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   バイオマス発電の最新動向 12.04.2016
     
日本製の機器が負けている?
     



  FITのお陰なのか、このところ、地域にバイオマス発電を作ることが人気になっていることは、昨年の記事でご紹介しました。
 http://www.yasuienv.net/BioMassE.htm
 バイオマス発電の導入予想量は、2030年時点までで602万kW〜728万kW。すでに、平成25年6月時点で、252万kWが既設となっているとのこと。
 そのインセンティブは何かと言えば、やはりFITの値付けで、間伐材由来の木質バイオマスであれば、発電設備が小型の0.2万kW未満が条件ですが、40円/kWhとかなり高価な買い入れ価格になっているのです。

 今後のバイオマスは、したがって、小型の機器の導入が進むという予想になります。さて、その問題は、どのような機器が実際に導入されているのか、ということになります。その答がなんと、外国製の機器が中心。本日は、その話題です。やはり、日本のベンチャーは弱いのでしょうか。

 参考資料としては、
(1)グリーンファイナンス推進機構が出資を決定した、「宮崎県串間市木質バイオマス(ガス化)発電事業」
 http://greenfinance.jp/example/case20161028_1.pdf
(2)上野村のバイオマス発電所見学記 例えば、
 http://blog.canpan.info/bioenergy/archive/89
      

C先生:パリ協定対応のCO排出量の少ない発電設備ということになれば、誰がどう考えても、再生可能エネルギーということになる。日本程度のサイズの国では、すでに起きている太陽電池への過度の依存は電力系統の不安定性を高めるだけで、これが副作用を起こしていることが、まず知って欲しいことの第一。バイオマスのような安定的に発電ができる設備でも、その影響を受けて、系統への接続制限を受けている場合が多い。例えば、12時から15時までは、天気が良いときには受け入れないといった対応だ。

A君:本来あるべき対応だが、一つの方法論は、太陽電池が大量の発電をしているときには、電力の単価を、極めて安価にするという方法。そして、太陽電池の発電が下がってきて、電気が不足気味になる夕方から夜にかけての電気代を高くする。もっとも、FITが終わってからでないと、これは出来ないですが。

B君:かつて、原発が稼働しているときは、深夜電力が安価だった。それが今後や逆になるということ。

A君:スマートメーターが完備すれば、そんな対応ができるようになりますからね。そうなれば、太陽電池が発電した電力をそのまま売電するよりは、夜間に売った方が有利になるので、発電事業者が蓄電用の電池を入れるというインセンティブにもなる。これは、使う側にとっても、同様で、昼間の安価な電力を貯めて夕方から夜間に使う目的で、電池を買う人が増えることが期待できます。電力会社にとっても電力網をそれほど強化しないで済むので、双方にメリットがあるのです。

B君:再生可能エネルギーについて、FITというものの買取価格を的確に決定するのは難しい。これまで結果から分かったことは、副作用が出たのは、太陽光発電を優遇しすぎたから。そして、今は、バイオマス発電が優遇されているとも言える。しかし、さすがに、太陽光とは違って誰にでもできるというものではないのだ。

A君:ただ、今やバイオマス用の燃料=木材の奪い合いが起きているような状況でもあるようですね。

B君:さて、そろそろ本題だ。参考資料(1)のバイオマス発電は串間市にあるけれど、この串間市は九州だから、やはり、太陽光発電が増えすぎた地域。そのため、系統連系に制限があるはず。この問題をどう解決するか、そもそも、誰の責任なのか。将来的に、再生可能エネルギーの大量導入が必須の国である日本にとって、有利なシステムを作った途端に、再生可能エネルギーをむやみに導入する事業者が居る、といった問題だけを論じることも出来ないと思うけどね。

C先生:確かに重要なことが議論されつつあるが、今日の本題は、それではなくて、0.2万kWという小型のバイオマスの発電用の機器が、どんなものが使われているか、ということだ。そこに、日本の弱点が見えるのではないか、ということ。

A君:系統連系とも若干は関係がある話題ですよね。どうも、バイオマスの発電は、木材→ペレット製造→ペレットガス化発電機。加えて、場合によってはバイナリー発電という方式になっているようです。

B君:そのあたりの歴史的な話は、一般社団法人日本木質バイオマスエネルギー協会(JWBA)のWebサイトに詳しいが、特に、この記事が原理的な説明からしっかりと行われている。
 http://www.jwba.or.jp/report/chp-feature/

A君:ちなみに、そこに出てくるCHPという略語は、Combined Heat and Powerの略だと思います。
 木質バイオマス発電で、通常の蒸気ボイラー・蒸気タービン方式では、よくても25%程度の発電効率しか得られないのです。廃材を乾燥してから木質ペレットにし、これをガス化して、ガスエンジンやガスタービンで発電する方法であれば、理論的には35%程度の効率が得られるという計算があったようです。そのため、過去、2、30年来、ガス化を含む研究が世界中で行われたのに、目覚ましい技術は出て来なかったのだそうです。

B君:このWebサイトから図を引用すると、こんな図で説明している。上が、通常の蒸気ボイラのケースで、下が、ガス化炉を使ったもの。


図1:木質バイオマスの熱電同時利用(CHP)
一般社団法人日本木質バイオマスエネルギー協会(JWBA)のWebサイトより

A君:木質バイオマスをガス化するときの温度によって、出て来るガスの組成が変わってしまう。さらに厄介なのがタール分でして、それが邪魔だったのですよね。

B君:この困難を打ち破ったのが、Spanner社とBurkhardt社。Webサイトは、次にあるので、参照していただきたい。
Spanner社 デンマーク
 http://www.holz-kraft.de/en/
Burkhardt社 ドイツ
 http://burkhardt-energy.com/hp609/Wood-gas-CHP-ECO-HG.htm

A君:先程のJWBAの原理的な説明によれば、ペレットを上から投入するSpanner社と下から供給するBurkhardt社の違いがあるようですが、いずれにしても、600〜800℃の発生ガスが得られて、それが浄化されてから、ガスエンジンに供給され発電機を回すようです。

B君:ガス化炉は、木質分の中を空気が通過する状態になっている必要があるので、木は大きさの揃ったチップにしなければならない。おがくずのようなものでは駄目。

A君:Burkhardt社のものは、ディーゼルエンジンですね。Spanner社の発電機は何か、記述が見つからないのですが、まず間違いなくディーゼルエンジンでしょう。

B君:Spanner社の説明では、電力1kWあたり1kgのチップが必要。大体30〜45kW/時の電気出力なので、30〜40kg/時のチップを燃やす。それに付随して80〜120kW相当の熱が出る。ということは、効率としては、この熱をいかに有効活用するかが、鍵ということになる。

A君:チップを造り、それを乾燥することに使うという発想が普通でしょうが、温度によっては、その熱でさらなる発電という考え方もあるようです。これについては後述ということでしょう。

B君:いずれにしても、熱のカスケード利用が、やはり必要不可欠。上野村の場合には、最後の廃熱は、イチゴ栽培設備に使うようだ。

A君:Spanner社の設備の説明を、なんと徳島県が紹介していることを発見。福島県内に実証的に導入設置されているという記述がありました。
 http://www.pref.tokushima.jp/docs/2016032900377/files/kojene.pdf
 しかし、この資料を見れば、CHPの本体は、ガスエンジンだと書かれています。
 さらに、福島県のその設備を見学したというブログを発見しました。
 http://woody-biomass-utilities.blogspot.jp/2014_12_01_archive.html
 ただ、このブログは、更新されていないので、その内に消えそうな気がします。

C先生:どうも、この方式が日本で今後普及する小型バイオマス発電の主要な形式になりそうな感じがあるね。小回りが利くだろうから、様々な用途に使えそうに思える。特に、何台も並列にして設置することで、規模を拡大することも容易なシステムのようだ。整備をするたびに、電力が全く得られなくなるのは上手くないので、むしろ、何台か並列ということが標準的な使い方になるかもしれない。
 しかし、発電効率がもうちょっと上がると、熱のカスケード利用を考えなくて済むので、さらに、応用が利くだろうということはある。

A君:それが、最近では、望みがあるようなのです。それを実現するのが、これです。それは、最初にご紹介したグリーンファイナンスの支援事業になった串間市のプロジェクトのスキーム概要という図を見ると書かれているのですが、バイナリー発電の活用です。

B君:バイナリー発電とは、しばしば使われるのが、温泉発電用

A君:その通りで、地熱発電というのは、一般的には高温の地熱によってできた水と蒸気を使った発電です。
 http://www.chinetsukyokai.com/information/index.html
 専門用語では、熱水と蒸気との混合物、これを地熱流体というようなのですが、温度としては、200℃ぐらい。これはフラッシュ発電と呼ばれます。この場合、地熱流体を蒸気と熱水に分けて、蒸気が直接タービンを回します。熱水と使用後の蒸気は冷やして水の状態にして、還元井と呼ばれる別の井戸から、地下に戻されます。

B君:温泉発電と呼ばれるのは、80℃以上の温泉が湧き出るところでは、この温度を熱源にして発電をすることができる。80℃で蒸発して気体になる液体を使う。これをバイナリー発電と呼ぶ。

A君:バイナリーとは、二種類の液体、温泉の場合であれば、温泉水と蒸発して気体にする液体が使われるから二系統とか二元的とかいった意味のBinaryと呼ばれるようですね。

B君:これまでバイナリー発電は効率が悪いので、経済的に見合わない場合が多いとされてきた。温泉発電は、例えば、80℃のお湯が湧いている場合、このままだと水でお風呂への供給の適温である50℃以下ぐらいまで温度を下げる必要があったのですが、バイナリー発電という方法論で温度を有効活用すると同時に、温度を下げるという二重の効用もあるので、もっと採用されても良いはず。

A君:日本にはバイナリー発電に適した地域が多いとされているので、全国的な普及が望ましいのですが。これも地域エネルギーの代表例になりそうです。

B君:九州の八丁原にある地熱発電所には、130℃の熱水を使うバイナリー発電所がある。機械は、イスラエル製で、残念ながら日本製ではない。出力は2000kWで、第二の蒸発させる液体としては、ペンタンという炭化水素が使われている。

A君:ちなみに家庭用の冷蔵庫の冷媒というこれも熱を、といっても冷たい熱ですが、扱う液体で、イソブタンという炭化水素が使われています。やはり、蒸発したり液体に戻ったりしながら、熱をつがえるのです。

B君:八丁原の設備は、小さいとは言っても、2000kWもある。木質バイオマスチップを使う発電設備の発電能力は30〜45kWなどで、圧倒的に小さい。こんな小さいバイナリー発電設備を作っても、誰も使わないと考えられてきていて、そのために、日本には製品がなかったのだ。最近は、状況は変わりつつある。

A君:イスラエル製のバイナリー設備は、オーマットという企業が作っているのですが、2000kWでも小さすぎると日本の企業は言うようですよ。30kWなぞというエンジンからの廃熱利用が普及する訳ないということなんでしょうね。

B君:バイナリー発電のそのぐらいのサイズの設備を恐らく最初に実現したのが、米国のメーカーなのだ。2014年6月5日付の記事がある。
 http://www.itmedia.co.jp/smartjapan/articles/1406/25/news020_2.html

A君:米国のAccess Energyという会社です。1台で125kWという小型の製品で、名前が「Thermapower」。熱源温度が120℃から176℃に対応するものと、もっと低温の82〜104℃に対応するものがあります。

B君:第一実業という企業が、米国から輸入して設置などを2013年10月からやってきた。

A君:「小型バイナリー発電」というキーワードで検索すると、日本メーカーも結構見つかりますね。大変良いことだと思います。今後活用が期待されている温泉発電用となると、かなり小型のバイナリー発電用から必要になりそうですから。Thermapowerの125kWでは大きすぎる場合も多いと思いますので。

B君:再度チェックしたら、こんな記事が見つかった。
 https://www.kankyo-business.jp/column/007492.php
2014年の4月の記事だけど、すでにこのぐらいの参入企業があるのだ。

C先生:そろそろ結論か。バイナリー発電については、日本製の製品も何種類があるようだ。それは、東日本大震災の停電騒ぎ以来、温泉発電などのローカルなエネルギーの活用を考え始めた人々が増えたこともあって、小型バイナリーの開発が始まったというのがどうやら本当らしい。
 一方、木質バイオマスに関しては、FITを使った太陽光発電の商売がそれほど美味しくなくなって、その移行先となったというのが実体なのだろう。さすがに、木質バイオマス用の発電設備となると、伝統のあるドイツとかデンマークとか、あるいは、オーストリアに勝てないのかもしれない。
 もっと本質的な問題は、日本には、エネルギーベンチャーがほとんど居ないということだ。米国には、小型核融合を目指しているベンチャーすら、いくつかある。2050年以降のエネルギー供給を考えると、日本には多くのエネルギーベンチャーが存在していないと困るのではないか、と思われる。しかし、ベンチャーにとって、特許を獲得して、それを売ることが重要だとなると、遠い未来に実用になるビジネスへのチャレンジも難しい。
 パリ協定というものを真剣に考えると、エネルギー関係に、多くの新規な技術が生まれることが必須のように思えるのだ。そこで、超々基本特許のような制度を作って、その存続期間を現在の20年ではなく、40年間有効といったことにして、それに基づくイノベーション推進策を作らなければならないのかもしれない。
 勿論、そんな超長期的な戦略とは別に、現状の技術のトップランナーをさらに高くするような戦略も必要。これは特許戦略ではなくて、むしろ、公共調達が鍵ではないかと思う。現時点で存在する製品のエネルギー効率を、1.5倍に高めることができる技術に基づく製品が発売されたら、国、自治体は、価格が2倍までならば、それを必ず買うという仕組みを作ることが良いかもしれない。これまで、公共調達は、ある製品を1社が独占してしまうと、いかに良い製品でも公平性を担保できない、という考え方だった。しかし、エネルギー効率に基準を設けて、ある数値以上の効率を出す機器に関しては、独占状態になることも受け入れべきだ、ということを主張したい。