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 Circular Economy とパリ協定  
     
 関係あり? なし? その関係を再チェック    09.30.2018
 



 このところ、リサイクル関係からは距離を置いて、パリ協定の本質のような議論を中心に据えて、様々な議論を行ってきたつもりです。

 しかし、なぜかリサイクル関係者の前で、パリ協定の話をしなければならないような状況になったもので、パリ協定と同じ2015年の12月にEUが採択したCE=Circular Economyについて、再度、事実を確認することが必須という状況になりました。これまでの知識では、恐らく、どうも不足気味で、議論に耐えられそうもなかったのです。

 そのため、そもそもCEとは何か。パリ協定とCEとは、なぜ全く独立に記述されていなければならないのか。SDGとの関係はどうなのか、などについて、再チェックをすることにしました。

 原点に戻ることが必要だと思いますが、以下の文書が、2015年12月に公表されたCircular Economy関係の公式文書だと思われます。これが出発点になります。

Circular Economy の文書 いずれも 02, Dec., 2015の日付です。

EUによるプレスリリース
http://europa.eu/rapid/press-release_IP-15-6203_en.htm

Proposals on the circular economy
https://ec.europa.eu/commission/priorities/jobs-growth-and-investment/towards-circular-economy_en

Communications on the circular economy
https://ec.europa.eu/commission/publications/communications-circular-economy_en

Factsheets on the circular economy
https://ec.europa.eu/commission/priorities/jobs-growth-and-investment/towards-circular-economy_en


C先生:まだ、このWebサイトでは取り上げていないのだけれど、中国が使用済みのプラスチックの輸入を禁止したため、日本のリサイクルシステムが全面的に依存していた中国への輸出がストップした。昨年の12月のことなので、10ヶ月ほども前のことになる。しかも、それなら、ベトナムやタイに輸出するか、ということだったと思うのだけれど、ベトナム・タイも、どうやら中国に同調した気配。となると、さらに発展途上国であるカンボジア・ミヤンマーなどに輸出するのか、となると、それには、まだまだ体制の確保が不可欠。フィリピンはどうなのだ、などなども検討が不可欠。これ以外にも、海洋プラスチックの生態系影響などの問題もあって、プラゴミは、今や、満身創痍の状況で、消滅する運命にあるのかもしれない
 一方、EUは、2015年の12月にCircular Economyという思想を公表した。基本文書は、すでに上に紹介した通りだけれど、それ以外にも、多数の関連文書を見つけることができる。
 しかし、CEを実現するためには、そのためのエネルギーをいかにゼロカーボン化するかという問題が、Sustainabilityの重大問題として付随するはずかのだけれど、どうも、そのあたりがクリアーではない
 今回の記事の一つの目論見が、CEの検討過程で、「なぜ、パリ協定がらみの検討が、メインの原則の一つとしてCEに入って行かなかったのか、個人的に納得できる状態になること」としよう。

A君:最近、「ヨーロッパ諸国は、プラスチックに対しても、新しい戦略を作らなければと考えている」、という感覚が伝わってくるのですが、EUがこのところ、市場や産業の将来についてどのようなことを考えているのか、それは”Growth”が全体のタイトルである次のサイトが良さそうです。このEU向けの文書は、22ヶ国語で読むことができるようです。
https://ec.europa.eu/growth/industry/sustainability/circular-economy_en

B君:ちなみに、22ヶ国は、FR DE DA ES NL IT SV PT FI EL CS ET HU LT LV MT PL SK SL BG RO HRと表示されているのだけれど。

A君:これらは言語コードと呼ばれるもので、FR:フランス、DE:ドイツ、DA:デンマーク、ES:スペイン、NL:オランダ、IT:イタリア、SV:スロベニア、PT:ポルトガル、FI:フィンランド、EL:ギリシャ、CS:チェコ、ET:エストニア、HU:ハンガリー、LT:リトアニア、LV:ラトビア、MT:マルタ、PL:ポーランド、SK:スロバキア、SL:スロベニア、BG:ブルガリア、RO:ルーマニア、HR:クロアチア。

B君:EUの加盟国は現状28ヶ国。22を引くと、6ヶ国の言語がリストにない。しかし、アイルランドは英語、オーストリアはドイツ語。ベルギーはオランダ語のようなフラマン語という言語とフランス語なので不要か。しかし、スウェーデン語がリストに無い。キプロスでは何語を話しているのか、知らないけど、キプロス語というものはないようだ。ルクセンブルグ語というものもあるかどうか不明。しかし、多分無いのでは。

A君:ルクセンブルグ語も、あることはあるようですね。中部ドイツ語の一方言らしいですが、このところ、フランス語が混じっているとの話です。なぜなら、公文書はフランス語で書かれるらしいので。

B君:過去、フランスではなかなか英語を話してくれなかったけれど、このところ、英語で通用しますよね。スウェーデンも、キプロスも、ルクセンブルグも、英語が十二分に通用するのでは。

A君:キプロスも、一部にイギリス領があるので、当然でしょう。

C先生:まあ、脇にソレてしまったので、本題に戻るが、まずは、CEの内容を簡単にリスト化して欲しい。

A君:それだと、プレスリリースですかね。
CEの目的:これは要素は複数あるようです。

その1:まずは、EUの経済競争力を高めるために、自ら所有する資源はしっかり循環させて、新しい資源の供給限界によって、EUの経済が衰退することを避けたい。

その2:二番目が、その循環をEU内で行うことによって、雇用を確保したい。この雇用の確保については、労働力が不足気味の日本といささか状況が違うようで、移民問題も関係していないとは言えないように思います。

その3:三番目がEUの正義だとも言える「Sustainable Growth」を実現したい。この三番目に、当然、「CO2排出ゼロ」を目指すが含まれているはず。


手法:これは、簡単に言ってしまえば、"Closing the Loop"

行動原則:EUのサイロ(なかなか微妙な表現)に分けた形でパッケージングして行動する。
 これは、どうも、EUの環境関係の部局が、完全に一体化はしていないという表現みたい。
 この次に、気候変動と環境問題に取り組みを基本として、職の創生、経済成長、投資増大、社会的公正を実現する、という表現がある。

その4:参画したコミッショナー達のリスト。
 筆頭副委員長のTimmermans副委員長のKatainenコミッショナーVellaとBienkowska

その5:Timmermansのメッセージ。
 我々の惑星とその上での経済は、”採掘、製造、使用、廃棄”というスキームでは継続できない。資源のすべての価値を使い尽くす仕組みが不可欠”。この仕組によって、新しい機会と職の創出が可能。

B君:大体分かってきたような気がする。Circular Economyの上位概念に気候変動が存在しているため、CEの中に、気候変動を組み込むことは、余りにも当たり前なのでそれを避けた。さらに、気候変動と全く無関係ではないが、重要度がむしろ別の観点である課題、例えば、Food Wasteであれば、これは温暖化への影響がどうこうというものでもないけれど、社会全体から見れば、あるいは、公平公正な社会という観点から見れば重要な課題を重視したかった。

A君:そうかもしれませんね。参考になるかどうか、必ずやらなければならない課題のリストがあるのですが、それを記述しますか。
ファンディング: Horizonの枠組みとStructural Fundから投資。
食品ロスの回避:SDGsの記述に対応する。
二次的な原料(多分、再生原料)の品質基準を作る。
エコデザインの2015−2017を推進する。特に修復性(reparability)、耐久性、リサイクル性、それに、エネルギー効率を向上させる。
肥料の品質基準を変更:有機廃棄物などを利用した肥料の基準を統一。
プラスチック戦略:リサイクル性、生分解性、有害添加物、海洋プラスチックゴミの大幅削減。
*水資源のために水の再利用を推進:制度的な対応を含む。


B君:何か、日本のリサイクル系のこれまでの動きは、CEの枠組みに比べると、遥かに局在化していているように思える。どうしてそんな感じを持ってしまうのか、と言えば、これまでの日本におけるPETのリサイクルは、極論すれば、飲料メーカーの都合に合うように、古い枠組みに縛られている弱みを突いて、国、自治体を巻き込んで行われただけプラスチックのリサイクルは、すべて中国に送ればよかったので、用途についての妥当性の検討がほとんど無かった。そして、日本のリサイクルの本命である金属系のリサイクルは、実際、この分野以外は、国内で商売にはならない。そのため、小型家電リサイクル法などができたのだけど、どれほど多種類の金属がリサイクルできるようになったのか。極論すれば、あの法律は本当に必要だったのか、かなり疑問。

A君:確かに、その通りですね。CEでは、エコデザインの中に、エネルギー効率の向上が謳われています。ということは、CEを作った担当者は、パリ協定の制定過程をしっかりと把握していて、中身はそれなりに理解しているのかもしれません。

B君:そうかな。まあ、ちょっと怪しい。パリ協定については、2030年ターゲットぐらいはしっかり理解しているとは思うけれど、2050年における世界半減、先進国80%削減。さらには、今世紀後半、多分、2080年頃のNet Zero Emissionについては、やはり、いまだ考慮の外のような感触だな。

A君:一つ言えるのは、EUも実は、局に分かれていること。気候変動関係は、昔は、環境総局が担当していたけれど、Connie Hedegaard という女性が初代の局長になったのが、新設された気候行動総局(Climate Action in the European Commission)で、今は、ここが気候変動関係を担当しています。Connieの履歴を調べると、European Commissioner for Climate Actionに着任したのが、2010年2月とのこと。
https://en.wikipedia.org/wiki/Connie_Hedegaard

B君:気候行動総局ができたことも、Circular Economyを担当している環境総局が、気候変動関係と距離を置かなかければならなくなった理由の一つかもしれない。2010年まで自分たちの担当分野だったのだから、ある意味余計にそうなのかも。

A君:つまらない話ですが、こんなことがしばしばあり得るのが、行政の世界。EUも政府みたいなところですからね。

C先生:今後、Circular Economyについて、EUがどのような未来像を考えているのか、それを知る必要がありそうだ。それで、終わりにしよう。

A君:こんな文献が見つかります。もっとも直感的なのが、これ。なぜなら、infographsだからです。要するに、イメージ集。
https://ec.europa.eu/eurostat/cache/infographs/circulareconomy/
 2つの図を示して終わりにしますか。まずは、現状です。


図1 現状のLinear


図2 未来のCirculation

B君:図2を見ると、なにか、日本の循環型社会基本法の世界と同じような気がする。さらに細かい発想のようではあるけれど。

A君:循環型社会形成推進基本法ができたのは、2000年の6月。18年も前なんですね。この法律の趣旨として、「発生抑制=リデュース」、「再使用=リユース」、「再生利用=マテリアルリサイクル」、「熱回収=サーマルリサイクル」と分類し、発生抑制を最優先し、再使用を二番目にするとの合意だった。しかし、実際には、リデュースは多少行われたが、リユースについては、ほとんど行われるようにはならなかった。それは、飲料業界などの基本的なスタンスと整合しなかったからですね。

C先生:残念ながら、その通り。そもそも、PETボトルで供給し、PETボトルはリサイクルをする、というビジネスモデルが、もっとも経済的な合理性は高い上に、一般市民からの受容性も高かったのだ。

A君:日本という国の特徴ですが、日本ほど、「利便性の向上」という言葉が「進化」と同義語である国は他にないですね。その意味では、PETボトルは、日本にもっとも適した容器だった。しかし、PETボトルのままの飲料では、2050年を越えることはできないだろうと思いますね。

B君:まあ、確実にそうだろう。石油を原料としているプラを燃やせば、石油を燃やしたことと同じですから。燃焼というと許されないけれど、例えば、廃プラをコークス炉に入れて、再度、原料化した、と言うと、しばらくは許容されるかもしれないけれど。

A君:と言う訳で、このところ、PEF(ポリエチレンフラノエート)といって、植物起源のプラスチックの検討を行っているメーカーがありますが、バイオプラも、正直な話、持続可能性が高いとはなかなか言えないですから、どうするのでしょう。ブラジルのサトウキビは、比較的持続性が高いと考える人が多いのですが。

B君:海洋汚染源としてのプラスチックが話題だけれど、最初はストローだけが問題だろうけれど、今後、2050年頃までに、人類のプラスチック戦略を全部考え直すことが必須だろう。

A君:プラボトルの使い捨てを最初に禁止しそうな国がフランスですね。それにフォローするのが、ヨーロッパ各国。そして、最後に残るのが、アメリカと日本。この両国は、当面、アルミ容器に切り替えるのでは。

B君:石油原料をバイオ、可能性があるのは、多分木材を原料とすることですが、それに切り替えるのも、無いとは言えないけれど、実は、なかなか難しい問題が残る。それは、森林の保護との折り合いをどのように付けるのか

A君:いつもの話の繰り返しになりますが、ヨーロッパ各国、特に、フランスは、「人類が利便性ばかりを追求してきたから、こんなことになった。人類にとって若干不便な方が、実は、健全なのだ」と思っているようですから。

C先生:そろそろ結論が出たようにも思える。プラの歴史を俯瞰すると、結局のところ、最盛期はすでに経過してしまったのかもしれない。CEが本当は、ある意味、プラとの付き合い方の示した第1段階をだったと思うのだけれど(第0段階が日本の循環型社会だった)、日本人でCEを知っている人はほとんどゼロなので、今回の中国ショックのプラ廃棄物輸入禁止がその第1段階だった。この影響は大きいかもしれない。中国は、今や、何を考えているのかと言えば、すでに米国と対等の関係だと思っているのだろう。人口を比較すれば、確かにそうも言えるし、工業製品の生産については、確実に米国を抜いている。もはや廃棄物を原料とすることは不要だ、と言われても、まあ、その段階に来たかな、と思える。ベトナムが同じような態度に出るとは、実のところ思っていなかった。先日、ベトナム中部を見に行ったが、その経由地だったハノイが、韓国の進出によって、完全に立派な大都市化を完成させていたのには驚いた。しかし、実に巨大なサムソンの工場の周辺では、やはり、地元小企業からの排水と黒煙がまだまだ目立った。まだまだ混合状態ではあるようだったので、中国のプラゴミ回避にすぐにフォローするとは思えなかったのだ。まあ、タイ・ベトナム以外のアジア諸国への輸出はゼロにはならないだろうが、かなりの割合を日本国内で処理をするしかないように思える。果たして、有効活用ができるのだろうか。今更のごとく、すでに18年を経過した循環型社会基本法を全面的に改正して、日本版CEを作り、未来の姿を明示すべきなのではないだろうか。
 最後になるけれど、EUは、現状の解析や未来像について、色々と検討をして公表をしている。すでに示されたInfographs以外のサイトを示して終わりとする。

持続可能性全般について。
https://ec.europa.eu/eurostat/documents/8105938/8292490/communication-next-steps
-sustainable-europe-20161122_en.pdf/427f429a-5bc7-4476-a684-09da17ebc24f


物質循環のフローの現状について。
https://ec.europa.eu/eurostat/web/circular-economy/material-flow-diagram