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     日経の「第4の革命」カーボンゼロ 
       
  日本のエネルギーへの不安  03.07.2021



 日経の連載による特集がなかなか重要な指摘をしている。上記の見出しであるが、もう一つ、サブタイトルがあって、それが「大電化時代」である。現状のまま時間が経過すれば、日本は多すぎるCO排出量が大きな障壁となって、経済が成立しなくなり、世界の貧国に落ちてしまうのでは、という警告のような記事である。
 3月1日に連載が開始され、3月5日までの5回の記事であり、次のようなタイトルが並んだ。
◆3月1日(月):緑の世界と黒い日本
  −−−「再エネが最安」GDPの7割
◆3月2日(火):安保握る戦略物質に
  −−−蓄電池、脱中国の攻防
◆3月3日(水):「灰色のEV」克服走力戦
  −−−新車すべてCO2ゼロ
◆3月4日(木):「緑の発電」で経営革新
  −−−銀座の大矢、電力会社に
◆3月5日(金):再生エネ輸入に熱視線
  −−−サウジからアンモニア 

C先生:今回は、上記の5回の記事をまとめてご紹介するというのが目的。
果たして、日本社会は、このような世界の急激な動きに付いていけるのだろうか、という疑問を抱いているが、日経の記事を読まれた方々がどのような感想を持たれたのだろうか。

A君:今回は、5回分の記事を、1回にまとめてしまうというかなり乱暴な企画なので、やや省略気味に行かないとならないでしょう。

B君:それでは早速。
3月1日の記事のタイトル『緑の世界と黒い日本』だけれど、緑はGreenと解釈すれば良いけれど、黒い日本の黒は、何か。それは「石炭」を意味する。そして、世界の図と数値が出ているのだけれど、その数値が、以下のようになっている。
 日本 74ドル
 米国 36ドル
 中国 33ドル
 英国 42ドル

A君:
さてこれが何の価格か。ということですね。実は、電力の価格です。具体的には、1000キロワット時あたりの価格で、出典はブルームバーグNEF。

B君:
日本の電力価格は、米国、中国の2倍以上。その理由は簡単で、日本以外では、再生可能エネルギーの価格が大幅に低下したから。勿論、風力発電による電力ですが。

A君:日本でもかつては日立が風力発電用の風車を作っていましたが、その後、競争力が無いということで、撤退しました。

B君:
風車のサイズは、大きければ大きいほど、コストは下がる。これが原理原則なのだけれど、これまでにも述べたように、日本には、台風という極めて厄介なものが到来する。風力発電機は、台風で倒壊してしまうことも考えなければならない。

A君:風車のサイズですが、写真が掲載されている
ロッテルダム港の風車は、GE製で、その高さは260m。東京都庁を上回る高さ。羽根の長さも107mもあって、東京ドームの本塁から外野両翼までの長さを超している。

B君:そして、
英国沖で建設中のドッガーバンク風力発電所というものがあるのですが、そもそも、ドッガーバンクとは、英国の東方約100kmの北海にある大きな砂堆で、東西260km、南北95kmという超巨大なもの。

A君:
水深が15〜36mほどで、周囲よりも20m浅い。地質学的には「モレーン」とのこと。

B君:
「モレーン」とは氷河が堆積した岩石・土砂などの地形。現在海の中にモレーンがあるということは、その氷河は、どこを流れていたのだろう。

A君:英国の土地である
グレートブリテン島は、今でこそ島だけれど、1万年〜8千年前ぐらいには、大陸と陸続きだった

B君:日本にもそのような浅い海があれば良いのだけれど、あるとすれば日本海側のはず。

A君:日本の領海は、海岸線から海側へ24海里(約22km)。ここに風車を大量に建設する以外に方法は無さそう。ドッガーバンクより陸地に近い。

B君:
日本にはあるけれど、英国にない例のものがやはり問題になりかねない。それは台風。超大型の風車が台風で倒れたら、大損害になりかねない。

A君:むしろ、浮体型の風車を作るのは。

B君:これまでも福島などで、巨大風力発電を浮体型で作ってきた歴史がある。しかし、色々と問題がるようだ。例えば、福島県沖に設置した直径167mの風車を持つシステムは、採算が見込めないために、撤去する方向であるとのニュースがでている。2018年のものだが。

A君:その理由は、機器の不具合とのことですね。どこかどう不具合なの、そのような情報は見つからないですね。

B君:資源エネルギー庁としては、「得られたデータは価値がある」と実証研究の成果を強調しているとのこと。

A君:一方、県関係者は、
「風車が十分に変わらなければ満足なデータも取れない。残念ながら県内産業への寄与も見当たらなかった」

B君:なにか、協調性がないコメントだ。

A君:風車は7000kWが1機、2000kWが2機設置されたのですが、
大型機は不具合が目立ったとのこと。

B君:この風車などの企業が作ったのだろうか。日本の風は、台風などのこともあって、非常に難しいのも事実。

A君:
以前は、日立製作所が風車を作っていましたが、止めました。どうしても、風車は、海外メーカーほどの実績が無いのですが、その一つの原因が、台風を含む日本の風の特性にもあるような気がします。浮体型であれば、風は傾いてなんとかやり過ごせるのか、と思っていましたが、そうもいかないようですね。

B君:記事によれば、
『政府は、洋上風力を主力電源の一つに成長させたい考えで、30年までに1000万キロワットの導入目標を掲げる』。しかし、日本製風車では無理みたいだ。実は、すでに日本製風車は存在しないのだけれど。

A君:
京都大学の経済学研究科の永田哲朗フェローが書いておられる記事が見つかった。2019年8月1日のもの。現状における日本の風力発電機の状況が記述されているので、共通の理解を得るために、お奨めです。
 アドレスを記述しようとしたのですが、余りに長すぎるので、検索で見つけて下さい。

B君:日経の記事に戻るけれど、
自然エネルギーのコスト比較がでている。1世帯が4カ月間に使う1000キロワットの電気を作る場合、もっとも安い電源は日本だと石炭火力で74ドル中国は太陽光で36ドル英国は風力で42ドル

A君:
日本で自然エネルギーでやろうとすると、太陽光で124ドル、風力で113ドルとかなり高くなってしまう。

B君:それに、日本で自然エネルギーによって
電力を得たとしても、送電網につなげるかどうか、それが難しい。送電網を支配しているのが電力会社なので、自前の火力発電所、原子力発電所への接続が優先されてしまう。

A君:電力会社によっては、そんなことが本当なの、ということが起きる。
北海道は再生可能エネルギーの適地なのに、電力網に接続しようとすると、蓄電池の整備を求められる。名目上は周波数安定が理由なのだけれど、蓄電池の経済的負担は大きい。しかし、通常の蓄電池では性能・寿命などの点でだめなので、これは日本にしかない電池なのだけれど、日本碍子が製造しているナトリウム・イオウ電池(NAS電池)が使われることになる。

B君:そもそも工業などよりも農業中心の産業構造であるため、総発電量が少ない地域なので、しかも、
北海道の電力網が弱いことともあり、何かと困る状況が起きる可能性は高い。以前、北海道が地震によって大停電をおこしたのが、2018年9月5日。震度7を記録したのが道央南部の胆振地方の厚真町だったのだけれど、北海道全域が停電した。そのぐらい、北海道の電力網は弱い。

A君:北海道には風力の適地が多いと思うのだけれど、電力網がそれに適したものになるのは、それこそ、「いつの日ぞ」。

B君:
襟裳岬あたりから北に日高山脈が連なっているけれど、その稜線に風車を建てれば、相当量の電気が発電できると思う。他にも北部には、風力の適地が多いと思う。

C先生:環境省の外郭の組織で、各地域における再生可能エネルギーとか、バイオマス発電とか、などなどを地域で設置してもらうということをプロモートする機関の審査委員長を5年程やって、先日、個人として引退する最終の会議があったのだけれど、これまでいくつか
北海道の案件もあった。風力発電などに関する案件では、まさに、NAS電池の設置が北海道電力から強制された。それだけ、電力網が脆弱なのだと思っていた。

A君:
北海道電力の総発電能力は、838万kW。一方、東京電力が最大発電量を出したのが、2001年の冬で6430万kW。比較対象がややズレているけれど、両者は、7倍以上規模が違うようですね。

B君:色々、欧米の違いが良く分かったけれど、だからといって、このままで日経新聞による単語だと
「黒い日本」を続ける訳には行かない

A君:「黒い日本」というと、腹黒なのか、と思われるかもしれませんが、実際には、「石炭の日本」という意味です。

B君:欧米諸国の中では、過去の話になるが、
ドイツが自国で生産可能な褐炭に依存する割合が多かった。最近は、風力に転換する方針のようだけど。

A君:この記事は、
2020年1月16日のものですが、「ドイツは、国内での脱褐炭を4州で合意したとのこと。その合意は、2035年までに全ての褐炭・石炭火力発電所の廃止を目指し、これが可能か否かにつてい、2026年、および、2029年に再度、評価・検討する」。

B君:石炭火力発電所由来の電力に代わる
代替電力としては、再生可能エネルギーの拡大を促進する。連邦政府は、2038年まで、石炭火力発電所を抱える、ブランデンブルグ州、ノルトライン・ウェストファーレン州、ザクセン州、ザクセン・アンハルト州に対して、最大140億ユーロの資金提供を行い、産業転換を支援するとのこと。

C先生:国連大学副学長だったとき、しばしばボンにある支所で会議があって、よく行った。そのときに、次の会議が、オランダのベルギーとの国境に近い都市である
マーストリヒト大学で行われるとなって、やはり、その会議に出席するボン事務所の所長の車に乗せて貰ったことがある。その時に、ケルン経由だったけれど、途中で、褐炭の炭田、といっても露天掘りで土ほこりだらけのところに大量の水を撒いて採掘している状況を見ることができた。ドイツにも大量の発電用風車があると思うけれど、洋上風力が適地である海は、少ないと思う。ドイツの北に位置する、デンマークは、洋上風力が大量にあるようだけど。

A君:色々考えても、
世界のどの国でも、風力発電が主流にならざるを得ないという感じがします。まず、第一に、太陽光発電では、夜どうするの。蓄電池を使うのか? 

B君:蓄電池も良いけど、重い・高い・寿命がある、の三重苦をなんとかしないと。

A君:やはり風力が主役。しかし、
日本の場合には、厄介な台風という存在があるので、特に、沖縄や九州などでは、風車が台風で破壊される可能性もあって、大変だなあ、と思いますけど。

B君:まさに、その通りで、すでにご紹介した、宮古島の風車の事故の例を見ると、日本は、単一の発電システムでは、やっていられない。しかし、もっとも信頼性の高い化石燃料は、CO
を排出するので使えない。となると、様々な日本向けの特性を持った風力発電の風車を作らなければならないと思うのですけどね。

A君:例えば、南の沖縄とか、九州には台風に強いタイプ、北海道であれば、発電効率の高いタイプ、などなど。

B君:しかし、
日立は、風車の製造を止めてしまった。そして、日本製の風車はゼロとなった。子会社が風車ビジネスは続けるが、ドイツメーカーの製品の販売と、保守や運転支援などのサービス業務に軸足を移すとのことだった。

A君:
日立の風車は、ダウンウインド型と呼ばれる独特のタイプで、通常の風車とは逆の方向を風上に向けるものだった。これは、風況が複雑な日本のような国では、有効な方法と言われていたんですけどね。

B君:
風車のサイズは、大きければ大きいほど、コストは下がる。これが原理原則なのだけれど、これまでにも述べたように、日本には、台風という極めて厄介なものが到来する。風力発電機は、台風で倒壊してしまうことも考えなければならない。

A君:
風車のサイズですが、新聞に写真が掲載されているロッテルダム港の風車は、GE製で、その高さは260m。東京都庁を上回る高さ。羽根の長さも107mもあって、東京ドームの本塁から外野両翼までの長さを超している。

B君:日本にも英国のような浅い海があれば良いのだけれど、あるとすれば日本海側のはず。

A君:
日本の領海は、海岸線から海側へ24海里(約22km)。ここに風車を大量に建設する以外に方法は無さそう。ドッガーバンクより陸地に近い。

B君:
超大型の風車が台風で倒れたら、大損害になりかねない。

A君:むしろ、
浮体型の風車を作るのは

B君:これまでも福島などで、巨大風力発電を浮体型で作ってきた歴史がある。しかし、色々と問題がるようだ。例えば、福島県沖に設置した直径167mの風車を持つシステムは、採算が見込めないために、撤去する方向であるとのニュースがあった。

A君:その理由は、機器の不具合とのことですね。どこかどう不具合なの、そのような情報は見つからないですね。

B君:資源エネルギー庁としては、「得られたデータは価値がある」と実証研究の成果を強調しているとのこと。

A君:一方、
県関係者は、「風車が十分に変わらなければ満足なデータも取れない。残念ながら県内産業への寄与も見当たらなかった」

B君:なにか、協調性がないコメントだ。

A君:風車は7000kWが1機、2000kWが2機設置されたのですが、大型機は不具合が目立ったとのこと。

B君:この風車などの企業が作ったのだろうか。日本の風は、台風などのこともあって、非常に難しいのも事実。

A君:浮体型であれば、風は傾いてなんとかやり過ごせるのか、と思っていましたが、そうもいかないようですね。

B君:記事によれば、
『政府は、洋上風力を主力電源の一つに成長させたい考えで、30年までに1000万キロワットの導入目標を掲げる』。しかし、日本製風車では無理みたいだ。実は、すでに日本製風車は存在しないのだけれど。

A君:色々考えても、世界のどの国でも、風力発電が主流にならざるを得ないという感じがします。まず、第一に、太陽光発電では、夜どうするの。蓄電池を使うのか? 

B君:蓄電池も良いけど、重い・高い・寿命がある、の三重苦をなんとかしないと。

A君:やはり風力が主役。様々な日本向けの特性を持った風力発電の風車を作らなければならないと思うのですけどね。例えば、南の沖縄とか、九州には台風に強いタイプ、北海道であれば、発電効率の高いタイプ、などなど。

B君:しかし、国産では、どうしても少数生産になって、高価になるということで、まあ当然のこと。

C先生:そろそろ終わりにするか。
日経の記事はそれなりの問題意識を示している。日本の今後のエネルギーの像を、市民レベルまでしっかり共有することが重要なのだと、個人的には思っている。
 この国は、もともとエネルギーに恵まれていない。
化石燃料の時代には、多少の炭鉱はあったが、石油・天然ガスは自給できるほどの生産量は無かった。そして、化石燃料時代が終わり、再生可能エネルギーに移行する時代になると、そのもっとも有力な候補である風力も、日本のように台風の来る国だと、非常に難しい。大陸の東端にある国は、ヨーロッパのような西端にある地域とは、全く違うのだ
 原子力は、本来、世界的に平等の筈だったのだけれど、福島事故の影響で、
世界の動向を見ると、どうも原子力に依存することはもはやなさそう。自分の国で起こした事故なので、日本が現有の原発に依存すると言っても、なかなか理解が得られない。
 もっとも、
福島第一から出る水を貯めたタンクもそろそろ限界で、放置するよりは、なんとか排出しなければ、危険が近づいている。確かに、トリチウム(三重水素)なる放射性元素が入っているけれど、トリチウムは、大気の上端で、太陽光によって自然にかつ大量に生産されている。トリチウムといってもその本質は水素だけに、体内に入ったとしても、長期間存在する訳でもないので、健康被害を心配することもない。そのため、海洋に放出しても、まあ、安全だとは言えるけれど、もっとも怖いのが、風評被害。日本人のマインドから言えば、福島沖で取れる魚が恐らく売れなくなるだろう。
 
このように、残念ながら、八方ふさがりの国、それが日本。もし原発が事故を起こしたら、こうなるということは、恐らく、電力関係者であれば、当然、推測ができたはず。いまさら、グダグダ言っても遅いのだけれど、やはり、東電の上層部の認識が、余りにも日本という国土のリスクを無視したものだったと、確実に言える。しっかり、責任を取っていただきたい。
 さて、今後、どうするのか。
『今後、日本におけるエネルギー供給の理想的な方法は何か』。この議論を、全国民レベルでできるレベルまで、まずは、エネルギーの必要性について、さらには、エネルギーに伴うリスクというもの、最後に、未来の原子力と考えられるスモール・モデュラー型原発の構造などについて、全国民的な知識を持つことが必要不可欠のように思える。
 すべての日本人が、どうすれば、
日本という国が、必要かつ十分なエネルギーを使えるようになるか。この問いに対して、正確に答えができるように小学校高学年ぐらいから教育を開始し、高校・大学、そして就職試験には、かならずエネルギー関係の出題があるような国に変えなければ、日本なる国に未来は無いのではないだろうか。
 ひょっとすると、今回の記事は、過去最長になったような気するけど?????