COP16予測通りの結末     12.12.2010 

       来年に向けて、各国の状況を整理してみた




 メキシコのカンクンで行われていたポスト京都体制を巡るCOP16が終了した。



 まずは、関連情報から。

 政府は10日、ポーランド政府から400万トンの排出枠を購入することを発表した。これで、すでに購入した排出枠が9780万トンになった。

 金額は公表されていないが、かなり前のブルームバーグの報道(3月3日)によれば、
http://www.bloomberg.co.jp/apps/news?pid=infoseek_jp&sid=ay.a7lhUaoCM
3000万ユーロとのこと。ところが量が書いてない。

 CER価格が12〜13ユーロということなので、400万トンだと5000万ユーロ程度だという計算になる。それよりもかなり安い。

 しかし、3000万ユーロでも、110円/ユーロとして、33億円。無駄なように思う。カナダは一体排出枠をいくら買ったのだろうか。

 正確な報道に基づくものかどうか分からないが、カナダの環境大臣は、「税金をムダに使うような排出枠の購入には賛同できない」という主張をしたらしい。多分、何も購入していないのではないか。

 カナダと同じく、達成の可能性が全く無いオーストラリアは何をしてきたのだろう。

 この程度が世界の現状である。このあたりの議論がもっと公開されれば、京都議定書の単純な延長がいかにふざけた議論であるかが分かるだろう。真面目に対応してきたのは、英国、ドイツ、北欧、それに日本ぐらいなものなのではないだろうか。

 日本が単純な延長に徹底的に反対した理由を、裏情報をよく知る各国は十二分に分かっている。しかし、京都議定書を延長したいのである。「まじめな金蔓がいなくなる」ことに対して、各国は反対しているとも言える。

 なぜならば、買い手がなければ、排出枠の価格などはゼロになるのだから、欧州の経済にとって、あるいは、経済が沈下し続けている国には、さらに深刻な事態が加わることになる。

 日本は1億トンを海外との排出権取引で獲得することを当初から計画し、それを粛々と実行してきた。総額1兆円とも言われているが、実際にはもっと少ないかもしれない。当初、個人的には、最高2.5兆円になるのではないか、と心配していた。

 しかし、アメリカが離脱した京都議定書であり、マイナス6%を約束しながら、25%増になっているカナダも達成を諦め、オーストラリアも似たような状況。そのため、排出権の価格が思ったほど上がらなかった。

 世界の排出量の4%しかないこの日本という国が、1兆円を掛けて免罪符を買い込んでも、何の意味もないことなのだ。この1兆円を日本国内で、将来、排出量削減に有効な技術の開発や、社会制度の創成のために有効活用すべきだったと考える。

 なぜなら、購入先のチェコ、ウクライナ、などが排出枠は、経済的な理由で単に余ったものであり、日本の企業などがやってきたように、身を削って生み出した排出枠ではないからである。すなわち、地球全体の排出量は、日本が1兆円を払っても、1トンも減らなかった。

 世界の各国の排出量の現状は、UNFCCCの資料から知ることができる。例えば、ポーランドだと、
http://unfccc.int/files/ghg_emissions_data/application/pdf/pol_ghg_profile.pdf

 2008年排出量実績はANNEXTの各国について、この図のようにまとめられている。



図 京都議定書で排出量削減の義務を負う国の排出量増減。
http://unfccc.int/files/inc/graphics/image/jpeg/changes_excluding_2010.jpg


 カンクンのCOP16の話に戻る。

 毎度のことであるが、議長国がいわゆる議長案を示し、それに基づいて合意形成が図られる。議長案は、大臣級の裏交渉でまとめられるようだ。

 朝日新聞の夕刊(12月11日)によれば、議長案の骨子は以下の通りである。

・産業革命前と比べて気温上昇を2度以内に抑える。
・温暖化被害を軽減するため新機構を設立。被害をうけやすい国への支援を強化。
・先進国は削減目標を掲げ、達成状況を国際的に検証。
・途上国は2020年時点で見込まれる排出量からの抑制策を定める。対策は国際的な支援を受けることができ、実施状況は国際的に検証。
・途上国での森林減少を食い止めるための仕組みづくりを推進。
・途上国支援の新しい基金を設立。20年には年1000億ドル規模の資金を支援。


 京都議定書の単純な延長は、一応回避されて、次回南アフリカのダーバンで行われるCOP17で結論が出されることとなった。

 さて、今後どのような方向になるのだろうか。COP15では、中国が強硬に反対したMRV(=Measurable, Reportable, Verifiable、測定可能、報告可能、検証可能)だが、今回はある程度同意をしたようである。そのためにインドがかなり努力したようだ。

 ということは、やはりCOP17の方向性は、一体的な枠組みを狙うということか。しかし、規制の実態は個々の国でかなり変えないと、それぞれの国に無理が生じる。

 しかし、削減目標をそれぞれの国に応じて決めることは、相当大変な作業だろう。となると、コペンハーゲン合意に基づいて、各国が自主的に提出した数値を基本として、作業を進める以外に無いのではないか、と想像する。

 MRVは、一旦削減量を宣言した国が、その国の威信を掛けて取り組むために必要不可欠な仕組みなのである。

 日本は例の2020年に25%削減、ただし、各国が意欲的な取り組みを示した場合、というものを提出しているが、国内での真水の削減はやはり15%程度にして、残りの10%は、途上国に省エネ技術を提供することによって削減し、若干の分け前を貰うという方向が良いと思う。

 すなわち、二ヵ国間の協定を結んで、お互いに省エネと二酸化炭素排出量削減を実現していく。地球全体としての削減を実現するには、これ以外に無いのではないか。ただし、合意形成が結構手間の掛かる作業になるのが大変なところである。

 日本は、省エネ技術を提供するということが可能だが、多くの国々は、なかなかそうもいかない。米国からどんな省エネ技術を買えば良いのか。どの国も「要らない」というのが答えではないだろうか。

 英国にしても同様だろう。これらの国だと、金融システムを用いて世界全体を低炭素化するというアイディアしか出ない。しかし、金融システムをどこまで信用できるのか、難しい問題が残る。

 本当の意味で公平な枠組みは、やはり、過去の化石燃料の使用量を考慮した炭素税だと思う。宇沢弘文先生が、以前から主張している通りであるが、次の枠組みに、それが十分議論されて、次のCOP17に間に合うということはなさそうである。

 その枠組みをここでは、「世界連帯炭素税」とでも呼ぶことにする。これができたとしたら、その税額はどうなるのか。Wedgeなる雑誌(2008年10月号のようだ)に宇沢先生の記事が出ていたことは記録してあるのだが、「例えば、アメリカ人の一人当たりの税額は2500ドル、日本人の税額は840ドル、中国人の税額は40ドル、フィリピン人の税額は8ドル」という記述が残っているだけ。

 おそらく、年間の排出量で割れば、価格が出るのではなかったか。とすれば、
アメリカ 130ドル/トンCO2
日本    85ドル/トンCO2
フィリピン 10ドル/トンCO2

 中国の場合には、経済成長とCO2排出量の増大が著しいため、何年のデータを元に議論をしているかによって税額がかなり違ってくる。元の論文が2005年なので、2003年程度の排出量を採用すれば、中国は、14ドル/トンCO2程度となる。

 人類が化石燃料を使い始めてから、その国が消費した通算使用量で計算をしているらしいが、少なくともこの4ヶ国に限って言えば、絶対値がかなり高いのは別として、まあこの程度の違いが妥当ではないか、という気がする。

 絶対値については、化石燃料枯渇あるいは、温暖化のリスクの大きさによって決まるものだと思われるが、この程度の国際連帯環境税の税額が実現できれば、あっという間に、温暖化問題は解決すると思う。とういうことは、絶対値としては、かなり大きいということになるのかもしれない。



 さて、来年のCOP17(南アフリカ、ダーバンで開催予定)で、各国がどのような状況を反映させた主張をするものか、2000年以降のいくつかの状況を整理してみることにした。

 使用した数値データは、世界銀行のWorld Development Indexのデータベースからダウンロード。エクセルで整理してグラフ化した。このデータベースは、以前は有料だったと思うが、現時点では無料でダウンロードが可能になっている。世界銀行のデータなのだから、当然のことだと思う。

 まず、最初は、どの地域がCO2排出量を増やしているか。




図 地域別のCO2排出量の推移 2000年〜2008年

 排出量の多い方から言えば、まずは、北アメリカ。なんと若干は減らしている。

 OECD諸国ではない高所得の国(High Income:nonOECD)、その大部分が産油国であるが、経済力を反映して、二酸化炭素排出量を格段に増やしている。

 OECD諸国は、多少減らし気味。

 Euro圏は、やはり若干減らしている。英国、ドイツ、北欧は真面目に取り組み、ポルトガル、ギリシャなどはいい加減な取り組みらしい。

 次に、二酸化炭素排出量、エネルギー消費量と一人当たりのGDPの関係をアップデートすることにした。これまで2000年のデータを使用してきたが、今回、2007年までのデータが使えるようになった。

 2008年は、例のリーマンショックがあるために、2007年という年は、それまでの傾向を見るのに必要不可欠な年だから重要なのである。


図 一人当たりのCO2発生量Tonと一人当たりGDPの関係。

 2000年と比べると、大幅に排出量を増やした国がクウェート、ブルネイやカザフスタンで、カナダも先進国にしては珍しく排出量を増やしている。全体的な傾向としては、産油国が排出量を増やしたと言える。カナダの場合は、この時点ではまだ盛んに生産していたオイルサンドからの油産出である。

 GDPを大幅に増やした国が、シンガポールや香港、マカオなどである。アジアの新興経済勢力はなかなかすごいものがある。

 データが不足していて、この図に入らない国があるので、表の形で、二酸化炭素排出量とその国の属性を示す。



表 2007年における各国からの一人あたりの二酸化炭素排出量(トン)。カタールがトップで、なんと55トン。日本の5.5倍。

 この表からわかることは、産油国がかなり排出量を出しているということ。さらに、米国の数値がやはり大きいことである。

 一方、中国は、まだ世界平均の4.6トンをわずかに上回る程度であることである。

 もしも2050年までに、世界全体で、排出量を2007年比で半分以下に減らす必要があるとすると、その値は一人当たり排出量で、2.3トンであることが分かる。

 この値はなかなか厳しいと言えるだろう。日本の排出量が約10トンなので、2050年排出量80%削減を宣言するということは、排出量を2.0トンとすること、すなわち、2.3トンという地球全体の目標値を下回るということを宣言していることになる。

 次に、エネルギー消費量とGDPの関係を示す図もアップデートした。


図 一人当たりのエネルギー使用量TOEと一人当たりのGDPの関係。

 この図は、石油換算のトン数でエネルギー使用量を表現している。アイスランドがもともとダントツのトップなのだが、2007年の数値を見ると、2000年から3割ぐらい増やしているようだ。

 アイスランドは、リーマンショックで相当な経済的な痛手を受けた。2008年、2009年のデータがどうなっているのだろうか。まだ発表されていないが、興味深々といったところである。

 全体的な傾向としては、エネルギー使用量を増やし所得も高めた国は、トリニダード・トバゴが目立つぐらいで、多くの国は、単にGDPを増やしている。シンガポール、香港が代表格である。

 この図に書き込んだ曲線であるが、上から産油国、巨大国、北欧、中緯度国、南国、熱帯といった区分のつもりであるが、2000年のデータでは、GDPが$15000ぐらいまでGDPとエネルギー使用量が比例関係にあるという形であったが、2007年になると、所得が増加していて、$25000ぐらいまで比例関係にあるという感触になる。

 その大きな理由は、2000年に$15000ぐらいであった国の経済が伸びたからである。韓国がその典型である。

 これは良い兆候だとも言える。なぜならば、経済成長のエネルギー依存性がますます明確になったものの、より少ないエネルギー量で、多くのGDPを稼ぐ国が増えたと言えるからである。

 低炭素化社会を作るためのもっとも重要な要素が、安価な化石燃料からの離脱なのだが、残念ながら、それはまだ実現できていない。ある意味で、ますますエネルギーが経済成長のために必須だという理解が高まったと言えるかもしれない。

 しかし、まだまだ一部の国ではあるが、エネルギー使用量を多少なりとも下げながら、経済成長を実現した国が多少見えている。英国やアイルランドがその例である。

 しかし、いずれも金融国家であるとことが問題で、2008年、2009年にどうなっていることやら。データが揃ったら、解明してみたいところである。

 金融国家をどう考えるか。日本の得意技ではないことは確実だろう。

 排出枠を国と国の間で取引することを容認しがたいのは、まず絶対的な現実として、地球レベルでの排出量が削減するとと無関係な事例が多いことである。例えば、日本が選択した相手国がそうであった、ということである。それ以外にも、金融取引ということになると、投機筋がなにをやるか分からないという根本的な不信感がある。

 排出権取引で金を儲けようという根性自体が、地球の未来のために貢献しようという責任感のようなものと相いれないものを感じる。偏見だろうか。