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    バイオプラはプラ問題の切り札か  10.06.2019
       Net Zero Emission 2050も視野に考察

 



 日本でもプラスチック製品の環境影響に対する関心が高まっている。「やっとか」、という感想ではあるけれど。世界全体のプラ見直しのきっかけとなったのは、昨年の7月にテレビ等で紹介されたウミガメの鼻に突き刺さったストローの動画。どうも、コスタ・リカで撮影されたビデオだったようだ。スタバやマクドナルドの対応は素早かった。日本企業でも、若干の反応はしたが、やはり、反応は遅かった。ちなみに、ストローに使われる樹脂は多くの場合ポリプロピレン。
 この時期に発表された環境省による「プラスチックを取り巻く国内外の状況」というファイルが次のアドレスからダウンロードが可能。
http://www.env.go.jp/council/03recycle/y0312-01/y031201-2x.pdf
 もう一つ起きたプラ問題が、中国が使用済みプラスチックの輸入を止めたこと。そのため、日本には大量の使用済みプラが余った。焼却施設も不足していて、いまだに大変なことになっている。
 本年3月にまとまった環境省のプラスチック資源循環戦略では、2030年までに、「導入可能性を高めつつ、国民各界各層の理解と連携協働の促進により、200万トンのバイオプラスチックを輸入する」というシナリオになっているが、その戦略に妥当性があるかどうか。これは、本来、地球レベルでの検討が必要不可欠である。記述の詳細は、次のファイルの最終ページを参照いただきたい。
https://www.env.go.jp/council/03recycle/y0312-00/20190531b.pdf 
 現時点で、海洋汚染源としてのプラスチックは、すでに無視できないレベルになっている。もっとも、具体的に海洋生態系にどのような被害が、どの程度あるか良く分からないものの、勿論、無いとは言えない。例えば、マイクロプラスチック。どの生物がどのぐらいの大きさのマイクロプラスチックの、どのぐらいの量を飲み込むとどのようなその生命体の寿命にどのぐらい影響するのか。これを明らかにすることは恐らく非常に難しい。だからといって、許容できるというものではないが、やはり、特定の魚類で良いから、その悪影響が解析されることが望まれる。それがあれば、なんらかの方法によって、全体感を得ることができるだろうから。
 プラスチックの環境影響として重大なものは、決して海洋プラスチック問題だけではない。プラスチックの環境影響には、プラスチック製品が、最終処分されるときに、石油製品であるから当然ではあるが、焼却処理がもっとも合理的であるのだが、宿命として、同時にCOを発生する。これが最大の問題であるかもしれない。しかし、プラスチックの焼却によるCOの発生への寄与率は、実は、わずか2.8%に過ぎない。いかに大量の化石燃料が多方面の用途に使われているかが分かる。
 9月23日にニューヨークで行われた「国連気候行動サミット」においても合意されているように、地球環境問題において、最大の問題は、気候変動であり、その解決策の一つは、Net Zero Emission @2050である。もし、本当にこれを実現するとなれば、プラスチックは、植物起源にすべきだという主張も意味を持ってくる。



C先生:本日の主題だが、CO排出とプラスチックとの関係をざっくりと解明すること。2050年と言った時点でのNet Zero Emissionを考慮したとき、バイオプラスチックはどこまで実用化されるか、という未来予測に関わることなので。しかし、イントロとしては、関連事項として、海洋プラスチックの話をちょっと説明してくれ。

A君:了解です。プラと化学物質と言えば、東京農工大の高田教授。海洋プラスチック、特に、マイクロプラスチックに吸着されている内分泌攪乱物質が人体にも影響を与えると主張していますが、定量的なデータは見たことが無い。PCBが吸着しているという脅しもしますが、どのぐらいの量を摂取すれば有害なのか、定量的に提示されたことは無いです。せめて、プラスチックにどのぐらい量のPCBが吸着されていて、それが人体の消化器において、何%が解離してくるのか、このぐらいのデータを出すべきだが、多分高田教授には通じないだろう。ご本人も、「予防原則的な立場からのものです」、としていて、恐らくほぼ無害の濃度レベルであることを承知していると思われます。
 それも当然で、マイクロプラスチックは、吸着されているとされる化学物質の人体影響などよりも、生態系影響の方が重大。これを中心に考慮すべきものなのだからです。すなわち、プラスチックが海洋生態系に与える影響は、無視できないと思われるので、人体への影響もあるとか言わずに、もっと海洋生物に対する影響の研究を進めるべきです。そもそも、この問題の人体への影響など、軽微であるに決まっていますから。

B君:先週のターゲットであった国連のNet Zero Emission@2050ですが、これも、実は、国の自然状況によるだけれど、少なくとも日本のような国土の状況では、ほとんど不可能と思える。エネルギーを100%自然エネルギーによる電力とし、その電力を発電する装置は、風力と太陽光、地域によっては地熱・水力も。本当は、核融合発電が欲しいところであるが、これを2050年までに実現するのは時間が足らない。現時点のような大型原子炉は、事故の可能性を完全にゼロにするのが難しいので、むしろ、安全度がより高い小型原子炉(Small Modular Reactor)が必要になるのだが、日本企業がこの炉を作ることは無さそうだ。商売にならないと踏んだのか、日本の原子力関係企業は撤退。廃炉だけで生きるつもりのようだし。

A君:恐らく、2050年においても、日本という国は、現時点と同様に、エネルギーの大量輸入国になっているはずですね。ただし、化石燃料という訳にはいかないので、水素、もしくは、その化合物であるアンモニアを大量に輸入しているはず。日本の場合、これが恐らく唯一の解決方法に見えます。

B君:Net Zero Emission@2050が当たり前になると考えたときでも、上述のように、現時点でのプラスチックの焼却によるCO排出量の寄与は、実は、それほど重大であるとも言い難い。しかし、気候変動の悪影響がますます顕在化するだろうから、2050年頃、プラスチックを植物原料から製造することが、かなり主流になっている可能性もある。アフリカを中心に人口が増えることは確実で、恐らく2100年には、地球上で作らざるを得ない食料用の植物の総量は、人口増加とともに増える。2100年において、世界人口の予測される中央値は110億人。こうなると、林地・農地が現時点より減る傾向にならざるを得ないことを考えると、プラスチック製造用の原料を栽培する農地の増える余地はかなり限られている可能性が高い。

A君:特に、サブ・サハラのアフリカの人口増加は2020年予測の10億人が、2100年には35〜40億人に急増することが確実ではないか、とされています。実に現時点の3.5〜4倍です。

B君:ラテンアメリカ・カリブ海諸国の人口変化は、緩やかに増加する。そして、2050年頃がピークでその後減少。東アジアは急速に減少。東南アジアでもかなり減少傾向。

A君:結局のところ、食料の生産・供給に関しては、アフリカが最大の問題の地域。バイオプラスチック原料として、農産物が使えるのか、という問題の答えは、2050年頃になると、やはり食料優先になって、バイオプラの原料としては、相当難しいということになるのでは。

B君:そんな感触だけれど、本来であれば、それをどこかの組織がしっかり解析すべき重要問題だ。例えば、WWFとか。

C先生:全体感としてはそんなところだろう。少々個別のプラについて議論をすべきではないか。

A君:了解。バイオプラと言われると、現時点で可能性があるのは、ほぼ二種類。一つは、ポリ乳酸=PLA(Poly Lactic Acid)であり、もう一つが、バイオポリエチレン。この二種については、通常なら原料となる作物は異なります。PLAについては、トウモロコシである可能性が高い。そして、バイオポリエチレンになると、原料はサトウキビの可能性が高い。

B君:トウモロコシだと、人口が減少する米国などで大量に栽培することは可能になるけれど、サトウキビとなると、ブラジルあたりの状況を十分に考慮しないと危うい状況になりかねない。

A君:最近、ブラジルでの熱帯林が火災ですごいことになっています。原因はいろいろ言われていますが、現大統領が「短期的な経済成長の価値観だけ」、という人らしくて、噂では、誰かが森林に放火しているのに、それを放置している。理由は、農地にすることを許容しているからとか。

B君:消火活動を行うための消防車なども不十分なのに、それを拡充する気もないといった噂も出ている。ちょっと困った状況だ。

C先生:バイオプラは、人口をパラメータとする食料生産と森林保護政策との狭間に存在する課題ではある。これがどうなるのか。アフリカだと増加する人口によって、食料生産偏重になる可能性が高い。一方、ブラジルあたりの熱帯林は、放置すると、当然、消滅する方向性。これを保護するというのは、その国の責任だと思うけれど、結局のところ、経済成長が万能のキーワードになるので、どうしても熱帯林は減る。しかし、熱帯林は、恐らく、動物という生命の地球レベルでの肺に相当するので、そのような理解ではまずいと思うのだけどね。

A君:最初の部分に記述がありますが、通常のプラごみを中国が引き取ってくれなくなったので、大量に日本国内で積みあがっているらしいです。どこにどのぐらい積みあがっているのやら。

B君:最新情報をWebでチェックしてみると、こんなページが見つかる。
https://www.mizuhobank.co.jp/corporate/bizinfo/industry/sangyou/pdf/1062_09.pdf
なんと、みずほ銀行が9. 廃プラ規制がもたらすビジネスチャンス −プラスチックリサイクル・代替素材開発−という題名で書いている。

A君:読み始めました。まだざっとした感想ですが、記述はかなり本当に近いと思われます。

B君:まあ、温暖化にしても、プラ・リサイクルにしても、これは企業の経営と直結する項目なので、金融業としても放置する訳には行かない。ちゃんとした対応をしそうなところを見つけ出して、そこに投資をするという以外に方法がないのは明らかなのだ。

A君:それは、金融業の中でも先端的な対応をしているノルウェーの実例を見れば、良く分かるはずです。当然のことながら、ノルウェーの政府年金基金が、世界でもっとも先進的な対応をするのが常ですから。

B君:ノルウェーの政府年金の運用を行っているノルウェー銀行は、企業に対して、プラスチックごみ対策等の海洋環境保全の取り組み強化や、関連情報の開示を求める方針を示していて、パリ協定合意直後のCOに対する対応のような状況になっている。

A君:このみずほ銀行の結論も、次のようになっています。
「「野心的」なマイルストーンを達成するためには、単純にこれまでの施策の延長だけでは不十分であり、プラスチックリサイクルの促進に加えて、日本産業としても非連続的な取り組みが求められる。こうした中、有力な解決策のひとつとして、プラスチック代替素材の導入という、素材サイドでのイノベー ションが期待されよう。例えば、マイルストーンに基づくと、バイオマスプラスチックは、足下の 4.4 万トンを大きく上回る 70〜80 万トンが必要となり、新たな需要創出や、供給拡大が求められる(【図表 5】)。」

そして、その図表5はこれです。みずほ銀行によるまとめの表


 図表5 バイオマスプラスチック出荷量推計
https://www.mizuhobank.co.jp/corporate/bizinfo/industry/sangyou/pdf/1062_09.pdf

B君:さらに、みずほ銀行の今後のプラ素材に対する対応は、こうなるという図表6があって、こんなものを提示してる。



 図表6 みずほ銀行による廃プラ課題解決方法の予想。
https://www.mizuhobank.co.jp/corporate/bizinfo/industry/sangyou/pdf/1062_09.pdf

A君:極めて基本的かつ正当な見方。素材関係の話になると、解決法はほぼ3Rと代替素材に限られているということが大前提。

B君:その点については、誰でも同じ考えで、まさに真実。

C先生:ここの項目について、まあ当たり前なので、細かい議論をするのは余り意味がないように思うが、金融機関が環境問題をリードし始めているということは、このような検討結果が公表されるようになっていることからも極めて明瞭になってきている。これは、勿論、日本以外の国では、さらに強い傾向が認められる。要するに、最近の環境問題は、金融リード型になっていると結論すべきなのだ。
 それも当然で、このところの台風のように、放置しておくと千葉県のような被害が出てしまう。この台風15号のケースでは、本当に久ぶりに千葉県が襲われたのも理由の一つ。しかも、東京湾の水温がまだ28℃と29℃間ぐらいあるときに、陸地をさけて湾内を東北東に移動しながら成長を続けた。こんな例はめったにあることではない。しかし、昨年の関空島台風21号のときでも、海面温度は今年ほど高くはなかった。台風は、210日(9月1日)~220日(9月10日)に来るということは、昔と変わらないが、そのときの海面温度が今と昔で違う。これで、昔の台風に比べれば、格段に強い強風が吹くことになる。
 今回、みずほ銀行の例を引用したが、その背後には、TCFDという組織がある。これは、パリ協定ができた2015年のCOP21で設立が合意された。母体となった会議は、各国の中央銀行総裁・財務大臣などによって構成されていた。金融機関にとって、特に、保険業にとっては、強力な台風が発生すれば、被害の補償に必要となる費用が莫大になることは目に見えているので、温暖化を回避する行動をとって貰うことは重要なことだ。保険業でなくても、例えば、河川の氾濫などによって、工場が浸水するという事態になれば、その企業は潰れるかもしれない。となると、そのような状況にある企業には、融資はできないということになる。すなわち、パリ協定以来、金融業による地球環境への対応の態度が、ガラッと変わったのだ。
 廃プラの処理方法なども、同様の発想法で考えるべきであって、少しでも、CO排出量の削減につながるのであれば、新たな試みとして、積極的に取り組むことが望まれる。
 地球環境問題の解決は、例えば、石炭を敵視するということだけでは達成できそうもない状況になってきた。すべてを地球レベルで総合的に理解し、どのような対処法があるのかを創造できる人材が、ますます不可欠になったと思う。

TCFD=Taskforce for Climate-Related Financial Disclosure