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  CREST研究領域キックオフ   11.03.2008
     
二酸化炭素発生抑制技術研究領域のご紹介



 平成20年度からの研究課題である「二酸化炭素排出抑制に資する革新的技術の創出」と題する研究領域が10月1日からスタートしている。
http://www.jst.go.jp/pr/info/info551/shiryo2-c04.html

 11月1日土曜日、この領域のキックオフ・ミーティングが行われた。この領域は環境研究の枠組みで行われている。

 実際に行われる研究は、技術開発である。しかし、環境研究としての研究が、個々の技術開発なのか。これはしばしば議論されるが、答えは、いまだに共有されていないような気がする。

 この大きな課題は、今後の問題として、まずは、ここの研究を若干ご紹介したい。ついでに、研究総括としての意見をご紹介したい。


注意事項1: ここで記述されている発表内容の要約・コメントなどは、このCRESTチームの研究総括の個人的な理解に基づく記述であり、しかも、かなり平易に記述することに注力しているため、不適切な可能性がある。その記述に基づく誤りは、すべて研究総括の責に帰すべきものである。

注意事項2: 記述から研究の重要なポイントとなりそうなキーワードを出すことは避け、またコメントへの回答は除去した。そのために、分かりにくくなっていることがある可能性があるが、ご了解いただきたい。



研究テーマ1
「熱帯泥炭の保全と造林による木質バイオマス生産」

研究代表者: 小島克己
(東京大学アジア生物資源環境研究センター)


 東南アジアには、泥炭地が多い。すなわち、地中の炭素の蓄積量が非常に多い。泥炭層の厚さは、場所にもよるが、10mにも及ぶからである。このような泥炭が保全されている理由は、そこに水が存在しているからである。

 ところが、オイルパームなどを生産するプランテーションに転換することが大規模に行われつつある。そのためには、脱水することが必要である。通常の農地のように乾燥した土地でないかぎり、オイルパームは成長しないからである。

 乾燥した瞬間に、泥炭が好気性細菌によって分解を始める。すなわち、CO2の放出が始まってしまう。

 水につかった状態では、嫌気性細菌が活動している訳だから、メタンを発生する。しかし、メタンは水田のように大量に発生する訳ではない。

 すなわち、できうるならば、湛水状態(水をたたえた状態)を保つことが、CO2発生量を抑える面から重要である。

 しかし、途上国の自然保護はそれほど単純な話ではない。なぜならば、その地の経済発展との両立が重要だからである。

 この研究が対象としているサイトは、タイの南部にある。もうひとつの問題点は、オイルパームの耕作放棄地があること。これを再び、湛水状態に戻すことが本質的対策である。ただし、植林で森林を戻すことも並行して行う必要がある。

 しかし、湛水状態だと、植林をしても小さな木は、溺れて枯死をする可能性が高い。なぜならば、植林に使うような小さな木にとって、全体が水没してしまうことは、異常事態だからである。

 メラルーカと呼ばれる泥炭湿地に適応した種を選択。植林前にも、湛水状態に置くことによって、枯死率を下げる工夫を行うことによって、泥炭湿地の生態系の復活をめざす。
 そして、メラルーカの有効活用方法も提案して、地場産業の活性化を目指す。

 もしも、植林によるCO2吸収がCDMの対象になるとしたら、そもそもどのぐらいのCO2を吸収するのかを決める、評価法などが課題となるが、そのためには、炭素収支を詳細に解明しておく必要がある。

http://forest.anesc.u-tokyo.ac.jp/


コメント:メタンの発生量の数値の整合性が悪い。濡れた形での林業がどのぐらい確立できるのか。
コメント:バイオマスの有効利用とは、何を考えているのか。
コメント:湛水化によって、土地からの二酸化炭素の排出量が正確に評価することが難しい。他の研究のレビューを含めて、評価が必要。
コメント:データの蓄積はCOPでも重要性が言われている。泥炭からのCO2放出でちょっと行われているが、メタンの放出はまだまだ。国際的なネットワークでデータの精度を高め必要性あり。
コメント:500万ha全部できたら、CO2排出権だけで1兆円になるかもしれない。これだけでもそれだけの価値がある。この研究の構成を見ていて、LCAを全員でやるということになっている。タイの研究者と意見の交換をしているが、今後、タイの状況はどんどんと変わるかもしれない。それをどこまでやるか。むしろ、1兆円のところで攻めるべきか。
コメント:経済などのモデルは、今後誰か別の研究支援を求めるのか。
コメント:今後、森林保全問題はどうなるか。

本HPのコメント一般的には、:余り重視されていない研究テーマのようだが極めて重要。アマゾンの森林の保護が主張されるが、これを米国が主張したらやはり妙なことである。新大陸発見以前、ミシシッピー川は、やはり森林に覆われていたはずである。経済発展を目指す人為的な行為、すなわち、農地への転換によって、森林は失われた。「同じことをアマゾン流域で行うことはなぜ駄目なのか」。ミシシッピー流域での森林喪失が起きたのは、1620年以降におきている。それからたったの400年しか経過していない。
 アマゾン流域を開発しようとする人々の疑問に、人類視点をもって答えることは容易なことではない。



研究テーマ2
「オイル産出緑藻類Botryococcus高アルカリ株の高アルカリ株の高度利用技術」

研究代表者: 渡邉 信
(筑波大学生命環境科学研究科)


 藻類には、さまざまなものが存在する。油を産出する藻類もある。というと特殊なものと思われるかもしれないが、大豆、ベニハナ、アブラナなど、植物には油を産出するものは多い。

 もしも、の話であるが、米国の自動車燃料をすべてをバイオ燃料に切り替えるとしたら、そして、トウモロコシからのエタノールに全部転換するとしたら、どのぐらいの土地が必要なのか。現在の米国の農地を9倍に増やさなければならない。あり得ない話である。

 これはまだまだ、もしも、の話であるが、藻類が産出するオイルが理想的にバイオディーゼル燃料になるとしたら、これはかなり有望で、現存する農地の1〜3%を使えば良い。すなわち、生産性が高いのが特徴。

 しかし、もしも、はなかなか厳しい。藻類を育成しようとすると、他の藻類が混じってくる。ある程度、増殖すると、自分自身で光を遮ることになって、思ったほど増殖しない。自動車用に精製するのにコストがかかる。したがって、経済性の評価ができない。

 こんなことになっていて、現状、想定されるコストは155円/Lであって、もしも経済的に実現できるとしたら、20円/Lを目指す必要がある。

 今回取り扱う藻類は、Botryococcusであるが、その最大の特徴は、pH10〜11という高アルカリ条件で増殖することである。培養条件を検討し、最適増殖条件などを見つける必要がある。

 生物学グループは、遺伝子導入したり、突然変異種をみつけることができれば、油を選択的に生産するような藻類を見つけ出すことができるかもしれない。この可能性を検討する。

 遺伝子導入と言うと、もしも環境に流出したら、何か妙なことが起きないとも限らない。しかし、この藻類は高アルカリという特殊な環境で増殖するので、自然中での増殖・生息はかなり限られると想定される。

 突然変異株を取る方法論も開発中である。光合成能を測定することも必要。

 化学グループは、油類をいかに改質し、いかに利用できる形にすることが可能かを検討する。連続培養抽出装置をすでにデザインしたので、その改善を目指したい。

 連続抽出装置の対象物質炭化水素は、ケトン系、エポキシド系、トリテルペノイド系、などと種類が多い。また、他の糖類・炭水化物も作る。このような副製品は本来邪魔なのだが、それをいかに除去し、場合によっては有効活用できるかどうかも化学グループの課題。

 工学グループは、最適な照明法の確立、大規模な高アルカリ液の制御法、などを検討し、生産性の限界がどこかを検討する。結果的に、コスト限界が分かることになる。

 種の数が増えると光合成によるトータルな生産性が上がる。しかし、種の数が増えると、それは邪魔が増えるということでもある。多様な生物を分離可能な形で別々に育てることが必要。

 最大の問題は、ビーカー規模から大規模生産システムへの拡張方法かもしれない。

http://www.biol.tsukuba.ac.jp/~makoto/


コメント:運輸セクターは1/4のCO2排出しているので、この燃料に期待している。液体燃料は絶対的に必要。全体としては電気自動車を目指している。燃料として使うには、できるだけ使いやすいもの。燃料などというものは、価格競争そのものである。売れる売れないは、原油価格が決める。高く売れるものを併産することによって、小規模生産。
コメント:C34ではやはり分子量が大きすぎる。エポキシドができるのであれば、それに興味があった。ある種の反応性に富む。エポキシが専門。ポリエチレンをエポキシ化している。機能性のケミカルに持って行けるか。
コメント:海洋も藻類が有望なのか、知りたい。
コメント:ボトリオコッカスは、成長速度が速いことに着目されているが、栄養物をどのように与えるか、といった問題がある。
コメント:反応器と抽出器がどんな状態になるのか。

HPのコメント:藻類は一つの可能性である。海洋を利用する藻類が、もしも有効なバイオマス源になるのであれば、日本という国のバイオマスの限界を考えると、こんなにうれしいことはない。しかし、環境汚染という観点からは、海洋の利用は難しいかもしれない。それに、漁業権を含めて権利関係が難しい国なので、それもなんとかしないと。
 ところで、今回の研究対象であるであるボトリオコッカスだが、石垣島のダムでこの藻類が優先して発生しているようで、やはり将来何が起きるかを見極めないと、環境影響が若干心配。



研究テーマ:
「触媒技術を活用する木質系バイオマス間接液化」 

研究代表者: 冨重圭一
(筑波大学 大学院数理物質科学研究科)


 バイオマスを、熱化学プロセスによって合成ガス(H2,CO、CH4)に変換する方法で有効利用を目指す。バイオマス変換は、熱化学的変換と、バイオプロセスの二種類がある。熱化学的な変換は触媒技術である。バイオプロセスも考えようによっては、酵素という一種の触媒を使う触媒技術である。酵素はもともとの材料が何かによって、特異性が高い。すなわち、ある材料にとっては、ある酵素しか有効ではないということが多いが、熱化学変換は、原料がなんであっても、使えるプロセスである。

 いろいろなバイオマスに対して、例えば木質、ジュート、稲わら、バガスと変わっても、どのセルロース分は650°よりもやや低い温度で分解する。

 熱分解プロセスの大きな問題がタールとチャーである。タールがガスタービンやエンジンのトラブルになりやすい。杉のタール、モルトかすからのタールを分析してみると、窒素分まで入ってくることが分かる。

 ガス化を今回取り扱うが、その合成ガスは、FT、メタノール、DMEなどを合成用原料して使うのが普通である。空気による部分燃焼、部分酸化で、ガスを作ることも可能だが、そうなると、大量の窒素を含んだガスになる。この分離プロセスのエネルギー消費がバカにならない。そこで、水蒸気を使って分解を行うと、分解時には、外からのエネルギーを投入する必要になって、この段階では損をするが、生成物に窒素を含まないガスが得られるので、分離面でメリットがある。

 方法だが、触媒を使ってガス化を行う。触媒としては、Rh系を使ってきた。

 杉のガス化だと、触媒を使わないとタール分が半分以上になる。商業用のNiを使った触媒を使うと、タールは減るが、コークがかなり多い。

 水蒸気でガス化するという研究を行う際には、予備的に、タールを分解するのは、複合系触媒が有効であることが分かっており、すでにまずまずの性能を有することを示してきた。

 従来の部分酸化技術では、実用機は、大型の反応容器を使ったものになる。複雑な反応で、ガス組成も様々。そこでガスタービン/ガスエンジンを使った発電用に使うことになる。

 水蒸気改質では、スチームの量は少ない方が良い。高効率であると同時に、化学原料に使うことが可能になる。

 触媒の自己修復過程も検討する。120分程度で活性の劣化が起きる。主な原因は活性元素の凝集ではないかと思われる。

 オクタン価が低い炭化水素が得られるので、切って、異性化をするしかない。それにはFT触媒を開発している。

 メタノール合成=現在の商用触媒は、CO転化率は、20%程度のもの。共存アルコールの効果によって、エステルができて、それが分解してメタノール合成が可能。ただし、現時点では活性が十分ではない。

 プロセスの優位性の評価だが、新日鉄エンジニアリングに、排出削減効果などの検討を依頼している。

 現在のスケールを×50、×50と二段階ぐらいの拡大をすれば、最終的に実用可能かと思っている。

http://www.ims.tsukuba.ac.jp/~kunimori_lab/index.html


コメント:タールの分解をどこまでできるか。実用的な観点で何をターゲットにしているのか。
コメント:ガスクリーニングのプロセスを省略できれば、それが最善。ちょっとラボの段階では極微量分析になって難しい。立方mあたりで、何mg程度なのか。
コメント:アルコールを加えても平衡はずれない。
コメント:チャーのガス化はワンランク難易度が高い問題。
コメント:ガスクリーニングのプロセスが重要。水洗いだけでは、硫化水素は落ちない。そのままだと数100ppm、ちょっとやって50ppm、亜鉛などを使うと数ppm。プロセス設計としていくつかのオプションを考えたい。

本HPのコメント:木質バイオマスの有効利用は、将来技術として非常に重要であるが、セルロースからのエタノール発酵技術が勝つのか、それとも、セルロースの熱化学的プロセスが勝つのか、極めて興味深い。個人的には、先進国では熱化学が勝つような気がするが。途上国では、たとえ効率が若干低くても、簡単なエタノール発酵プロセスが開発されれば、それが可能性が高いだろう。



研究テーマ4:
「高効率熱電変換材料・システムの開発」

研究代表者:河本邦仁
(名古屋大学 大学院工学系研究科)

 熱の利用効率をみると、転換プロセスが半分ぐらいは有効に使われるとすると、1/3は使っているが、2/3は逃がしているとしか言えない。

 逃がしている熱を国産の一次供給エネルギーだとみなす。これを有効活用すると、一時供給エネルギーの削減になって、二酸化炭素排出抑制。

 ここでは、排熱は電気に変えることを集中的に考える。すなわち、熱電変換を考える。

 これまでの熱電変換素子は重元素を組み合わせて作った半導体。Sb−Te、Bi−Teなどの熱電変換素子は、適用範囲が狭い。Teは資源的に難しい。Ptの40%しかない。毒性の強いものが多い。こんなものは使えない。

 当研究室では、酸化物系の熱電材料を提案してきた。SrTiO3。酸化物の中では、ZT=0.37〜0.39@1000Kとトップ性能。熱伝導率だけを下げたい。SrO+SrTiO3を作って、内部界面でのフォノンの散乱を狙った。しかし、SrTiO3の電子構造を変えてしまった。ZT低下。

 そこで、これまでSrTiO3/SrTiO3:Nbを作った。超高性能ではあったが、薄膜である。

 実用化にはバルクの材料がどうしても必要。それにはナノ化をする。単にナノ化をするだけでもZTは上がるが、それでは、電子伝導率を下げる。界面をなんとかすれば、ZT>1になるだろう。ナノ構造による、界面の構造。

 ナノコンポジット化をも考える。太陽の光と熱を同時変換するようなシステムを開発してみたい。

材料創製グループ
 良い熱電変換材料=Phone−Glass,Electron crystal。モジュールの開発も担当。

熱伝導低下グループ
 ナノ空隙ゲスト元素。熱振動rattlingが起きて、格子熱伝導を下げることが知られている。

熱電材料利用法検討グループ
 2流体を用いた熱電発電システムの設計

http://www.apchem.nagoya-u.ac.jp/BS-6/seigyo6/koumotolab.html


コメント:熱の2/3はロスをしているというが、エクセルギーがゼロになれば意味がない。最終的にどの温度で使われなくなっているか、これが大きな研究課題である。きちんと調査してほしい。温度差と熱量の問題をもっと精査して欲しい。最後の具体例があったが、アプリケーション分野をもっと詰めてもしい。
 派生効果だが、熱伝導度を下げることは他の熱機関にとっても他のメリットがある。
コメント:スチームが使えるようなプラントでは、その方が一般的に有利。熱電の適用先は限定的なのではないか。定置型なら、使えるところでは使える。蒸気を発生させることすらできないようなものへの適用を考えるべきだろう。
コメント:現時点であのようなシステムを提案しても、難しい。低温のスチームタービンはすでにある。黒液ボイラーの置換を考えるのは難しい。
コメント:移動体からの排熱だが、自動車だと、現状のプリウスでも熱は不足している。どうやって温度差を作るかが問題。むしろペルチエの特徴で冷房に使いたい。排熱回収は検討しての話だが、余りペイしない。ZT=3でもちょっと足らない。しかし、ヒートポンプという意味では、ひとつのキー技術として取り上げられている。効率は冷媒を使うヒートポンプの方が良いが、シートクーラーにはペルチエを使っている。
 ナノテクでいろいろとあるが、人類のためにの視点だと、なかなかエネルギーのアプリケーションが見えてこない。1次元のナノだってドラッグデリバリーシステムならすぐに使える。トップダウンで使える。
 エネルギー問題には、バルク材料が必要。自己組織化的なプロセスで作ることができるのであれば、熱電以外の応用範囲も非常に大きい。

本HPのコメント:この研究は、最初から実用的な視点を強くしすぎると、却って難しい話になりそうな気がする。廃熱の利用は、もしも大規模にあれば、可能だが、小規模廃熱は、やはり無視されるからである。将来出てくるであろう小規模廃熱のための技術開発を前提とし、どんな条件があれば成立するか、こんな検討を十分に行って、技術パッケージの一つの候補としての立場を追求するのが良いのかもしれない。



研究テーマ5
「低炭素社会のためのs−ブロック金属電池」 

研究代表者 内本 喜晴
(京都大学人間・環境学研究科)


 日本のCO2年間排出量は1.34Gt。太陽光発電、風力発電、などを大量利用すると、系統安定化蓄電の用途が非常に大きいと考えている。

 リチウム電池はグラファイト、LiCoO3、などトポケミカル反応を使っているので限界がある。理論的には、エネルギー密度が問題。Liをそのまま使う訳にはいかないので、電位が低く、容量が限られる。そこで、ポストリチウムイオン電池の必要性が導かれる。s−ブロック金属電池がその有力可能性。

 Li金属をそのまま使うことも有力候補。有機溶媒が分解してしまうため、無機電解質を用いた全固体化が必要不可欠。

 Caの融点850°で、安定性あり。一方、Naは融点が低く、安全性の上で問題がある。そのため民生用としては難しい。

 新しい電解質が必要なだけでなく、正極としても負極としても、全く新しい考え方をしなければならない。全固体はさらに難しい課題を抱えている。

 多価イオンと言えば、Mg(II)を可動種とする電池は、一次電池としては使われている。(リザーブ電池、注水電池)。しかし、系統的なプロジェクトとしてはやられていない。

 多価イオンを動かすのは難しい。金属負極の可逆性も大問題。正極材料としての多価イオン挿入型電極も大問題。

 正極材料としての多価イオン挿入型化合物。金属酸化物では入らない。そこで、硫化物にしよう。金属硫化物をつくっており、これには入ることも確認。また、界面の利用も重要。


http://www.h.kyoto-u.ac.jp/member_web/third/course/34/342/uchimoto/

コメント:この研究に当たって、どこがポイントなのか。こうすれば良くなる。それぞれどこが大きなハードルなのか。
コメント:負極は平滑よりもデンドライトの方が速度。
コメント:全固体s−ブロック電池は、固体電解質ができるとも思えない。硫化物だったらできるのだろうか。硫化物の科学は、なかなか難しい。

本HPのコメント:電池というものの開発には時間が掛る。個人的な話だが、1975年から米国に留学していたときに研究していたのが、Na−S電池に使うNa固体電解質で、やっと最近になって若干の応用ケースが出てきた。30年掛っている。
 何か形が一つでも見えることが重要である。チャレンジしないものは絶対に成功しない。Liイオン電池に限界がある以上、誰かがやらなければならない。



研究テーマ6:
「有機薄膜太陽電池の高効率化に関する研究」  

研究代表者: 吉川 暹
(京都大学 エネルギー理工学研究所)


 2060年にエネルギー需要は3.5倍になる。化石燃料は限界。となると、太陽電池が最大の伸びを期待されている。さらに高効率で、集光型なども研究されている。

 安価に作れる太陽電池が重要。となると、有機物が最大の候補。

 第一世代は、シリコン、250円/W、効率はそこそこで20%ぐらいまでいった。第2世代は、薄膜型で、これは75円/W。第三世代は有機型か。20円/Wが目標。

 有機半導体。最初は効率が0.01%だった。その後、ヘテロジャンクションを作ったもので効率が1%まで向上した。

 その後、4%のものが混合系セルによって実現された。

 現在は、超階層ナノ構造セルで7%を狙いたい。最終的に高分子/低分子タンデムで10%を狙いたい。それには、ドナーアクセプター複合体の合成。電極との接合を工夫する必要がある。

 1μの近赤外線まで吸収する色素の創出。これが効率を向上させるための重要な要素。

 水分、酸素などの影響で活性の劣化が起きる。しかし、酸化物層をつくることによって、劣化の防止が可能になった。

 ドナーアクセプター複合体の合成。電極でつないでやる必要がある。

 高効率化が当面のターゲットになるだろう。そこからの派生効果で、実用化の道が開けるだろう。
http://www.iae.kyoto-u.ac.jp/molecule/


コメント:近赤外の部分を使うことによる向上はどこまでできるのか。有機半導体の効率が悪い理由は? 派生的に何か新しいものに使えるのか。
コメント:有機太陽電池は、シリコンと真正面から競争する電池なのか。あるいは、色素増感のときにも言われたように、曲げられるとかいった別の特性で勝負すべきなのか。
コメント:というのは、長寿命化が最大の問題にはならないか。
コメント:太陽電池というものは、最終的にコスト競争になるのか。¥/Wのコストになるのか。
コメント:コストの問題になると、プロセスコストが相当高いのではないか。
コメント:自宅に多結晶シリコンの太陽電池などを設置してみて、これが全部20年後にゴミになると、と考えてしまった。
 撤収が簡単といった技術が結構鍵になるのではないか。
 有機物の最大のメリットは、実は、不要になったら燃やせることかと思うようになった。

本HPのコメント:製品寿命などを考えると、結局のところ、将来とも太陽電池はシリコン系になるような気がしてしかたがない。有機薄膜太陽電池は、コスト的には可能性があるが、本当にコスト競争で戦うべきものなのか。あるいは、曲面にもできるといった特別の特性を武器にして戦うべきものなのか。その見極めが必要。
 しかし、まずは、世界最高性能を目指した工夫を行うことが結果的に実用化への近道になりそうな気がするので、そんな方向に研究が進行することに賛成したい。



総評:
CREST研究としての温室効果ガス排出抑制技術開発

 このプロジェクトの最終評価基準は、二酸化炭素の排出抑制効果であるべき。しかしながら、日本全体として様々なプロジェクトが走っていることを考慮しつつ、研究開発の効果をどのように見極めるかが重要である。このテーマでは、NEDOも、また、バイオマスに関しては、農水省系もプロジェクトを走らせている。これらのプロジェクトは、終了後に実用的な成果がでることが必要である。

 このCRESTの財源は、文部科学省からの予算であり、なにがなんでも「すぐに実用になる」ということだけがターゲットではない。NEDOなどのプロジェクトは、実用化が最終ターゲットであって、しかも必ず成功しなければならないというプレッシャーを研究者に課することが必要であると考えるが、このCRESTはもっと広範な効果を狙うことが必要で、時間的には短期のみならず、中長期的な成果が求められる。

 CRESTは、実用化そのものよりも、実用化への道筋が見えれば、望むらくはくっきりと見えればよいし、場合によると、実用化はある時期までできないということが明確に見えればよい。しかも、その研究の中で、次世代の研究のネタのようなものが豊富に見つかって、ある学問領域のようなものが立ち上がるということが、文部科学省的には多大な成果だと言えるのではないか。

 そのような成果の一つとして、すべての課題について言えることではあるが、特に、有機太陽電池や熱電材料に関しては、現状の効率を理論値にいかに近付けるか、いわゆる数値的なチャンピオンデータをどうやって出すかというところに研究の焦点を置くことも十分に正当化が可能であると考える。

 もちろん、それぞれの技術がどのような形で社会に普及していくのか、その形を見極めつつ進めることが必要である。有機太陽電池なら、シリコン系などとコスト競争という戦場で真正面からぶつかるのが良いのか、あるいは、形状が自由になるとうことを利用して、曲面状の応用を考えるのが良いのか、そんな将来像を明確に示すことは、研究チームの義務なのではないだろうか。他の研究課題についても同様である。

 やや一般論になるが、今年の2件の日本が関与したノーベル賞に見られるように、開発研究を開発研究としてだけ行うのは、実は効率が悪いように思える。派生的効果だけを狙う研究プロジェクトというものはないので、やはり真剣に実用を目指すことが、派生効果も拡大する。やはり、極限に走らない、懐を広く持つ、こんなことが重要なのだろう。