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   自転車は逆走可から不可へ 
 10.19.2013
       道路交通法の改正とヨーロッパの場合




 道路交通法が今年の6月14日に改正され、自転車の路側帯の通行ルールが変わる。詳しくは、警察庁のこのページを。
http://www.npa.go.jp/syokanhourei/kaisei/houritsu/index.htm

 その内容は、
『軽車両が通行することができる路側帯について、道路の左側部分に設けられた路側帯に限ることとする。』

 元の記述は、

第十七条の二  軽車両は、前条第一項の規定にかかわらず、著しく歩行者の通行を妨げることとなる場合を除き、路側帯(軽車両の通行を禁止することを表示する道路標示によつて区画されたものを除く。)を通行することができる

 6月14日に成立した法律43号によれば、

第十七条の二の「除き、」の下に「道路の左側部分に設けられた」を加える。

 これまで、路側帯であれば、右側の通行も可能だった。しかし、このルールはそう簡単ではなかった。

 次に示すWebページのクイズをやってみて下さい。全部正解できたら、相当の道交法のマニアだと言えるでしょうね。
 http://www.ei-publishing.co.jp/bicycle/share/velo_share19/

 どうですか。正解でしたか。私にはできませんでした。



C先生:自転車は軽車両なので、基本的には、車と同じ通行ルールを守らなかればならなかった。しかし、それでは危険だということで、指定された歩道は通行可にした(それ以前から、学童と幼児、70歳以上の人だけは、自転車でも歩道を通行できた)。

A君:ここまではまだ良かったのですが、歩道の無い道路の場合に、一本の白線で区切られた部分は、路側帯と呼ばれ、通常歩行者用ということになっているので、ここも自転車が通行可能になった。

B君:歩道なのだから、どちらの路側帯を通っても良いのか。その通り。左側を通行するだけでなく、右側の路側帯も通行できた。
 しかし、これは結構危ない。道路の右側の路側帯を通っているとき、向うから自転車が来たら、左側に避けるのがルールだから、とちょっと避けければ、車道に入ってしまう。どう考えたって、道路の右側の路側帯を通行できるようにすることは、余程空いている道路なら大丈夫だが、多くの歩行者が歩くような路側帯では車道を逆走することと紙一重。

C先生:少々、自由度を高くしすぎた。本来であれば、大人なら路側帯のある道路でも、車道を走るのが原則。もしも、危ないときには、路側帯に入っても良いという程度の運用から始めるべきだったと思う。

A君:そもそも、歩道がある道路の場合にも、その車道の一部に白線が引かれている場所があります。しかし、その白線は、路側帯であることを意味しない。すなわち、白線の意味も簡単ではないのです。

B君:それなら、その部分は何なのだ。

A君:歩道がある道なので、路側帯ではなくて車道の一部でしょう。単に狭い車線なのでは。自転車やバイクなどの二輪車は入っても良い、ということなのかもしれない。ただし、路側帯ではないので、逆行は不可能だった。

B君:さらに複雑なものもある。二重の白線が引かれている路側帯は、歩行者専用路側帯で、そこには、自転車は入ることはできなかったし、法律改正後も入れない。などの細かいルールがあるが、これを知っている方がおかしいかもしれない。

C先生:日本の交通行政は、いささか緩くてなし崩し的な感じがしたが、今回、路側帯の逆行に関しては、余りにも不適正だったので、やっと改善が行われることになったということだ。

A君:そういえば、先日、9月28日の記事http://lebenbaum.art.coocan.jp/Travel/3CitiesBelgium.htm
の中にベルギーのゲントのDampoort駅の自転車駐車場の写真がでていましたが、ベルギーも自転車道はきっちりと出来ているのですか。

C先生:ベルギーも平らだから自転車道の整備状況はすごい。オランダ並の自転車道路かもしれない。もう一つ、デンマークがやはり自転車王国。

B君:そして、日本以外の国では、かなり明示的にルールが決まっている。

C先生:そう思う。例えば、この写真はデンマークのコペンハーゲン。この道路は一方通行だ。右側に自転車道路があって、そこを多くの自転車が通行している。しかし、反対側には自転車道がない。そのため、当然のことながら、逆行している自転車はいない。歩道を走れない国だから、車道を逆行するしかなくて、それをやれば、相当の罰金を喰らうのだろう。


写真 コペンハーゲンの自転車道路 反対側には、自転車用のレーンがない。逆方向は通行不可なのではないか、と思われる。

A君:一方通行だと、車道の逆行はできない。しかも、歩道の通行は、通行可の標識がないとダメということですか。

C先生:多分そうだ。逆向に自転車が走れる一方通行だとこんな表示になっている。車両進入禁止の標識の反対側に自転車通行可の標識がでている。わかりにくいが、車道の右端に自転車道ができている。
 実は、デンマークの写真が見つからず、この写真は、スウェーデンのHelsingborgという町だ。フェリーで渡るとデンマークのHelsingorなので、その通行ルールは、多分、デンマークと同じだと思う。


写真 スウェーデンHelsingborgの自転車通行可のサイン。一方通行出口に、自転車通行可が表示。
  これから考えると、通常の一方通行を自転車が逆行することは許されないのではないか。日本の場合だと、自転車だけでなく、原動機付き自転車も、50cc未満なら一方通行を逆行できるのではなかっただろうか。


B君:コペンハーゲンは、本当に自転車王国のようなところだけど、歩行者優先はかなり徹底している。

C先生:その通り。この写真は、Gammeltorv付近で、休憩していた2階にあるカフェから撮ったもので、ガラス越しだが、コペンハーゲンによくある広場。自転車が通ることができる通路は、画面の左にあるように、限定されている。広場の中を通る場合は、自転車を押して歩いている。


写真 コペンハーゲンの広場。自転車道がしっかりと区分されている。歩行者が通行する広場では、自転車は押して歩く。

C先生:さらに拡大してみると、その自転車通路には、通行の方向まできっちりと書かれている。当然、右側通行。


写真 同上拡大図。自転車の通行方向が書かれている。

A君:オランダの写真が出てこないですね。

C先生:探しきれていない。わざわざ自転車の写真を取ることは極めて少ないので。唯一見つかったのが、これか。


写真 自転車の両方向通行が可能のサインが見える。しかし、人が多すぎて、どこを通れるのか不明。

C先生:この日は、オランダの女王の誕生日で祝日だった。アムステルダム中央駅に到着したものの、市電もタクシーも一切運行していなかった。大きなトランクを押して、4km歩いてホテルに向かっている途中に写真を撮影したのだが、アムステルダムの有名な運河もこんな様子だった。


写真 アムステルダムのクイーンズデイの運河 オレンジ色はオランダのシンボルカラー

B君:何か、非常に陽気のように見えるが、アルコールが入っているのだろうか。

C先生:その通り。

A君:話を戻して、オランダでも確かに標識がしっかりしていますね。自転車が行き交うときに、右側通行しかできないようになっているようですね。

B君:日本の交通ルールは、たけしが「赤信号みんなで渡れば怖くない」と発言するまでは、極めてきっちりしていた。しかし、その後、ずるずるになってしまった。

A君:普通考えると、デンマークと言えば、それほど規則でガッチリという感じはしないかと思いますが、実際には、ルールは守るべきという基本的な了解があるように見えます。

B君:安全の確保というものは、そういうものだ。自由にやっても良い、といったら確保できない。ここにも日本人のリスク音痴が見え隠れする。

A君:しかも、そんなルールを決めたら面倒じゃないか、ということを言ったら、それが国全体のシステムに影響してしまうと思わないと。

B君:そのあたりも問題かもしれない。人口の多い国が多いアジアでは、自分一人ぐらいずるずるとやっていても、国全体がずるずるになることはないと思ってしまう。しかし、そうも行かないのが人口が少ないヨーロッパなのだろう。

A君:オランダ1650万人、ベルギー1100万人、スウェーデン950万人、デンマーク550万人。

C先生:日本だと、国側は国側で、きっちりと守らないと危ないことは重々承知していながら、自転車の歩道の通行規則などを完璧に作ろうとしない。

A君:道路交通法は第百三十ニ条まであるとてつもない分量の法律なのだけど、国家公安委員会委員長にとっては、多くの場合、併任ポジションの一つに過ぎないので、それほど重要なものではないのかもしれない。

B君:政令を定めれば、権限の大部分を警察庁長官に委任できるみたいだし。

A君:最近、都内の環状六号線の富ヶ谷付近が拡幅されて、歩道に自転車道ができたのだけど、ヨーロッパ流ならば、車道の脇に片側通行の自転車道を作るのが本筋。


写真 環状六号線の広い歩道に作られた自転車道

この歩道はかなり幅が広い。真ん中に白線があって、歩行者が車道から遠い側、自転車道が近い側である。この標識の柱は、白線の上に立っている。しかし、余り気にしないで歩いている人が多いようだ。

2台の自転車は自転車道を走っているが、真ん中を歩いている人も自転車道を歩いている。折角分かれているのに、他の歩道と同じく、無意識で混じってしまうのだろう。

A君:こうしてみると、歩行者が自転車道というものを認識することから始めないと、歩道に作った自転車道は正しく認識されないのかもしれない。

B君:それは最初から分かっていることだ。だから、自転車道は、歩道の一部に作る場合でも、僅かな段差を付けるべきだったのではないか。

A君:それに、もし歩道に作るのであれば、両方向通行になるので、その通行方向をコペンハーゲンの場合のように明確に示すべきだったのではないか。

B君:この道路は都道だと思うので、東京都公安委員会がそのあたりにもっと配慮して、歩行者と自転車が混じらないようにしないといけなかったのではないか。

C先生:自転車ぐらい自由に走らせてよ、という考える人も多いだろう。しかし、このところの事故の多さと、自転車が加害者になった死亡事故が多発しているという状況からみて許容しがたいというのが、このところの警察関係の判断だと思う。そのために、道交法が改正された。この施行は、6月14日から6ヶ月以内か1年以内(6ヶ月と書かれているWebサイトが自治体などのものに多い、というよりもほぼすべてがそうなのだが、平成25年6月14日法律第43号を読むと1年以内に読める。さて、どちらが正しいのだろう?)ということなので、まずは周知を十分行っていただきたい。

A君:周知は極めて重要です。自転車の検査とか、自転車運転者講習の受講命令などや、車道を逆行すると罰金5万円といった罰則もできたので。

C先生:総理大臣が言いたい放題という政治状況が過去何年間か続いたこともあって、国民も言いたい放題が普通になった。そのためもあって、日本全体が、心が通わず、良識というものが何か分からなくなって、シャッキリしない状態になった。
 先日、中国で拝金主義に嫌気をさして、心の安定を求め、キリスト教や儒学に答えを求める人が増え続けていて、とうとうキリスト教信者が1億人になったというテレビ番組を見た。
 日本に広まる「××主義」で、個人的にもっとも許しがたいのが、「お客は神様主義」。お客であっても、販売側とは、互恵的な関係を保つのが良識というもの。それが将来、自分自身に取っても利益になる。
 もう一つこのところ目立つのが「歩行者優先だろ!主義」、というか「過度の弱者優先主義」。 事故を起こせば、強者である車側が悪い。確かに、それはそうだろう。しかし、交通というものこそ、実は互恵的。多少、他者の立場を考えることによって、全体がスムースになって、各人が目的地への到着時間が結果的に早くなり、全体的な無駄が減る。
 やはり、ヨーロッパ的な秩序ぐらいは守ると決めるのが、丁度バランスが良いのではないか、と思われる。
 米国の歩行者のマナーは、昔は、赤信号を平気で無視する人が多かったが、最近はかなりマシになった。場合によると、日本人の歩行者の方が、信号を守らない。しかし、しばらくの解決は見たが、国家のデフォルトを巡る最近の状況を見ると、茶会派を中心とする余りにも身勝手な思想が、社会全体に悪影響を与えているように見える。
 どうやら、世界中、何んとかかしなければという状況だ。
 そこで、本日の結論。ルールを自分勝手に解釈して行動することは、他人に被害を与えて罰則を受ける可能性があるだけでなく、国レベルで勝手な政治家がでてくる傾向を強め、自らが被害を受ける可能性が増大する。このことを考えると、交通ルールも、やはり守るべきだろう。