ごみ処理の温暖化対策   02.27.2011   




 今週は、「先週のニュースから」を単独で記述しました。

 さて、本日の話題は、ごみ処理と温暖化防止に関するリスクトレードオフである。といっても、直接健康などに関わるものでもなく、かなりマニアックなものである。

 現在、環境省によって、焼却炉あるいはごみ処理に関わる設備などからの温室効果ガス排出をいかに削減するか、といったガイドラインの検討が続けられている。

 このようなガイドラインを設定することは、現在の技術レベルを広い範囲で確認し、それをどのように適用することが、現時点での最良の知恵なのか、といった検討し、かつ、ある種の判断を行うことがその実態であるので、今後の環境と産業の戦略を決める上で、極めて重要な作業である。

 ところが、それがなかなか難しい。なぜなら、ある種の割り切りを行って、方向性を定めることが必須だからである。「割り切り」は、すべての環境関係のリスク対応にとって、もっとも重要かつ必須の要素なのだが、実は、「割り切り」は「切り捨て」につながる可能性があって、当然の帰結として、かなりの抵抗勢力が存在するのが通例である。特に、健康リスクが関連すると、そういう状況がでやすくなるが、リサイクルもそのひとつの分野になりつつあるかもしれない。



C先生:現代社会では、何をやっても温室効果ガスがでる。いやいや、昔から、何をやっても温室効果ガスが出ていたのだが、それが問題になり、かつ、その量が増えただけかもしれない。当然のことながら、ごみを処理すれば温室効果ガスがでる。温暖化防止対策として、どのようなごみ処理の方針がもっとも適切なのか、検証を行うことは極めて重要。

A君:ごみ処理プロセスだけを考慮して、二酸化炭素排出量を下げるという発想に立てば、エネルギー起源のCO2発生量Fuel、プラスチックの焼却による非エネルギー起源のCO2発生量NonFuel、発電した電力の等価的なCO2量をElec、事業所内での消費した電力の等価的なCO2量をCons、利用された熱量が代替した燃料の等価的なCO2量をHeatとすれば、ごみ1トンあたりの次の数値Total、

 T=F+N−(E−C)−H
   T:Total 合計
   F:Fuel 燃料燃焼によるCO2
   N:Non Fuel 非エネ(廃プラ)燃焼によるCO2
   E:Electric Power 発電による電力と等価のCO2
   C:Self-Consumption 電力の自家消費量と等価のCO2
   H:Heat Utilization 熱利用が代替する燃料と等価のCO2

をできるだけ小さくすれば良いことになる。

B君:この値Tを少なくしようとすれば、炉の立ち上げなどに必要な助燃剤の量を減らし、かつ、輸送用のトラックなどの燃費を改善して、Fを減らす。プラは燃やさないでNを小さくする。発熱量を上げ、発電量を増やすためにカーボンニュートラルなごみ、特に、紙や廃食用油をできるだけ燃やして高温を維持し発電量Eを増やす。処理場内部のプロセスを省エネ化してCを減らす。熱を温水プールではなく、地域暖房など100度近い温度が必要な用途に使ってHを増やす。

A君:やっぱり紙をどんどん燃やすのは妙でしょう。

B君:プラを燃やさないで完全にリサイクルするのも妙だ。

A君:日本というところは、欧州に比べると熱需要が少ないのがひとつの特徴。したがって、暖房用の熱を供給するインフラは無いから、地域暖房などは全く新規に計画しないと無理。

B君:一時期、神戸製鋼の子会社などが考えていた熱をどこかに運んで販売するか。

A君:それもうまくはいかなかった。結局、お風呂ぐらいしか熱需要が無いのが日本という国。

B君:たしかに日照時間が長いところなら、太陽熱温水器で十分に足りる。

C先生:ということで、単に、上の式だけを考えれば良いというものでもない。さてさて、それならどうやって検討するか?

A君:適切な相場観を得ることが重要ですから俯瞰的に。

B君:どうやって漏れ無く全体を俯瞰するか、これが難しい。処理の末端に至るまでの細かい情報が必要なので。

A君:それでは、最初にどのぐらいの範囲をカバーするか、様々なごみをスタートとする俯瞰的な図でもつくりますか。

B君:まず、産業廃棄物は除外。家庭などからでる一般廃棄物だけ。なぜならば、産廃はさらに多様なので、ガイドラインの策定もさらに困難で、今回は、地方自治体でのごみ処理だけが対象なのだ。

A君:了解。ということで、大体こんなものでしょうか。




図 家庭などからのごみの処理で、温暖化ガスの排出を考慮すべき範囲。


B君:それでは、まず、左上から行けば、家庭からの廃油は、そのまま燃やしても、天然物だということで、カーボンニュートラルだから、温室効果ガスを発生しないという考え方が適用可能になる。Tを高めるならガンガン燃やせ。
 しかし、廃食油を処理をしてバイオディーゼル油にして、パッカー車等に使う、という選択肢もある。どっちが有効だろう。

A君:LCA的な検討が必要なのですが、直感的には、ごみ発電の効率が10%ぐらい。ディーゼル車の熱効率が15%ぐらいだとすると、燃料化にはエネルギーが必要ですし、どちらに転んでも、それほどの大差は無いのでは。

B君:となると、付随する問題を考えることは必要だ。これまで各所で行われた廃食油のバイオディーゼル燃料化については、やはり問題がでることが多かったのも事実。例えば、冬季になると、燃料の粘度が高くなって、ノズルが詰まるとか。

A君:油は燃えれば良い、と簡単に考えすぎると、実はそんなものではない。ガソリンの場合でも、実は、夏季と冬季では、配合が若干変わっているらしい。

B君:C先生のプリウスのように半年間給油しなかったなどといっても、大きなトラブルがでるということは無いのだろうが。

A君:プリウスは、エンジンに対する負荷が大きな車ではないですから。

C先生:バイオディーゼル燃料化は、その地域の気候による部分があるので、環境省のまほろば事業などの成果をしっかりとフォローすることが重要。

A君:なるほど。まほろば事業の報告を見ると、通常の方法だと、グリセリンが副生するが、この処理が問題だという考え方もあった。しかし、これはアルコールみたいなものなので、燃やしているようだ。

B君:同じく報告書を見ると、需要をしっかりと確保することが必要で、食品産業などからの廃油を燃料にしたとき、配送などにコンスタントに使ってくれる車を確保する必要がある。価格は必ずしも安価になるとは限らない。

C先生:次は生ごみ。Tを減らそうと思えば、発熱量が低いから、燃やさないで減らせになるだろう。
 となると、堆肥化ができるような地域特性ならやるのもあり。しかし、住民が相当の意識をもっていることが必須条件。竹串や鳥の骨などは別途処理になる。加えて、発酵を好気性の条件でうまくやらないと、メタンという二酸化炭素の21倍も温室効果が大きい気体が発生する。
 実は、都会でもお薦めできるのが、含水率を下げること。方法は、水切りを徹底することとごみを乾燥することだ。乾燥に電気などを使ったら、何をやっているのか分からなくなるから、自然乾燥という意味だが。

A君:新聞紙の上にしばらく並べておいて、乾燥させ、新聞紙ごと捨てるのは? 

B君:紙の議論は、本当は後だ。紙も、本当にリサイクルの価値があるのは、新聞紙、ダンボール、OA紙ぐらいなものなのだが、水を切るためには新聞紙より、新聞と一緒にくるチラシが良いのではないか。

A君:たしかに、チラシは新聞紙本体よりもったいなくないかも知れない。細かい雑紙は燃やすので良いと思うけど、水を切る用途には小さすぎる場合もあるし。

C先生:メタン発酵はどう考える。

B君:これも都会では無理。残渣が水肥に使えるような地理的な条件であれば、エネルギー的に見てもやる理由もある。しかも、場所の選択を間違えると、臭気の点でもダメかもしれないし、またメタンが漏れ出すと、かえって温暖化を促進する。

A君:しかし、外国の例などを見ると、生ごみを埋立て、地中でメタン発酵をさせて回収パイプで集めるなどという方法が採用されている。

B君:ヘタをすれば、かえって温暖化を加速しかねないが、処理コストとしては、もっとも魅力的な方法なのだろう。

A君:生ごみは、まあ、地域特性によって使い分けることで良いのではないですか。含水率を下げることは、日本中どこでも良いでしょうが。

B君:生ごみは減らせだが、水を減らして、重さを減らせ。これならトレードオフという程のものは無いようだ。

C先生:それでは次がプラだ。

A君:Tを減らすには、プラは燃やすな。
 収集すれば有価になるペットボトルは、まあ、収集費用は掛かりますが、やれば良い。

B君:当然、発熱量は落ちるが、ごみ発電の効率が余り高くない清掃工場では、やはり「燃やすな」だろうか。

A君:しかし、どこまで減らすか、それは自治体がどこまで収集のための費用負担に耐えることができるか、で決まる。

B君:となると、容リ法の改正によって、消費者負担を増やす以外に無いことになる。

C先生:ただし、収集すると、家庭での排出も考えなければならないから、洗って集めるプラは問題あり。お湯で洗うのは厳禁。さっと水で洗って、というところが守れれていれば、まあ許容範囲内。

A君:マテリアルリサイクル最優先の考え方は、そろそろ変わるのでは。

B君:実は、逆の考え方もある。マテリアルリサイクル用に集まってくるプラも、実は、半分程度は焼却されている。だからダメだと言われてきたが、このところ燃やされるとき、プラ燃料として高効率に燃やされているという話もあるとのこと。そう考えると、集めて高効率で燃やして発電し、結果として、ごみ焼却の方はやっと自燃する程度のカロリーまで落とすというやり方もあるのかもしれない。発電量は確実に下がるのは覚悟の上で。

A君:なるほど。全面的にマテリアルを否定するのもたしかに困難です。静脈産業が潤うことも、日本の雇用の維持のために、ある程度仕方がないこと。そのために集めてもらうという考え方も、有りうるし、難しいところです。

B君:いずれにしても、容リ法が改正されないと、カネ不足の自治体にとっては、リサイクルをやり過ぎると貧乏になって、もっと重要な施策を実施できないというリスクがある。

A君:カネ(他の施策)と資源再利用のトレードオフ。

C先生:これは、国が大きな方針を決めて、当面、このような方針で行くとしっかり「割り切る」ことが重要のように思える。
 次は紙。

A君:紙はプラと違って洗わないだけ、こちらの方が単純です。紙はカーボンニュートラルなだけに、単純にTを減らそうとすれば、ドンドン燃やせも変だ。

B君:紙の場合には、日本以外の森林の保全という問題が若干はある。

A君:というと、紙業界からは、最近の紙は植林された森林資源から作られた持続可能な紙だという主張が聞こえそうですが。

B君:森林認証システムなどもあるが、日本に入ってくるもっとも安価なパルプや紙は、実態がすべて分かっているとも言えないだろう。

A君:やはり紙は、価値の高いものを中心に適正にリサイクル。そして、コート紙などや雑紙は、燃やすのも有りうる。できれば、燃料化して高効率に燃やす方が良い。
 あと、PETのところでは考えませんでしたが、古紙が輸出されていることをどう考えますかね。PETや紙を輸出するぐらいなら、PDF化して燃やせとか。

B君:いやいや、「輸出もある程度仕方がない」という割り切りではないか。

A君:日本国内では、再商品化された製品の品質の問題で使えないPETと古紙でも、中国では十分に使えるから、という解釈をするのでしょうかね。

B君:もし国内で何か新しいことをやるとしたら、PETの場合には、もっと水平リサイクルを推進すること。すなわち、ケミカルリサイクルではないマテリアル水平リサイクルで再びPETに戻すことを実現することが急務なのではないだろうか。

A君:リユース、リデュース、リサイクルという本来の優先順位をもっと尊重すると同時に、リサイクルをできるだけ水平化するということ。

B君:リユースに近いリサイクルを目指すとも言える。

A君:次のごみが、燃やすべきゴミ。もともと衛生上の観点から燃やすべきごみというものがありますね。典型例としては紙おむつ。紙おむつとは言っても、実際にはプラおむつなのですが。さらに、ペット、例えば、猫の排泄物。

B君:燃やすべきゴミなのだから、燃やすしかない。タイなどでは病原菌だと認識されていないノロウイルスなどでも病気になるのが日本人。だから衛生上、燃やすのだろう。

A君:ただし、どんどんと燃やして良いのか、と言われると問題も。

C先生:かなり前のことになるが、猫を飼っていたことがあるのだ。その排泄物は、もしも猫用の砂(固まる砂)を使えば不燃性無機物が大部分なのに、燃やすべきごみに分類されている。これをなんとかしなければ、と思ったものだ。紙でできた砂を使えば良いのだが、臭いの処理という点は、無機物の方が上だった。

A君:そのような処理困難物とも言える製品は、本来、製品価格の中に、処理費用を含ませるべきなのですね。この処理費用を誰に渡すかとなると、途端に問題になりますが。

B君:国税にでもして、自治体に還付。

C先生:それができればもっとも簡単。しかし、現在、税というものを新設するのは、ほとんど不可能なのがこの国の現状。

A君:おなじ燃やすべきゴミでも、ペットから出るごみなら受益者である使用者が費用負担をすることも妥当だろうが、乳幼児用、高齢者用おむつとなると、どう費用を負担をするか難しい問題だ。

C先生:次が事業系一廃。これを産業廃棄物として処理すれば、自治体からのCO2排出量の絶対値は確実に減る。

A君:Tはごみ1トンあたりの排出量ですから、事業系一廃をやめても、Tが減るということではないですね。

B君:事業系一廃といってもあまり馴染みがない言葉かもしれない。街の店舗や事務所から出るごみは、本来、産業廃棄物に分類されるべきもの(何が相当するのか、厳密な議論をするとよく分からないが部分が残るが)は、本来、自治体の収集には出すことができない。

A君:しかし、小規模な事業者では、非現実的だという考え方もあって、自治体によっては、「日々の排出量が少なければ、家庭ごみの収集に支障がない範囲で出しても良い」という取り扱いになっていますね。

B君:資源ごみ、例えば、新聞、雑誌、ダンボール、容器包装などを出す場合でも、有料にしているところが多いと思う。

C先生:目黒区の例だと、こんなことになっている。
http://www.city.meguro.tokyo.jp/kurashi/shizen/gomi/jigyosha/jigyou_kushushu/index.html

A君:これで、ごみからの考察は終わって、残りを考えることになります。焼却の熱は考えましたが、灰と煙はまだですね。

C先生:灰は、減量することが埋立地を延命するということが重要なために、溶融されることがある。しかし、それには、莫大なエネルギーが必要になる。

A君:しかも、その方式によって、必要なエネルギー量が違う。

B君:灰を溶融するのではなく、エコセメントの原料にするという考え方もある。Fuelが確実に減少するから、Tも減る。

A君:しかし、エコセメントは、組成が通常のセメントと少々違う。
http://www.kankyo.metro.tokyo.jp/resource/attachement/3r_expert_meeting_33.pdf
特性上、鉄筋を錆びを防止する能力が低い、不純物金属元素の含有量が多い、などということもあって、高級な用途には使わない。最近の動向として、果たして増えているのだろうか。

B君:少なくとも、東京の三多摩地区の二ツ塚処分場では、エコセメントが製造されている。

A君:ビル用は無理としても、他の用途で使えるものはあるでしょうから。

B君:自治体が土木工事用などで、適正な用途を見つければ良いと思う。

C先生:最後に煙。現在、清掃工場の煙突からは、白煙すらでていないのは、ご存知の通り。白煙の実体は煙ではなく、実は湯気(水分)なのだが、白煙が出ていると、湯気だと知らないで有害だと思う人が居る、あるいは、景色が悪くなると思う人が居るためなのだ。

A君:湯気(水蒸気ではない。水蒸気は気体なので見えない)を出さないためには、水分を極限まで取り除く必要があって、煙を水を霧状にして吹きかけて冷却して、ほぼ60℃ぐらいまで温度を下げ、それをボイラーの熱で再加熱して煙突から排出している。すなわち、エネルギー的に相当な無駄をしている。

B君:だからこれをヤメれば、結果的に健康リスクが増えることなしに、T(CO2排出量)は減る。

C先生:このあたりが理解されることが、もっとも重要なことだと思うが、もっとも難しいことでもあるのだろう。やはり健康リスクに関わると、極めて神経質な対応がでてくるものだから。客観的に見れば、現在の対応、特に白煙対策などは、過剰気味であることは事実だと思う。
 ということで、一通りカバーしたように思える。全体観を最後に述べると、ごみ処理による二酸化炭素の排出量は、日本全体の2%ぐらいなものなのだ。だから、実際のところそれほど厳密に考えなくても良いと思われがち。しかし、一箇所からの排出量として考えると、エネルギーを大量に使用している工場と同様に、やはり有効な対策を講じるべきだということになる。
 主として、自治体の責任ということになるが、現存する焼却炉を建て替えるのは寿命を迎えた後だろうから、細かい改善を積み上げて、なんとか対策を練って貰う以外に無さそうだ。