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 材料によるグリーンイノベーションと支援策     03.14.2010
     
  − 地球環境とセラミックスの関係を例に




 筆者の最初の専門は、ガラスを中心としたセラミックス分野である。40才前半までは、それを80%以上やっていた。今や、先端的な成果へのアンテナすら持っていないが。

 今回、セラミックス技術関係の図書を発刊することになったようで、その中で、セラミックス材料と地球環境との関わりを書くこととなった。

 歴史的に考えてみると、セラミックス材料が環境面で果たした貢献には重要なことが多い。環境問題が地球環境問題へと変質したとき、どのような貢献ができるのだろうか。これも、重要な課題のように思える。

 このような背景があって、「地球環境とセラミックス」の歴史を、まあ極一部だとは思うが、チェックしてみた。

 最終的な目的は、地球環境問題を経済の駆動力にしようというグリーンイノベーションの支援策。セラミックス関連の環境技術の歴史を少々振り返ることによって、これを例題として考えることによって、グリーンイノベーションの支援ができるかを考えたい。



地球環境問題

C先生:地球環境とセラミックスといった非常に広範なテーマに取り組むとき、われわれが常套手段として用いることが、歴史を振り返ることだ。今回もその手段を用いてみたい。

A君:地球環境問題といっても、最近は気候変動問題とそれに対応する低炭素化技術。しかし、それ以前だと、様々な問題があった。例えば、オゾン層の破壊に関わる問題。さらには、汚染物質の越境汚染とか。

B君:地球環境問題というと、1992年のリオのサミットで一般的な認識が高まったのだが、その当時、以下の9種類に分類されることが多かった。
地球温暖化
オゾン層破壊
酸性化
途上国汚染
汚染物越境移動
砂漠化
野生生物減少
熱帯林消滅
海洋汚染


A君:これだと、途上国汚染などが含まれているということもあって、ほぼ全ての種類の環境問題を含むという理解ですね。

B君:日本の歴史的な状況を振り返ると、やはり、公害問題では世界でもっとも汚染度が高かったように思う。それに比べると、途上国の汚染は、現状の汚染度という尺度だけで見ると、それほどでもないのかもしれない。

C先生:いやいや、汚染度という尺度をどう考えるかという問題だろう。日本という国の環境汚染が激しかったことは事実だけど、現状まで回復できたことは、これは、単に技術を開発し投入したからだけではない。むしろ、国土の状況が有利だったからではないか。「海洋に囲まれた急峻な勾配の国土」だということだ。河川が汚染されたのだが、それが海洋汚染になって、水俣市とか富士市田子の浦のように、浚渫を行わなければならなかった地域もあるが、多くのそれ以外の地域では、急流の河川水が海洋底にまで、流し出してくれたのではないだろうか。要するに、汚染度は、汚染量や汚染濃度ではなくて、回復の可能性で見るべきなのだ。

A君:米国の五大湖汚染のように、水の流れが遅いところでは、汚染は自然に分解することによってしか解決されない。となると、重金属類のようにもともと分解されない汚染源、あるいは、PCBのように太陽光がないと分解されないような難分解性物質による汚染は、未来永劫続く可能性がある。

B君:確かにその通りで、現時点だと、中国の汚染はそのような経路を取る可能性があるように思える。


セラミックス材料の環境への貢献

C先生:本題に戻って、このような環境汚染などの環境問題に対して、セラミックス材料が、どのような貢献をしたのだろうか。

A君:水圏の環境汚染に関しては、フィルターや
http://www.ngk.co.jp/C1/index.html
多孔質吸着材
http://www.chuden.co.jp/corpo/publicity/press2007/0906_2.html
などになりますか。

B君:気圏の環境汚染となれば、自動車の排ガス浄化用がもっとも大きいかもしれない。交通公害は、途上国でも今後最大の問題の一つかもしれない。

A君:飲料水に関わる問題だと、地下水にヒ素が多いバングラデシュとかの吸着剤が必要不可欠ですが、まだ完全だとは言えないけれど、無機吸着剤があります。

B君:飲料水では、ヒ素のリスクが高いので、ヒ素の対策は絶対に必要不可欠。

A君:自動車用の排ガス浄化となると、これは、セラミックス材料が非常に活躍したところではないでしょうか。
 まずは、排ガス処理の触媒担体、ディーゼル用のフィルターなど。

B君:加えて、燃焼制御のために使われる酸素濃度センサーか。

C先生:非常に多くの技術があるように思える。触媒といっても、単に未燃成分を処理するだけの酸化触媒、窒素酸化物まで処理する三元触媒、さらに、一旦吸着をしてから処理をするようなNOx吸蔵型触媒などなど。

A君:それらの歴史を説明しますか。


自動車排気ガス処理用セラミックス

C先生:社団法人自動車技術会という組織に、日本の自動車技術240選というページがあって、そこに、排ガス浄化技術、環境技術も取り上げられている。
http://jsae.jp/autotech/menu11.html
 まずは、これを読んでもらうのではないか。

A君:それでは、対象のHPをご紹介。
 酸化触媒などはなくて、240選になっているのは、三元触媒からです。
三元触媒
http://jsae.jp/autotech/data/11-1.html
NOx吸蔵還元型三元触媒
http://jsae.jp/autotech/data/11-2.html
スーパーインテリジェント触媒
http://jsae.jp/autotech/data/11-4.html

B君:セラミックスとの関係を述べれば、触媒担体は、いつでもセラミックス系の材料だった。最初の三元触媒は、1977年にトヨタによって開発されたようだが、粒状のセラミックスの表面に白金ロジウム系の活性成分が担持されいていた。この粒状セラミックスが、金属ケースに収められて、排気管の中程に設置されていた。

A君:NOx吸蔵還元型三元触媒は、白金などの触媒活性物質の隣に、NOxを吸蔵するようなアルカリ類、アルカリ土類、希土類酸化物を一緒に載せたようなもの。1994年にトヨタが開発したが、この時代には、触媒担体は、モノリス型あるいはハニカム型と呼ばれる形状になっていた。

B君:この触媒担体を作っているのは、日本だと日本ガイシ。国際的にも、極めて少数の企業しか製造できていない。
http://www.ngk.co.jp/product/automobile/gasoline/honeyceram.html

A君:メタル、多分ステンレスでハニカム状にしたものも無い訳では無いのですが、最近、セラミックス担体の壁の厚みが信じられないぐらい薄くなって、今や0.05mmとティッシュペーパーと同じぐらいになってしまった。ステンレスの担体は、背圧(通過するときの圧力損失)が少ないというメリットがあって、かなり前のスカイラインGTR用などには使われていました。しかし、ここまで来ると、ステンレスを使うメリットも消えたのではないですか。

B君:メタル系は、熱容量が少ないから所定の温度まですぐ上がるといった主張をしている。さらに、厚さも、0.02mmだそうだ。

A君:最後に、スーパーインテリジェント触媒。これは、ペロブスカイト系のセラミックスの結晶構造の中に、貴金属を入れて、その貴金属が結晶から出たり入ったりすることによって、触媒粒子の粒径が大きくならないようにした触媒。

B君:これはなかなか面白くて、ダイハツの田中裕久氏などが開発したのだが、
http://ilab.k.u-tokyo.ac.jp/seminar/tanaka.pdf
自己再生機構を持っている。インド哲学にのっとって開発したのだそうだ(Bの独断かもしれないが)。

C先生:いずれの三元触媒にしても、空燃費(ガソリンと燃焼空気の混合比)を理論値に近いところで細かく制御することが必要だ。そのための酸素センサーも非常に重要な役割を果たした。

A君:ジルコニア型の酸素センサー。
http://www.horiba.com/uploads/media/R008-09-055_01.pdf

B君:歴史は長いように思う。こんなページがある。
http://sts.kahaku.go.jp/sts/detail.php?&key=101210161041&APage=393

C先生:その通り。そのセンサは1977年製のようだ。それは、先ほど紹介された三元触媒装置が最初にクラウンに搭載されたときに、まさに必要なセンサーとして同時に搭載された。

A君:その当時の日本の材料開発は、現在からみても、なかなかのレベルだった。


環境エネルギー技術用セラミックス

C先生:個人的には、1975年から77年までの2年間、米国で、NaS(ナトリウム−イオウ)二次電池、今の名称だとNAS電池と呼ばれる電池に使われるベータアルミナというセラミックスの研究をやっていた。
 それ以来、エネルギー用や環境用の材料に関心をもってきた。

A君:NAS電池が実用になったのは、日本ガイシが開発に成功したから。
http://www.ulvac-uc.co.jp/prm/prm_arc/049pdf/ulvac049-02.pdf

C先生:この電池が実用になるかどうか、それはセラミックス材料の製造管理がどのぐらい行われるかに掛かっていると思っていた。最初は、スイスなどの研究所がリードしていたように思うが、最終的には、やはり日本のセラミックスメーカーが完成にこぎつけた。

B君:動作温度が中温(約300℃)で、この温度をほぼ常時維持しなければならないところが大きな弱点かと思っていた。

C先生:常時充放電をしていれば、自己発熱でなんとかなる。風力発電の揺らぎを止めるといった用途には、常時動作しなければならない、という意味で、適しているのかもしれない。
http://www.meti.go.jp/committee/downloadfiles/g40603b60j.pdf

A君:ベータアルミナの応用は、NAS電池にほぼ限定されていますが、ジルコニアは様々な用途に使われるようですね。

C先生:ジルコニアという素材は、実に非常に優れた化学的・物理的な性質を持っている。もともと素性がよいのだ。素性がよいということは、実用上非常に重要で、多くの応用が利くことになる。

B君:最近だとSOFC(固体電解質型=Solid Oxide-electrolyte Fuel Cell)の燃料電池が話題になりつつありますが、これもオリジナルはジルコニアを使っていた。

A君:ジルコニアだと動作温度がどうしても高く、800〜1000℃ということになるので、多少でも動作温度を下げようということで、La0.8 Sr0.2 Ga0.8 Mg0.15 Co0.05 O3-δなどという複雑な化合物が使われています。

B君:その組成だと、資源的にどうしても問題。特に、Ga(ガリウム)とCo(コバルト)だ。

C先生:ジルコニアだと、Zr(ジルコニウム)と安定化に使われるY(イットリウム)の2種類が必要な元素だ。Yの変わりに、Sc(スカンジウム)などという不思議な元素を使う場合もあるが、資源的にはYだろう。
 Zrは、ジルコンなどという酸化物の状態で天然に存在する。化学式で書けば、ZrO2、ZrSiO4だ。Yは希土類だが、そんなに少ないとは思えない。しかし、問題は、希土類だけに、やはり中国が世界の生産を独占していることだ。
http://www.jogmec.go.jp/mric_web/jouhou/material/2008/REE.pdf

A君:いずれにしても、エネルギー技術用の素材は、コスト的にみて、さらに、地球上の賦存量からみてどのぐらいの元素量が使えるかが非常に大きな要素。

B君:最終的には、やはりジルコニアになるというのが、われわれの結論だ。

C先生:しかし、それでも安心はできない。ジルコンの主たる産地はオーストラリアだが、可採埋蔵量は50年分ぐらいしかないようなのだ。都市鉱山ではないが、やはり国内に存在している資源をいかに再利用するか、という考え方が必要なのだろう。すぐにリサイクルという訳には行かないが、将来に向けて備蓄をすることが必要なのではないか。

A君:ジルコニアの最大の用途は、耐火物ですね。54%ぐらいのようですが。特に、ガラス溶融用の煉瓦としてはもっとも耐久性が高い。使用済みの煉瓦などは、やはり再資源化されているのでしょうね。
http://www.nirs.go.jp/db/anzendb/NORMDB/PDF/2615-10.pdf
http://www.jogmec.go.jp/mric_web/jouhou/material/2008/Zr.pdf

B君:鉱物資源のマテリアルフローとしては、このHPを見れば、ほとんどすべての情報がある。
http://www.jogmec.go.jp/mric_web/jouhou/material_flow_frame.html


自動車排ガスに戻る

C先生:話がいささかずれた。自動車排ガス関係で次ぎは?

A君:ディーゼル排ガスフィルター。実際には、ディーゼルエンジンから出る煤などの微粒子を取るフィルター。

B君:ハニカム構造の触媒担体の穴を交互にふさいだもの。
http://www.ngk.co.jp/invest/ecology.html
A君:材料としては、SiCなどを使ったものが多い。
http://www.ibiden.co.jp/product/ceramics/dpf.html
 それは、集めたカーボンの粒子を燃やして処理しなければならない。そのため、耐熱性や熱伝導性が高くて、熱応力にも耐える材料でないと、使えない。

C先生:自動車排ガス浄化関係はこんなところにして、次に行こう。


固体電解質型燃料電池

A君:話題の連続性を考えると、ジルコニアつながりで、固体電解質型燃料電池に行くのが良いのでは。

C先生:確かにそうだ。すでに先ほどB君が若干説明し始めたが、この燃料電池ができると、燃料の種類を問わない。液体燃料でも燃やすことができる。

A君:その理由は、ジルコニアなどの酸素イオンが固体の中を通る材料を使うから。酸素が動いて固体から供給されれば、燃料側は燃えるものなら、なんでも良い。

C先生:この燃料電池の原理は、酸素センサーとして使い出す以前から分かっていることで、誰が発明したのやら。

A君:多少調べたのですが、発明者不明ですね。

B君:このところ、SOFCのスタック(=本体)の開発をやっていると思われる企業は以下の通り。
TOTO
http://www.toto.co.jp/company/press/2005/10/06_1.htm
京セラ
http://www.kyocera.co.jp/news/2006/0505.html
日本ガイシ
http://www.ngk.co.jp/invest/energy.html
日本特殊陶業
http://www.ngkntk.co.jp/news/2009/pdf/20090910b.pdf
http://www.ngkntk.co.jp/environment/pdf/2009_21_24.pdf
新日本石油(実は京セラ製か?)
http://www.eneos.co.jp/company/rd/intro/fc/e71_cordinfc_gijutsu.html

C先生:発電効率が高いのがこのSOFCの特徴だが、データは?

A君:DC端発電効率がなんと60%というデータがあります。これに熱回収を入れたら、90%ぐらい行くのでは。

B君:DC端なので、ACに変換しなければならないので真の効率は落ちる。いずれにしても、非常に高い発電効率だ。現時点ですでに発売されているEneFarmなどの固体高分子型PEFCの燃料電池だと、発電効率は30%ぐらいか。

A君:エネファームのウェブによれば、
http://www.ene-farm.info/products/
発電効率は出力700Wのときに31.5%、250Wのときには、27%。
総合効率は、700Wのときに72%、250Wのときには54%。

B君:いずれにしても、SOFCは、日本のグリーンイノベーションの基幹をなす設備のように思える。


その他の候補 電池など 支援策・推進策

C先生:ここまで検討をしてきたが、そろそろ、それならイノベーションを起こすのにどうしたら良いか、ということを議論してみたい。
 しかし、その前に、これまで述べてきた以外にも、候補がありそうだ、ということを表にでもしたい。

A君:応用分野がいろいろとありますね。()の中に、素材名を入れますか。

 大型半導体(GaN、SiC)
 熱電変換素子(色々)
 大型キャパシター(色々)
 膜分離材料(色々)
 防汚、光触媒(TiO2など)
 色素増感、水素発生(TiO2など)
 反応温度の低下(色々)
 新型二次電池(Mgなど色々)


B君:素材としては本当に色々あるのがセラミックスの有利なところ。使える元素が多いから。

A君:リストの最後にある新型二次電池ですが、この検討を行ってみると、地球上の元素が90種程度しかないことに限界を感じます。

C先生:200年前にボルタが電池を作って、それ以後、様々な人々が新型の電池を創るべく努力をしてきた。しかし、なかなか良いものがなかった。
 ニッケル水素二次電池、リチウムイオン二次電池と、2種類も実用になる電池ができたこと自体が奇跡とも言える。

A君:リチウム二次電池の発明者は、Co酸化物が正極に使えることを提案したGoodenough(1980年)、白川英樹氏がノーベル賞をとったポリアセチレンが負極になることを見出した吉野彰氏(1981年)、でしょうか。そして、1990年代になって現在使われているものとほぼ同じような形式のものに改良された。

B君:電池という比較的単純とも思える製品なのだが、現在は、負極にはグラファイトが使われているし、正極にしても、Coを使うのではコストが高く、また、安全性の観点からも、自動車用としては、Mn、NiやFeなどの酸化物系になろうとしている。

C先生:原理的な発明が、すぐには実用にならないのが、材料の世界。だから特許を取ったとことで、なかなか儲からない。

A君:ニッケル水素電池は、もともと、ニカド電池があって、いずれも、ニッケルの2価・3価の価数変化を使っている。ニカドだと相手として、カドミウム(Cd)の金属(0価)と2価との価数変化を使っていたのだが、ニッケル水素電池では、水素の0価、1価の価数変化を使う。それには、水素の分子を固体として電池の中に閉じ込めることが必要不可欠で、ニッケル吸蔵合金というものの発明が必須だった。

C先生:水素吸蔵合金だが、水素は鉄を脆くするとして敵視されて研究されていたが、金属が水素を吸収することは、長く知られていた。その発想を変えて、積極的に水素を吸う金属の研究が行われたのが、1960年代に米国オークリッジ研究所で始まった。

A君:米国のエネルギー省の研究所ですね。職員総数4200名、そのうち、科学者が1500名とか。

B君:その後、世界中で研究がおこなわれた。比較的最近のことになるが、水素燃料電池自動車用に水素を自動車に搭載する方法としても検討されたのだが、やはり重すぎることと、給油いや給水素に時間がかかりすぎることで、駄目。水素を燃料とする自動車は、結局、実現されそうもないので、研究はまたまた不活性化。

C先生:しかし、ニッケル水素電池は、水素吸蔵合金の最大のかつ最良の応用だったという訳だ。

A君:カーボンナノファイバーなどに吸着させて水素を固体として貯めようという技術開発も行われた。これが水素自動車用になるとはとても思えないですが、ニッケル水素電池用などには使えるのかも。

B君:ナノカーボンは、リスクがあるとされているので、そのような実用品への応用は極めて難しいのではないか。特に、日本では。

C先生:かなり話がずれたが、新型二次電池として、リチウム、水素を使うものは、もう可能性が低いのかもしれない。となると、A君が言うように、別の元素が必要だということになるが、ナトリウムだとすでに述べたように、NAS電池(ナトリウム−イオウ電池)があるが、動作温度が常温ではないので、実用上難しいかもしれない。

A君:何を電池に使うか。これは、性能がすぐ決まってしまうもので、リチウムの次は何か、と言われると、ひとつはナトリウムの相手をイオウ以外にすることなのです。すなわち、遷移金属酸化物にリチウムイオンが出入りするということをナトリウムイオンにやらせたい。しかし、なかなか旨く行かない。

B君:しかし、ナトリウムイオンが出入りできるといった材料があるかどうか、もう一度、最初から考えるということは重要だ。何か見つかったとしても、実用化には、20年掛かるだろうが。

C先生:ナトリウムが駄目だとすれば、次は、マグネシウム以外にない。本当に元素が限られているからそうなるのだが。

A君:マグネシウムを使った新型二次電池の研究は、C先生が研究総括を務めているJSTのCREST研究でも行われていますね。

C先生:京都大学の若手、内本氏が精力的にやってくれているが、このような課題に取り組む研究者が少ない。

A君:電池も総合科学なので、論文の生産効率が低いのでしょうね。

B君:業績最優先主義の一つの欠陥が見えているということか。

C先生:メディアあたりがもっと取り上げてくれると、多少は違うのだが。論文の数だけが勝負という現在の成果主義は、やはり根本から考え直して貰いたい。

A君:新型二次電池以外でも、材料開発というものが基本中の基本です。しかし、新素材探索という研究は、本当に当たり外れがあるし、しかも、本当の意味で出口=製品にまで到達するのが、20年掛かる。

B君:先ほど、オークリッジ研究所の話が出たが、国立研究所というところをそんな基礎研究の場にするというのはどうなのだろう。

A君:何か沈滞した雰囲気の研究所になりそうだ。最近の新物質となると、東工大の細野秀雄氏のところで色々と出ていますが、その理由は?

B君:細野氏は、JST/ERATO研究などで多額の研究費を取った。そのとき、おそらく、個々の研究者のマインドの20〜30%は自由な発想を持てという管理をしたのではないか。

C先生:当たり外れがある分野であることを意識して、失敗を成功につなぐといった発想が必要であることに間違いはない。白川英樹氏のノーベル賞にしても、失敗実験がきっかけになっている。

A君:自由な発想を維持しつつ、かつ、効率的に研究を進めるには、ある程度、多額な研究費が必要。

B君:この手の話題になると、毎回、自由な研究費の存在が不可欠という話になるのですが、残念ながら、どうしても主流にはならない。

C先生:若手にある程度の研究費を持たせるのは重要。当然、どうやってその発想を活かすかという仕組みが重要。特に、新材料開発は、未だに、狙って出るというものでもない。ある確率で出るとしか言えない。確率の分母になるのは、チャレンジの数。これを増やすことが重要。そして、分子を大きくする要素は、やはり研究の自由度に加えて、失敗を失敗だと思わない研究者のマインドだ。この2種の掛け算かもしれない。