされているのに、そんなことを考えると不安になるから、という理由だと思うが、メディアが自給率を報道することもほとんどない。

A君:そろそろ、次の要素である温室効果ガスの排出に行きます。


数値データNo.10部門別温室効果ガス排出量の変化
 業務部門 90年比で+71.3%
 家庭部門 90年比で+59.8%
 運輸部門 90年比で+2.3%
 産業部門 90年比で−10.8%



B君:運輸部門は、2001年にピークでそれ以後順調に減少してきた。これは、燃費の改善、特に、ハイブリッド車の普及が大きい。

A君:一方、産業に関しては、2008年のリーマン・ショックの影響が大きくて、2007年比で、2009年の排出量は半分近くまで減った。しかし、それから景気が良く回復すると同時に、排出量も復活してしまったが、それでも、ピークの2007年に比べると、まだ8割ぐらい。

B君:業務部門と家庭部門の排出量が増えたのは、明らかに原発が止まったから。業務部門で1990年比で1.3倍ぐらいだったものが1.7倍に、家庭部門では、1990年比で1.3倍ぐらいだったものが1.6倍になっている。

A君:しかし、絶対量で言えば、次のようなデータになります。やはり産業部門が多い。


数値データNo.11部門別温室効果ガス排出量の推移
          1990年  2013年
 業務部門  1.64億トン 2.81億トン
 家庭部門  1.27億トン 2.03億トン
 運輸部門  2.17億トン 2.22億トン
 産業部門  4.82億トン 4.30億トン



B君:業務部門、家庭部門の排出量の増加は、原発がほぼゼロになった影響が非常に大きいのだけれど、それを明確に示す数値が、排出係数と呼ばれるものだ。1kWhの電力を作る際に出る二酸化炭素の発生量を意味する。


数値データNo.12電源別の排出係数 kg-CO2/kWh
 石炭火力   0.82
 LNG火力   0.40
 石油火力   0.66
 原子力     0
 再エネ     0



A君:石油火力はコストが非常に高いので、これから増加するとは思えないのですが、原発が動かなければ、火力を増やす以外にないので、LNG火力か石炭火力ということになります。以下、コスト検証委員会の報告を参考にします。
http://www.cas.go.jp/jp/seisaku/npu/policy09/archive02_hokoku.html


数値データNo.13各電源の発電コスト 2004年試算  円/kWh
 原子力    5.9円
 石炭火力   5.7円
 LNG火力   6.2円



A君:2004年時には、価格の違いはそれほどないです。石油発電は示していないですが、高コストです。


数値データNo.14各電源の発電コスト 2010年モデルプラント 円/kWh
 原子力   8.9円〜
 石炭火力  9.5円
 LNG火力 10.7円



A君:これらの数値には、各種対策費が加えられています。原発には事故対応費用、石炭火力には、CO2排出対策費が。


数値データNo.15各電源の発電コスト 2030年モデルプラント 円/kWh
 原子力    8.9円〜
 石炭火力  10.3円
 LNG火力  10.9円



B君:現状での発電所建設コストは、2010年モデルプラントのコストに近いことになるが、LNG発電とたった1円/kWh違いのコストなのに、石炭火力の建設の申請がすごいことになっている
http://www.env.go.jp/press/press.php?serial=18440
http://jp.reuters.com/article/marketsNews/idJPL3N0RR1H020140926

A君:ほとんどが環境アセスの対象にならない出力が11.25万kW以下のプラントといった状況。これは、法律上の盲点を突かれた形になっていて、先日のFITとも似た状況。これは、早急な法改正などの対応が必要だ。

B君:石炭発電は、例えば、10〜15年後にはCCSを設置できるように準備しておくこと、といった条件を付加すべきで、今、設置を認めてしまったら、COP21に提出する約束草案が書けないような状況になってしまう。

C先生:先日のFIT事件と言い、現在の小型石炭発電事件と言い、世の中、ちょっとした隙間を狙ったビジネスがこれほど露骨になるとはね。規制側がもっと厳密に色々なことを考える以外に対応のしようがなくなってしまう。これを進めれば、ますます窮屈な社会になることだろう。
 今年のCOP21を目前にした現時点で、石炭火力を推進すべきという意見を持っている人は、視野が極めて狭い人で、短期的な利益以外に興味のない人だと言えるだろう。あるいはひどく追い詰められている場合もあるかもしれないが。
 石炭は、もともと天然の植物だったので、あらゆる元素を含んでいる。排出される物質のうち、もっとも毒性が高そうな元素が水銀で、現在の排煙処理技術がまともに使用されれば、それほど心配は無い程度ではあるが、決して、水銀の放出量はゼロではない。法改正によって、ある地域に多数の石炭火力が集中するようなことは、しっかり防止すべきだ。勿論、2020年から2030年における温室効果ガスの排出量を削減することに対して、どのような対応を考えているのか、その意見の一般公開を求めるといった対応も必要不可欠だと考える。