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  容器包装リサイクル法改正案国会へ 04.30.2006
     



 平成16年夏から見直し作業が行われていた容器包装リサイクル法の改正案が国会に出ている。実際の審議がどのようになされるのか、注目をしていただきたい。

 ということで、どのような改正案が出ているのか、その改正の背景はどのようなものだったのか、について検討してみたい。

 今回の容器包装リサイクル法改正については、個人的には、ほぼ傍観者的立場であった。経済産業省、環境省の合同検討会の第三回目に参考人として15分間ぐらいの発表を行ったが、それだけ。


C先生:まず、審議会の委員長お二人、経産省・環境省の担当各位に、ご苦労様でしたと申し上げたい。審議会とは言っても、その実態は、大所高所から議論して容器包装リサイクルのあるべき姿を探るといった性格のものではなくて、自らの利益を露骨に主張する自己主張の大々的発表会であるから、委員長、事務局などの取りまとめ作業は大変だったのではないか、と思われる。

A君:まだ国会に法案が提出されただけで、審議の様子によっては、どのような改正案が出されるか分からない。

B君:いやいや現状の案のまま決まる可能性が高いと思う。ただ、法律というものは施行上の細かいことを決めるものではないので、問題点とされているところが、今後どのように具体化されていくのか、それは行政の選択だ。

C先生:まず、どんな問題意識で改正が始まったのか、それを解説して行こう。

A君:まず、容器包装リサイクル法の歴史から行きますか。大体は、こんなものです。

容器包装リサイクル法の歴史

1995年6月 成立・公布 12月第1段階施行(基本方針、再商品化計画、指定法人関係)   

1996年6月第2段階施行(分別収集計画関係)
   
1997年4月本格施行(再商品化事業開始) 
対象品目:ガラスびん(無色、茶色、その他色)ペットボトル 
リサイクル義務を負う企業:大企業   

2000年4月完全施行 
対象品目:上記に加え紙製容器包装及びプラスチック製容器包装
リサイクル義務を負う企業:上記に加え中小企業

2005年12月施行後10年経過後の評価検討


 最後にあるように、10年で見直しということになっていたために、2004年夏から見直し作業が開始された。

B君:今回の国会で成立すれば、大部分のところは、2007年4月1日から施行となって、一部、良質な回収を行っている自治体への利益還元を行う部分は、2008年の4月から施行になるのだろう。

C先生:本来は最後に述べるべきなのだが、丁度、その話になっているので、付け加えたいのだが、今回の改正案での最大のポイントは、ひょっとすると、見直しが5年サイクルで行われるということ。要するに、状況の変化、すなわち、国民レベルの意識の変化が激しいものだから、そのぐらいで見直さないと時代遅れになる。
 ということで、成立後10年間で、どのような周辺状況の変化があったか、その説明から。

A君:1995年成立。このときには、まだリサイクルなどという言葉も一般的ではなかった。当時、行われていたリサイクルは、金属類、それも銅・アルミ・貴金属ぐらい。まだまだバブル経済の余韻が残っていた時代なので、使い捨てが当然のような時代だった。だから、この10年ちょっとの期間内で、日本のリサイクルに対する考え方が大幅に変わったと言えるでしょう。

B君:その後、多数のリサイクル法ができた。しかし、もっとも大きい変化は、2000年における循環型社会形成推進基本法。循環を基本方針として、日本の環境対策を行うという考え方で、その際、もっとも大きな変革が、1Rから3Rへという考え方の拡張。すなわち、単なるリサイクルから、リサイクル以外の2つのRであるリデュースとリユースを重視しようとするもの。すなわち、3Rには、優先順位があって、リデュース>リユース>リサイクルの順番に実施すべきだということが決まった。

C先生:そのあたりで、一つの国際的な枠組みがあって、一つは、2000年に行われたミレニアムサミットでミレニアム開発目標が設定されたこと。ただし、ここでは、循環などには、目標設定はなされなかった。次が、2002年のヨハネスブルグサミット。ここでも、循環が議論されたと言うわけではなくて、「非持続可能な製造と消費からの離脱」が先進国の重要な課題だとされた。極めて単純な解釈をすれば、大量生産と使い捨ては持続可能ではない、と理解すべきだろう。そこで、各国に宿題が出たのだが、その回答として日本が出したものが、循環型社会形成基本計画の中での3つの指標だ。

A君:例の、入口、循環、出口の3つの指標。すなわち、入口では資源生産性、循環では循環材料利用率、出口では最終処分量、という3つの指標。

B君:循環型基本計画とは言っても、実は、入口が重要だという理解になっていて、この段階で、リデュースが実は廃棄物の排出量削減だけではなくて、人間活動全体に投入される入力の削減が重要だということになった。

C先生:もう一つ大きな変化が、ダイオキシンではないか。久米さんのニュースステーションで騒いだのが1999年のこと。そのお陰か(悪影響という人も居るが)、ダイオキシン特別措置法ができたのが、1999年。焼却炉の規制が厳しくなったが、もともと設置されているものについても、2002年12月1日から規制が80倍も強化された。

A君:1999年頃までは、焼却はすべて悪。特に、プラスチック類の焼却はやらないという自治体もあったぐらい。

B君:日本では、ダイオキシンのリスクというものが、もともとそれほど大きなものではなく、ダイオキシン特別措置法によって、さらにリスクの削減がなされたという理解だろうが、フィリピンなどは当然としても、韓国においてすらダイオキシンはまだまだ第一級の怖いものだと思われている

C先生:いや、日本でもまだまだのようだ。先日、徳島県に出かけて講演をしたのだが、そこで質問に立った人が、「石井町の焼却炉が駄目で、ガス化溶融炉にするように住民運動を進めている」、という大演説を行った。パネルディスカッションだったもので、県知事も居たのだが、当然返答を出せる状況にない。代理という訳ではないが、ダイオキシンのリスクは、かなり限定的である。特に石井町のように、焼却灰のダイオキシン濃度が高いという場合には、もしも平均値として高ければ確かに法令違反ではあるが、だからといって、町民の生命に対するリスクはそれほど大きいものとも思えない。一方、小型のガス化溶融炉を町に設置すると、町の財政に非常に大きな負担になって、その副作用で、医療などに悪影響が出て、結果的に町民の生命に対するリスクが高くなる可能性もある。とにかく、ダイオキシンが多少出たからといって、最優先で対策を取るべきものとは言えない。様々な対応策を考えて、慎重に判断されたい、と答えた。

A君:焼却灰などの規制値は、3ng/gですか。環境基準が1000pg/gですから、すなわち、1ng/g。3倍注意をする必要があるのですが、実際に通常の町民が焼却灰に触るとは考えにくい。どうしても、焼却灰が嫌なら、ガス化溶融炉よりは、どこかに運んで灰溶融で対応すれば良いのでは。

B君:ダイオキシンが怖いといって、焼却しないですべての廃プラスチックを埋め立ててしまったら、埋め立て処分場の不足が著しい状況で、こちらも持続可能とは言いがたい。それでは、廃プラスチックはすべてリサイクルなのか。というのが2001年ごろまでの感覚。

C先生:これで、やっと話が容器包装リサイクル法に戻った。従来の枠組みでの問題点を列挙してみようか。

A君:まずは、そのプラスチックの処理費用の高さでしょうか。これは、再商品化費用が正式名称ですが、リサイクル業者が1トンのプラスチックを材料リサイクルすると、リサイクル協会から11万円ぐらいの費用が支払われるということを意味する。勿論、その価格は、入札で決まるのですが、リサイクル業者の数が限定されているもので、高止まり状況。談合が行われているといった噂は聞かないですが。

B君:それは、小売業などの事業者側にとっての最重要課題。次図を見て欲しいが、ガラス、紙、ペットボトルの処理費用が低下したにもかかわらず、プラスチック容器包装の処理費用が高止まりをしている。特に、プラスチックの材料リサイクルが高い。


C先生:これは、国の方針として、マテリアルを最優先するという方針が設定されていて、そのために、優先入札できる形となっているからだ。それにしても、1トンの処理費用が10万円を超しているのは異常だ。これをなんとかしないと、容リ法関係の事業者の協力も得られない。

A君:実際、プラスチックのマテリアルリサイクルが増えている。次図のようです。


B君:これは、燃料化といった新たな枠組みに切り替えていく必要があるでしょう。

C先生:実際その通りなのだが、プラスチックのマテリアルリサイクルが儲かるということが分かったものだから、設備増強や新規参入が行われてしまったのだ。だから、すぐに対策を取るということにはならない可能性もある。ただ、方針を明確にすること、すなわち、リサイクルコストの適正化を図る時期を示すべきだ。

A君:製鉄関係のリサイクルコストも高い。コークス炉原料、高炉還元剤などですが。

B君:プラスチックのリサイクルをどこまでやるか、これは集めてきたプラスチックの純度の問題が大きい。ペットボトルは、形状から言っても明らかだから、市民が分別するのも簡単なのだが、その他のプラスチックは、材質が分かりにくいので、やはりどうしても不純物が混ざる。

C先生:その通り。しかし、最近の中国の資源ブラックホールという現象がまだ続いているので、ブラックホールのように周りの資源をなんでも吸収している。そのお陰で、廃プラスチックから作られたパレットなどの板が中国に流れているようだ。以前よりもかなり高い価格で。

A君:リサイクルは、リサイクル製品がどのぐらいの価値になるか、ということを十分に判断する必要があるのですが、その意味では、最近は、多少ましになったということですか。以前は、偽木といった製品になっていて、半分ぐらいは商品にもならないで、廃棄されているのか、と思っていました。

B君:プラスチックを自治体が集めると、これはコストが掛かって、リサイクル貧乏になる。これも問題点の一つだった。

C先生:そのために今回考え出されたのが、リサイクル品質の向上という考え方。もしも、集まったプラスチックの品質が良ければ、ご褒美を出しましょう、ということ。これで十分なのか、というと若干疑問。

A君:確かに、改正の検討開始当初は、自治体の回収費用のかなりの部分を事業者が負担すべきだという考え方があった。

C先生:未だに、個人的にはそう考えている。少なくとも、自治体で掛かった費用を、自治体と事業者が半々に分担するぐらいでよいのではないか。

A君:しかし、事業者が非常に強い反対をしたもので、質の良いリサイクルを実現した自治体にはご褒美という考え方になった。恐らく、最初はかなり少ない額でしょう。

B君:このロジックだが、質の良いリサイクルを行ったために、日本全体のリサイクル費用が低減されたとしたら、その費用削減分は、事業者と自治体とで折半しようというもの。しかし、考えてみると、これは非常に難しい。何故ならば、基準線をどこに引くのか、その論理建てが困難。現状のリサイクルの質というものの定量化が困難だし、大体、どうやってサンプリングをするのか、そんな判断も難しい。

C先生:やはりプロに相当数のベールを見てもらって、現時点でのリサイクルの質というものを明らかにしておかないと、何も言えなくなりそうだ。

A君:それ以外に問題になったのが、発生抑制ができていないという議論。本来は、この議論がもっとも重要なのかもしれない。

B君:発生抑制、排出抑制、この言葉が多少微妙。使い分けるのが理想なのだが。

C先生:飲料の容器の発生抑制をしようと思ったら、消費の形を昔に戻す以外にはない。ミネラルウォータは買わない、お茶は自分で入れる。

A君:これは、しかしなかなか難しいことかもしれない。

B君:水道水を飲む人が、少なくとも若い人にほとんど居なくなったのだから。

C先生:今回の法案では、言葉は「排出抑制」になっているが、発生抑制には若干違うニュアンスがある。 いずれにしても、排出抑制のために、わざわざ第四章というものが新設されて、色々な施策が盛り込まれている。

A君:これも排出抑制というよりも、発生抑制という概念かもしれないですが、確かに、この10年間で進歩したものがあります。それが容器の軽量化。ペットボトルの重さは、ミネラルウォータで特に進歩して、多分半分近くになった。ガラスでも、薄肉化が進んだ。レジ袋も限界まで薄くなってきた。

B君:これは、作る側の進歩。使う側は、余り進歩していない。そこで、今回の改正案では、使う側にも進歩を求めているのが特徴かもしれない。大量に容器包装を使用している事業者には、レジ袋を使っていれば、それを含めて報告義務ができた。削減の努力が足らないと、お目玉を食らう仕組みだ。

A君:しかし、ここでもまだまだ大きな意見の相違があって、一部の市民団体は、拡大生産者責任というものを主張していて、例えば、デポジット制などを導入し、自己責任を明確にしろという主張をしているようです。

B君:デポジット制は、価値のあるものを製造者側に戻して貰うための制度としては有効なのだが、ゴミになるようなものを販売店に戻すために使うのか、となると疑問。

A君:デポジットは、消費者にとっても、使用済み容器の置き場が必要。店舗にとっても同じで結構つらい。

B君:いずれにしても、消費者の意識の向上が必要であることに異論はない

C先生:そのためか、容器包装廃棄物排出抑制推進員制度などもできた。見張り役ということだ。

A君:消費者には、マイバッグの持参や、3R対応商品を意図的に選択することを求めていますが、ここで大きな意見の違いがまだあるように思います。消費者が、環境にやさしい容器を選択できるように、様々な情報が容器に表示されることが重要。もっとも効果的なものが、消費者が支払う金額に含まれる容器の代金やリサイクル費用を明示したどうだ、という意見もあります。

B君:リサイクル費用の概算は、報告書に出ていた。次のようなものだ。


C先生:なんだ大した金額ではない、と思われるかもしれないが。

A君:次に行きますが、自治体の問題としては、収集されたリサイクル素材の品質が良いところと悪いところとあること。効率が悪いところがあること、などが指摘されています。

B君:マヨネーズのチューブをキレイに洗って出せという方に無理がある。食品残渣を洗い落とすのが困難なものは、現在の焼却技術なら問題は少ないのだから、適切な形で固形燃料化を目指すべきだ。

A君:そして、再商品化の問題点としては、そんな問題がある訳で。

C先生:それで大体一回りしたかな。

A君:一回りといえば、次図のようなループ状の絵によるまとめが審議会資料に出てきます。容器包装のライフサイクルを考えたもので、よくできていると思いますが。
http://www.meti.go.jp/policy/recycle/main/admin_info/committee/d/33/youri33_apall.pdf


B君:課題を順番に上げると、
1.事業者にリデュース・リユースを求める
2.事業者から消費者への働きかけ:レジ袋削減やリユース
3.消費者は、3R製品の選択、行動変革
4.市町村は、主体間の連携。分別の統一や基準適合品の品質向上
5.適切な再商品化手法の組み合わせ
6.残渣の削減
7.ただ乗り業者の対策の強化

C先生:今回、リユース対策がやはりなんともならない可能性がある。現在、ステップアップ方式というものを考えているようで、ある容器のリユースシステムを導入した場合、ある期間内は、60%程度のリユース率で、優遇するが、そのうち、そのリユース率を80%まで徐々に上げるというやり方。ビール瓶のように歴史があるものは良いが、導入するのが難しいので、まあ、当然だろう。

A君:なかなかリユース瓶が定着しませんね。まあ、日本の狭い台所を考えると、リユース瓶を貯めておくのが大変で、どうしても捨ててしまうのではないでしょうか。

B君:リユース瓶については、やはりなんらかのデポジット制のようなものを入れないと難しい。

C先生:通常のリユースではないが、イベント会場、例えばサッカー場のようなところでのリユースは、比較的成功する確率が高い。また、愛知万博では、リユースカップの運用が旨く行ったので、愛知県では、なんらかの施策を考えるようだ。

A君:スターバックスやマックのような店での紙やプラスチックコップの使用制限はすべきではないですかね。

B君:当然だ。この点では、韓国に負けている。容器包装リサイクル法とは直接は関係ないが。

C先生:容器包装リサイクル法の第二弾が、大体、以上のような方向で決まりつつある。しかし、これで完成ではない。ただ乗り事業者が多いが、金額的には大したことではないので、どうしても見逃される。しかし、不公平感だけは残る。

A君:激しく汚れた容器は焼却へ、というようなことが早めに実現すると良いですね。お湯を使って洗った瞬間に環境負荷はその方が大きくなると判断しています。

B君:ペットボトルの輸出対策も、今ひとつ。まあ、国内で回すことを考えたら、なんらかの歯止めを作らないと駄目でしょうが、法律的には、というか妥当な法を作ることそれ自体が難しいのだろう。

C先生:いずれにしても、今回国会に提出されている法案のレベルでは、細かい運用の方法については、何も分からない。今後、どのような省令がでるかによって、その実態が徐々に決まっていくことになるのだろう。
 ただ、すでに述べたように、次の見直しが5年後なので、徐々に、容器製造段階での素材別のリサイクル費用設定という、運用がより簡単な方向に動かすのが、妥当のようには思っている。