「行動選択に対するコンピュータを用いた環境情報の影響評価」
(ポスターセッション)
※ここに記載した内容は、本調査にて得られた結果のうち、2000年9月19日(火)に千葉県浦安市にて実施された環境科学会のポスターセッションにて発表したものです。
1.本調査の目的と概要
(目的)
「提供する情報の種類によって、受け手側の意見がどのように変化するか」 を調査する
(概要)
・ 期間:2000年7月21日(金)〜8月6日(日)
・ 場所:「21世紀夢の技術展」 東京ビッグサイト(東京・有明)
・ 調査の対象:入場者数112万人 うち東大生産技術研究所のブースの来訪者(7万6千人)に協力を依頼
・ 総回答数5,117件、有効回答数3,690件(有効回答率72%)
・ 調査方法:コンピュータを用いた自動集計方式で、マウスのみを利用(キャンセル可)
・ 調査形式:「飛行機と新幹線のどちらを選択するか」といったトレードオフテーマの比較を行い、10段階で回答する形式
・ テーマ選択:全8テーマの中から回答者が自由に選択
・ その他:各シートごとに音声による内容の説明有り
調査時の様子
★なお回答者の属性およびテーマ一覧につきましては、集計概要を御覧下さい。
2.コンピュータを用いた調査手法の特徴
コンピュータを用いた調査手法には、以下のような利点があります。
(1)1つの画面上に1つの情報のみを提示でき、回答中に前後の情報が参照されないようにすることができる
(2)提示する情報の種類や分量、順序を任意に設定できる
(3)音声や画像を用いることで、情報を多元的に提供できる
(4)従来のアンケートでは、把握することが困難であった回答所要時間等の情報を把握できる
(例)「飛行機 vs. 新幹線」での画面の流れ(画面5枚)
★各画面をクリックすると、拡大して御覧いただけます。
(画面1)
→(画面2)
→(画面3)
→(画面4)
→(画面5)
3.全8テーマを通じて得られた結果
表1・表2に、前画面の回答との差を示します。
これは、「新たな情報を得ることにより、意見に変化が生じたかどうか」
(例えば、「画面2」で新たな情報を得た後に回答した値が、「画面1」での回答値と変化しているかどうか)を調査したものです
なお表中の数字は、回答値に変化のあった人の割合(%)を表しています。
表1.性別および職業と回答の変化
| 全体 | 男性 | 女性 | 学生 | 学生以外 | ||||
| 画面1→2 | 56 | 53 | 63 | 63 | 54 | |||
| 画面2→3 | 51 | 49 | 57 | 59 | 49 | |||
| 画面3→4 | 58 | 55 | 65 | 65 | 56 |
(学生以外:雇用者・自営業・主婦・その他)
今回の調査では、同じ情報を提供しても、
(1)「女性」は「男性」よりも意見を変えやすい
(2)「学生」は「学生以外」に比べて意見を変えやすい
という結果になりました。
表2.環境意識と回答の変化
| 全体 | かなり意識している | まあ意識している意識 | あまり意識 しない |
意識しない | |||
| 画面1→2 | 56 | 51 | 58 | 57 | 40 | ||
| 画面2→3 | 51 | 49 | 53 | 52 | 40 | ||
| 画面3→4 | 58 | 54 | 59 | 61 | 52 |
今回の調査では、
(日常生活のなかで)環境を「かなり意識している」グループと「意識していない」グループは、意見を変えにくい
という結果になりました。
4.トピックス(飛行機 vs.新幹線)
「飛行機 vs. 新幹線」では、飛行機か新幹線を利用して、東京(六本木)から広島(原爆ドーム)へ移動することを想定して回答していただきました。
回答していただいた方の属性を以下に示します。
表3.回答者の属性(飛行機 vs. 新幹線)
| 総回答数 | 男性 | 女性 | かなり意識している | まあ意識している | あまり意識しない | 意識しない | 10代 | 20代 | 30代 | 40代 | 50代 | 60代 | その他 | 学生 | 学生以外 | ||||||
| 回答数(人) | 755 | 608 | 147 | 146 | 447 | 144 | 18 | 197 | 187 | 148 | 106 | 70 | 31 | 16 | 280 | 475 | |||||
| 割合(%) | - | 81 | 19 | 19 | 58 | 20 | 3 | 26 | 25 | 20 | 14 | 9 | 4 | 2 | 37 | 63 |
この「飛行機 vs.新幹線」では、
(1)「環境情報の種類」による回答者の反応
(2)「情報の順序」による回答者の反応
を比較するため、以下のような分岐を設定しました。
よってこのテーマを選択した方は、上段・中段・下段の情報フローのどれか1つだけを回答していただくことになります。

|
CO2排出量(g/人) |
:飛行機・新幹線それぞれが排出する、1人あたりのCO2排出量 |
|
CO2総排出量(g) |
:飛行機1機・新幹線1編成が排出する、CO2排出量 |
|
SOx,NOx排出量(g/人) |
:飛行機・新幹線それぞれが排出する、1人あたりのSOx,NOx排出量 |
|
所要時間・コスト |
:飛行機・新幹線それぞれの、所要時間とコスト |
図中の同じ色は、同じ内容の情報であることを示しています。また分岐点の分数は、回答者のうちのその割合が回答したことを示しています。
4-1.情報の種類による影響(環境情報と所要時間・コスト情報)
環境情報と所要時間・コスト情報という異なる情報を提供した際の、回答者の反応を比較した結果を、表4に示します。
これは、「飛行機で移動する」もしくは「新幹線で移動する」と回答した人の割合が、画面1から画面2になった際にどのように変化したかを示しています。
表4.情報の種類による影響(画面1と画面2での変化の割合)
| 画面2での情報 | 飛行機で移動する | 新幹線で移動する | ||
| 環境情報(CO2排出量:g/人) | -18 | +16 | ||
| 所要時間・コスト情報 | +1 | -3 |
表中の数字は割合(%):「+」は割合が増加したことを、「-」は減少したことを示す
画面2にて環境情報(CO2排出量:g/人)を出した場合には、飛行機で移動すると回答した人の割合が減少し、新幹線で移動すると回答した人の割合が増加しているのに対し、所要時間・コスト情報を出した場合には、ともにほぼ変化していませんでした。これから本ケースの場合、「環境情報」は「所要時間・コスト情報」に比較して選択に影響を与えやすいという結果が得られました。
4-2.環境情報の種類による影響1(CO2総排出量の情報とSOx,NOx排出量の情報)
CO2総排出量(g)とSOx,NOx排出量(g/人)という、異なる環境情報に対する反応の違いを比較した結果を表5に示します。
(画面2の回答値と画面3の回答値との差を調査)
表5.環境情報の種類による影響
| 画面3での情報 | 飛行機側へ変化 | 不変 | 新幹線側へ変化 | |||
| CO2総排出量(g) | 18 | 60 | 22 | |||
| SOx,NOx排出量(g/人) | 11 | 55 | 34 |
表中の数字は、割合(%)
画面3にてCO2総排出量(g)の情報を出した場合には、飛行機側・新幹線側へ変化した割合ともに大きな差はありませんが、SOx,NOx排出量(g/人)の情報を出した場合には、新幹線側へ変化した人の割合の方が多いという結果でした。
これから、環境情報の種類により意見が変化する割合に差が見られる可能性があることが示唆されました。
4-3.環境情報の種類による影響2(CO2総排出量の情報とSOx,NOx排出量の情報)
上記のCO2総排出量(g)とSOx,NOx排出量(g/人)という異なる環境情報に対する反応を、性別で比較した結果を表6-1,6-2に示します。
(画面2の回答値と画面3の回答値との差を調査)
表6-1.環境情報の種類による影響と性別との関係(CO2総排出量:g)
| 飛行機側へ変化 | 不変 | 新幹線側へ変化 | ||||
| 男性 | 19 | 61 | 20 | |||
| 女性 | 17 | 53 | 30 |
表6-2.環境情報の種類による影響と性別との関係(SOx,NOx排出量:g/人)
| 飛行機側へ変化 | 不変 | 新幹線側へ変化 | ||||
| 男性 | 13 | 57 | 30 | |||
| 女性 | 5 | 49 | 46 |
表6-1,6-2ともに、表中の数字は割合(%)
男性と女性を比較してみると、画面3にてCO2総排出量(g)の情報を出した場合(表6-1)、SOx,NOx排出量(g/人)の情報を出した場合(表6-2)ともに、女性の方が新幹線側へ変化した人の割合の方が多いという結果でした。
これから本ケースでは、
女性の方が環境情報の示唆する方向に意見を変える割合が高い
という傾向がみられました。
4-4.環境意識と回答の変化
CO2排出量(g/人)と所要時間・コスト情報という異なる情報に対する反応を、環境意識の程度で比較した結果を表7-1,7-2に示します。
(画面1の回答値と画面2の回答値との差を調査)
表7-1.環境意識と回答の変化(CO2排出量:g/人)
| 飛行機側へ変化 | 不変 | 新幹線側へ変化 | ||||
| かなり意識している | 14 | 58 | 28 | |||
| 「かなり意識している」以外 | 7 | 44 | 49 |
表7-2.環境意識と回答の変化(所要時間・コスト情報)
| 飛行機側へ変化 | 不変 | 新幹線側へ変化 | ||||
| かなり意識している | 16 | 65 | 19 | |||
| 「かなり意識している」以外 | 36 | 48 | 16 |
表7-1,7-2ともに、表中の数字は割合(%)
(「かなり意識している」以外:「まあ意識している」「あまり意識しない」「意識しない」)
「かなり意識している」グループと「かなり意識している」以外のグループを比較してみると、後者は画面2にてCO2排出量(g/人)の情報を出した場合(表7-1)には新幹線側へ、所要時間・コスト情報を出した場合(表7-2)には飛行機側へ変化した人の割合の方が多いという結果でした。
これから本ケースでは、
「かなり意識している」以外のグループは、情報の示唆する方向に意見を変える割合が高い
という結果が得られました。
5.調査の結果 および 課題点
結果
本調査を実施し、以下に示す結果が得られました。
・同じ環境情報であっても、「性別」、「職業」、「回答者の環境に対する意識」等により反応に差がある。
・環境情報が、所要時間やコストの情報に比較して選択により大きな影響を与える場合もある。
・環境情報であっても、その種類によって反応に差がありうる。
課題点
・調査場所の状況により、得られたデータが「広く一般市民の各属性を正しく代表しているか」の判断がつきにくい。
6.今後の研究方向
・上記の結果および課題点をふまえて、今後は以下に示す内容を実施することを考えています。
(1)反応の違いが情報の種類や回答者の属性など、何に起因するのかを明確にする。
(2)上記(1)を踏まえた上で、回答者の属性ごとに提供する情報を変化させ、その反応の違いを調査する。
(3)より多くの回答を得るために「インターネット上でのアンケート」といった方法を検討し、広く一般市民の各属性ごとの調査を実施する。
(4)今回は実施しなかった「画像(動画)」を用いて情報を多角的に提供し、その影響を調査する。
![]()
Home
What's NEW へ戻る