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 COP15の採点:国益の戦い   12.20.2009
     



 12月20日の朝刊に、コペンハーゲンで行われたCOP15の結果が報道された。なかなか微妙な表現で、各報道機関の言葉が異なったものとなった。

 実は、この日、自宅を7時20分前に出て、静岡駅9時06分着のひかりに乗って藤枝市に行き、藤枝市の「もったいない都市宣言」の会場で、特別講演をしたため、この文章を作る時間が不足。

 講演の題名は、「もったいないで解決する地球温暖化」だったのだが、詳細は、いずれまた。

 今、これを書いているのは、大阪市の谷町四丁目。ここにNITEの大阪支所があるが、福島大臣が21日の朝から視察にお見えになる。その準備、要するに説明の練習もしなければならない。

 ということで、今回の文章は、チェックが甘いことは許容されたい。

 さて、今回の各紙の表現だが、「コペンハーゲン合意」を「承認」と表現したのが、朝日と読売。「合意を了承」と表現したのが日経であった。一方NHKは、「合意文書に留意する」と放送した。

 「承認」、「了承」、「留意」などなどと様々に訳された英語の表現は"take note"であった。これは、採択、署名、受諾などに比べ、かなり弱い表現である。

 もしも訳せと言われたら、「尊重する」と訳すかもしれない。

 さてその「コペンハーゲン合意」(Copenhagen Accord)だが、その正式文書がまだネット上で見つからない。

 今、手元にあるのが、12月18日の午後4時30分バージョンらしきものである。もっとも、これよりも新しそうなものも、手元にあるのだが、いつのものか判然としない。

 そこで、まずは、その4時30分バージョンを、昨晩、日本語に訳してみた。大変に難しい作業だった。なんといっても、外交英語のニュアンスを表現する日本語がなんなのか、実のところ、よく分かっていないからである。そのうち、外務省から日本語訳が出ることだろう。



コペンハーゲン合意 12月18日午後4:30版

各国の元首、大臣、代表団のトップなどは、2009年にコンペンハーゲンで開催されたUNCCC2009に参加し、

UNFCCCの究極の目的の達成に向け、

条約の原則と規定に従って、

2つの臨時ワーキンググループの結果に留意しつつ、

長期的な協調行動に関する臨時ワーキンググループの権能を拡張する決定(CP.15)、ならびに、京都議定書のAnnex1諸国のさらなる関与に関する検討を行った臨時ワーキンググループが今後も継続して活動することを要請した決定(CMP.5)を是認しつつ、

このコペンハーゲン合意書(すぐさま運用する)について同意する。

1.われわれ世代にとって、気候変動の克服は、最大の挑戦課題の一つであることをまず明確にしたい。我々の強い政治的な意志が、これまでの原則、すなわち、共通のしかし差異のある責任と個別の実施能力の違いの原則に則り、気候変動との戦いに緊急に参画することを強調したい。条約の究極の目的、すなわち、温室効果ガスの大気濃度を危険な人為的な攪乱を防止できるレベル以内に安定化することのために、地球の温度の上昇を2℃以内に留めるべきだという科学的知見を認識しつつ、公平性の担保と持続可能な開発の実現を目指し、長期的な協力的行動を拡大し、気候変動と戦う。気候変動の危機的な影響と気候変動の影響を受けやすい国々における対策手法によって起こり得る影響とを認識しつつ、国際的な支援を含む包括的なアダプテーション(適応策)プログラムを確立することが必須であることを強調したい。

2.我々は、IPCCの第四次報告書に記述されているように、2050年までに1990年を基準として50%の削減が必要だという見解をもち、同時に、大気空間を公平に使う(温室効果ガスを排出すること:注)権利が存在していることを考慮しつつ、地球レベルでの排出を大きく削減することが不可欠であることを合意した。我々は、地球レベルと国レベルでの排出量のピークアウトを実現すべく、途上国では、社会的・経済的な開発と貧困の克服がもっとも優先されるべき課題あるため、そのピークが来るには時間がかかることを認識しつつ、かつ、低炭素化された開発戦略が持続可能な開発にとって必要不可欠であることを同時に認識しつつ、協力関係を築かなければならない。

3.気候変動の不利な効果に対する適応策と対策によるあり得るインパクトへの適応策は、すべての国が直面するチャレンジ課題である。適応策に関する行動を拡大し、国際的な協力をすることは、議定書を確実に実施するために緊急に必要とされることだ。それには、適応策の実現を可能にし支援することが必要である。適応策は、途上国における被害を受けやすいという問題を解決し、悪影響からの復元力を構築しなければならない。特に、最貧国、島嶼諸国、それから干ばつと砂漠化と洪水の影響を受けているアフリカの途上国には特別の配慮が必要である。先進国は、途上国における適応策が実施できるために必要な、適切で、予測可能で、継続的な資金源、技術、キャパシティービルディング、を提供しなければならない。

4.京都議定書の締約国は、2050年までに、単独であるいは協調的に、80%の温室効果ガスを削減しなければならない。これらの国は、2020年までの定量的な削減目標を付録1に示されるような形で、国全体の排出目標を、単独もしくは共同で定めなければならない。京都議定書の締約国は、そのため、排出削減をさらに強化することになる。先進国によってなされた削減と資金提供の実績はCOPですでに決められた、あるいは、今後追加される方式で報告され、検証されなければならない。そのような目標と資金提供の根拠が確実で、堅固で、透明であること保証できることが求められる。

5.京都議定書の附属書Tに属さない国は削減行動と京都議定書の附属書Uにあることを、文書4.1と4.7に整合的に、かつ、持続可能な開発の方向と整合的に、実行することになる。非締約国によって今後取られるあるいは想定される排出削減行動は、文書12.1(b)に整合する形で、その国の機関によって、二年に一度、COPによって定められたガイドラインに則って、条約事務局に伝達されなければならない。国からの伝達に含まれた、あるいは、他の方法で事務局に伝えられた削減行動は、付録Uに加えられる。
 非参加国が取った削減行動の結果は、国内の定量化、報告、検証を経て、やはり二年に一度、国の伝達機関を通して、報告されることになる。附属書Tに属さない国は、二年に一度の国の排出量詳細報告書をCOP定められ改正された方式に則って、事務局に提供されなければならない。(ここに米国と中国に関する記述を入れることを考慮中)。
国際的な支持を求める国として適切な削減行動は、関連する技術、資金、キャパシティービルディングの支援とともに記録簿に掲載される。これらの行動で支持されたものは、付録Uに加えられる。これらの支持された適切な排出削減の国内対策は、COPによって採択されるガイドラインに従って、国際的な測定、報告、検証の対象になる。

6.森林の破壊と劣化による排出をいかに削減するか、そして、森林による温室効果ガスの吸収を拡大することの必要性について、その重要性を認識している。そして、REDD−plusと呼ばれるようなメカニズムを速やかに確立し、森林関連の行動が取られるようなインセンティブを提供する必要があることに合意する。

7.われわれは、様々なアプローチ法を探ることを決定している。市場を使う方法、コスト的に有効な対策法を拡大すること、そして、削減行動を推進することなどを含む。途上国では、特に、排出量の少ない状況の国では、低排出の道筋を開発することを続けるように、インセンティブが与えられるべきである。

8.拡大された、新しく追加された、予測可能で充分な資金が、アクセスがより容易な仕組みを含めて途上国に提供されるべきである。当然、条約の関連条項との整合性のある仕組みの枠内での資金である。条約の実施、すなわち、削減、森林破壊防止、適応策、技術開発、技術移転、キャパシティービルディングなどを含む方策が拡大されるために資金が必要である。先進国の全体の寄与は、新規かつ追加的な資金源を確保することで300億ドルが2010〜2012年の期間内で必要であり、適応策と削減策、森林関連間でのバランスを含めて、付録Vに記載されている.適応策のための資金は優先順位が高いのは、次のような国である。もっとも被害を受ける可能性が高い国々、最貧国や島嶼諸国、あるいは干ばつ、砂漠化、洪水の可能性が高いアフリカに対して。効果的な削減行動と実施の透明性確保という意味合いから、先進国は合同して、2020年までに毎年1000億ドルの資金が、途上国のニーズのために振り向けられる。この資金は、様々な資源から提供される。公的・指摘、二国間・多国間、あるいは、資金の代替的な資源を含めて。適応策のための新しい多国間の資金は、効果的かつ有効な資金アレンジを通して提供される。このアレンジは、先進国と途上国が平等に校正する管理組織によって実施される。

9.首脳級のパネルが、このゴールを実現するために、代替的な資金源の検討を含めて、可能性の高い資金源へのアクセスを可能にするべく、COPの主導と責任において設立される。

10.コペンハーゲン気候基金が、途上国や関連する削減策、特に、CP.15決議で示したように、REDD−plusや適応策、キャパシティービルディング、技術開発や技術移転各種プロジェクト、プログラム、政策や他の活動を含む活動を支援するために、条約の資金的メカニズムの担当団体として設立される。

11.技術開発と技術移転を活性化するために、特に、国独自のアプローチによって導かれ、かつ、それぞれの国の状況と優先順位に立脚した適応策・削減策の活動を支援する技術開発と技術移転を加速するために、CP.15決議で示した「技術メカニズム」を設立することを決定した。

12.2016年までに、この合意が条約の究極の目的に照らして実施レベルに移行できるように、本合意書の再吟味を求める。この再吟味には、地球レベルの温度上昇を1.5℃以内にするような方向での、長期目標のさらなる強化の考慮を求める可能性がある。



C先生:やっぱり。

A君:こんな結末以外ない。

B君:これしかまとまらない。

C先生:様々な状況が様々な国にあって、こんなところ以外に落としどころが無かった。

A君:もっとも満足したのは、結果的に中国ではないだろうか。

B君:存在感を示したし。

C先生:あとは、オバマ大統領かもしれない。国内の政治的な状況が厳しいので、なかなか具体的な数値などは示せないものの、やはり存在感を示したから。

A君:日本も、25%という中期削減目標と鳩山イニシャティブの金額によって、存在感を示そうとしたのだが、中国にあしらわれたように思います。

B君:中国にインパクトを与えるべく、いろいろな数値を示したものの、中国は、そんなうるさいことを言うなら、評価すらしない、という態度だった。

C先生:とはいうものの、中国の目標がけしからんとは言いにくい。すでに、上位1億人は日本人の1億人よりも金持ちだが、残りの12億人はまだまだ所得が低い。日本の残りの3000万人弱も所得が低いが。

A君:中国としては、京都議定書のCDMで相当なメリットを享受したから、京都議定書を止めると言われると、それは困る。

B君:相手の困るところを狙って突くことができないと、本当の意味での交渉はできない。しかし、余り露骨にやる訳にも行かないので、「回り回って結果的に突く」ことが重要。

C先生:それでは、それぞれの国について検討したい。

A君:NPOなど、国で無いものも検討対象に入れるべきでは。

B君:NPOの大部分は、ツバルなどの島嶼諸国と同じ主張だと思えば良いのではないか。

C先生:それはそうだ。それでは、ツバルから。

A君:ツバル、環境NPOの意見を代表しているものでもあるのですが、今回の合意は、全く不満足。これでは、温暖化は防止できない。ツバルは水没が免れない。

B君:2℃まで許容するという考え方だって、怪しいモノだ。1.5℃というシナリオを考えて貰わないと。

C先生:最悪事態になれば国が無くなるのだから、同情すべきなのだが、海面上昇だけが原因だとは思えない部分が多いという推測もある。

A君:いずれにしても、今回のような結末では、未来が暗い。

B君:しかし、全く合意が無い状況よりはマシ。ということで20点ぐらいの評価にはなるのでは。

C先生:コペンハーゲン合意には付録が付いている。付録1と付録2だ。付録1は、先進国向けで、自主的に2020年の目標値を書き込むことになっている。付録2は、途上国向けなのだが、ツバルのような国だと、そもそも、温室効果ガスの排出も極めて限定的なので、削減目標を書くことすらできない。

A君:ツバルは、はやく次のCOP16をやってくれということだけでしょうね。

B君:COP15.5とでも言うべきbisという会議が行われると思ったのだが、それも無かった。

C先生:それでは、米国に行くか。

A君:オバマ大統領自身は、かなり高い削減目標を書きたいのではないか、と思う。

B君:しかし、国内の政治状況がそれを許容しない。

C先生:上院での議決が必要なのだが、民主党が多数を占めてはいるが、かならずしも全員が賛成ではない。共和党の反対勢力は頑迷だ。米国国民は、特に、共和党支持者は、相変わらず地球温暖化を信じていないように思う。日本の懐疑派と同様なのだ。

A君:オバマ大統領の支持率も低下気味で、選挙を控えている民主党の上院議員は、余り高い削減目標を言えない。

B君:選挙というものが、やはり本来行くべき方向性に狂いを与える。これは全ての国で同じ。政治家の宿命だとも言える。

C先生:ということだと、オバマ大統領自身は、40点程度の評価か。

A君:政治家は、もっと自己採点が高いと思いますね。

B君:そうだろう。オバマ大統領自己採点は、60点は行っているのでは。

C先生:それでは中国はどうだ。やはり頑固だった。

A君:温家宝首相も、あまり妥協する気は無かったようだ。

B君:閣僚級の交渉に出ていた人物には、ほとんど裁量権が無かった。

C先生:COP15のテレビ報道で、この代表だと思われる人物が、コペンハーゲン合意について、これは、署名された文書でもないし、受諾された文書でもない、と言っていた。受諾というのは、acceptedと聞こえたからなのだが、場合によるとadopetedだった可能性もある。その場合には、採択された文書でもない、になる。

A君:いずれにしても、俺は何も受け入れなかったということを中国国内向けに述べていたのでしょう。

B君:中国が嫌いな言葉が相当に出てきたから、機嫌を損ねた。

A君:例のMRV(measurable, reportable, verifiable)はなかなか中国としては認めがたい。内政干渉的なことが大嫌いだからですが。

B君:天安門事件など、人権からみのことでも、神経をとがらしていたという歴史があって、内政干渉を大変に嫌う。

C先生:日本の場合には、国内で駄目なら、外圧を使えというのが結構真理なのだが、中国という国はそうではない。

A君:中国は自己採点としては、50点以上。

B君:しかし、米国をはじめとして、日本を含め、中国に対する圧力の強さを感じたとは思う。その意味で、客観的にも40点程度ではないだろうか。

A君:EUはどうだったのでしょうね。

B君:デンマークは、最初から、京都議定書の枠組と米国、中国向けの別の枠組を用意して、それでこれらの国を説得できると思っていた節がある。

A君:ところが、とにもかくにも、途上国からの反発、要するに、先進国だけやれ、米国が逃げてどうする、中国も含めてやれ、という最貧国などの主張が極めて強くて、どうしようもなかった。

B君:アフリカ諸国などでは、少しでもエネルギーを使って、仕事を作って雇用を確保し、経済成長を実現をしたいのに、中国・インドは、途上国だと良いながら、アフリカを利権の対象として見るような国になった。

A君:今後、BRICSとそれ以外の対立が高まる。

B君:そうだろう。これがどのような効果をもたらすか。

C先生:最貧国など、温室効果ガスなど、出したくても出せないのだ。という切実な叫びは極めて強いものだった。これが、しばらく力を持ちそうだ。

A君:EUとデンマークは、どうも予想外ということだったのでは。自己採点は20点程度では。しかし、外向けには、完全な崩壊を避けたので、60点と言うでしょう。

B君:アフリカ諸国は、予想以上にアピールができたと思っている可能性もある。しかし、40点程度だろうか。

C先生:問題の日本だ。過去のCOPと比較すれば、やはり25%と鳩山イニシャティブのお陰で、存在感はあったと思う。しかし、中国が予想以上に頑固だった。最終版のコペンハーゲン合意を詳細に読んでみないと分からないが、客観的には40点程度の点はあったのではないだろうか。

A君:となると、政府の自己評価は65点程度。

B君:しかし、今後、付録1に何を書くか、これが最大の問題になる。

A君:米国の状況などをしっかりと見極めることでしょう。

B君:いずれにしても、米国が入らない新議定書は、絶対に認めてはならない。

C先生:このあたり、繰り返しになるが、米国国民がもう少々世界の動きを見るような性格に変わらないと。米国の田舎は、新聞もその地域の新聞だし、国際的な感覚が全く無いので。

A君:それは無理ということと同じでは。

B君:となると、COP16も暗い。何も決まらない。

C先生:2020年ぐらいから、途上国からの排出がピークになる傾向を示すようでないと、地球は本当に壊れてしまう可能性が出てくる。少なくとも、ピークが2020年代に来ないと2℃のラインは守れない。2.5℃のラインになる。

A君:この0.5℃がどのぐらい意味を持つのか。地球の揺らぎ次第ですが。

B君:2001年当時は、2.5℃で良いという話だったのが、2007年版のIPCC報告書では2℃になった。

C先生:このあたりの再検討が必要。さらに、地球の揺らぎ、実際には、太陽の揺らぎかもしれないが、その定量化が必要。まだまだ不確実な科学的な結果に基づいている以上、やはり安全サイドに考える必要があることは事実だ。温暖化懐疑派のように、無責任な発言をすること自体が信じられない。米国の国民も信じがたい。