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このところ、EUは、二酸化炭素を回収し、そして分離し、地中や海中に貯留する技術の実用化に向けて走り始めたようである。 C先生:このところ、CCSの話題が新聞紙面などをにぎわすことが多くなった。本、HPでは、基本的なスタンスはかなり前に表明したことはあり、それは変わっていないのだが、それ以上の詳しい見解を示したことはない。今回、「環蛙”」さんからのご要望もあり、ここで検討したい。 A君:最近の記事などをちょっと復習。 日経の記事(3月22日) EUは、地球温暖化対策を進めるために、火力発電所から排出される二酸化炭素を削減する新技術の実用化を推進する。 EICネット上の記事。 B君:日経の記事だけ読むと、日本には何も実績がないような印象をもつ人が多いと思うが、実は、財団法人地球環境産業技術研究機構=RITEなどではかなり前からCCSの検討を行っている。 A君:しかし、コストだけが問題かどうか、それはこれから議論する。 B君:結局のところ、分離するのに、エネルギーが必要。そのエネルギーの獲得のために、さらに二酸化炭素が発生する。 C先生:1トンの二酸化炭素の処理に7000円掛かるとする。7000円をまあ60ドルと見れば、原油1バレルが買える。1バレルの原油は、0.5トン程度の二酸化炭素を出す。こんな話から分かるように、二酸化炭素を処理するのに、相当なエネルギーが掛かることが想像できる。技術によって様々ではあるが、ざっくり言えば、発生する二酸化炭素を処理をすればエネルギー使用量が3割アップするぐらいだと思えば良い。 A君:3割アップということは、化石燃料の寿命が3割短くなることになる。 C先生:それがCCSの最初の問題だ。人類が直面している危機が、地球温暖化だけであるのなら、無条件に採用すべき対処法かもしれないが、化石燃料枯渇が同時に危機的状況だと認識すべきなら、さて、どちらを選ぶのだろう、温暖化で困るのがましか、それとも、化石燃料が枯渇して困る方が良いのか、という議論が必要。 A君:化石燃料の枯渇は、石油、天然ガス、石炭という順番になる。石油と天然ガスは、そのまま使って、石炭に今よりも依存する時代が始まるときには、CCSというのが常識的な対応ではないでしょうか。 B君:石炭は、天然ガスに比べれば、炭素の含有量が多いだけに、発熱量あたりの二酸化炭素放出量が多い。だから、そのまま利用して、なんら対策をしないと、気候変動への影響が大きいだろうと思われる。石炭は、CCSとの組み合わせというのは妥当ではないだろうか。 C先生:石炭と言えども、やはり枯渇の危険性がないということはない。長くても、300年以内か。もっとも、化石燃料が枯渇した後の人類の生活だが、考え方を変えることができれば、必ずしも不幸だということでもないだろうから、それも一案。 A君:となると、CCSに関わる重大な問題は、 B君:良いことにして、次の問題は、記事にもあるように、封じ込めた二酸化炭素が漏れ出す恐れがある、というところはどうだ。 C先生:漏れ出す速度によって、(あ)急性の影響、(い)慢性の影響という化学物質の毒性のような分類をして考える必要があるだろう。(あ)急性の毒性とは、アフリカのニオス湖などで見られたように、窒息によって人が死ぬということだ。 A君:急性の影響は困るが、慢性の影響なら、500年後ぐらいに漏れ出すのであれば、丁度良いのでは。そのころ、化石燃料を使い切っていることは確実だから、人為的な温暖化はすでに終わりを告げ、地球は明らかに寒冷化に向かっている。そこに、二酸化炭素が適当な速度で漏れ出せば、寒冷化する速度を落とすことが可能かもしれない。 B君:そんなに上手に500年後から少しずつ漏れ出すなどという状況は作れないだろう。 B君:となると、なかなか合意を形成するのが難しい。ブラジルなどの南米がCCSをポスト京都の枠組みに入れるのを反対しているのは、勿論、バイオエタノールなどの利用へ世界を導きたいからという要素が強いのも事実だろうが。 A君:漏れるといっても条件によって違うわけですね。 C先生:二酸化炭素を貯留する場所としては、(a)油田・天然ガス田などに注入して、石油などを多く採取するEOR、(b)地下の帯水層に注入する、(c)海洋貯留をする、と大体3種類が考えられている。現在、ノルウェーでは、(a)はすでに実施中。ただし、火力発電所などから出る二酸化炭素ではなくて、天然ガスと一緒に出てくる二酸化炭素を元の場所に戻しているというものだ。となると、天然ガスを採取すると、また、二酸化炭素も一緒に出てくることになる。これで貯留になるのか、どのぐらい、地中に安定に存在するのか、それは問題になる。(b)の帯水層貯留は、安定性が問題になる可能性もある。特に、日本のように地層が安定でないところでは多分そうなのだろう。(c)海洋貯留は、種類があるし、また色々と問題がある。これは後ほど。 A君:(b)の分類になるが、日本でも、新潟県長岡市で、帝国石油の天然ガス田を使って、RITEが実験した。また、話題の夕張市では、二酸化炭素の炭層への貯留が計画されている。 B君:まあどのぐらい本気でやるか。それが問題。 A君:日本における(a)、(b)の利用限界はどのぐらいなんでしょう。ちょっと調べてみますか。 B君:日本全体での二酸化炭素排出量を13億トンとすると、全部処理すれば、たった4年分しかない。 A君:となると、日本で何かしようとすると、海洋貯留以外に方法は無いと思った方が良い。 C先生:海洋貯留の話に行こう。これまた2種類あって、(d)海底下地層貯留と、(e)深海貯留がある。 A君:海底の地下1000mに貯留するぐらいなら、海上風力発電を作る方が簡単そうに思いますね。コスト的にもそうかもしれない。 B君:日本では、深海貯留が可能にならないかぎり、CCSに多くの期待をするのは無理なのではないか。 C先生:液化二酸化炭素を海底に沈める深海貯留になると、これはまた問題がある。 A君:問題は、勿論、環境問題。 B君:当然、海水に二酸化炭素が溶け込むことを前提としなければならない。海水に溶け込んでいる二酸化炭素量が多くなったらどうなるのか。魚は、海水に溶け込んでいる酸素を呼吸しているので、当然、なんらかの影響は受けるはず。しかし、魚類も成魚だと、比較的強いらしい。石灰質の殻を持つ生物、例えばウニなどは、生存率が低下するという話があるらしい。 C先生:深海貯留は、したがって、世界的に許容される方法になるかどうか、かなり疑問。 A君:いずれにしても、どの方法も本命とも言いがたい。 B君:様々な方法があるものの、いずれにしても、コストの問題が非常に大きい。分離コストが特に問題。 C先生:ガラスの溶解窯などだと、純酸素溶融というものが行われている。燃焼に空気を使うのではなくて、あらかじめ窒素を取り除いた酸素だけを使う。これによって、より高温の炎を出すことができる。効率も上がる可能性がある。この方式であれば、排気ガスから二酸化炭素だけを取り出すのが比較的簡単。こんな方法を併用することによって、そのうち、CCSが普及する可能性は無いとは言えない。 A君:ここで5つのポイントをまとめると、 B君:地中貯留をCDMとして使おうという話もあって、このあたりの話になると、また国際的な思惑が錯綜しそうだ。 C先生:温暖化問題は全部そうだが、地球環境問題という側面と国際政治としての駆け引きの問題が合体していて、いずれにしても、日本も相当な戦闘力を付けておかないと、どうにもならない状況に追い込まれるだろう。その意味でも、もっと多くの政治家と選挙民が地球環境問題と国際問題に関心を持たなければならない。 |
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