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  鳥インフルエンザのコミュニケーション 03.21.2004
     その1:「鳥インフルエンザをもう少々知る」



色々な事態が起きている。例えば、

3月18日:WHO、抗ウイルス薬のタミフルなどを備蓄増強を勧告。
3月16日:閣議で鳥インフルエンザの対応が決まった。
3月9日:国民の皆様へと題する情報が出た。これまで、厚生労働省が中心となって対応していたが、発信人が、食品安全委員会、厚生労働省、農林水産省、環境省と拡大。

 しかし、一般社会は比較的冷静である。昨年のキンメダイ・メカジキ事件、あるいは、2001年のBSEのときには、相当な騒ぎになった。この違いは何なのだろうか。これが本題。2回連続の1回目。本当に怖いことは何か、WHOが警戒していることは何か、などを議論する。


C先生:これまで、本HPでは、鳥インフルエンザについて真剣に取り上げてこなかった。それは、環境問題とも言いにくいこと、さらに、一般社会が比較的冷静だったからだ。

A君:冷静な対応でまあ十分だと思うのですが、なぜ冷静なのか、さらに、本当に怖いことを認識した上で冷静か、といった分析は必要でしょう。

B君:鶏肉、卵関係だと考えると、食品安全委員会などができてから、政府のリスクコミュニケーションの姿勢がかなり積極的になっている。

A君:しかし、食品だけの話ではないですから、その効果とも言いにくいでしょう。

B君:いや、そうでもないのではないか。少なくとも、メディアを対象とすれば、情報が十分に供給されるために、記者が煽る記事を書きにくくなっているという効果はあるのではないか。

C先生:今回のテーマは、まず、鳥インフルエンザについて、多少解析をして、それから、キンメダイ、BSEとの違いを議論してみること。

A君:鳥インフルエンザですが、3月20日発表で、ベトナムでは16人目の死者が出た。

B君:しかし、ヒトへの感染がどのぐらいの重大なのか、と言われれば、日本においては、養鶏業者を除けば、それこそリスクは低い。しかし、だからと言って、本当に怖い事態が発生しないとも言えない。

A君:食品経由の感染が心配ないことは、ウイルスは加熱すれば感染しなくなるから、一般市民社会の常識で理解できますが、例えば、カラスから飼っている小鳥に感染して、そこから自分が感染するという経路については、常識的に判断はできないですね。

B君:それはそうだ。ウイルスへの感染ということを少々理解する必要はあるかもしれない。

A君:鳥からヒトへは直接的なウイルス感染が、まず起きない理由も少々理解する必要がありますね。

C先生:それでは、それを今回の最初のテーマとして取り上げよう。本当に怖いことは何かを含めた議論をやろう。そのタイトルは、「鳥インフルエンザをもう少々知る」

A君:どこから行くのか。やはりWebを調べますか。こんなところから入るのはどうでしょうか。基礎的な知識が出ているので。
 東京都健康安全研究センターのQ&A
  http://idsc.tokyo-eiken.go.jp/influenz/influQA01.html
 化学おもしろ百科なるHP
  http://www5c.biglobe.ne.jp/~ecb/chem/chem00.html
 インフルエンザウイルスの基礎知識
  http://www.vets.ne.jp/~saitoh/virus.html

B君:要約をすると、ウイルスは生命ではない。自分自身で生存も増殖もできないが、生物の細胞に勝手に入り込み、その細胞をうまく使って自分自身を複製し、その細胞から抜け出て増殖

A君:ウイルスに乗っ取られた細胞は、正常ではなくなる。場合によっては、DNAに損傷を受けてがん化する細胞もある。

C先生:細かいところは、他のHPに任せて、日本の鳥インフルエンザのH5N1型とは何か。さらに、ヒトへの感染はどうやって起きるのかに限定して、情報をまとめてくれ。

A君:こんな言い方で良いのでしょうか。ヒトに感染するインフルエンザウイルスは、ヒトの細胞に入り込むことができるウイルスで、入り込めるかどうかは、ウイルスの表面にあるタンパク質の種類によって決まる。タンパク質はヘマグルチニン(HA)とシアリダーゼ(ノイラミニダーゼ)(NA)の2種類に分類され、1個のウイルスには500個のHAと100個のNAが付いているが、主としてHAの種類によって、ヒトの細胞に入れるどうか決まる。NAは、むしろ、ヒトの細胞からウイルスが出ることができるかどうかを決めている。

B君:そして、HAには15種類。それをH1〜H15で表現する。NAには9種類。それをN1〜N9で表現する。

A君:ヒトに感染する病原性インフルエンザウイルスはH1N1、H2N2、H3N2。鳥インフルエンザの例を見ると、H5もあるらしい。ところが、ニワトリだと、H1〜7、N1〜4のすべての組み合わせのウイルスに感染する。

B君:ヒトはやはり高級な生物だけに、防御システムが良く出来ている。しかし、ウイルス側も変化が早いので、なんとかしてヒトの細胞に入り込むものが出てくる。ところが、入り込んだとしても、ヒト細胞がウイルスの自己複製に適していない場合には、増殖速度が遅いので、病気にはならない。しかし、長い間ヒトの細胞の中に入ったままになっていると、そのうち、ヒトの細胞との適合性の良いウイルスができて、高速で増殖を始めてしまうことがある。

A君:鳥インフルエンザのH5N1型は、通常はヒトの細胞の中でほとんど増殖できない。そのため、普通ならヒトは病気にはならない。しかし、余りにも大量にウイルスを吸い込むと、たまたまヒトの中でも増殖するようになるウイルスが混じっている確率が高くなる。

B君:一旦、こんなことが起きると、ヒトにも感染できるH5N1型変種が出現してしまうことになる。WHOは、こんなことが起きることを警戒している。これがもっとも怖いことの実態。

A君:余り怖いと思わないかもしれませんね。本当は結構怖い。なぜならば、これまでヒトが体験したことのないインフルエンザウイルスだけに、抗体を持っている人が少ない。そのため、流行すると、大流行になりかねない。

B君:しかし、そんなウイルスがヒトの体内でできなければ良いのだから、予防はそれほど難しくはない。そもそも、ヒト細胞では増殖しないタイプのウイルスなのだから、一気に大量にウイルスを体内に入れなければ確率は低く、問題は少ない。

C先生:どのぐらいを大量と言うんだい。

A君:数の議論をしているページが、上で紹介した3番目のHP。それによれば、実験でネズミに感染させるには、1000個程度必要。ただし、感染力が強い場合を仮定。実際には、感染力は強くないですが。ウイルスの量は、湿った鶏糞1ccに5000個程度とのこと。乾燥した鶏糞だと1gに5万個。

B君:乾燥した鶏糞を0.02gぐらいなら吸い込む可能性も無い訳ではない。ただ、乾燥した鶏糞では、24時間でウイルスは活性を失うようだ。

C先生:ヒトに対する感染性は低いから、まあ、その10〜100倍か。相当に希な条件だな。となると、感染してしまうのは、どうも、感受性の高い人に限られるような感じだ。

A君:感受性の高い人だけが感染している間は、余り問題は無いですね。大流行に繋がるようなウイルスではないという意味ですから。

B君:感受性の低い普通の人が鳥から直接感染するのは、確率的には低いことだろう。となると、まず、感受性の高い人の多くが感染し、そして、普通の人にも感染しうるウイルスができることが怖い。

A君:まず、感受性の高い人のみに感染するということだと、日本人は遺伝子の多様性が増えていますから、その面での可能性は無い訳ではない。むしろ、ベトナムよりは圧倒的に可能性が高い。そんな事態が多発すると、普通の人にも感染する可能性がでてきて、それから先が怖い。

C先生:だから、日本でも、というよりも、日本だからこそ、養鶏業者のようなリスクの高い集団の感染を防止することが、まず必要なのだ。しかし、なにはともあれ、普通の人への感染はかなり可能性の低いことは分かった。だから、人に感染したとしても、早期対応をすれば、大事にはならない可能性が高い。そこで、WHOは抗ウイルス剤の備蓄増強を勧告しているのだろう。ところで、ヒトのインフルエンザに利く抗ウイルス薬が鳥インフルエンザにも利く理由の説明が必要なのではないか。違う種類のウイルスなのに。

A君:その薬の一つは、タミフル。世界初の経口薬剤。利き方ですが、ウイルスの表面のタンパク質の一方のシアリダーゼ(ノイラミニダーゼ)NAの機能を阻害すると書いてあります。ウイルスが細胞内で複製されて、その細胞壁を破って出て行くときに、このシアリダーゼが作用するようなのですが、その邪魔をする薬のようです。となると、Nのタイプが類似しているのなら全部利くことになります。

B君:ただタミフルの説明にもあるように、発熱期間をやや短縮する程度らしいが。データでは、直るまで4日間かかるのが3日間になる程度。
http://www.okusuri110.com/dwm/se/se62/se6250021.html

C先生:やはりウイルスの本性のようなものが分かると、薬が効くかどうかも分かる。安心できることになる。不安の解消にはやはり知識の集積か。

A君:こうなってくると、本当に危険なパターンが、日本に存在するのかどうか。

B君:もっとも危険なのは、養鶏業者。この議論はすでに終了している。そして、次は、かなりリスクは小さくなるが、飼い鳥からの感染か。余り有りそうもないが。

A君:カラスが鳥インフルエンザに罹ることがありますから、その糞を身につけて外から帰ってきて、それが飼い鳥に移る。

B君:しかし、帰ってきたら手を洗いましょう、で十分対応可能だろう。

C先生:鶏肉や卵からの感染は、加熱すれば大丈夫であることは周知のこと。

A君:鶏肉を生で食べるのは、サルモネラ菌の問題があるので、別の理由でお奨めできません。日本の生卵は大丈夫ですが、米国だったら、生卵はサルモネラ菌の食中毒がかなり可能性があって、お奨めできません。

B君:卵というものは、結構長期間保存が利くものらしくて、50℃のお湯で15分処理すると、冷蔵で6ヶ月も大丈夫になるとのこと。50℃で処理しても、勿論、生卵のままだそうだ。余り関係なかったが。
http://www.nitto.co.jp/company/culture/ad/science/science_54/

C先生:となると、一般市民としての鳥インフルエンザのリスクは、税金が相当使われることかもしれないな。

A君:浅田農産船井農場の場合だと、25万羽=625トン、鶏糞・堆肥=3000トン、飼料640トン、卵260トンを処理。

B君:3月16日の閣議決定で、京都、山口、大分の3府県に4億円を配分したそうだ。半額国負担が原則らしいので、ということは、京都がかなり大型感染だったが、恐らく、7億円ぐらい掛かっていること。

A君:BSEよりは安いような。米国が日本向け全数検査をすると、年間9億ドル掛かると試算したらしい。

B君:900億円以上か。日本への米国産牛肉の輸出総額が10億ドルしかないことを考えると、これだけの負担をするのは高すぎだ。

A君:日本政府が全頭検査にこだわるのは、「米国産牛肉の値上がりを狙いたいためか」、とかんぐられても仕方が無い?

C先生:鳥の話に戻るが、国が全部負担すべきだと市長会は言っているようだが、本来は、鶏肉を食べる消費者が負担すべき、あるいは、もう少々広めに見て、食肉を食べる消費者が負担すべきだ、というのが筋。ただ、すぐにそんな体制にはできないから、国が一次的に負担することに異存がある訳ではないが。

A君:なんでも国が払えというのは、それなら、その分税金を取らないと。

B君:食品安全税。ある種の保険金みたいな税金。

C先生:そんなことをしないと、駄目な時代になったのかもしれない。やはり、食用動物の飼育が余りにも人工的になりすぎたためかもしれない。リスクの低減のために、税金か。最悪事態の予防のために必要かもしれない。コスト面から言っても、早めの対応が最善。

A君:いずれにしても、もっとも怖いことは、日本国内で鳥インフルエンザ患者が出て、ヒトからヒトへの伝染が起きること。

B君:これが起きると、日本中の全員が抗体を持たないインフルエンザだけに、全員感染などというケースも起きかねない。

C先生:確率はかなり低いのも事実なのだが、費用を余り惜しむのは問題今や、BSE対策費を多少削ってでも、対応すべきなのかもしれない。鳥インフルエンザは、今後まだまだ発生しそうだから。そこで、養鶏場のニワトリが野鳥に接触しないような鶏舎改造にまで、補助金がでるようになったのかもしれない。