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      日本の脱炭素政策の評価 02.07.2021
               Bloomberg Greenを読む



 米国の脱炭素政策が、急速に進化したことは、これまでも関連記事をアップしてきたので、ご存じかと思います。今回ご紹介するのは、Bloomberg GreenなるWebサイトの記事です。いささか古いもので、2020年10月22日号となります。
 
Bloombergは、どなたもご存じのように、金融ニュースの代表格で、世界の最新の金融ニュース、マーケット情報、市場の分析、などなどの金融情報を提供している企業です。Michel Bloomberg氏が1981年に設立しました。同氏は、第108代(2002〜2013)のニューヨーク市長でもありました。
 色々と、Webサイトを巡っておりましたら、Bloomberg Greenに、かなり古いですが、昨年の10月22日に”
Japan to Use Wind, Batteries to Meet Lofty 2050 Carbon Goal” なる記事があることを発見しました。
https://www.bloomberg.com/news/articles/2020-10-22/japan-to-use-wind-batteries-
to-meet-2050-carbon-goal-official

 その見出しは、次のようなものでして、 『Japan to Use Wind, Batteries to Meet Lofty 2050 Carbon Goal』で、サイトのアドレスと同じ。


C先生:
昨年の10月の記事なので、菅総理の「2050年、CO2ゼロ宣言」が記述の対象ということだ。米国は、まだトランプ大統領の時代。しかし、Bloombergのような先進的な組織(個人)は、米国でもCO削減が必要不可欠であるというスタンスを、かなり前から取り続けていた。

A君:
まずは、Bloomberg氏の説明をした方が良いのでは。

B君:
日本語版Wikiにもマイケル・ブルームバーグ氏の記述があるので、それを読んでいただくのが早い。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%9E%E3%82%A4%E3%82%B1%E3%83%AB%E3%83
%BB%E3%83%96%E3%83%AB%E3%83%BC%E3%83%A0%E3%83%90%E3%83%BC%E3%82%B0

A君:現時点でのイメージを一言で言えば、
「超大金持ちの実業家。そして、多額の寄付行為で知られている」。2009年の寄付総額は2009年で2億ドル以上。コロナの現状報告ではもっとも有用と思われるサイトを運営している、ジョンズ・ホプキンス大学の出身。2018年、同大学に18億ドル(2030億円)の寄付を行った。

B君:しかし、育ちはむしろ貧困で、父親の年収は6000ドル。これでは、一流大学の授業料は払うことは全く不可能。国防教育ローンと学内でのアルバイトで、ジョンズ・ホプキンス大学の学費を払ったとのこと。
 いずれにしても、ジョンズ・ホプキンス大学の地球レベルでのコロナ感染情報はすごいことは確実だけれど、
https://coronavirus.jhu.edu/map.html
 ブルームバーグ氏の寄付が使われているのだろうか。

A君:それは分かりませんが、同大学のコロナ情報は、地球全体での状況を理解するには非常に重要ですね。

B君:
1月26〜27日に、メディアが、コロナの世界全体での感染者1億人突破を報道することができたのも、恐らく、ジョンズ・ホプキンス大学のサイトを参照していたからに違いない。

A君:話を戻して、
米国のCO削減は、米国の金融界がリードしているという話は、すでに本サイトでも取り上げてきた。例えば、BlackRockなる投資企業から投資を受けようとする企業は、COゼロを公約しないと、投資先になる資格すらないという厳しい扱い。

B君:日本でも、野村証券が同様の表明をしたことが、先日ニュースになった。しかし、大きな動きとしては、まだ不十分。

A君:ブルームバーグ氏に話を戻せば、パリ協定から離脱したあのトランプ大統領の国にありながら、
米国中心ではなく、地球レベルでものごとを考えている人だと思います。恐らく、日本のCO削減の記事は、相当な皮肉になると思いますね。

B君:中国に対して、どのようなスタンスなのか、それが同時に明らかになることを希望して、実際にどのような記事なのか、検討をしてみましょう。

A君:了解。繰り返しになりますが、英語のタイトルから検討したいのですが。
 
"Japan to Use Wind, Batteries to Meet Lofty 2050 Carbon Goal"ですが、どうも読んでも、「そんなことでやれるの」という皮肉のトーンですね。そう感じるのも、形容詞である”Lofty”があるからですが。

B君:Loftyをどういう日本語にするかだね。Google Translateだと、「誇り高い」という訳が出てくるのですけどね。

C先生:そろそろ、
Bloomberg Greenの記事の紹介を頼む。

A君:了解です。タイトルは、すでにご紹介の通りですが、本文を見て、 New Economyという項目名があることを発見しました。
 そして、本文に入る前に、2行のサマリーのような文があって、その題名のようなものが、
▲ Climate pledge set to follow earlier commitments by EU, China
▲ Japan remains deeply reliant on fossil fuels including coal

と書かれています。本文の要約ということなのだと思います。

B君:そして、最初の文章が、こんなものです。日本語に訳します。
『日本はオフショアの風力発電とバッテリーを活用して、2050年までにカーボンニュートラルを実現するつもりのようだ。これは、政府関係者からの情報で、これまでの政策の方向性を変えるために、日本が考えている新しい政策情報だ。』

A君:次の文章に行きます。
『CO排出量では、世界5位の排出国であり、排出削減の約束を実現することが期待されていたためである。EUと中国を含む他の主要国と並び立つために必須の情報開示である。なぜなら、日本は、もっとも汚れた(=CO排出量が多い)化石燃料である石炭に依存してきたから。』

B君:次の文章は、ちょっと皮肉が感じられる。
 
Jane Nakano(戦略国際問題研究所、Washingtong、USA)の発言だが、『日本の政治家(リーダー)たちは、地球気候変動に関する外交分野での自国のポジションに対して、ちょっとは神経を使うようになったようだ』。

A君:ちょっと省略して、先の文章へ飛びます。
『日本国は、とにかく、そのインフラの構造を、新しい炭素戦略に基づいて変える必要がある。日本も次のエネルギー基本計画では、いかにして、長期的はエネルギーミックスを変えるかに取り組む予定』。

B君:そうか、
第6次エネルギー基本計画に、大きな期待があるということになるのか。果たして、期待に応えられるか。それが問題。

A君:菅首相の2020年10月26日の所信表明演説におけるカーボンニュートラル宣言は、遅ればせながら、世界的に基本的なスタンスと同じものになりましたからね。

B君:実は、
中国の習国家主席は、2020年9月に2060年カーボンニュートラルを宣言した。日本では余りニュースにもならなかったような感触なのだけれど。

A君:
2050年カーボンニュートラルを法制化した国としては、英国が2019年6月。2020年3月にはEUが法制化に向けた案を発表。米国ではバイデン大統領も、自分の公約として掲げてきた。トランプ大統領がいなくなって、多くの国が、カーボンニュートラルに積極的に取り組む形になった。ということで、日本のゼロCOに関するスタンスは、より難しくなった。

B君:
菅首相の10月26日の所信表明演説では、こう発言した。「再生可能エネルギーを最大限導入するとともに、安全最優先で原子力政策を進める」、「長年継続してきた石炭火力発電に対する政策を抜本的に転換する」。

A君:しかし、再生可能エネルギー、具体的には太陽光発電や風力発電の発電コストは、日本ではまだ高いといった認識なのだけれどどうなんだろう。

B君:世界的な話だが、
2019年の発電コストのデータによれば、太陽光発電で2010年比で82%減、陸上風力では、2010年比で29%減となった。

A君:
日本国内だと、条件が悪いから現コストは維持したいといった保守的な発言が主力になりがちなのでは。

B君:実際には、
日本の最大の問題点は、電力系統が不十分ということかもしれない北海道には、風力のポテンシャルが大量にあると思っているけれど、北海道内に、送電網がまるで足らないことも事実。というのも、これまで、電力会社は、北から、北海道電力、東北電力、東京電力、中部電力、北陸電力、関西電力、中国電力、四国電力、九州電力と、かなり細かく分けられていて、しかも、50Hz系と60Hz系が共存してきた。家庭への配電電圧にしても、100Vといった低圧なのは、日本ぐらいではないだろうか。

A君:より正確には、
日本は100V/200V、三相230V。これに近いのが、アメリカとカナダ、台湾の110V/220V、三相230Vと、スペインの127V/220V。残りの国々は、220〜230V、三相380V〜400Vが一番標準的な電圧

B君:このところ、
電気自動車への移行速度が高まっているけれど、200Vでは、充電速度が遅くて問題。もっとも、家庭以外に、いくつもの充電装置が設置されるのだという話はあるけれど。

A君:
ドイツなどでは、800Vで電気自動車の充電ができるような設備もあるとか

B君:
ポルシェが新型EV「Taycan」で電池電圧を800Vにしたからかな。

C先生:そろそろ、本題に入った方が良さそうに思う。
日本が考えている、長期的なエネルギーミックスはどのようなものだと評価されているか

A君:この内容は、
日本人の多くはご存じのはずです。石炭、LNGの代わりに、アンモニアと水素を使う方針。

B君:公式には、
2030年に最大22%の原子発電からの電力にも期待することになっている

A君:
現時点では、原発依存のこの数値は非現実的のように思えますね。やはり、アンモニアと水素という、現状では未知のエネルギーに期待した方が良いかもしれない。

B君:
同じ原子力でも、米国は、Small Modular Reactor(=SMR)に転換するのでは、と思われるけれど、日本では、まだSMRが未来像であるという考え方が公式には表明されていないのでは。

A君:ちなみに、
SMRは、小型の小出力の原子炉を複数台使うタイプの原子力発電。イメージとしては、原子力潜水艦用のエネルギー源の原子炉のような感じのものを、水中に沈めてしまうことも可能。となれば、熱的な暴走が起きることは理論的にもほぼ回避できる。

B君:
米国でSMRを進めている企業は、例えば、ニュースケール社。資源エネルギー庁が、こんな記事を書いているので、参照いただきたい。
https://www.enecho.meti.go.jp/about/special/johoteikyo/smr_01.html

A君:
ニュースケール社のSMRだと1モジュールの出力は6万kW。通常の原子炉の1/20ぐらいだと考えれば良いとのこと。

B君:
最大12個のモジュールを大きなプールの中に設置する。モジュールは、「圧力容器」、「蒸気発生器」、「加圧器」、「格納容器」からなる一体型パッケージ。大型の冷却ポンプや大口径配管は不必要。そして、各モジュールは、独立したタービン発電機と復水器に接続されている

A君:その結果として、冷却材喪失事故のリスクが回避されている。

B君:
日立GEニュークリア・エナジー社は、BWRX−300というSMRを開発中とのこと。こちらの装置についても、どれほど安全だと言えるか、それが勝負のポイントになる。

A君:
発電コストとしてはガス火力に対抗できるとのこと。となると、COを出すガス火力は、もはや勝負にならないことを意味しますね。

B君:一般市民にとって、本当に信頼できるものかどうか、ということを判定しなければならないのだろう。
日本の場合、東電の福島事故で、大電力会社の原子力対応が全く信頼されないような状況になってしまった。原子力発電事業というもの全体のリアレンジが不可欠なのでは、と思う。

A君:
日本人は、なかなか厳しい民族で、これも、C先生がしばしば言っているけれど、プロが行う事業に関しては、決して、「七転び八起き」が実現されるような社会ではない。むしろ、「一転びアウト」の社会なのだ、と堀場製作所の創業者である堀場氏がいつでも言っておられた、とのこと。

C先生:今回の記事は、なんとなく、まとまりが無いものになってしまったようだ。このところ、2050年CO
ゼロを実現するためには、エネルギーに関して、ほとんどすべての事象について考え直さなければならないのだと考え続けている。これは、個人的な思いなのだけれど、エネルギーというものをどうしたら良いか、という質問をしたとしても、それに対して、的確な回答をしてくれる人は、日本人口の1/10〜1/20のような気がしている。それなら、すべてを経産省・資源エネルギー庁に任せておけば良いのか、というと、方針の作成などは、それで仕方がないのだけれど、それによって、市民社会がどのように変わるのか、までは、丁寧な説明をしてはくれない。ある程度のエネルギーのプロが、市民向けの翻訳をしなければならないのだけれど、実は、なかなかそのような暇人はいない。一般に、エネルギー関係者は忙しいのだ。
 という訳で、これからも
2050年COゼロになったら、市民の生活がどのように変化するか。企業の経営がどのように変化するか、などなどについて、若干の考察を行って、記事を書いて行きたいと思っている次第。