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バイオマスエネルギーの今後 08.08.2015 日本INDC達成の可能性 その1 ![]() |
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COP21に向けて、各国の2030年の二酸化炭素排出量が登録されている。かなり出揃ったというところである。日本のINDC(約束草案)も、7月17日に登録されたことは、ご存知の通り。 その基礎となったエネルギーミックスー電力構成の中では、再生可能エネルギーが22〜24%となって、原子力を上回った数値になっている。 その内訳は、地熱1%程度、バイオマス3.7〜4.6%程度、風力1.7%、太陽光7.0%、水力8.8〜9.2%程度である。 直感的には、バイオマスの数値がどうも多いように見えるけれど、これで実現可能な数値なのだろうか。今回は、結論は出せる状況にない。バイオマスを巡る諸事情が余りにも複雑すぎて、先が見えない。それだけにますます心配。 C先生:色々と心配になるのだ。今年の11月末から始まるCOP21のために提出した約束草案INDCだけれど、本当に実現可能な数値なのだろうか。結構厳しいと思うのだけれどね。そこで、今回は、その中でも、かなり厳しいと思われるバイオマスに関して、どのような状況であるかをチェックしてみたい。 A君:了解です。バイオマスですが、まずは導入目標値が602〜728万kWです。この数値は、電力のベストミックスを参照するのが良いでしょう。 B君:まあ、そうだろう。次のPDFファイル、といっても、パワポ形式のものなので、p45にそれが出ている。 http://www.enecho.meti.go.jp/committee/council/basic_policy_subcommittee/mitoshi/pdf/report_02.pdf A君:種類別に出ていますので、次に示します。 ![]() 表1: バイオマス発電の2030年導入見込量 B君:個人的に心配という理由だけれど、FITのデータなのだ。平成25年6月までの累積導入量が252万kW。その後、平成26年度11月末までの追加導入量が12.2万kWしかない。そのため、いささか心配である。 A君:一方、太陽光の非住宅、いわゆるメガソーラは、平成24年6月末までの導入量が90万kWだったが、平成26年11月までの導入量がなんと1200万kWに近いのですよね。 B君:どうみても、バイオマスの人気は低くかった。 A君:ところがなんです。昨日(8月8日)の朝からデータのチェックを開始していたのですが、なんとなんと、日本経済新聞の夕刊の一面トップが、「丸太争奪戦 バイオマス発電急増で」となっています。 B君:日経の記事によれば、FITの買い取り価格だけれど、発電能力が2000kW未満だと40円(税抜き)/kWh。2000kW以上の場合は32円とのことだ。これがきっとかなり良い価格なのだろう。 A君:数値はそれでよいのですが、「間伐材の場合で」、と書かないと。日経の記事には書いてありますが。いずれにしても、細かい価格は、次の表です。 ![]() 表2:バイオマス発電のFIT価格 B君:「発電利用に供する木質バイオマスの証明のためのガイドライン」というのは何だ。 A君:それは、これですね。 http://www.rinya.maff.go.jp/j/riyou/biomass/hatudenriyou_guideline.html 林野庁のサイトです。 (1)間伐材等由来の木質バイオマス 間伐材等由来の木質バイオマスとは、次のいずれかに由来するバイオマスをいう。 @ 間伐材 森林の健全な育成のため、うっ閉し立木間の競争が生じ始めた森林において、材積に係る伐採率が35%以下であり、かつ、伐採年度から起算しておおむね5年後において再びうっ閉することが確実であると認められる範囲内で行われる伐採により発生する木材を間伐材といい 除伐 (うっ閉する前の森林において目的樹種の成長を阻害する樹木等を除去し目的樹種の健全な成長を図るために行う伐採をいう。)によるものを含む 。 A @以外の方法により伐採された木材 @以外の方法により次のいずれかの森林(伐採後の土地が引き続き森林であるものに限る。)から、森林に関する法令に基づき適切に設定された施業規範等に従い、伐採、生産される木材をいう。 ア 森林法(昭和26年法律第249号)第11条第5項の認定を受けた森林経営計画(森林法の一部を改正する法律(平成23年法律第20号)附則第8条の規定によりなお従前の例によることとされた森林施業計画を含む。以下「森林経営計画」という。)の対象森林 イ 森林法第25条又は第25条の2の規定により指定された保安林及び同法第41条の規定により指定された保安施設地区の区域内の森林(以下「保安林等」という。) ウ 国有林野管理経営規程(平成11年農林水産省訓令第2号)第12条第1項の国有林野施業実施計画及び公有林野等官行造林法施行手続(昭和30年農林省訓令第11号)第6条第1項の公有林野等官行造林地施業計画の対象森林 (2)一般木質バイオマス 一般木質バイオマスとは、間伐材等由来の木質バイオマス及び建設資材廃棄物以外の木質バイオマスであって、次の木材等に由来するバイオマスをいう。 @ 製材等残材 木材の加工時等に発生する、端材、おがくず、樹皮等の残材 A その他由来の証明が可能な木材 製材等残材以外の木材であって、由来の証明が可能なもの B君:難しい日本語だが、明らかなことは、「証明書が必要だ」ということのようだ。 A君:そうですね。まだあるのですが、余りにも長いので、省略したいのですが。 C先生:やはり、太陽光FITのときの騒ぎが、今回は、バイオマス発電に飛び火したのかもしれないね。今回は、バイオマスがターゲットになりかかっているということなのかもしれない。 しかし、日経の言うように、丸太争奪戦となるのだろうか。 A君:もしも「建築資材廃棄物」という分類になると、13円ですからね。もっとも高い間伐材の場合の1/3以下ですよ。 B君:ということは、証明書の偽物が出回るといった事態まで考えて置かなければならない。 C先生:それはその通り。加えて、海外からの木材の輸入がもしも急増するといった事態になるとしたら、それは要注意だ。このところ、非常に厳しい目で見られているから。インドネシアなどによる不法伐採の木材が、ロンダリングを経て輸出されているからなのだ。 A君:「木材、ロンダリング」というキーワードで検索すると、次のようなページが出てきます。 http://www.jatan.org/jn/JN55eia.html B君:このJATAN(Japan Tropical Forest Action Network)というのは、熱帯林行動ネットワークという名称のNGOで、この記事は、次のような内容だ。 イギリスのNGO、Environmental Investigation Agency (EIA)とインドネシアのNGO、テラパックは、マレーシアとシンガポールがインドネシアで違法に伐採された木材をロンダリング(違法に輸入したものを合法に見せかけて再輸出等をすること)して国際市場に流している実態について調査した報告を発表しました。そのプレスリリースの報告内容を紹介します。 様々な公約や国際条約による責務があるにもかかわらず、マレーシアとシンガポールはインドネシアで急速に消失し続ける森林を犠牲にして利益をあげ続けている。 マレーシアは世界で最大の熱帯木材の輸出国である。また、10億ドル規模の木製家具輸出産業を抱えている。シンガポールは自国内に森林がないにもかかわらず、大規模な木材産業を持ち、加工と再輸出を行なっている。EIAとテラパックは、両国から輸出される木材のかなりの割合がインドネシアの違法材であり、違法に伐採されたインドネシアの木材の中継地としての役割を果たしていることを明らかにした。 A君:このようにマレーシアとシンガポールが疑われているだけなら、日本には関係が無いのですが、実は、日本に対しても、木材、特に、熱帯林の利用に関して、色々と問題点を投げかけているのです。 例えば、住宅の寿命が短い、コンクリート型枠には熱帯材の合板が使われている。学校の机や椅子も、熱帯材の合板でできている。 B君:実際のところ、昔のボルネオ島、現時点では、カリマンタン島での森林の状況は酷いもので、保護林とされている部分は極めて少ない。それ以外の部分は、急速に植生が変わっている。農地開発のために、排水路を建設して、そのために、地下水位の低下と土壌の乾燥化が進んでしまうことがもっとも大きいのかもしれない。 A君:京都大学の北山兼弘教授は、このあたりの専門家ですね。 B君:WWFなどのNPOのもう一つの攻撃先が、インドネシアの製紙企業であるAPP(Asia Pulpe and Paper Co.)。このメーカーは、すでに200万ヘクタールの自然林を破壊したとして、NPOは、監視状態にしている。 A君:しかもまずいことには、日本に輸入されているOA用紙のかなりのものがAPP社ともう一つの問題企業とされるAPRIL社のものであるという実態があります。インターネットで買える安価なOA紙は、怪しいと思った方が良いですね。 C先生:ちょっと脱線したな。日経の記事では、バイオマス発電の影響を受けて、例えば、日本の製紙業が海外からの木材の調達量を増やす、といったニュアンスになっているが、このところ、木材とその派生品は、CSR的にみて結構問題になっているので、余り簡単に考えない方が良いと思うのだ。 A君:これまでも、ネスレのキットカット事件とか、かなり古い話ですが、NIKEの少年労働事件とか、最後には、大企業がNPOに全面降伏をした事件がありますからね。 B君:今のところ、日本国内では、東芝による不法会計処理が問題になっているけれど、世界的には、NGO、NPOによる企業監視は、自然保護を始めとする社会的責任を果たしているかどうか、が中心的な課題になっている。 A君:一方、日本人は、NGO、NPOを信頼性の高い組織とは見ていない。それは、例のシーシェパードのような暴力的なNPOの新聞報道が「標準」になっているからかもしれませんね。 B君:しかし、東洋経済ONLINEにこんな記事が載っている。「健全なNGOとの協働は、自らのブランドを強くする」。 http://toyokeizai.net/articles/-/51060 A君:内容をちょっと紹介しますと、 アクセンチュア、ワールドビジョン、パートナーリング・イニシアチブらが2008年に実施したNGOに関する共同調査によると、企業がNGOと協働する目的は以下の6つのタイプに分かれるという。 1.スポンサーシップ…寄付など 2.マーケティング(コーズ・リレーテッド・マーケティング)…売上の一部を寄付に充てる活動などで、消費者の購買行動を社会貢献に結び付け企業のイメージアップと収益拡大を図る 3.キャパシティ・ビルディング…主に途上国における従業員エンゲージメント、社内外の能力開発 4.ブローカー…大規模なスケールでのイニシアチブの促進、地域パートナーシップの促進など 5.アドボカシー…問題解決に向けたキャンペーン、政策変更を目的とした戦略的パートナーシップなど 6.ビジネス…アドバイザリー・サービス、社会的企業開発、BOPなどの技術的開発支援) B君:英国の企業あたりの対応を学んだ欲しいものだ。 C先生:バイオマスの話に戻ろう。日本の森林は、様々な点で、もはや限界だ。ここにバイオマスブームがやってきたとすれば、これをキッカケとして、将来のある日本の林業を根底から作り直す良いチャンスだと考えるべきだとう思うのだ。具体的にはどうすれば良いと思う? A君:林業の立て直しを提案している有名人としては、速水亨氏など、何人かいますよね。しばらく、何人かの書物でも買って、皆さんの主張を勉強してみますか。 B君:少なくとも、いくつかの問題点ぐらいは指摘しておくか。 (1)もやは育ちすぎた杉林。いくらなんでも、そろそろ切らねば。 (2)所有者も分からなくなっている森林も有る。 (3)そのため、林道を作ることも難しい。 (4)所有者が森林の手入れをしない。 (5)放置された森林は災害の危険性を高めているのだから、森林環境維持義務を課すべき。 (6)それができない場合には、森林所有に対して課税強化が必要。 (7)それには、今後の気候変動による豪雨などの影響ももっと理論的に解明すべき。 (8)日本の森林は余りにも急峻な山地にある。 (9)重機の導入が難しい。 (10)労働力も老齢化している。 (11)林業による所得は余りにも低い。 A君:問題だらけで、解決不能に近いですが、なんとかしなければならない。 C先生:そんなところか。ところで、A君はかなりwebをしらべていたようだが、推薦サイトの一覧を付けて、終わりにするか。 A君:日本のバイオマスの理解に有効と思われるサイトのリストです。非常に多くのサイトがあるようですから、他にもっと有用なサイトがあるでしょう。 ★林野庁のバイオマスの利用推進 http://www.rinya.maff.go.jp/j/riyou/biomass/index.html ★林野庁の木質系バイオマス利用促進の取り組み http://www.rinya.maff.go.jp/j/riyou/biomass/con_4.html ★NEDO 再生可能エネルギー技術白書 http://www.nedo.go.jp/content/100544819.pdf ★NEDOのバイオマスエネルギー導入ガイドブック 第3版 2010 http://www.nedo.go.jp/content/100079692.pdf ★資源エネルギー庁 企業のためのバイオマス導AtoZ http://www.enecho.meti.go.jp/about/pamphlet/new_energy/pdf/baiomasu.pdf ★ISEPの木質バイオマスシンポジウム2014 http://www.npobin.net/140220Matsubara.pdf ★三菱UFJリサーチ バイオマス事業化 お薦め! http://www.isep.or.jp/wp-content/uploads/2014/09/140928AikawaPDF.pdf ★住友共同電力(株)・川崎バイオマス発電(株) http://www.maff.go.jp/j/biomass/b_kenntou/05/pdf/siryo5.pdf ★神之池バイオマス発電所 荏原環境プラント株 http://www.eep.ebara.com/works/case/gounoike_bio.html ![]() ![]() |
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