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  二酸化炭素排出2050年ゼロ
  
 その可能性をどう判断するか   12.20.2020



 「温暖化ガスゼロ 電事連が対策委」  なる記事が日経に掲載された。短い記事なので、ここで、全文を引用してみたい。

 大手電力で構成する電気事業連合会は18日、2050年までの温暖化ガスの排出量を実質ゼロにする国の基本方針の達成に向け、電力各社が対応策などを協議する委員会を設置したと発表した。再生可能エネルギーの主力電源化や原子力発電の拡充について、電力業界としての対策を検討していく。
 18日に「2050年カーボンニュートラル実現推進員会」を立ち上げた。大手電力10社に加え、Jパワー、日本原子力発電、日本原燃の計13社の社長が委員を務める。検討した内容などを踏まえ、具体的な脱炭素に向けた取り組みのロードマップを策定していく。


 というメッセージで、「ある意味、当然」と言う以外にはないのだけれど、
実は、電事連のみがロードマップを作れば良いというものではない。日本国内の電力が温室効果ガスをどの程度排出しているか、これは、電力を使わない産業は無いので、すべての企業にとって必要不可欠な情報であるから、第一番手として、確実なロードマップを作製する責任があるのは事実

 しかし、他の企業においても、場合によっては、公共団体においても、それぞれの企業・団体がどのようにロードマップを考えるべきなのか、それは、その企業の経営の今回に関わることなのだと思う。

 さらに言えば、それぞれの家庭においてもCO
排出量を意識しなければならないような時代が来ることも明らかのように思える次第。

 という訳で、
今回は、「COをゼロ」にと、もし言われたとき様々な事業がほとんど不可能というような状況に追い込まれるの、あるいは、なんとか対応が可能なのか、そんな課題について、議論してみたい。


C先生:
2050年にCO排出量をゼロにするということは、恐らく、地球上での人類の長期的な生存にとっても、最重要項目の一つであろうと思われる。その理由を考えることも非常に簡単であって、もしも、日本の気温が急激に上昇して、夏季が乾燥期になるようなことになれば、カリフォルニアなどのような森林火災が頻発する可能性が高まる。それ以外のシナリオとして、周りがすべて海の国である日本では、乾燥期よりも、むしろ、集中豪雨や強力な台風の方を心配すべきかもしれない。
 いずれにしても、どの国が、そして、どの地域が、さらにどの企業・団体が、最後には、どの個人がどのぐらいの量のCO
を排出しているかを十分に理解し、そして、できるだけCO排出量を低下させるような生活方式に切り替えることが、少なくとも2040年代には必要不可欠になるものと思われる。

A君:という訳で、
CO排出を定量的にきちんと理解するには、どのような情報があるのか、それをどのように解釈すべきなのか、などを検討しよう、ということですね。

B君:先走れば、その通り。しかし、ちょっと調べて見れば良く分かるように。非常に多くのデータを集める必要がある。しかも、そのデータが公開される年度はバラバラだ。その理由は、恐らく、公開されるまでに、かなりの作業量、言い換えれば、時間が掛かるから。

A君:という訳で、なかなか簡単な作業で「これだ」というデータを見つけることは難しいのが現状。いくつものデータをチェックする必要があるかもしれません。

B君:しかし、いずれにしても、もっとも簡便にまとめられている情報から行こう。
 それは、JCCCA(全国地球温暖化防止活動推進センター)が毎年まとめているグラフ。ちょっとチェックすると、現時点だと2018年度のデータが掲載されている。
https://www.jccca.org/chart/chart04_04.html

A君:見ていただけば分かる通りで、CO
発生量が最大の部門は、エネルギー転換部門の40.1%、続いて、産業部門の25.0%、以下、運輸部門17.8%業務その他部門5.6%、家庭部門4.6%、工業プロセス4.1%、廃棄物2.5%。

B君:実は、この図とデータは、直接排出量を対象としている。直接排出量とは、例えば、エネルギー転換部門であれば、火力発電所などで出される二酸化炭素の量のすべての合計。

A君:そして、間接排出量とは、電力はそれを使うユーザ(例えば、企業や家庭)があるので、そのユーザの電力消費量に応じて、CO
排出量を割り振ったもの。

B君:同じく2018年度の部門別二酸化炭素排出量の割合、間接排出量を示すと、かなり違った感じのグラフになる。

A君:より具体的に言えば、エネルギー転換部門(発電事業者などの直接排出)は40%以上だけれど、間接排出量にすると、エネルギー転換部門による排出量は7.9%に減ります。そして、産業部門が、35.0%と最大のCO
排出セクターということになります。

B君:ついでに言えば、2位は運輸部門、3位が用務その他部門、4位が家庭部門、そして、5位にエネルギー転換部門が来る。

A君:しかし、これだけだとまだまだ、「CO
排出の実態が分かった」とも言いにくいですね。

B君:それは当然で、産業部門という分類には、ほとんどすべての企業などからの排出が入るのだけれど、その実態は余りにも多様なので、イメージが湧かない。

A君:当然ですね。それでは、産業部門を分解することにします。

B君:産業部門におけるエネルギー起源CO
というデータがある。
https://www.env.go.jp/earth/ondanka/ghg-mrv/emissions/results/JNGI2019_2-3.pdf

A君:1990年〜2017年度のデータのようですが、まあ、充分使えるでしょう。

B君:かなり細かい図なので、リスト化するのが良さそうだ。

業種   2017年度排出量トン 

機械製造業             4400万トン
非鉄金属・金属製品製造業  1600万トン
鉄鋼業               1億6300万トン
窯業・土石製造業      3100万トン
プラスチック・皮革      1200万トン
化学工業           6100万トン
印刷&同関連業       300万トン
パルプ・紙など        2300万トン
木製品・家具他製造業    200万トン
繊維工業            800万トン
食品飲料製造業       2000万トン


A君:直接的には、このデータで良いのですが、面白いデータもありました。それは、生業部門別の実質GDPあたりCO
排出量。

B君:グラフを示すほどのものでもないかもね。1994年からの若干の上下をしながら、GDPあたりのCO
排出量は減少傾向を続けている。

A君:1994年にはほぼ5.9tCO2/百万円だったものが、2017年には3.5tCO2/百万円まで向上しています。

B君:しかし、さらに細かくチェックすると、やはり、分野別で傾向が違う。鉄鋼業は、まあ、増減はあるものの、微減ぐらい。化学工業と窯業・土石製造業では減少傾向が確実に見られる。しかし、機械製造業と食品飲料製造業では、余り改善が見られない。

A君:これらのデータから、業種別の未来像を推定するのは非常に難しいですね。むしろ、
その業種の実像から、CO削減の可能性があるかどうか、それを議論をする方向性の方が、有効かもしれません。

B君:そうだな。それに究極的には、最近のイノベーションの方向性をICEFにおける調査結果あたりと組み合わせて議論することが妥当なのかもしれない。今回は間に合わないが。

A君:それよりさらに飛躍した推測が必要だと思いますね。例えば、鉄鋼業については、すでに話を進めましたが、炭素の代わりに水素を使って鉄鉱石を還元することになる。ただし、
水素で還元する反応は、発熱反応ではないので、なんらかの熱を外部から補う必要があって、それは恐らく原子炉になる。すなわち、これを原子力製鉄という。余りにも大々的は変化だけに、今世紀末に完成すればまあまあといったところなのでは。

B君:なるほど。考えてみればそうだった。それでは、鉄鋼業の次にある
窯業・土石製造業はどうだろう。

A君:この分類だとちょっと無理ですね。窯業を次のように分けましょう。ガラス製造、陶器の製造、セメント製造。取りあえずこれで行きましょう。

B君:了解。
ガラス製造がCOゼロで実現できるか

A君:ガラスを溶融状態にすることが必要で、それには、
外部で溶融状態にしたガラスの池に、外部から電流を流して、加熱するのが一般的な方法。ということは、電気溶融で良い訳ですから、再生可能エネルギーで得た電気で溶融すれば良いので、なんとかなりますね。

B君:問題解決。それでは、次に
陶器の製造。陶器類と書くべきかもしれない。例えば、建築用のタイル製造なども含めて。

A君:対応としては、
バーナーで火炎を作って加熱するのが普通でしょうね。もっとも、これは、古典的な方法論に戻るという考え方でも行けるのでは。昔の登り窯などで陶器を作っていましたが、その熱源は薪ですよね。

B君:なるほど。それでは、窯業・土石の最後に、
セメントをどうやって作るか。セメントの原料は、石灰石、粘土、珪石、酸化鉄、石膏ぐらい。それに燃料として石炭や各種廃棄物。これを粉体にして、炉で加熱。最後には、ロータリーキルンなるグルグル回る加熱炉に入れて、塊状にし、それを最後には粉砕してセメントとなる。

A君:
この方法だと、石炭が必須なのでしょうか。粉体でも十分使えるから使っているのか、それともガスなどでは難しいのか。

B君:
ガスバーナーでやることも不可能ではないかもしれない。ただ、水素ガスバーナーですと、装置は全く新しく設計することが必要。しかし、天然ガスだと排ガス中にCOが出てしまうので、水素でやるとなると、さてさて。原料の酸化鉄が水素で還元されてしまたりすると上手くないね。

A君:やはり結構厄介かもしれませんね。水素を燃料としてセメントを作るのは、相当なイノベーションを必要とするかもしれません。専用の水素バーナーは、やはり、開発が必須。

B君:
待て待て、思い出した。水素バーナーは、トヨタがすでに作っているのではないか。

A君:自動車工業でもバーナーは必須でしょうから、当然かもしれません。再度チェック。はい。ありました。
https://monoist.atmarkit.co.jp/mn/articles/1811/09/news046.html

B君:なかなかの工夫だな。バーナー内での水素と酸素のハンドリングの方法が鍵か。まあ当然か。

A君:
そうしないと火炎の温度が高くなりすぎるだそうで

B君:それでは、次が、
プラスチックを含む化学工業。これはどうだ。

A君:化学工業は、まあ、液状の物質を混合して加熱というプロセスが多いものと思われるけれど、
温度も低いので、電熱で行けるのでは。

B君:まあ、そうかもしれない。しかし、やはり、燃焼を使うのではないか。しかし、直接炎という訳にはいかないよ。ちょっとチェックしたらやはり、熱媒体を使って加熱しているようで、
温度の最高値は、通常は350℃ぐらいらしい。これなら電熱でもなんとかなりそうだ。

A君:となると次に行きますが、一気に行けるのでは。
印刷&同関連業       300万トン
パルプ・紙など       2300万トン
木製品・家具他製造業    200万トン
繊維工業          800万トン


B君:印刷関係は大丈夫。パルプ・紙製造も、温度は150℃ちょっとらしい。電気で行けるのでは。

A君:木製品・家具他製造業も問題無さそうですね。

B君:繊維産業か。天然繊維であれば、まず高温になることはないのでは。合成繊維は、化学工業の一部だから、電気で加熱で、なんとかなりそう。

C先生:そろそろ結論がほぼ出揃ったのだろうか。どうも、
金属製品製造というところの実態が十分に解析できていないように思う。製品の性格によるのではないか。もしも、日本刀を作れと言われたら、やはり、炭とふいごでやることになるだろうから、COは出てしまうように思える。しかし、現時点での金属製品は、油圧のプレスぐらいでまずまずの製品ができてしまうのかもしれない。それに、すでに話題になった水素バーナーだけれど、もしも酸素・水素のバーナーを作ると、炎の温度は2800℃にもなる。となると、炭素を含む燃料を使うのは、むしろ、やや低温の場合であって、水素の方が、カバーできる温度範囲は広いと考えた方が良いのではないか。どうも、炭素を含む燃料が無いと、工業的に困ることがあっても、それは一時的で、新規の方法で、なんらかの解決策が見つかるような気がしてきた。