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      最近の企業の環境対応の動向
         
リサイクル関係の方向性 11.21.2020



 米国のトランプ大統領は2019年11月にパリ協定から離脱しました。そして、次期大統領選挙で負けたにも拘わらず敗北宣言をしない状況ですが、バイデン氏が1月に大統領になれば、パリ協定に速やかに復帰することは、100%確実だと思われます。実は、米国の先進的企業は、ほぼすべてが、CO削減の重要性を理解しています。それもこれも、ESG投資が世界的な主流になっているからだと思われます。
 ESG投資は、パリ協定の合意とほぼ同時に始まったもので、それに貢献したことが、
各国の中央銀行や財務関係省庁が、TCFD(Task Force on Climate-related Financial Disclosures)なる組織を作り、気候変動がこれ以上酷くなると、保険業のようなものや、さらには、機関投資家なるももの成立しなくなると主張し、ESG(Environment, Society, Governance)を重視している企業にしか投資を行えないと主張したことが、キッカケでした。それをESG投資と呼びます。
 
日本においても、昨年の千葉県・長野県の台風被害、さらには、今年の熊本県の被害などを見ても、保険業というものが今後成立するのかどうか、かなり危ういことはすぐに分かります。実は、自宅の屋上にこれまで太陽光発電のパネルをのせていたのですが、すでに17年も使っていて、とうとう故障したもので、今後の台風のさらなる凶悪化を予測して、この10月に設置してくれた企業にお願いして、撤去してもらいました。
 というような訳で、
米国の先進企業では、”脱炭素ビジネス競争”が始まっているのです。そのご紹介は、実は、10月25日に記事にいたしました。今、読み直すとかなり読みにくい表記になっていますが、ご容赦を。
 
今回の話題は、実は、CO2ではなく、ちょっと前のトピックスである”プラごみ”です。最近、 ”サーキュラー・エコノミー”という言葉が一般的な単語になりました。この話題も、6月28日と7月5日に若干ご紹介しております。そして、本日の話題も、その一部と思われますが、世界的に見て、考え方が”プラごみゼロ”を目指す方向性へと変わっているようです。


C先生:本日の記事は、
日経ESGの11月号のCover Storyを参考にして議論をしよう。まず、”プラごみ対応”が世界でどんな状況になっているか。

A君:例によって、その
判断の基準になるのが、どのような企業に投資マネーが流れたか、ということです。

B君:これも、ご時世と言えるのだと思う。
資産運用企業が新しいファンドを創設するとその新ファンドの方向性に対応しないと、投資マネーが流れてこないものだから、企業は、その方向性を模索するのが当然のなりゆき、ということになる。

A君:そして、その
方向性をこれまで決めていたのが、ほぼ地球温暖化対応だった。すなわち、「低炭素」がキーワードだった。

B君:そして、今回、
プラスチックの「リサイクル」と「代替素材開発」も、そのキーワードになった。

A君:これは、例の海洋プラスチック問題が発生したからなのだけれど、本サイトでは、2018年10月7日に記事を出したのですが、この記事での記述を読むと、
「プラ製ストローは日本では廃止されない」とシバセ工業というストローお国内トップメーカーが主張したというような記事になっています。

B君:まあ、我々としては、日本国内の主張と欧州を中心とする国々の主張がなぜ違うかを説明するところまでしかできなかった。しかし、その後の状況を見ると、日本のストローも確実に、非プラスチック化されたと思える。

A君:その記事で述べたことは、
日本でもっとも重要視されるのは、「製品の利便性」であり、そのためには、その「製品が故障しないこと」が「利便性」における最大の条件。ということで、世界各国で、確かに日本製品は売れた。

C先生:米国の車は壊れて当然だった時代に、米国に滞在していた。確かに良く壊れた。しかし、最近の米国車は余り壊れないという話なのだけれど、日本で米国車に乗っている知り合いがいないので、現実がどうかは分からないが。

B君:「故障しない製品」がもっとも重要だという理由はやはり
故障することが、利便性を失う最大の理由だからだろう。そう考えれば、飲料用のプラスチックの容器にしても、「何があっても、壊れないような耐久性」が重要視されてしまう。となると、そのプラ容器が川から海に流れ出したとしても、そう簡単には分解されないという結論になってしまう。

A君:欧州の人々だと、そのような
利便性最優先の行為は、人類が、プラスチックの容器によって、海洋生態系の被害を与える可能性が増大するということだから、とても認められない、という反応になる。何はともあれ、SDGsの項目を順守すべきだということですね。しかし、日本だと、「人が便利と思うかどうか」、が商品製造の目的として最大化されて、それを採用するのが普通で、環境問題の発生の可能性をまず考える、というマインドはない。

B君:さらに言えば、使用済みのプラスチックであれば、
収集してリサイクルをすれば、生態系に被害を出す可能性も無くなるし、完璧な解だということになるのだけど、これも、利便性からはやや遠いのかもしれない。やはり、そこらにポイ捨てをすることが、最大の利便性でもある、のだろうね。

A君:そして、本日の話は、
米国ブラックロックが新たなファンドを創設して、プラスチックのリサイクルや代替素材の開発で成長が見込める企業に巨額の投資マネーが流れるようになった。決して、利便性が評価されたからでは無い。なぜなら、利便性は「人類中心主義」的な判断であって、それが不便になったところで、地球上の生態系の持続性には影響はないから。

B君:これまではそうだった。しかし、米国などの状況は、プラ容器を使う製品を作っている企業にとって、
我社の製品からは「プラごみ発生の可能性はゼロ」です、と言えるか言えないか、それが最重要事項であると同時に、その製品の、ひいては、その企業の価値観を表明しているフレーズだということになる。

A君:日本の投資ファンドなどでも、
「ESG投資なるものは実施していることになっている」、のですが、プラスチックのリサイクルが対象になっているのかどうか。やや疑問ですね。

C先生:日経ESGなる雑誌の11月号では、”「プラごみゼロ」が生死を分ける”が題名になっているCover Storyだが、そのイントロの9行しかない文章を読むと、結構、刺激的なことが書かれている。
 9行から、さらに2行分削って、7行分だけ引用してみるので、お読みいただきたい。詳細は、是非、日経ESGで!
 『プラスチックごみ削減への貢献が企業価値に大きく影響し始めた。
 世界最大の資産運用会社の米ブラックロックが新たなファンドを創設するなど、リサイクルや代替素材の開発で成長が見込まれる企業に投資マネーが流れ始めた』。
 そして、すごい予測があって、2030年にはサーキュラーエコノミーが4.5兆ドルの経済効果を生むとされている。
 使い捨てプラスチックの使用規制が世界に広がっており、対応が遅れればコスト増や評判の悪化を招きかねず、投資家離れも危惧される、ということだ。
 すなわち、『「プラごみゼロ」への挑戦が、企業の生死をも左右する重要な項目になっている』。


A君:本文に行きますと、刺激的な事実がいくつも書かれています。
 例えば、
今年の8月に日本国内で販売開始された個人投資家向けのESD関連ファンドが売れているとのこと。野村アセットマネジメントが設定した「野村ブラックロック循環経済関連株投資」別名(ザ・サーキュラー)の募集金額は950億円とのこと。

B君:このESD関連ファンドの担当マネージャーは、「サーキュラーエコノミーの市場がかなり大きいことが分かったきた」、「ESG投資もそのパフォーマンスが大事」と述べたとのこと。

A君:
「サーキュラーエコノミーの市場」はなぜ大きいのか。それは、様々な背景があるからですね。まず、『地球の限界に基づく資源価格の高騰があり』、加えて、『消費者意識の変化』『技術の進化』の計3つがある。

B君:地球の限界と書かれているけれど、実は、今後長期にわたって、
人口の増大がアフリカを中心に予測されることも、深く関連している。

A君:
人口増加については、アジアはすでに落ち着きを見せている。どのような状態になると人口増加の最大の原因である出生数が減りだすか、というと、それは、教育費を掛けることが、子供達がよりハッピーな人生を送れると親が考えるかどうかに掛かっているようです。すなわち、『教育重視が一般化すれば、子供の数を減らす親が増える』。その理由は、教育費はどこの国でも高いから。これとは逆に、「子供は労働力だ」と親が思っている国では、人口は増えてしまう。

B君:ESG投資は、世界で広がっているとのことだけれど、3Rを推進し、プラごみ問題の解決に貢献する企業33社だけに対する投資で構成されたものもあるようだ。結果的に、このようなファンドの値上り幅が大きいとのこと。

A君:どうみても、米国では、
どのような企業の株が上がるかを考えるとき、ESG投資として適した企業であるかどうか、が大きな判断基準になっていますね。

B君:もはや単なる企業業績だけの判断基準は成立しないようだ。それはなぜか、という説明は日経ESGには書かれていないのだけれど、
ある商品がバカ売れしたといった現象があれば、株価は上昇するに決まっているけれど、その持続性は、あっという間に終わってしまう可能性もある。しかし、企業活動に関わるポリシーが判断基準として使えたとしても、何10年も継続するような判断基準には勿論ならないのだけれど、少なくとも、売り上げが多かったというような実績よりも、経営者の思想は長い間継続することは事実だ。ということは、より確実は判断基準になるということだろう。

A君:それに加えて、
プラごみ問題を無視するような企業は、地球環境、特に、海洋生態系の保全のような人類が居住する地球という惑星にとっての重大な項目の一つを無視している企業だと判定されてしまうのですね。このような企業はSDGsを本気でやっている企業とはとても思えないのが当然なので。

B君:以上の話は米国の話だったけれど、これまで余り環境派だと考えられてこなかった米国企業が多いし、実際、まだ少数だと思った方が良いが、かなり
意識の進化した企業が徐々に増えて来たということだ。その大きな動機が、「ファンドによる投資」なのだから、本音が変わったというよりは、ファンドが企業を変えたというのがより正確な表現だろう。

A君:
日本企業の現状を考えると、海洋生態系を重視していて、プラごみの重要性を理解している割合は、米国・EUより低いかもしれない。『理解している』というのと、「知っている」とは大きく違いますから、念のため。

B君:それは、日本という国土に生きていると、余りにも酷い環境破壊はすでに起きないようになっていて、むしろ、放置されている森林の方が問題というような状況なので、生態系の自己防御能力というか、自己保持能力といったものが充分に強いように見えるのかもしれない。

A君:海洋生態系となると、その現状を見るには、ボンベを背負って海に潜らないと見えない。極々限られた人だけが可能のように思えますね。

B君:
日本国内でも、企業の良い対応が無いとも言えない。いくつか例を挙げよう。

A君:この記事に出てくる企業を上げると、
アサヒグループホールディングス、花王、スターバックス、米国のダウとその日本法人のダウ・ケミカルなど。

B君:新しい技術で解決しようとしている企業として、
三菱ケミカルが、BioPBSという生分解性プラスチックをタイで生産し、このプラでコーティングした紙コップが、タイや中国のカフェで使われている。また、スターバックスが、米国や、カナダ、英国の一部店舗でテスト使用を開始。

A君:同じ名称のBioPBSですが、海水中でも分解しやすい樹脂(=海洋生分解性)が、やはり開発中とのこと。ただし、現状だと、石油由来のプラスチックの6〜7倍のコストとなっているらしいです。

B君:
三井化学は、今年6月に、「気候変動・プラスチック戦略グループ」を新設し、「気候変動とプラごみ」は、全ての事業部門に絡む問題だととの認識によって、全社に横串を差して戦略を進めるとのこと。

A君:プラごみ削減を真剣に行おうとすると、いくつかのプラスチックを組み合わせて酸素透過性を下げたりすることが多いけれど、
三井化学では、単一のプラスチックでも内容物の品質が守れる機能をもたせられるような「モノマテリアル包装」の実現を目指しているとのこと。これができれば、回収・リサイクルをやる価値がでますから、当然ながら良い方向性だと思います。

C先生:日本化学企業もかなり頑張っているようで、心強い。しかし、まだ、頑張っている日本企業の数が少ないような気もする。
米国企業が頑張る理由は、当然のことなのだけれど、ESG投資が増大しているから。日本のように、島国型の国家は、どうしても、世界的情勢への対応が、遅れるのが普通。しかも、パリ協定の「気候正義」を理解することが難しかったように、「ESG=Environment, Society, Governance」の理解も、日本人にとってはいささか難しい。特に、Governanceへの対応が難しい。Webを検索して、Governanceの記述を探してみると、必要な対応として、『内部統制やリスクマネジメントを向上させる部門の設置』とか、『役割と指示系統を明確にする仕組みづくり』が重要といった指摘が出てくるのだけれど、これでは、発想がいささか軽いね。Governanceを実現するのに、もっとも重要なことは、『Self Governance』ができる社員を増やすこと。要するに、人造り、いや、「人創り」が鍵だと思う。しかし、『Self Governance』というと、自分のことだけを見つめていれば良いように思われるかもしれないけれど、本当の意味は、自分の所属企業と自分自身が、そして、場合によると「社会全体と自分自身の関係」を含むと考えるべきだけれど、端的に言ってしまえば、ESG全体への気配りができているかを「Self Check」出来る人を意味するのだと思うのだ。環境関係への対応には、「広い視野」が不可欠である。これは、究極的な真実だと思うけれど、「広い視野」「広い」の中味は、時間的、空間的、生態系的に「広い」ことが求められる。単なる「(ある分野の)物知り」では不十分。すなわち、ほとんどが「地球のすべて」への対応なので、実際に体現するのがなかなか難しいことだ。なんといっても、雑学の塊みたいなものなので、当然、学習も難しいものなのだと思う。