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  COP14閉幕 何も決まらず   12.14.2008
     



 ポーランドのポズナニで行われていた気候変動枠組み条約締約国会議COP14が、13日閉幕した。何も決まらなかった。

 これは、ポスト京都の枠組みへの国内の議論が大幅に遅れている日本にとっては、ある程度の救いになるかも知れない(本当になれば良いが)。



C先生:予想通りだったが、あまりにも予想通りなので、逆にがっかりしたのが実情。しかし、ほっとしたのも正直なところ。各国が強力な提案をしてきたら、日本は対応しきれなかった。

A君:まずは、各国からの提案をまとめた文書を詳細に検討をしなければ、というのが本日時点での結論。それ以上でも、それ以下でもない。

B君:その通り。まだ、残念ながら議論を進めるには、検討する時間が不足。

C先生:各国やNGOの提案がまとめられた文書が公表され、それに対し、追加の意見を出すことができる。それに対して、どのような対応を取るべきか、これが重要なポイントだが、120ページもある文書のようなので、まずは入手。そして、その検討にしばらく時間が掛かる。

A君:来年の12月7日から始まるデンマーク・コペンハーゲンでのCOP15が本番。しかし、その準備は、すぐに開始しないともう間に合わない。

B君:日本では、排出権取引の練習などをやりはじめているが、こんな状態ではダメだ。現在の日本には、どこまでやるのか合意が全くないこと、しかも、現在の合意形成のやり方では、決定に時間が掛かりすぎること、大学など、本来議論をリードすべき集団にアイディアが無いこと、メディアも批判するばかりで、何を基準にどう考えたらよいか分かっていないこと、など大問題ばかり。

C先生:12月13日の夕刊を3紙ならべて比較しているが、一面にCOP14の記事が出ているのは、朝日新聞のみ。読売も日経も、2面。一般市民には、もっともなじみのない2面に記事本体があるようでは、これが日本の未来を決めかねない重大なことであるという認識を持ちえない。

A君:日本の現状は、最悪。
(1)政治的状況が最悪。政治家の誰もが今は地球レベルの問題などを議論している暇はない、という認識。
(2)産業界が最悪。この議論をリードしている経団連の意見が、日本の産業界全体の意見を代表しているように思えない。
(3)メディアが最悪。何を基本として議論をしなければならないかを示すことができていない。NGOみたいな記事しか書けないメディアも多い。
(4)反温暖化論の学者達が最悪。国際政治の状況を理解していない。
(5)NGOの主張が最悪。諸外国が国益をむき出しにして主張しているのに、多くのNGOは、自らの主張がEUの一部の国の国益を代表した発言になっていることを理解しているのか。
(6)無関心な国民が最悪。この問題、地球環境という衣を着てはいるが、その衣の下の鎧を見ていない。日本の向こう10〜20年程度の未来決めることだという理解がない。本当は、そう言わないメディアが悪いのだが。特に、何をして稼ぐ国になるかを決める重大な要素であると理解すべきだ。
(7)いわゆるテレビ・コメンテーターが最悪。地球環境が重大と言いつつ、実は、国益に関わる重大な交渉が行われていることを理解していない。

B君:地球温暖化問題が実は、気候変動による人類の危機といった問題であると同時に、気候変動を巡る国際政治の問題、国際経済の問題であるということをしっかりと理解しないと、どうしようもない。

A君:地球環境問題として考えれば、2050年に地球全体での温室効果ガス排出量半減が、当面、妥当な目標。いつを基準年にするかによって多少違うが、実現は非常に難しい。

C先生:その前の中期目標として、「先進国は2020年に25〜40%の削減」という数値目標があるにはあるのだが、米国のオバマ次期大統領の公約が2020年に0%、すなわち、1990年レベルに戻すというもの。この余りにも現実的な目標ですら、米国にとっては難しいだろう。この米国をUNFCCCの枠組みに引き戻すことが、まずは大変。

A君:日本にとって、「25〜40%カットが可能かどうか」、と言われれば、英国ができるというのなら、日本だって多くの条件をすべて無視すれば可能ではないか、と思うと答える。

C先生:英国のCO2実排出量は、1993年以降でも、実は増えているという解析もある。京都議定書の枠組み内のCO2排出量は確かに減っているのだが。
 しかも、英国だけではない。ドイツを除くと、ほとんどすべての国で、2000年以降の排出量は増えている。だから、英国で可能なら、というのは、面白い主張になる。

B君:日本で可能だという答えを実現をしようとしたら、オフィス向け・一般家庭向けの環境税、製造事業者・運輸事業者への排出上限設定、などを全部導入すればであって、景気などがどうなるか、それは無視した場合。

A君:今回のCOP14での、2020年「25〜40%削減」という目標は、実排出量にすると、ほぼすべての国で無理であるのだが、なぜか国際政治上だと、そんな目標になる。

B君:経済発展がどうなるか、これが大きい。サブプライムで景気大減速がどう影響するか。

A君:経済発展をすると、鉄鋼、セメントが大量に使われる。

C先生:日本にとっても大きいことだし、世界全体としても重要なことが、やはり鉄鋼をどこで作るかという問題。なぜならば、鉄鋼は輸送が可能なので、CO2排出などを無視したコストが安い国で作られて、国際的価格競争力を持つ。鉄鋼に関しては、セクター別アプローチが必要。

A君:さらに言えば、普通の意味でのセクター別アプローチではない仕組みが必要。鉄鋼は、国の枠組みから切り離して、CO2排出原単位ベースでのキャップ&トレードを単独で行うことが最良。

B君:鉄鋼は、途上国の経済成長にとって必須の材料なので、排出抑制を徹底した高効率な製法が普及することが絶対条件。

C先生:日本の主張するセクター別アプローチはどうも中途半端という感じがある。セメントは、あまりにも価格が安いので、輸出入をすることを前提としなくてもなんとかなる。電力は、大陸国であれば、隣から買うこともありうるが、世界は、大陸国だけではない。すなわち、鉄鋼がもっともセクター別アプローチが必要な産業。鉄鋼を、生産国という枠組みから完全に独立させるという主張がどうしてできないのだろうか。

B君:実は、現時点で鉄鋼製造に関連して出されているCO2の半分は中国からのもの。国際鉄鋼協会(IISI)も、中国の鉄鋼業の動向に注目せざるを得ないのだが、中国自身は、鉄鋼業の効率化をCDMでタダで実現しようという思いが強いのではないか。

C先生:IISIも、セクター別アプローチを主張している。どの意味でのセクター別アプローチなのか、そこは不明だが。排出量削減を技術で実現することは、IISIの主張でもある。

A君:温暖化問題は、所詮、技術的なアプローチが主体にならざるをえない。なぜなら、一般市民のマインドセットなど、そう簡単には変わらないから。

B君:省エネ・高効率化技術で生きようという日本。そのために、環境外交とか科学技術外交とかいったことがやっと少し進展してきた。しかし、技術は企業が所有していて、国にある訳ではない。国が技術を交渉の武器にしようと思っても、自分で持っていないものを武器にはできない。

C先生:現在のCDMの枠組みでは、中国のみが利益を得た感が強い。先進国が、途上国に貢献して、排出クレジットを獲得する方法がもっと多様であってよい。

A君:GIS(Green Investiment Scheme)という名のホットエアを買うのは無駄だと思うので、この予算で、途上国における特許の実施権を国が日本企業から買い集めることが、まず、第一段階として必要なのではないですか。

B君:どうやって日本という国が技術を売って生きる国になるのか。そんな戦略が十分に練られていない。

C先生:国が特許実施権を買い集めるのは、必須のように思える。様々な問題もありそうだが、今後、さらなる検討が必要だろう。

A君:話を最初に戻しますが、COP14のその120ページの文書というものを見つけて、じっくり検討するのが次のステップですかね。

B君:新たな追加を必要とするかどうか、その締切が2月らしいので、迅速に検討するのが、次のステップ。

C先生:今日は、短めに終わることにしよう。COP14で何も決まらなかったのは、ある意味で良かった。しかし、時間的余裕はほとんどない。全国民的レベルで真剣に議論し適切な対応を取らないとないと、今後、10〜20年間、日本全体が後悔することになるだろう。メディアのそのような認識に基づく新聞記事・テレビ放送を期待したい。