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   COP21合意とその道筋    12.13.2015
          国連による国際交渉の進行の経過        




◆12月13日の午前9時から12時の間に記述。

 COP21が合意されました。合意されたバージョンのパリ協定の文書を入手できていませんが、その元となるであろう文書(英文)を読み、新聞情報を参照すれば、次のような合意内容であったようです。


1.気候変動への対応 気温上昇を2℃未満。さらに1.5℃以下になるべく努力する。 Article 2

2.今世紀後半には、人為的な温室効果ガス排出量を吸収量とバランスさせ、実質ゼロとする。 Article 4

3.各国は、自主的に決めた削減目標と対策などの約束案を5年ごとに見直す。 Article 4

4.各国は、自主的な削減目標などの実施とその報告に責任を有する。 Article 4

5.各国による他の国での排出削減は、自主性に任せる。 Article 6

6.途上国への資金支援の総額は年間1000億ドル以上 Para54

7.被害軽減のために、早期警報システム、遅れて生ずる減少(氷床の溶解など)、などを検討する組織を作る Article 8

8.技術開発(イノベーション)とその移転などについて長期ビジョンを作成 Article 10

9.排出量の55%以上を占める55ヶ国以上の国の批准あるいは合意で発効する。 Article 21


 この合意について、感想を述べれば、以下のようになります。

1)問題であった資金支援の金額は最低金額の保証だけをして、その他は、別の枠組みで決めることにして先送りをしたことで、なんとか合意できたのだろう。

2)1.5℃以下という数値が入ったのは、島嶼諸国や低地の多い途上国からの合意を得るため。しかし、これが実現可能な数値かと言われれば、技術的見地から言えば、ほとんど不可能に近い。しかし、それこそ、本Webサイトが言っている「人類共通の『正義』を達成するためのGoal」だと考えるべきなのだろう。

3)約束草案(INDC)を5年ごとに見直すということは、この枠組が2030年を超えて、2050年までも継続可能な枠組みにしたかったというCOP21の意図を感じさせるものだろう。そのかわり、2050年の具体的な目標は却ってぼんやりしたものになった。IPCCの結論を尊重しろという意図なのだろう。

4)解決のためにはイノベーションが必要不可欠ということも合意されているけれど、具体的には、その実現は非常に難しいだろう。イノベーションが破壊的にならざるをえないのは事実なので、多くの抵抗勢力が存在しているのが理由。

5)数値的な目標で言えば、2030年以降の削減目標が提示されなかった代わりに、今世紀後半には、実質ゼロ・エミッションが提示された。これは、後半という時期が何年を意味するのか、日本で閣議決定されている2050年に80%削減といった数値とどう違うのか、国内でのさらなる検討が求められると言える。

6)日本の国際的な貢献であるJCM(Joit Credit Mechanism)も合意文書の自主的取組に含まれると思われるので、排出量のダブルカウントが起きないことを保証する仕組みを作れば、削減量にカウントできる可能性が高くなった。まあ、それに依存することが推奨されることではないが。



 実は、しばらく前からメモを作っておりました。国際交渉というのは、こんなものだという記録としてご覧いただければ、と思います。

◆12月11日の夜に記述

 パリで開催されているCOP21は、予想通り、途上国と先進国の資金に関する合意ができていない国連の会議というものは、全員合意が原則という、もともとかなり苦しい条件で行われているので、当然とも言えるけれど、いつでも、「徹夜、さらに一日延長」といった体力勝負になる。結局、すべての交渉に関わる人のスタミナが切れて、まあ、これ以上は頑張れないというところに到達しないと、合意の形成が行われない。交渉を担当している各国代表は、恐らく、自分の寿命を縮めているのだと思う。

 今回の記事は、交渉の記録を新聞記事、Web記事などからフォローすることで、進展状況を記録しておくことが目的。ついでに、関連情報も含めることで、今後、日本国内の合意がどのように形成されそうか、そのヒントも含めてみたい。

 12月11日金曜日夕刊の情報:ファビウス仏外相が、「パリ協定」案の改訂版を公表。そのポイントは以下の通り。

前提条件:自主的排出削減目標
 「各国はそれぞれの国情に応じて自主的に作成」

夕刊によれば、合意改訂版のポイント

◎2020年以降の次期枠組みの名称は「パリ協定:The Paris Agreement」
◎産業革命前から気温上昇幅の目標を2度未満とする。1.5度未満に抑える努力目標も併記。
◎温暖化ガス排出をできる限り早く減少に転じさせる。
◎すべての国・地域は温暖化対策を自主的につくり、5年ごとに見直す。
◎2020年以降の途上国への資金支援は年間1000億ドルを下限に積み増す。


C先生:もともとすべての国が参加する枠組みを作ることがパリCOP21の最大の目的だったので、この全体的な枠組を変えることはできない、とまずは理解すべきだと思う。

A君:しかし、一方で、2℃未満というゴールへの到達は難しいのが現状ですね。

B君:そのために、すべての国・地域は自主的な温暖化対策を5年ごとに見直す、という規程ができる予定。

A君:この見直しは、各国にとって、結構大変な作業になる。日本国内での5年ごとの見直しによって、もっとも影響を受けるのが、どう考えても石炭発電でしょうね。

B君:石炭発電については、この見直し規程によって、かなり厳しくなるというニュアンスが、日経の記事でも見られるようになってきた。これは、今回のパリ協定の最大のポイントになる可能性が高い。

A君:これまで、「ゴール」と「目標」は違うと述べて来たのですが、やはり、姿勢を示す数値であるゴールのためにも、石炭発電は日本国内でも、見直しを進めることが必須という理解になるでしょう。少なくとも、現在で石炭発電新設への計画をもっている企業は、覚悟を決めた方が良いでしょうね。

B君:もう一つの大きな点は、1.5℃について記述に関する議論がでてきたこと。これは、すぐに有効になるといったものではないだろうけれど、2℃未満をゴールから数値目標に切り替えるときに有効に作用するという役割を持つ可能性がある。

A君:ということは、2030年以降の取組の加速には、この1.5℃未満という数値が効いてくるということになりますね。米国あたりは反対する可能性が強い。

B君:もう一つの大きなメッセージが、中国に対するもので、今回提出した約束草案は、GDP当たりの削減というもので、絶対的な数値を示したものになっていない。これを、先進国並に、削減数値の絶対値を示すことに移行するように促すということなのだろう。

A君:そもそも先進国、途上国という区別は、京都議定書のとき(1997年)に決められていて、附属書Tによって定められているのですが、中国、インド、ブラジルなどは当然対象外。さらにおかしいのは、韓国が対象外になっていること。附属書Tには、ベラルーシとかウクライナなども入っているのに、かなり妙なのです。

B君:しかも、1997年に決められたものが、いまだに改正されていない。

A君:附属書Tのチェコとかウクライナなどは、国と国とで排出権取引の対象になる国でもあって、第一約束期間であった2008〜2012年の間には、いくつかの国から日本は排出権を購入したので、彼らには大きな経済的メリットがあった。すなわち、これらの国の排出枠は、かなり緩いものが設定されていた。

B君:事実、韓国のINDCは、いわゆるBAU(Business As Usual、妙な用語だと思う)の2020年の予測排出量782.5MtCO2、2030年の予測排出量850.6MtCO2を示し、その2030年の排出量から37%削減という目標値を出している。

A君:全くの途上国と同じようなロジックで書いていることになりますね。BAUなど、いかようにでも書くことができるので。

B君:このような書き方を、過去の基準点を決めて、そこからの絶対的な削減数値を明確に示せというのが、今回の方針だということで、これも当たり前。

A君:もっとも問題なのが、途上国支援の資金の額。2020年1000億ドルとうのが、一つの相場になっていて、これにどのぐらい積み増すのか、というのが途上国からの要求になっています。

B君:すでに海面上昇が多少起き始めているのも事実なので、今後、2100年までに80cmといった上昇が起きると、東京だって江戸川区は極めて危険な状況になりかねない。途上国には、バングラデシュのように低地も多いので、防潮堤を作れということになると、かなりとんでもない金額になる。

A君:東日本大震災以後、東北では防潮堤が作られているけれど、本当に役に立つぐらいの津波が来るのは、恐らく300年後ぐらい。そのころには、今回作った防潮堤は劣化していてダメ。こんな無駄をするぐらいだったら、日本のゼロメートル地帯対策を考えるべきだったのだろうけれど、地域経済の復興という言葉で、土木工事が行われてしまった。実際、土木工事以外の地域復興を行うということは、現状の日本の「構造」では、なかなか難しいですね。

C先生:それでは、これら以外の未合意の事項について、若干の記述を行ってみよう。

【上記記述以外の未合意の事項
▲削減目標の達成状況を検証する仕組みを途上国にも適用するかどうか。

A君:現状の各国の目標を合計した削減量では、気温上昇を2℃未満に抑えるのは難しいので、途上国に対しても、排出の実体を正しく報告してもらう枠組みが必要不可欠なのですが、実は、途上国には統計データも充分ではないので、把握すること自体がかなり難しいのです。

B君:チェック・レビューと呼ばれるプロセス、あるいは、MRV(Measureable Reportable Verifiable)だったのだけれど、かつて中国などは大反対だった。

A君:今回、中国がどのような態度を取っているのか、何もニュースがないですが、この件については、国際的にある種の合意が取れているという状況らしいですね。

▲「パリ協定」の発効要件。

B君:パリ議定書ではなく、「パリ協定」とは言いながら、やはり、かなりの強制力はある。すなわち、自分で言った言葉には責任を持って実施せよ、ということだけれど、自己責任を基礎とした強制力を持っている。

A君:自己責任という意味では当然なので、いきなり発効させるという方法も無いとは言えないのですが、やはり、正式な参加表明を求めるとしたら、発効要件が必要なのでしょうね。少なくとも55ヶ国、排出量の合計が55%とか、70%に達した段階で発効させる、といった案があるようです。

C先生:米国と中国の態度がやはりかなり不確定要素がある。中国は、現政権がやると言えば、それで決まるけれど、米国は共和党の態度が問題。特に、大統領選挙の候補者が誰になるかによって、かなり影響を受けそうに思える。民主党の大統領になったとしても、議会の上院も下院は共和党の支配下なので、議会の承認が得られないという恐れも無いとは言えない。



12月12日の午前中に記述

C先生:さて、12月12日土曜日の朝になった。朝刊レベルでの情報ということになる。

A君:どうやら議長国のフランスが、各国の閣僚らと非公式の協議を活発化させているようです。やはり最大の未合意は、途上国への資金支援ですね。年間1000億ドルという現在の合意されつつある水準を、どのように上積みするか。さらには、それをどのような言葉で表現するか。

B君:やはり、資金問題は難航が予想されていたので、まあ、当然の進行状態。

A君:例によって、パリ時間で、12月12日の深夜、場合によっては、13日に突入したあたりで、皆さん疲れて合意するのでは。

B君:そうなると、強欲さがある国の代表がスタミナがあることになって、勝つのが当然の結末ということになる。

A君:いよいよ最終段階ですが、実は、今回のCOP21で本当に心配だったことは、産油国あたりが何を言い出すかだったのですが、余り情報がないですね。

B君:というのも、先日のパリのテロ事件は、ISとOPECが手を組んで、パリ協定の成立を阻む意図だった、などという陰謀説が英語では結構でているのだ。

A君:その根拠ですが、そもそもISの資金は、石油ですよね。現時点で、石油から年間500m$=5億ドルほどの収入を得ているとのこと。600億円相当ですか。

B君:日本でも陰謀説が好きな人が多くなったようだけれど、世界的に、そんな傾向が強まっている。

A君:当然のことながら、石油を直接燃焼する車は、21前半で消えるという予測になっています。これは温暖化対策なので、当然、OPECにとっては、とんでもない対応だということになりそうです。

B君:それ以外の途上国は、農業への補償金を求めている。干魃や豪雨による農業被害は、補償されるべきだという考え方だ。

A君:作物転換などによって、適応策を取るべきという考え方が先進国の合意事項。しかし、それには、それなりの農業技術をもっていることが必要不可欠なので、日本からの国際協力も、途上国における適応策の立案とその実施といった方向に切り替えることが必要なのかもしれないですね。

B君:といったところで、しばらくは次の発表まで、時間待ちに突入しよう。



ということで、本記事の最初に戻っていただければ、時間系列での記述になるということです。