-------

      久々に日本セラミックス協会で講演
         当日、話せなかった話題を! 11.29.2020

   



 まず、筆者自身の昔の話。最近では、環境屋としてしか世間から認識されていないと思いますが、元々の専門は、セラミックスとガラスでした。古い言葉で言えば、窯業ということになります。
 一昨晩(11月27日)19時から、
新宿区の日本セラミックス協会(公益社団法人)でリモート講演をして参りました。かなりしっかりしたネット環境だったようで、極めて快適に、参加者の方々と的確な議論も出来ました。最近のリモートシステムは、さらに進化したようですね。個人的な経験としては、過去最大の参加者(多分70名ぐらい?、座長は北大の忠永先生)でしたが、回線の品質とスピードさえ確保できれば、相当のことができることが実感できました。
 当日、
30分という講演時間だったので、話すことができたのは、現時点の温暖化対応の重要性までであって、具体的に、セラミックス産業が将来、どのようなエネルギーを使うことで、必要な高温を出すのか、といった具体的な話には、全く触れることができませんでした。もっとも、現時点でも、完全な解は知りませんが。
 セラミックス産業全体の特徴は、当然のことながら、
セラミックスの焼成とかガラス溶融に必要な高温にあります。今後、COゼロが要求されたときに、どのような対応をするのか、そろそろ考え始めておかないと、困ることになるかもしれません。
 同じようなことは鉄鋼業界にもあるのです。セラミックスの場合には、高温をどうやってCO
ゼロで発生できるかだけなのですが、鉄鋼は、鉄鉱石を還元するという化学反応が必要なので、さらに難しいのです。すなわち、セラミックス産業に必要な高温を得ることは、それほど難しいことではないように思われます。


C先生:ということで、日本セラミックス協会に行くのは、一体何年振りなのだろうか、というぐらいのご無沙汰だったのだけれど、新大久保駅を降りて、日本セラミックス協会まで歩いた。過去の記憶よりも、存在地がやや遠かったような印象だった。

A君:70名ぐらいもの参加者があるようなリモートが可能なのですね。

B君:リモートシステムは何だったのですか。

C先生:最後に聴いてくるべきだったけど、それを忘れた。それにしても、セラミックス協会のネットの能力が半端ではないぐらい速そうだった。とても、自宅からでは不可能と思われるような立派なネット環境だったので、まあ、自由自在だった。
 いずれにしても、今回のように、セラミックス分野の専門家ばかりを相手にするので、
どのような内容が良いか、いささか迷ったのだけれど、企業経営者から企業の研究者、大学や研究所の研究者、場合によっては、大学院学生、といった参加者があり得るかと思ったが、一応、企業、大学、研究所の研究者を対象にして、ビジネス社会における最近の動向などを混ぜた形で、講演をしてきた。たった30分の講演だったのだけれど、こんな講演をしたということを中心に、どのような配慮をしたかなどをちょっと述べてみたいと思う。

A君:了解です。C先生のパワポのファイルを見ながら、質問を出しますので、対話形式で行きたいと思いますのでよろしく。

B君:それでは、自分は、なんらかの感想を述べることにしよう。

A君:では行きます。まず、表紙ですが、
題目が、「2050年CO2ゼロとセラミックス産業」という題名ですね。

B君:
これは、セラミックス製造には、なんらかの炭素分の燃焼が不可欠という意味ですかね

C先生:良い質問だ。セラミックス製造のプロセスには、かなりの割合で、「高温」という言葉がキーワードになる。歴史的には、
陶磁器を作る「登り窯」みたいなものが使われていたが、燃料は木材を使って陶器を作っていた。木材であれば、大気から吸収したCOが再放出されるので、実質上、大気中のCO濃度が増大することはない現時点では炭素を含む燃料、すなわち、石油系か石炭系の燃料を使って高温を出すことが技術的にはもっとも合理的。しかし、石油・石炭だと、億年レベルの過去に地下に貯留されていた炭素分がCOとなって大気中に放出されることになるので、大気中のCOは増える。そして、恐竜時代には、地球の気候は、非常に温暖だったが、その状況に戻ることになる。

A君:となると、今後はどのような手法で高温を得るか、あるいは、高温という条件以外で、なんらかの方法で製造するということを考えなければならないということですか。

B君:
高温を使わないでセラミックスを作るね。まあ、かなり特殊な用途の場合に限られそうだ。電力で高温を得ることも勿論できるのだけれど、それには、発電設備を変更して、CO発生量がゼロの電力を使用しなければならない。自然エネルギー、例えば、風力発電、太陽光発電による電力を使えば、COゼロだ。

A君:しかし、
風力だと、無風のときにどうしようもない。太陽光発電だと、晴天の昼間は良いけれど、夜は全くだめ。電池で解決するという方法論も無い訳ではないが、コストが相当かかる

B君:セラミックスの製造プロセスは連続操業が必要なものも多いので、24時間操業をゼロにすることは無理そうだ。炉の温度をいちいち落とすことは、エネルギーと時間の無駄遣いだろうね。

A君:それ以外にも、CO
を大気中に放出しない方法論もあって、それは、発生したCOを捕まえて、地下に埋めるような方法、CCS(Carbon Capture and Sequestration)と呼ばれますが、これを採用することになる。現時点だと、CCSはまだまだ高価な技術で、1トンのCOを処理するのに、相当な費用が掛かる。日本だと特に高価で、CO2の1トンあたり1万円弱は掛かるのではと思います。

B君:CCSについての詳細は、
https://www.meti.go.jp/information_2/publicoffer/review2019/kokai/s4r.pdf
をアクセスしていただきたい。この解析によれば、コストは、CO
の1トンあたり、7300円となっているけど。

A君:この情報ソースは、令和元年6月のもので比較的新しいのですが、それ以後、技術などについて、大きな変化はないものと思われます。

B君:このトピックスに関して、説明されていない
略語が、EORぐらいかな。

A君:
EORとは、発生したCOを集め、古くなって石油が出にくくなった油田に圧入することで、地下での石油の分布を変え、それによって、汲み上げ可能な石油の量を増やすこと。Extebded Oil Recoveryの略。

B君:EORが実現できれば、石油増産による収入が増えるわけだから、CCSのために必要な費用が補填できる。

C先生:CCSについては、こんなところで良いだろう。ここで
検討すべきもう一つの問題が、自然エネルギーによって高温を発生させて、それを使うという方法が、すべてのセラミックス産業で採用が可能かどうか。それが日本国内で不可能となれば、日本のセラミックス産業は、海外移転をすることになる。さらに言えば、高熱を使うというプロセス、例えば、現時点でのガラス製造などは、24時間操業が当然のことになる。なぜなら、毎日の操業後に温度を下げてしまったら、翌日、温度を操業可能なまで上昇するのは不効率。すなわち、作業効率が非常に下がるからだ。それを考えたとき、自然エネルギーだけで、ガラス板が作れるのか

A君:そのとき使ったパワポのファイルを見ると、
今世紀末の製鉄には、高温ガス炉(=原子力)が不可欠ということになっていますね。

B君:製鉄の場合だと、
水素で酸化鉄を還元する反応が、吸熱反応なので、炉の温度が下がってしまう。現状のコークスによる還元反応は発熱反応なので上手くできるのだが。

A君:そこで、
高温ガス炉(原子炉の一種)を使って、原子力の力で高温ガスを供給して、高温をキープする原子力製鉄が唯一の方法とされています。

B君:セラミックス関係の場合だと、特に、
連続操業が不可欠な板ガラスの製造をどうするか、が非常に大きな課題かも。

A君:現在の
板ガラスの製造の主力は、フロート法ですね。溶けた錫の上に、溶融炉で溶かしたガラスを浮かせて流すと、平板状になる。それが流れるに従って、徐々に温度を下げて、完全な平板上の固体にする。

B君:絵を見て貰った方が確実に理解しやすい。これをご覧いただきた。
https://glass-wonderland.jp/cms/wp-content/uploads/2019/05/g33-010.pdf

A君:しかし、
この熱源をどうするか。これは、製鉄の場合と同じような状況ですね。その未来像は、やはり、最終的には高温ガス炉ですかね。いや、違うかも。溶融炉は、ガラスの場合であれば、溶融したガラスに電気を流すという方法論も無い訳ではないので、それで行けるかもしれません。ただし、冷えた原料をそのまま入れると、温度が下がってしまうので、やはり、なんらかの余熱は不可欠でしょうね。

C先生:そのあたりは、ガラスの専門家に聴くべき話だな。個人的にはガラスの研究もしていたことはしていたけれど、
化石燃料を使わないガラス製造法などを考えるような時代ではなかったね。これから、セラミックス業界も、大変な時代に突入しそうだ。

B君:
地球温暖化問題というのは、ある意味で、「人類に新たな発想を強いる」ものなので、今世紀前半は、化石燃料依存をやりはじめた産業革命以来の、大きな転換点であることは事実だ。

A君:本当ですね。あと
30年で、COを発生するほとんどすべての技術を、ゼロCOなる手法に転換することが不可欠、ということに近いですから。

B君:そのぐらいの意志をもって、チャンレジした会社だけが生き残る。

A君:ところで、板ガラス製造は、ほとんど日本の関係企業が上位を占める、という状況が一時期あったのですが、その後、どうなったのでしょう。

B君:
2020年の板ガラス業界の市場シェア、というサイトが見つかった。
https://deallab.info/glass-industry/#toc1
 それによれば、
1位 旭硝子(AGC) 6.0%
2位 Saint Gobain(仏) 5.2%
3位 Guardian Glass(米国) 4.8%
4位 日本板硝子 4.5%
5位 Fuyao Glass(福耀集団・中) 2.4%
6位 Vitro(メキシコ) 1.7%
7位 Taiwan Glass Industry Corporation(台玻集團・台湾) 0.9%
8位 Sisecam Group(シセジャム・トルコ) 0.7%

A君:比較的、分散構造が維持されている業界みたいですね。しかも、古い企業が生き残っていますね。

B君:多分、相当な設備投資が不可欠だから、がその第一の理由だろう。しかも、フロート法によるガラス製造は、ほぼ完成した技術体系なので、大幅に進化した設備の導入が不必要。

A君:それはそうとして、ガラスの話だけで終わって良いのですか。

B君:そりゃ、駄目だ。

A君:他のセラミックス産業の話。あるサイトによれば、
セラミックス産業は、耐火物、セメント、陶磁器、炭素製品とファインセラミックスに分かれるそうです。

B君:耐火物、セメント、陶磁器については、
セメントがかなり性格が違う。この産業からのCO排出量は、何と言っても、原料が石灰石(=炭酸カルシウム)で、それを他の原料と混合して、高温にして作るもの。その際、石灰石が分解してCOが放出される。

A君:セメント協会のサイトによれば、
http://www.jcassoc.or.jp/seisankankyo/seisan02/index.html
日本のCO排出量の9%ぐらいがセメント産業から排出されているのでは、とのことで、世界全体では8%とか。

B君:となると、やはり、かなりの新技術が開発されることが望ましい。しかし、セメントは、使用する原材料がかなり安価で豊富な石灰岩。これに代わる原材料が無さそうだ。

A君:地球の元素構成から言って、石灰岩は、非常に豊富な原料ですからね。大気中のCO
も最終的には、海洋に吸収されて、石灰岩になる可能性が高いですから。

B君:まあ残念なことが、石灰岩の組成は
CaCOだけれど、本当に必要な原料はCaOであって、COは不要だということだ。まあ、セメントを使う限りにおいて、COは放出されてしまう。

A君:この問題の解決策は、相当難しいですね。CO
を出さない材料を作るという発想を止めて、逆にCOを空気中から吸収して固形化するという新材料が、このところ結構発表されていますね。しかし、Webから「COゼロ、固化、新材料」と入れても出てきませんね。

B君:やはりこの類いの話は、まだ、日本では、余り知られてないのかもしれない。ここを見ていただきましょう。このサイトは、経産省、NEDOが主催している国際会議、ICEFのサイト。C先生は、このTop 10イノベーションの担当者。
https://www.icef-forum.org/jp/top10/

A君:それを実現したのが、Solidiaという企業です。
https://www.solidiatech.com/solutions.html

B君:なんと、
水ではなく、COによって固化するセメントを開発したとのこと。どうやら、普通のセメントの硬化には28日が必要とされているけれど、このセメントは、24時間で固まるらしい。

A君:しかも、
水を使わないですむことで、時間の節約だけでなく、予算の節約にもなる、と主張していますね。

B君:強度がどのぐらいなものなのか、また、強度の経時変化がどうなのか、まだまだ良く分からないね。

C先生:そろそろ、話題も尽きたようだ。いずれにしても、
セラミックス関係の研究者にとって、新規材料を見出すことによって、製造時から使用時、そして、ライフサイクル的にCO削減の実現ができることが、極めて重要な時代になった。しかし、まだ、材料関係者が、そのことを十分に考慮しているとは思いにくいのも現実だ。だからこそ、ある意味でチャンスなのだ。
 セラミックス関連の技術をもう一度見直して、CO
削減をどのように実現するかそれを、じっくりと考え、新しい発見をしていただきたい。
 11月27日のセラミックス協会での講演では、
30分しか時間が無かったために、本当に、少ししかお話ができなかったので、今回、その補填として、このような記事を書いてみた次第。セラミックスが専門ではない方々には、ご自分の分野でも、『CO削減』が重要な時代になるのは確実だ、と筆者は断言しておきたい。ということで、今回は終了。
 もし、
「他のエリアでの未来論を、市民のための環境学ガイドに書け」、といったご希望があれば、Facebookの『環境学ガイド』にご登録いただき、そこでご意見をいただけば幸いです。