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    サーキュラー・エコノミー その1   06.28.2020
       EU&米と日本の根本的相違



 EUがサーキュラー・エコノミーという言葉を使い始めたのは、2015年12月のことであった。   ”Closing the loop"-An EU action plan for the Circular Economy という文書を公開したことが最初である。この"Closing the Loop"が最大の鍵であった。
 一方、
日本の循環型社会は、2000年(平成12年)に循環型社会基本法ができたことでほぼ完成したと考えられる。もっとも廃棄物の循環に関しては、それ以前からかなり問題になっていた。それは、廃棄物の大規模な不法投棄が日本各所で行われたからである。場所としては、例えば、瀬戸内海の豊島、青森岩手県境などである。
 
2000年頃に各種リサイクル法は作られていて、容器包装リサイクル法(2000年完全施行)家電リサイクル法(2001年完全施行)、の2つが先駆と言える。そして、多くのリサイクル法が整備され、この系列で最後になったのが、小型家電リサイクル法(2013年施行)である。
 しかし、
日本におけるこれらのリサイクル法と、EUのサーキュラー・エコノミーは、いささか主張が異なるものである。もっとも単純に表現すれば、日本のリサイクル法は、純粋に廃棄物の処理に関する法律。一方、EUのサーキュラー・エコノミーは、地球の資源限界までを視野に入れた法制度。
 日本の法制度がそうなっている理由は、恐らく、
廃棄物と資源とでは、主管官庁が違うからである。今回のコロナでも、官庁間で色々な見解の違いがあったようで、そろそろ、現在の日本の行政の枠組みは、より統一的な姿に変更すべき時期に到達しているのだろうと思われる。
 しかし、今回の記事では、そのような記述は全面的にスキップして、「サーキュラー・エコノミーという言葉も、実は、変質しはじめていて、今後の地球社会にとって、極めて重要な概念になりそうだ」ということに注力して記述をしたいと考えてスタートする。さて、どうなるやら。


C先生:今回の記事は、
たまたま、「サーキュラー・エコノミー〜デジタル時代の成長戦略」なる本を買い込んだことから書くことになった。米国で書かれた本であると思われるが、その原題は”Waste to Wealth〜The Circular Economy Advantage”である。日本語での副題になっている「デジタル時代の成長戦略」は、どうも、日本語版だけの副題のようだ。少なくとも、英語の原題には影も形もないみたいだ。しかし、デジタルに弱い日本社会にとっては、良い副題のように思える。

A君:一応、Amazonでの紹介文を。
昨年、新装版というものがでていますが、実は、手元にあるのは旧版(2016)です。
 
新装版 『サーキュラー・エコノミー デジタル時代の成長戦略』(日本語) 単行本(ソフトカバー) 2019/10/3 ピーター・レイシー (著), ヤコブ・ルトクヴィスト (著), その他

B君:手元にある書籍は、2016年11月22日発行の最初のもの。確認した訳ではないけれど、新装版という呼び名から判断すると、恐らく、中身はほとんど変わっていないと思われる。

A君:それでは、若干の中身から。
サーキュラー・エコノミー的な発想で利益を確実に出そうと思ったら、これは、古典的にも同じですが、再生材料を上手に使うことが不可欠で、加えて再生用の材料を確実に入手するためには、「デジタル技術」によって、自社の製品を使っている人を確実に把握しておく必要があります。できれば、その製品をどのぐらい使っているか、何か、電子的なタグでも使って、利用回数まで分かると良いですね。こんなことが多少ともできそうな製品としては、我が国では、自動車ぐらいですかね。

C先生:個人的な話だ。
実は、この6月中旬で、現役を引退したのだが、後3年ほどは車でも旅に出ることに決めて、これまでの9年物のプリウスを現行版のプリウスに買い替えた。旅のターゲットは、東北・関東・中部ぐらいで、何か、日本の伝統的なモノを細かく巡るような旅をしたい。それはそれとして、この新車は、どこをどのように運転していたか、そのときの運転のマナーはどうだったか、車が自分で判定して記憶しているようだ。

B君:
日本の場合、「デジタル」の社会実装がどうしても遅れている。サーキュラー・エコノミーに必須の情報は、自社の製品を誰が使っているのか、そして、その使用状況はどうなのか。もしも、使用回数がほとんどゼロになったら、その製品を自社に戻してもらって、再生を行う、といったことが可能になる。自社で作った製品なので、その原材料の情報などは確実に分かっているし、そもそも最初から、再生して使うことを前提にその材料を選択しているのだから、最適な再生プロセスも分かっている。

A君:今回のコロナでもっともよく分かった
日本の状況ですが、「デジタル」への公的機関の対応がほとんどできていないこと。そんな状況だから、未だに”マイナンバー制度”の意味もなんだか分からないし、現時点でも「なんでも手作業が必須」という印象をぬぐえない。

B君:C先生は米国で2年ぐらい暮らしていますよね。どんな状況でしたか。

C先生:すごく昔の話だね。
30歳すぎに、ニューヨーク州にある米国最古の工科大学であるRensselaer工科大学にポスドク研究員として、約2年ほど滞在した。そのとき、現地到着後、まず、最初にやるべきことが、役所に行って、Social Security Number(=SSN)を貰う事これが無いと、大学から給料を振り込んでもらうために必要な、銀行口座も作ることができない。もっとも、就労可能なビザを持っていないと、この番号を貰えないが。まあ、米国には、戸籍という制度が無いので、こんな仕組みがないと、身分証明書も作れないし、州によるのかもしれないけれど、運転免許証の発行もして貰えない、というのが現実ではあるが。

A君:日本の免許から、米国の運転免許証が自動的に貰えるのですが。

C先生:いやいや。記憶では、長期滞在者の場合には、米国の交通法規の試験を受けて、それから、10分間ぐらいの運転実技試験があったような気がする。勿論、旅行者であれば、日本の国際免許で(何かあると日本の国内免許も提示が求められるのが通例であるが)運転が可能なはずだが、長期滞米だとそうはいかない。

B君:
SSNがあると、恐らく、国がすべての銀行口座を管理できることになる。すなわち、所得が確実に把握されることになる。ということだと、今の日本のようなズブズブのシステムが良いという人も多いのでは。まあ、海外の口座を使えば良いということになりそうだけど。ゴーンさんみたいに。

A君:ゴーンさんの現状は、どうもそう簡単な状況にはないような感触ですよ。スイスの銀行が、ゴーン口座を凍結する可能性もあるらしい、という記事を大分前に読みましたので。

C先生:本題に戻るが、実は、
サーキュラー・エコノミーもデジタル技術を十二分に使いこなさない限り、儲けには繋がらないということだ。しかし、この面での日本の実力は限定的だ。

B君:それでは、そろそろ実例をいくつか上げます。最初に確認したいことですが、
実は、サーキュラー・エコノミーはEUにその起源があるのですが、この本を書いたのは、アクセンチュアの関係者。そして、実例として出てくるのは、ほとんど米国の話

A君:EUでこの本に書かれているようなビジネスが行われているのなら、まあ余り驚かないのですが、米国でも最近ではこんな状況だということは、非常に重要な情報ですね。そろそろ実例を。

B君:その前に、サーキュラーエコノミーのルーツという第1部の第2章があるので、ここをスタートにすべきだと思う。

A君:第1部第1章は、確かに、「過去における無駄」の話ですから、第2章がスタートとなるのは妥当でしょう。

B君:ということで、
根幹にある理解は、こんなものだ。米国の一般的なマインドがこうなのか、という疑問は残るけれど。要するに、今後、地球という惑星が増加する人口を支え続けるのは無理になる。現時点で78億人ぐらいだと思うけれど、それが、2050年には95億人。そして、2100年には110億人をこの著者は予測しているようだ。

A君:すでに文明を享受している国であれば、現状を維持するということも不可能とは言えないのですが、まあ、
何につけても、モノには寿命があるので、新しく一定量を作ることが求められる。日本で古い建築物と言えば、「城」などがあるけれど、確かに、木材なども太いまま使っているので、長持ちはしますが、だからといって、それでも、今後、1000年そのままで行けるとは思えないですね。

B君:それに、最近の住宅だと、木造といっても防火のためにモルタルの家屋が主であって、これは、壊すしかない。重量コンクリートだと60年ぐらいはもつけれど、やはり、壊すしかない。

A君:文明をまだ充分には享受していない地域の代表がアフリカでしょうが、例えば、2050年までの人口の増大がもっとも可能性が高いのもアフリカですからね。
まだまだ資源が必要不可欠

B君:それが、
EUのサーキュラーエコノミーのもっとも根本的な精神だと思うのだ。サーキュラーエコノミーという言葉は「資源を回す」というニュアンスだけれど、本当は「新資源はできるだけ使わない」ことだと思う。

A君:製品には寿命があるけれど、古い製品を原料に使って、新しい製品を作ることで、初めて、サーキュラーエコノミーが実現できる。

B君:これまでサーキュラーエコノミーと言うとリサイクル。
リサイクルは、多くの場合、ダウングレード・リサイクルが普通になってしまう。要するに、リサイクルによって、得られる原材料は、リサイクル前の材料に比べれば、多少なりとも、品質劣化が必須である場合が多い。それは、廃棄物の場合に、ゴミをどこまで細かく分別することができるか、ということが問題になるから。

A君:それは、エントロピー増大の法則から言えば、絶対に克服できない事実ですね。
何をやっても、普通に使えば、エントロピー(乱れ)は増える。もし、エントロピーを減らそうとすれば、それには、エネルギーの消費(あるいは手作業)が必須となる。

B君:もし、
人間が屋久杉のように何千年も生きようと思ったら、エントロピーを下げる色々な工夫が必要で、まずは、移動できないことを受け入れることが必須。となると、食糧をどうやって確保するか、という動物ならではの問題が最大の問題になる。エントロピーと戦うのは、まあ、無理だ。

A君:製品のリサイクルの場合だと、
「最も重要なことが、リサイクルの実施である」ことを前提として、製品のスペックを作る。すなわち、「品質的価値」が低下しないような原料を用いて、最初の製品を作る。

B君:第二の条件として、
製品を100%回収できるようなビジネス体系を構築する。これが確実に機能すれば、なんとか商売にはなるかもしれない、という状況を作ることができるのだろう。

A君:具体的には、繰り返しになりますが、自社製品の使用者とその製品の利用状況を確実に把握できる状況を、
デジタル技術によって構築する。そして、使用頻度が下がってきたら、「その製品を引き取りますがいかがですか」、というメッセージが自動的に送られるシステムを作る。

C先生:それが今回の書籍の主たる主張だ。正しい指摘であることは間違いがない。しかも、アクセンチュアの調査・分析によれば、2030年までに一方通行型経済を続けると、資源需要増には対応できない。
天然資源の需給バランスが80億トンも需要増になってしまう。この資源不足量は、2014年における北米における総資源利用量にほぼ匹敵すると述べている。

A君:重大な問題であることは明らかですが、なんらかの方法によって、本当に回避ができるのか。

B君:それを実現するしかない。なぜなら、一方通行型経済モデルから脱して、
本物のサーキュラー・エコノミーに転換できた場合には、2030年までに4兆5000億ドルの経済的価値が創出できる、と主張している。

A君:しかし、それには、現時点で考えられないようなサービスが実現されていなければならない。例えば、
◎ユーザー間取引の促進、
◎未使用商品の収益化サービスの提供、
◎便利な買取オプションの提供、
◎製品の販売に代わるサービスの販売、

などなど。

B君:現時点では、カーシェアリングは高い拡張性と利便性を実現して、稼働率の低かった自動車を有効活用することから収益も生み出すが、
動かない自動車を所有することは、無駄。それを富に変える方法を創出すれば、企業と顧客双方に利益を生む。

C先生:
現状、新しく買った車は、無駄を毎日続けている

A君:
カーシェアリングを主力にすれば、自動車製造業はシュリンクするが、地球の資源限界を考えると、仕方がないことかもしれない。

B君:かなりインパクトのある実例が、
「レント・ザ・ランウェイ社」。米国全土にまたがる会員間で6万5000着以上のドレスと2万5000個の宝石を移動させるという方法で500万人におよぶ会員制度を構築し、10億ドルに近い企業価値を生み出した。

A君:当然、巨大な顧客データベースを構築して活用している。

B君:それこそ、年に何回かしかないパーティーで着るためだけに、それ用のドレスを毎回新たに作るのは大変にムダな出費かも。しかも、
1回着たら、同じドレスで高貴なパーティーには出られないことは確実。共同利用がベストであることは確実な分野だ。

A君:分野が全く違う例もあって、
SKF社は、「インテリジェント・ベアリング」を創出。ベアリングの稼働状況をモニタリングすることで、機械の故障が発生する前に、使用条件、例えば、温度、速度、振動、負荷などによって、「そろそろ故障してもおかしくない」、と思われるベアリングを、予防的にメンテナンスすることが可能になる。

C先生:
実は、まだ、この本の9%しか紹介していない。要するに、序文だけを紹介したに過ぎない。これから始まる第1部では、過去に成功をもたらした一方通行型経済成長モデルが近い将来「ガス欠」に直面すること、今後、限りある原材料や化石燃料を大量に消費することなく、新たな方法で価値を創出するサーキュラー・エコノミーの可能性を考察して、なぜ、それが可能であり、より優れたモデルになるかを探求する、ということになっている。アクセンチュア社は、120社の企業を分析して、5つのサーキュラー・エコノミーのモデルを見出したのだそうだ。
 とうことで、
この書籍は、新しい時代のビジネスのやり方、しかし、デジタル技術を最大活用した方法でのやり方を明らかにしている日本は、どうにもデジタル後進国だが、その後進性をぶち破るためには、各企業が、新しいサーキュラー・エコノミーに合ったビジネスモデルを作ることが必要不可欠だと思う。
 サーキュラー・エコノミーに合致したビジネスは、恐らく、CO
排出量もかなり少なくなって、パリ協定対応にもつながるものと推測している。
 以下、
この書籍で取り上げられている企業名をリスト化しますので、何をやっているのかチェックして、自社の今後の可能性を推測していただきたい。宿題ということです。
 ◇クレイラー・テクノロジーズ
 ◇アクゾノーベル
 ◇プロクター・アンド・ギャンブル
 ◇ゼネラル・モーターズ
 ◇デル
 ◇デル・アウトレット、
 ◇デル・リファービッシュ
 ◇エアビーアンドビー
 ◇ウーバー
 ◇リフト
 ◇Deliv
 ◇ピアパイ
 ◇ミシュラン
 ◇フィリップス
 ◇ソーラーシティ


 そして、これらの
勝ち組企業は、以下のような行動をしていることを確認していただきたい。
 △自社に最適なビジネスモデルを慎重に選択している。
 △新たなビジネスの実現や事業拡大に必要なテクノロジーを確保している。
 △サーキュラー・エコノミーの原理を効果的に取り入れ実践するために必要な能力を組織的に蓄えている。