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    コロナ危機で考える疫病との闘い   04.12.2020
       なぜ中国で感染症が発生するのか

               



 極端な表現になりますが、人類の歴史は、絶滅との闘いの歴史だったと言えると思います。人類の歴史が進化の歴史に変わったのは、絶滅の危機から解放されたからで、それは、ペストの大規模流行を回避できたとき以来と考えればよいのではと思います。その後、天然痘も克服して、現時点があるのですが、今回のコロナは、久々の強敵のようです。今回は、疫病と人類の戦いについて、若干の考察を行ってみたいと思います。

 今回参照する図書は、次の1冊です。
 「新型肺炎 感染爆発と中国の真実」
  〜中国5千年の疫病史が語るパンデミック〜
  黄 文雄著  徳間書店 キンドル版

  2020年2月 刊行

 これから、大量の本が出版されると思いますが、疫病を歴史的に記述した本は、かなり古いものが多く、最近出版された書籍は比較的少ないようです。


C先生:今回のCOVID−19が問題になったのが、中国・武漢での流行が始まった昨年の暮から。米国のジョンホプキンス大学のサイトhttps://www.arcgis.com/apps/opsdashboard/index.html#/bda7594740fd40299423467b48e9ecf6 
によれば、感染者の数が世界で約177万人。その約1/3近くが米国の53万人、そして、次がスペイン16.3万、イタリア15.2万、フランス13.1万、ドイツ12.5万、中国8.3万、そして、日本は6千人。

A君:死者もすごい勢いで増えている。総数が10万8千人。最多がイタリアの1万9千人、以下、スペイン1万6千人、フランス1万3千人、英国9千人、ニューヨーク6.4千人、イラン4.4千人、ベルギー3.3千人、中国3.2千人、ドイツ2.9千人、オランダ2.6千人。そして、日本は、99人

B君:防衛ができているところとしては、オーストラリアとニュージーランド。特に、ニュージーランドは、感染者1312人に対して、死亡者はわずか4名グアム島の5人より少ない。人口は、ニュージーランドが489万人、グアム島16.6万人。同じ島なのに何が違うのか。

A君:日本の場合、PCR検査の数が少ないので、本当にこの数なのか、かなり疑問。日経の記事によれば、少ない理由は、(1)検査施設がそもそも少ない、(2)無償でも今は入院で対応、(3)厚労省は誤判定を警戒、以上の3点。

B君:ドイツはどんどんと検査をして、無症状者は自宅待機にしている。厚労省は、誤判定を警戒しているというが、どのぐらいの率で起きるものなのだろう。ドイツの死者数は2736名で、日本の99名とは比較にならないぐらい多いので、何が正しいのか、良く分からないが。

A君:日本の死者数99名は、ニューヨーク州の隣のNew Jersey州の一つのカウンティーであるPassaicの119人より少ない。その人口は、約50万人にすぎない。

B君:ちなみに、C先生居住の目黒区の人口は27.7万人。多分、感染者は57名で、男性38名、女性19名(4月10日時点)、年代としては、30代が16名、40代が13名、50代が9名と多い。 死者はゼロなのでは。

A君:日本の場合だと、感染者は原則入院となっているので、PCR検査をして感染者が増えると、医療システムの崩壊が確実に起きる。厚生省はこれが怖いと思っている。

B君:国による差の本質は、どこにあるのだろう。

A君:一つの可能性ですが、このところ、大分意識が高まったとは思うけれど、京都産業大の大学生の例のように、自分が感染拡大の原因になるという可能性を考えていないこと。すなわち、社会の一員であるという責任を十分に認識していない人が多いこと。これが、最近の日本の若者の特性なのでは。

B君:以前にC先生が言っていたけれど、若者に「もっと社会と自分の関係を考えろ」、と言ったら、「今はすごく居心地が良い時代なので、しばらくほっておいて欲しい」と反論されたという話に繋がるようだ。

A君:若者のマインドとして、「現在は、自分がやりたいことが自由にやれる社会だ。何もしないという選択肢を含めて」と言う認識があることなんでしょうね。

B君:しかも、最近のSNSの傾向としては、自分の仲間から『いいね』が大量に入ることに生きがいを感じていて、そのために、他の社会、特に、大人の社会に抵抗するような態度を示す人間が、仲間から評価される=最低限、「いいね」の数が増える)という傾向があるのだろうと思う。

A君:COVID−19の場合には、若者の致死率は確かに低いのですけれど、諸外国を見ると、決してゼロではないですけどね。

C先生:ということで、そろそろ、その本の紹介に行こう。

A君:了解です。この著者ですが、黄 文雄氏で台湾の評論家。1938年生まれ。1964年に留学のために訪日。西洋経済史が専門。拓殖大学などで勤務。相当の日本好きのようで、その理由としては、日本人には「他人を思いやる」文化があること、としている。日本語での著書は極めて多くて、数えられない程。

B君:「他人を思いやる」文化は、現時点では、もはや主流ではないね。しかし、最近の若者を見て、そろそろ日本人が嫌いになるのでは。

A君:まず、第1章ですが、「新型肺炎がなぜ中国で発生し、世界に拡散したのか」というタイトルになっています。

B君:本当に最近の話なのに、しっかり記録して、著書にするところがすごい。

A君:2020年1月春節の直前の、中国湖北省を中心に新型肺炎が急速に増大1月10日にはじめての死者が報告されたが、そのときの感染者数は41人だった。しかし、北京、広東、上海へと広がり、約10日後の19日には死者数4人、患者数198人、21日18時には死者6人、感染者291人。そして、同日中に死者数17人、患者数543人になり、さらに、その6日後の1月27日には死者数80人・感染者数2744人となった。

B君:すごいスピードだったのだ。

A君:さらに、2月になっても、2月1日には感染者数3万1161人・死者数636人、2月17日には感染者7万636人・死者数1772人となった。

B君:当然、海外へ。1月13日にタイで中国人女性の感染者。16日には日本でも武漢からの帰国者が入院。

A君:なぜ中国でこのような感染症が発生するのだろう

B君:それは、確実な答えではないが、日本と違って、ありとあらゆる食用動物が生きたまま売られているのが中国の市場だからでは、と考えるのが普通のようだ。

A君:正にその通りで、この著者によれば、鶏、豚、ヒツジに加えて、ロバ、ラクダ、キツネ、アナグマ、タケネズミ、ハリネズミ、ヘビ、といった生きた動物が売られていたらしいです。

B君:過去の例でも、MERSはヒトコブラクダが、SARSはコウモリが感染源だと考えらえている。今回のコロナもコウモリ説があるが、確定はしていないようだ。

A君:この著者は台湾出身なのからか、中国は情報を隠していたといったことが書かれている。かなりマル秘情報だと思うのですが、本当ですかね。

B君:確かに。感染の拡大を受けて習近平国家主席は、1月20日、感染拡大を全力で阻止せよと重要指示を出し、感染に関する情報も隠さずに発表するようにと求めた。そうした指示を受けて、武漢は1月23日から市街に向かう交通がすべて閉鎖。市内はパニック状態に。しかし、実は、武漢で原因不明の肺炎患者が報告されたのは、2019年の12月8日だったことが分かっている。しかし、当局はそれを公表せず、12月30日に内部文書がネットに流出して、ようやく新型の肺炎が拡大していることが噂にのぼるようになった。しかも、新型肺炎の情報を流したネットユーザー8名が「デマを流した」ということで警察に逮捕された。
 その一人は、李文亮という医師だったが、この医師も感染し、2月7日に死亡した。
 さらに、武漢市当局は、1月15日に「1月3日以降、新たな患者は確認されていない」という偽情報を出した。市当局が「人から人への感染が起きていることは間違いない」と発表したのは、習近平が情報隠蔽への厳罰を発表した1月20日だった。

A君:情報隠蔽は、常時あると思うべきなのでしょう。実は知らなかったのですが、SARSのときにも、中国からの偽情報が元となって、「香港から感染が拡大した」と発表されたようですね。

B君:ちょっと先に進むけれど、なぜ、中国がパンデミックの原点になるのか、について、著者は、次の理由を挙げている。
(1)希薄な衛生観念
(2)儒教による家族主義・自己中心主義
(3)ニセモノ文化
(4)多すぎる人口
(5)なんでも食べる食文化
(6)農村などでの人畜共棲
(7)秘密主義、情報隠蔽
(8)皇帝制度、一党独裁
(9)不完全な医療制度


A君:多分、完全に真実なのでしょうが、ここまでよく書くので感心しますね。しかも、次のページに、「他人はどうなってもいいと考えるのが中国人である」と断定していますから、相当な『断定力』です。

B君:儒教の話(2)が出てくるが、朝鮮半島とどちらがひどいのだろうかと思うと、次のような記述がある。「自分の家族以外は信用できない敵である」、「自分や家族の家は清潔を保つべき場所だが、それ以外はどうでもいい場所である。だから、家の外へならば、ゴミを捨てても、糞尿を捨ててもいいとなる」

A君:どうも、朝鮮半島より自己中心的のような気がしますね。その先にある記述(3)がひどいですね。2018年には、中国の五つ星の最高級ホテルで、客室係が同じブラシで、便器・浴室だけでなく、コップなども洗う画像が公開された。C先生はしばしば北京に行きますが、お腹を壊したことは無いのですか。

C先生:水は、ミネラルウォータの瓶から直接飲む。多くの場合そうしている。日本以外の国で信用できるところは余り存在しないと思う。

A君:記述を続けますが、中国はニセモノばかり。そのミネラルウォーターもニセモノであることが多いそうですよ。

C先生:まあ、ひどい水だと口に入れたときに分かると思うけどね。以前、下水に流された廃棄油を集めて再利用したなどという話もあった。「地溝油」などと言われて外食産業で使われていたらしい。確かに、中国はニセモノの世界とも言える。したがって、疫病の発生の確率は、日本とは比べ物にならないぐらい高いはず。それに加えて、春節の季節になると、延べ30億人の中国人が国の内外を動くのだから、そのときに、ウイルスも拡散されるのが当たり前。

B君:これらに加えて中国の一人っ子政策のときに生まれてしまった二人目の子供は、出生届が出されなかったために、戸籍を持っていないので、「闇っ子」と呼ばれるらしいが、当然ながら医療は受けられない。その数1300万人だそうだ。

A君:要するに、中国はかなり豊かな人が増えたが、格差は広がった。これが上のリストの(4)の「多すぎる人口」ですかね。

B君:次の(5)なんでも食べる文化は良く知られた話。その次の(6)農村などでの人畜共棲、はそれと関連した生活スタイルだと言える。

A君:(7)の秘密主義・情報隠蔽は、当たり前に行われているので説明不要。(8)は、かつての皇帝制度の場合でも、現在の中国共産党制度でも、地方長官は中央政府から派遣される「官」なので、中央の支配力は強い。現地役人は「吏」と呼ばれる。

B君:そして(9)不完全な医療制度だけれど、医師の社会的地位は、儒教の影響か、非常に低いのだそうだ。日本と台湾では、成績の良い学生が医学部に進学するが、中国では全く逆で、成績の悪い学生が医者になる。それが原因で、医者に対する患者の暴力行為が頻発したりする。そもそも、医者の初任給は、新卒の平均的な初任給よりも低い。看護師はもっと低い。となると、誰も医者になりたがらない。

A君:さらに、中国の医療保険制度は未整備。加入者にしても、北京市では自己負担率が45%と高い。そのため、病気になっても病院に行けない人が多い。

B君:このような状況で春節になって、中国人が海外へ。そこで、各国はなんらかの対応をすることになった。もっとも厳しく対応したのが、なんと北朝鮮で、中国からの観光客の受け入れを全面的に停止した。フィリピンは、1月23日に武漢からの直行便の乗り入れを禁止。それ以前に到着してい中国人観光客は、中国へ送還。さらに、1月30日に国内での感染が確認されると、31日に湖北省からの中国人を入国禁止。2月1日に、武漢からの旅行者が死亡したので、中国全土からの入国を禁止した。

A君:それに対して、日本では春節で70万人の中国人観光客が来日。水際作戦を徹底させるとしたが、空港では例のサーモグラフィーで発熱の有無をチェック、気分の悪いものは検疫官に申し出るように、という呼びかけるだけ。余りにも緩かった。

C先生:これも、日本政府が中国からの観光客に期待していることは、お金を落としてくれること。要するに、『経済優先』が現日本政府の中心的ポリシーなのだ。そのために、どうしても緩くなる。

B君:中国政府は、1月27日からの海外への団体旅行を禁止したが、すでに春節で多くの中国人が海外へ出発してしまった。決定は遅すぎた。

A君:SARSのときに、すなわち、2003年での中国人海外旅行者は延べ612万人だった。ところが2018年は1億4972人と20倍になっていた。訪日中国人も2003年には44万9千人だったが、2019年には959万4千人とやはり20倍。

C先生:まだ、この本の15%ぐらいしか進んでいない。しかし、今回のコロナの状況を知ると、日本政府がいかに経済優先の政策だけにしか目を向けていないかが良く分かる。人間にとって、経済は確かに極めて重要だ。しかし、命を失ってしまったら、いくらお金持ちでもそれで終わり。一定程度の所得が維持できれば、やはり、健康がいかに重要であるかが分かるはず。安倍首相にしても、第一次安倍内閣のときには、大腸のトラブルで早々に退くことになった。それが第二次内閣からは完全に別人のような頑健さになったのは良いけれど、それも、新薬のためなのではないかと思う。やはり、安倍内閣が、コロナを甘く見たのは事実なのではないか。現時点でもまだその延長線上にあるように見えてしまうのは、我々だけだろうか。現状だと、東京都知事の方が余程、コロナの先が見えて、情報を集め、そして、考察をしているように思う。厚労省の体質改善が不可欠なことも事実だろうけど。
 この本の残りをパラパラとめくってみると、第1章でのコロナ関係の話は、ほぼ終了している。第2章が「世界史的な観点からの中国発パンデミック」の話になって、なんと、ヨーロッパを襲ったペストも、実は、伝染源は中国だったというような興味深い話もあるし、アヘン戦争の内情のような普通の書籍には出て来ないような歴史な話題もでてくる。さらに、これまで読んだこともないような中国の内情も語られている。恐らく、共通の理解をしておいた方が良いようなことも多いように見えるのだ。本書における最大のポイントは、「中国人のマインドセットをしっかり理解せよ」、という著者の叫びかもしれない。
 そして、第5章が再び本論に戻って、「COVID−19が世界に与える影響」といった予測。そして、第6章が「中国発の脅威にどう対処すべきか」といった主題になって、コロナウイルスとはそもそも何かといった説明もある。そのため、続編は書かざるを得ないものと思われる状況であるが、今回は、ここまでとしたい。