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  ポスト京都議定書 12.11.2005
     COPMOP1終了

    



 モントリオールで行われていた京都議定書第一回締結国会議が終了した。予想通り、京都議定書の次の枠組み、すなわち、2013年以降の話は、ほとんど何も決まらなかった。

 03年の排出量統計をまとめておくと、
1位:米国 22.8%
2位:中国 16.4%
3位:EU 13.3%
4位:ロシア 6.3%
5位:日本  4.9%
6位:インド 4.3%
7位:カナダ 2.1%
8位:韓国  1.8%
9位:メキシコ 1.6%
10位:オーストラリア 1.4%
11位:インドネシア 1.3%
その他: 23.9%
 中国の増加が非常に目立ち始めているのが特徴か。


C先生:2013年以降の対応に関して、モントリオールで唯一決まったことは、と言えば、まあ今後も話し合おうということか。2012年までの第一約束期間については、マラケシュ合意がその通りに決まった。排出量取引も決まったし、不遵守規定なども決まったので、目標を達成できない場合には、3割増しで次の約束期間の削減目標に上積みが可能。http://www.env.go.jp/earth/ondanka/mechanism/gaiyo_m.pdf

A君:今回のモントリオール会議は、京都議定書の第1回締約国会合COPMOP1と、京都議定書の親条約である気候変動枠組み条約の第11回締約国会議COP11が同時開催という形だった。

B君:COP11の方では、米国を含むすべての国が温暖化対策を話し合う場を設ける「モントリオール行動計画」が採択された。

A君:2012年までの京都議定書関係だと、京都メカニズムとか、遵守規定とか、枠組みが強化されたことは評価すべきかも。

B君:しかし、2013年以降がまたまた米国抜きではしょうがない。GreenPeaceの国際版では、今回のモントリオールでの成果を比較的高く評価しているように読めるが。

C先生:依然として米国のかたくなな態度は不変。二酸化炭素排出削減を前提とする話し合いなら出席しないという感じ。

A君:中国、インドも、自国の方針に対する干渉を嫌うので。

B君:今回、小池環境大臣も出席して、これまでの日本の努力を宣伝した。ハイブリッド車、太陽電池、クールビズ、ウォームビス。そして、2013年以降に関しては、途上国の参加をかなり強く主張したようだ。

A君:モントリオールの会議ですべき主張はまさに次の2点だったと思う。

(1)米国・ロシアを含むすべての先進国は、削減目標の合意形成に向けて世界を牽引すべきこと。
(2)途上国を含めたすべての国は、今後、50年間程度のエネルギーポリシーを定め、削減目標の合意作成に参加すること。

A君:しかし、アメリカはご存知の通り。そして、ロシアも議場に混乱を巻き起こしたようだ。

B君:やはり大国主義か。

C先生:米国も、ブッシュ政権が終わらないとどうしようもないが、米国人の全員がブッシュ政権的だという訳ではない。ブッシュが再選された後で、何人かのアメリカ人に、ブッシュを支持している人々は、全米で50%しかいない、とかなり言い訳をされた。

A君:自分のライフスタイルを考え直す人々も増えている。プリウスがあれほど売れているのも、アメリカが変わる兆候かもしれない。

B君:今回、クリントン前大統領が会場に乗り込んだようだが、そのほかにも、「米国市長気候保護協定」なるものに、194市が参加している。

C先生:カナダの果たした役割も大きい。今の日本だと果たして役割を果たせただろうか。小泉さんは、環境にはほとんど関心が無いようなのだ。カナダのマーティン首相は米国を刺激する発言を繰り返していたようだ。

B君:カナダは自国の温暖化ガス排出量削減の状況が極めて厳しいのに、まあ、今回の推進役を買って出た。やはり、カナダとアメリカの間の価値観の違いを見せたかったのだろうか。

C先生:カナダは、米国の一部のように見られるのを嫌っていて、アングロサクソン的競争主義とは違うことを主張したかったのだろう。モントリオールは、フランス語圏だし。

A君:結局のところ、各国の政治的主張が行われたのが、今回のCOPMOP1。

B君:来年以降、実質的な議論が始まる前に、政治的なジャブを交換したのが、今回の会議の意義だろう。

C先生:まあ、そんなところだ。温暖化防止も完全に政治の世界になってしまった。この二酸化炭素排出を続けて行くと、2100年ぐらいにどんな状況になるのか、それが以前よりも多少見えるようになったのに、まだ地球上の人類は決断ができない。

A君:温暖化に対する疑念、すなわち、温暖化は起きないとかいう話は、徐々に消えつつあるのですが、逆に、石油の枯渇、天然ガスの枯渇が起きるので、そのうち、自然に化石燃料依存は減るという見通しを持つことも可能になった。

B君:21世紀後半に石炭に依存してしまっては駄目なのだが、確かに、石油・天然ガスの枯渇によって、温暖化も同時に解決するのでは、という思いも出ている。

C先生:それに大きいのは、原油価格が思ったよりもはるかに高い価格まで上昇したことだ。12月11日現在、またまた$60のレベルになっている。この状態が進めば、明らかに石油の消費は減るから、途上国の経済発展もいささか緩やかになる。

B君:タイあたりでも、脱石油を目指して、バイオマスへの転換を図るようだ。

C先生:ただ、原油価格が消費者価格にそのまま反映しないのが現状でもある。例えば、ガソリン価格。

A君:ガソリン・軽油の価格ということだと、ドイツのGTZ(Gesellshaft fur Techinische Zusammenarbeit、技術協力公社)のデータに面白いものがあって、2年に1回程度の頻度で、各国のガソリン価格を調査しているのです。
http://www.gtz.de/de/dokumente/en_International_Fuel_Prices_2005.pdf

A君:クイズです。世界でもっともガソリン価格が高い国はどこでしょう。

B君:ヨーロッパは概して高い。ノルウェーかアイスランドではないか。

A君:大当たり。アイスランドが1位で、164セント/L、2位がオランダ、3位がノルウェー。

C先生:アイスランドの物価は実に高い。レンタカーの値段が信じられないぐらい高かった。ホテル、レストラン、ガソリンも勿論だが。

A君:それでは、もう一つ、世界でもっともガソリン価格の安い国はどこでしょう。

B君:それは産油国だろう。インドネシアも安かったが、最近はどうだろう。

A君:それもまあまあ正解なのですが、インドネシアは、27セント/L。それにしても異常に安い国があるのです。それは、トルクメニスタン。なんと、2セント/L。

B君:原油価格をセント/Lに直すとどうなる。

A君:2004年の平均的な原油価格が$43/バレル。1バレルは159Lなので、27セント/Lとなりますが、2005年のような価格になれば、かなり違いますね。例えば、$70/Lになれば、47セント/L。

B君:精製に費用がかかるのだから、ガソリン価格が原油価格より安いということはありえない。大体、米国の価格が標準的なコストになるのではないか。

A君:そのレポートにもそう書いてありますね。54セント/Lが2004年の価格で、ガソリン税が無い場合の標準的な価格だとしているようです。

B君:となると、原油価格よりも安い国では、税金を使って国が価格を大幅に補助をしている。米国よりもガソリン価格の安い国は、やはりなんらかの補助をしている。

C先生:一応、どんな国がガソリン価格に補助金を出しているかを判定するために、ガソリン価格のリストを作っておこう。

ガソリンの安い国々のリスト 2004年 GTZの報告書による

トルクメニスタン 2セント/L
イラク      3
ベネズエラ    4
イラン      9
リビア      9
ミアンマー   12
イエーメン   19
カタール    21
クウェート   24
サウジアラビア 24
バーレイン   27
インドネシア  27
エジプト    28
UAE     28
オマーン    31
アルジェリア  32
ブルネイ    32
トリニダード  35
ウズベキスタン 35
マレイシア   37
アンゴラ    39
ナイジェリア  39
アゼルバイジャン41
シリア     46
スーダン    47
中国      48
キルギスタン  48
ベトナム    48
ガーナ     49
スリナム    48
プエルトリコ  51
ジブチ     52
カザフスタン  52
フィリピン   52
アフガニスタン 53
ボリビア    54
エクアドル   54
ラオス     54
パナマ     54
タイ      54
米国      54

A君:これらの国々がガソリン価格を上げないと、省エネには繋がらない。中国でも安すぎる。インドがこれらの国に含まれていないのは偉いかもしれないですが。

C先生:インドなどのデータは、是非、もともとのGTZの報告書を参照していただきたい。

A君:それにしても、原油価格の変動が起きると、環境税程度の変化はぶっとびますね。

B君:日本の場合には、もともとガソリン税が高い国なので、今回の原油価格の変動をそれほど大きく受けた訳ではない。補助金を出している国では、恐らく税収を増やさないと不可能な国もあるだろう。

C先生:日本という国だと、ガソリン税で年間3兆円ぐらいの上がりがあって、軽油取引税でも1.5兆円ぐらい。環境税が3000億円ぐらいだと、まあ、余り効かない。

A君:ということは、原油価格が大きく変動することの方が、温暖化対策への影響が大きいということになるのでしょうかね。

B君:多分そうだろう。原油価格は、大きく変動を繰り返しながら、徐々に上昇するだろう。2050年までに何回ピークが来るか、これが実際のところ、温暖化ガス削減への動きを加速するのではないか。

A君:概念図を出してみましょう。

C先生:温暖化問題の最終的な解決は、
(1)再生可能エネルギーの活用の拡大、
(2)エネルギー効率の最大限の向上、そして、
(3)もしも市民が受容すれば原子力。さらに
(4)最後の手段として二酸化炭素の分離・隔離。

A君:目標をどのように定めるかで、相当話が違ってくる。国立環境研が中心となって作業した半減計画では、2100年で温度上昇を2℃、大気中の濃度475ppmということになっている。

B君:2℃なのか、2.5℃なのか。それとも3.0強℃なのか。この0.5〜1.0℃の差がどのぐらいの意味があるか、それは不確実性が非常に高い。

A君:図を出してみますか。国立環境研には無断で。BaUというものは、Business as Usual という意味ですが、世界人口が制御されれば、こんな状態にはならない。まあ、650ppmシナリオは、なんとか確保可能だと思うのですが。


              国立環境研によるシナリオ

B君:化石燃料の枯渇傾向といっても、石油と天然ガスだけで、石炭はまだまだある。となると、石炭依存型の社会を作ってしまったら、BaU的な変化をする可能性が高い。

C先生:石炭を使用する場合には、二酸化炭素の分離・隔離を義務化するといった枠組みにならざるを得ないのかどうか。これも不確実だ。

A君:いずれにしても、各国は、
(1)都市交通シナリオをどのように考えるのか。燃料電池車になるとは思えないが。
(2)自国におけるエネルギー使用量の将来予測と、需給計画。
(3)二酸化炭素排出量削減の方策。

といったものについて具体的な検討を行い、公表する必要がある。

B君:しかし、原油価格などのエネルギー価格の動向が読めないと、作れないのではないか。

A君:何種類かの価格変動シナリオを作って、それぞれに対して回答を出すことが求められるのでは。

C先生:いずれにしても、日本という国は、当面技術で生きる以外に方法が無さそう。となると、エネルギー効率を極限まで高める技術開発が進むような政策、税制、インセンティブ、などが導入されていくことが当面の解だろう。