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  東京ディーゼル車規制   06.01.2003



先日、今週の環境で取り上げた、東京都のディーゼル規制。それに、久々に買った「間違いだらけのクルマ選び」徳大寺有恒。この2件が今週の主題。

C先生:前回、「当面の課題」で自動車を取り上げたが(AutoEANext.htm)、その復習から。

A君:今後10年間の環境の方針は決定済み。表現は色々有り得ますが、
(1)一つの大方針として、資源生産性の拡大。特に価値の高い商品の開発。
(2)四つの指標の改善。
 (a)二酸化炭素排出量の削減、
 (b)循環素材利用率の向上(バージン資源の使用量削減)、
 (c)環境汚染の削減(有害化学物質への適正対処)、
 (d)最終処分量の削減
(3)拡大製造者責任

B君:この議論で決まりだと思わせる要因がすべて含まれてるので、余り反対はできないだろう。すなわち、ヨハネスブルグのサミットの実施計画、循環型社会基本計画、京都議定書、さらには、日本独特の事情といった要素が全部含まれているから。

C先生:もしも、それを20年後まで拡大したとき、国際的に何か新しい規範ができているか。

A君:あるとしたら、環境倫理が拡大製造者責任だけでなく、さらに将来世代との調停が厳しく問われるといったこと。

B君:それは改善方向だが、改悪の方向だって考えられなくは無い。

A君:温暖化が余り大したことではない、ということで、二酸化炭素の放出あたりが問題でなくなる可能性というのは、改悪でしょうか、改善でしょうか。

B君:温暖化が分かってくると同時に、石油の生産がどうなるか。キャンベルが言うように、本当に2004年が世界の石油生産のピークに本当になるのかが分かる。

A君:エネルギー限界、特に、石油の限界が確実に見えるのが20年後でしょうね。

B君:エネルギー問題となると、これは国際問題だ。紛争が起きる可能性高し。

C先生:国際的な力学がどのような動向になるのか。米国の一国支配がどうなるか、このあたりが影響するだろう、ということにしておく。

A君:そして、先日のHPで車産業への当面の課題として強く主張したのは、こんな四項目でした。
(1)小型高級車で燃費の良い車を作ること。
(2)ハイブリッド車を推奨するが、最低でもアイドリングストップ車。
(3)ディーゼルは、2005年対応車の様子見。
(4)使用材料の無害化は、大人の判断で行くべし。塩ビの使用が一つの指標になりうる。むしろ塩ビ活用と言えれば、大人だ。

C先生:やっと本題にたどり着いた。第3番目の項目がディーゼルだったのだ。そして、2005年規制の様子を見ようというのが提案。しかし、この段階の議論で抜けていたのが、東京都のディーゼル車対策。先日、石原都知事が、この2005年規制では不十分で、米国が2007年からやる予定の世界一のPM規制を上回るものを設定すべきだ、という議論を巻き起こした。果たして、たった2年で、世界一でなくなることがどれほどの問題なのか。日本と米国とで状況に違いはあるのか。このあたりを解明したい。

A君:ということで、本日の最初の話題が、東京都のディーゼル規制。今年の10月から、東京都の条例で、対策を取らないディーゼル車が走れなくなる、という事態が起きます。

B君:埼玉県、神奈川県、千葉県もこの動きに同調。首都圏の4都県、横浜市、千葉市、川崎市が共同歩調。

C先生:先日、新聞折込チラシとして、このディーゼル車の対策情報が配布されてきた。ところが、それがわかり難い。最大の問題点は、登録後7年間の猶予期間があることが、書かれていないこと。

A君:この東京都のディーゼル車規制については、運送業などからかなり反発があったようです。まだ使える車が使えなくなるのは、資源の無駄だという反発です。

B君:そういう要素も無い訳ではない。しかし、運送業などのように、実走行距離が非常に長い車だと、製造に関わる環境負荷は、まあ、3ヶ月分ぐらいの燃料起源の負荷、すなわち、二酸化炭素、NOx、SOx、PMで帳消しといった感じではないか。

C先生:東京都知事の主張にもそれなりの妥当性はある。HPなどの記述では不十分なのだが、これまでの国の排気規制は、NOxばかりだった。NOxも有害性はあるが、さらに有害なのはむしろPMの方だ、という理解が出てきている。

A君:次の図に、1975年の規制を1として、どんな経緯でNOx、PMの規制が進展してきたか、を示しますが、確かに、NOx偏重であることがよく読めます。

B君:東京都のディーゼル規制を詳しく説明する予定だったが、あまりにも分量が多くなるのと、東京都のディーゼル規制のページがよくできているので、ここでは省略することとする。http://www.kankyo.metro.tokyo.jp/jidousya/diesel/

C先生:東京都の規制では、「乗用車」が規制対象になっていない。その理由は、台数が少ないこと、排出量も少ないこと、さらには、寿命が比較的短いことを上げている。

A君:ディーゼル車でRVなどは、結構黒い煙を出すのが居ますから、本当は規制をすべきように思いますが。

B君:調べてみたら、まだ、三菱だとパジェロ、スペースギアにはディーゼル車がある。トヨタのランドクルーザーにもある。特殊用途だと考えられるが、普通の街乗り用に買わないように、規制をした方が良かったのではないか。

A君:いすゞは、ディーゼルRV車メーカーのひとつだったが、2002年9月末でRV車全体の国内販売を止めた。

C先生:まあ、RV車は、乗用車としての登録が少ないのかもしれない。業務用だと、日産のキャラバン(マイクロバス)には、平成15年10月規制、さらには、極めて厳しい平成17年10月規制(予定)も満足していると書かれている。

B君:トヨタのランドクルーザーは、ディーゼル車平成14年規制適合。三菱のパジェロは、2005年ディーゼル車燃費規制適合とあるが、それ以上見つからない。三菱のWebには、環境情報が極めて少ない。要反省!! まあ、平成14年規制適合なのだろう。

C先生:トラックだと、トヨタのダイナが同様に平成17年10月規制を満足している。やはり、乗用車も適用対象にすれば良かったように思える。実効があるかどうか、ではなく、哲学の問題だからだ。そろそろ、石原知事の国への申し入れの話に行こう。

A君:そうです。東京都のディーゼル車規制でのもうひとつの話題が、米国の平成19年規制。2007年規制と書くべきですが。

B君:東京都の石原都知事が、以下のような申し入れを行った。

1 新車のPM(粒子状物質)規制について
 ディーゼル車のPM規制について、日本の新車の規制開始は、欧米に2年以上遅れた上、規制値も2倍以上緩やかであり、こうした対応の遅れが、今日の大気汚染をもたらしました。
 国は、平成14年4月に、平成17年から実施する新長期規制の規制値について、PMで0.027g/kWh(3.5t超ディーゼル車)とすることを明らかにしました。しかし、すでに平成13年に、アメリカが平成19年から0.013g/kWhの規制を行うことを告示しており、わずか2年で、日本は、再び後塵を拝することになります。
 総理大臣が「世界一厳しい排ガス規制をする」と発言された以上、アメリカより厳しい規制を実施し、世界の自動車公害対策を堂々とリードすることを求めます。このことは、日本メーカーの排ガス関連技術の国際競争力強化を図る上からも極めて重要であると考えます。

2 使用過程車対策について
 ディーゼル車から排出されるPMは、国も認めた発がん性物質であり、花粉症状の発現や悪化の要因ともなっています。都民・国民の生命と健康を守るためには、現在の深刻な大気汚染の元凶となっている使用過程車対策こそ、喫緊の課題です。
 このため、都をはじめ埼玉県、千葉県、神奈川県の一都三県は、本年10月から条例でディーゼル車規制を行うこととし、首都圏八都県市で連携協力して使用過程車対策に取り組んでいます。
 ところが国は、平成14年3月に、NOx・PM法の車種規制の適用を、当初予定より最大2年半遅らせる措置をとり、使用過程車対策を後退させました。
 国が、ディーゼル車対策に積極的に取り組むのであれば、従来の姿勢を改め、NOx・PM法の車種規制の適用前倒しや都が実施しているような実効性のある融資制度の創設など、抜本的な使用過程車対策を早期かつ強力に実施することを求めます。

3 低硫黄軽油について
 国は、平成16年末までに、軽油の硫黄分規制を50ppm以下にする方針ですが、すでに、石油連盟は、都の要請に応え、低硫黄軽油(50ppm以下)を、国の規制より大幅に前倒しして、本年4月から全国で供給しています。
 また、先日、石油連盟は、超低硫黄軽油(10ppm以下)について、平成17年から一部供給、平成20年から全面供給可能である旨を表明しました。
 世界一厳しい規制をするのであれば、ディーゼル車のエンジン、PM減少装置の開発・普及のために、軽油中の硫黄分の低減が不可欠です。
 超低硫黄軽油については、すでにドイツ、スウェーデンでは供給が開始され、EUとしても平成17年から段階的導入、アメリカでは平成18年から大部分で導入されるなど、すでに、規制の方向とスケジュールが示されています。
 国においても、民間の自主的努力に頼るだけでなく、超低硫黄軽油の早期供給が実現するよう、国の責任において、早急に必要な措置をとることを求めます。
 一方、市場では、脱税を目的として重油を混和した不正軽油が多量に流通しており、PM等の一層の増加をもたらし、都民・国民の健康をおびやかしています。都は、率先して他の関係自治体と連携して取り締まりに当たっていますが、国においては、不正軽油の製造等を根絶するため、罰則の強化を含めた抜本的な対策を講じるよう求めます。

C先生:世界一以外は駄目な「石原流面子」なのか。それとも、米国並みにすることが本当に良いのか。

A君:それに、ディーゼルの燃費がガソリン車より本当に良いかということも問題になりますね。

B君:これまで日本では、軽油取引税を安く設定し、軽油・灯油を優遇してきた。これが物価などを下げる効果があり、産業育成になるという考え方だった。

C先生:一方、ガソリンを使う乗用車はぜいたく品だった。その名残が残っているようなものだ。

A君:アメリカという国は、ディーゼルがもともと少ない国で、EUはディーゼルが多いですね。

B君:石油からどのぐらいのガソリンを作り、どのぐらいの軽油を作るか。これは、かなり自由自在なのだ。だから、その国の石油需要構造に応じて石油供給構造が作られている。アメリカの製油業界は、ガソリンを多く作ることができるような製造装置を持っていて、日本は、軽油・灯油が多く取れるような製造装置を持っている。

C先生:石油精製というが、年間2.5億トン以上の原油を処理する装置だ。だから、そう簡単に入れ替える訳にもいかない。だから、これまでの軽油優遇策を余り急激に変える訳にもいかない。

A君:それには、ディーゼルを政策的に多少有利にしておかないと。実際の燃費がディーゼルが本当に良いかと言うと、まあ多少良い、といったところで、決定的に良い訳ではないですからね。

B君:ディーゼル車の2005年規制が厳しい。これがクリアーできないようだと、燃料がガソリンに偏ることになる。となると、供給不足など別の影響がでる可能性がある。そこで、「様子見」が必要というのが、前回の本HPの本意だった。

C先生:東京都などのディーゼル規制が重要であることは論を待たない。しかし、2005年規制の効果が見えるのは、2010年頃か。しかも、2005年規制でも、これまでのPM規制に比べれば十分に厳しい。少々様子を見ながら次の対策を考えるという方針もあり得るだろう。「なにがなんでも世界一」の環境規制には何の意味も無く、必要かつ十分な規制に意味がある。

A君:現時点でのディーゼル車起源のPMのリスク評価は、蒲生氏によれば、14日程度の損失余命。もしも、現状から1/3ぐらいになれば、ホルムアルデヒドの影響と並ぶことになるでしょう。

B君:リスク削減は、オーバーオールに眺めて、効率的な対策をすべきだ。

C先生:それが東京都ディーゼル規制の結論。本日のもうひとつの話題が、久しぶりに買った「間違いだらけのクルマ選び」。本年5月30日発行版。出たばかり。知りたかったことは、徳大寺さんが、燃料電池車についてどういっているか。さらに、どんなクルマを開発すべきだと言っているか。

A君:クルマ評論家の見識にもピンからキリまでありますね。

B君:クルマのような社会的に影響の大きい商品の批評には、世界的な大きな流れが読める資質が必要だ。

C先生:徳大寺さんは、その世界の流れが読める評論家だと思っている。燃料電池車についの記述は、「問題山積で永久に無理という説も出ているが。。。。」となっている。また、「燃料電池は国際政治の問題でもあるのだ」、として、エネルギー戦略全体として考えるべきことを述べている。

A君:先日、世界初で国にリースで売り渡した燃料電池車ですが、トヨタは自作の燃料電池。ところが、ホンダの燃料電池はバラード社(カナダ)のスタックを利用したものでしたからね。どうもホンダはカッコウ優先。

B君:技術的アドバンスとともに、エネルギー戦略を考えた上で、考えるべきだということだ。

C先生:それ以外の記述についても、結構同感できるものがある。例えば、メルセデスに対する感覚や、トヨタの新しいミニバン、ウィッシュに関する記述などだ。徳大寺さんの価値観が日本全体の価値観になると、社会が良い方向に向かいそうだ。クルマなどには関心が無いという方も、一度ぐらいはお読みいただくことをお奨め。

A君:表現の一つ、「クルマを知る前に己を知る」など、哲学者的。

B君:「フォーマルな場にはセダンで出かけたい」といったことで、「礼」も述べている。

C先生:多少違うなと思うのは、やはり大型のクルマがお好みのところぐらいだ。クルマのLCAについて、徳大寺さんに講義をしたいぐらいだ。まもなく納入されるレインジローバーで日本を巡る旅を計画しておられるようだが、燃費を考えるとどうなんだろう。